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新日本BGMフィルハーモニー管弦楽団のコンサート「NJBP Live! #9」が開催

「GRADIUS」、「ドラキュラ」、「ゴエモン」! 観客から演者からほとばしるKONAMIへの愛

1月21日開催

会場:文京シビックホール

 ゲーム音楽プロオーケストラである新日本BGMフィルハーモニー管弦楽団(以下、NJBP)の公演「NJBP Live! #9」が1月21日、東京都文京区の文京シビックホールにて開催された。NJBPとは前身の「一般社団法人日本BGMフィルハーモニー管弦楽団(2014年に解散)」の創設者であり指揮をしていた市原雄亮氏を中心として結成された、ゲーム音楽を主体として演奏するオーケストラである。ゲーム音楽プロオーケストラとして固定された団員を擁する日本では珍しい存在となっている。

 NJBPは様々なスタイルで演奏を行なっており、ライブハウスやバー、喫茶店などで行なう小編成のライブ「NJBP+」、小規模ホールで行なう室内楽公演「NJBP Live!」、大規模ホールで行なうオーケストラコンサート「NJBP Concert」などを定期的に開催。今回は「NJBP Live!」の9回目の公演となった。

 これまで「NJBP Live!」では様々なゲームタイトルが演奏されてきたが、今回はKONAMIのゲーム音楽特集としてファミコン世代は耳にしたであろう「GRADIUS」、「悪魔城ドラキュラ」をはじめとしたKONAMIの名だたる曲の数々を集め、管弦楽向けに羽田二十八氏、他が編曲。コンサートマスターのヴァイオリン小林明日香氏を中心に演奏が行なわれた。「NJBP Live! #9」のセットリストは以下の通り。

【第一幕】
・DAWN -Theme of NJBP-(作曲:国本剛章)

・音楽CD「The Epic of Zektbach -Ristaccia-」より
「L'erisia(Primal Logic)」

・「ときめきメモリアル Girl's Side」より
「平日コマンド(春)」、「平日コマンド(夏)」、「平日コマンド(秋)」、「平日コマンド(冬)」

・「月風魔伝」より
「スタート(スタート音)」、「行け月風魔!(マップBGM)」、「1000億光年の彼方(アクションBGM)」、「龍骨鬼戦(大ボス戦BGM)」

・「魂斗羅」より ※1
「魂斗羅(タイトルバック)」、「密林の戦い(メインBGM)」、「迷路要塞1(3D)」、「迷路要塞2(3Dボス)」、「凱旋1」

【第二幕】
・「魍魎戦記MADARA」より
「Departing Soldiers」、「MA・DA・RA(Map2メインBGM)」、「破壊のシンフォニー(八大将軍)」、「Hachidai(八大将軍討伐)」

・「レーサーミニ四駆 ジャパンカップ」より ※2
「設定画面(ゲーム冒頭)」、「ハカセ」、「フランコ」、「ミナコ」、「カマコ」、「ハイアンドロー」、「セッティング画面(レース前)」、「レース画面」、「表彰式」

・「GRADIUS」より
「Morning Music (バブルシステムBIOS)」、「Coin (クレジット)」、「Beginning of the History (空中戦)」、「Challenger 1985 (ステージ1BGM)」、「Free Flyer (ステージ4BGM)」、「Final Attack (ステージ7BGM)」、「Aircraft Carrier (ボス)」、「Historic Soldier (ランキング)」

・「悪魔城ドラキュラ」より
「Prologue (スタート・BGM)」、「Vampire Killer (城内潜入BGM)」

・「ドラキュラII 呪いの封印」より
「Bloody Tears」

・「悪魔城伝説」より
「Beginning (教会、町、墓場ステージ)」、「Mad Forest (森ステージ)」

・「がんばれゴエモン!からくり道中」より
「BGM1 (町BGM)」

・「がんばれゴエモン2」より
「中国・北海道 (4・9st)」、「旅始め (1・5・8st)」、「ステージクリア」

【アンコール】
・「がんばれゴエモン!からくり道中」より
「店 (店内BGM)」

・「がんばれゴエモン2」より
「ゴエモン哀愁の旅」

ピアノ・管弦楽編曲 羽田二十八
※1管弦楽編曲 バート・アホラック
※2ピアノ・管弦楽編曲 バート・アホラック&羽田二十八

 今回のセットリストは、NJBP代表の市原氏、編曲の羽田氏両名を中心に、楽団メンバーからの強い要望も交えて組み立てられており、KONAMIへの並々ならぬ愛と意気込みを以て演奏に臨んでいるのが伝わってきた。また、観客側も耳に馴染んだKONAMIサウンドが見事な管弦楽に昇華された事も手伝って、大きな拍手でその意気込みを称賛していた。編曲を手掛けた羽田氏によると、編曲の際にもっとも心を砕いたのは、ループ前提の原曲をどのように終わらせるかということだった。実際にエンディングやファンファーレ等の終わりのある原曲を最後に持ってきたりと、随所に工夫が見受けられた。

司会のNJBP代表市原雄亮氏。軽妙なトークを展開し、会場の共感と笑いを誘った。なお左手にもっているバインダー状のものは、SFCマリオペイント付属の専用マウスパッドであることが判明した

 まずはお馴染みとなったNJBPのテーマ「DAWN」が演奏された。「チャレンジャー」や「スターソルジャー」を初めとしたゲーム作曲者として知られる国本剛章氏が作曲に携わり、開演前の場内BGMとしてヴォーカルバージョンが繰り返し流れていたが、そのインストルメンタルバージョンを演奏。国本氏の代表作のパロディらしき旋律を交えつつ開幕を飾った。

 続いてはコナミデジタルエンタテインメントが展開するプロジェクト「ゼクトバッハ叙事詩」のコンセプトアルバムのひとつである「-Ristaccia-」から赤き天使「L'erisia(ルエリシア)」を表した一曲。熱狂的な音楽ゲームプレーヤーでもあるトランペット荒木優太氏たっての希望で選ばれたこの曲は、オーケストラとテクノサウンドが融合された原曲のオーケストラ側へ巧みにフォーカスをあて、見事な演奏を見せた。

 「ときめきメモリアル Girl's Side」からは平日コマンドBGMを春から冬にかけてメドレー形式で演奏。チェロの清水亜裕美氏は前身団体の楽団員オーディションを受けた当初から当タイトルを演奏したいと訴えており、ついに本公演でその要望が叶った形となり、冬のシーンではその清水氏がソロパートを務めた。市原氏から清水氏へのインタビューの際、清水氏が本タイトルへの思いの丈を吐露しようとしたのをぐっとこらえて、その情熱を演奏に注いだ姿が印象的であった。

 また、「月風魔伝」は同じチェロの神野洋平氏が何度もやりこんだというタイトルであり、ステージにまでロムカセットと手書きの3Dダンジョンマップを持ち込むほどの思い入れを披露、演奏ではフィールドBGMの主旋律を務めた。スタート音からマップBGM~アクションステージBGM~龍骨鬼BGMがシームレスに繋がっていく様は、実際に本タイトルをプレイした観客にとっては脳裏にゲーム画面がありありと思い浮かぶ展開にニヤリとさせられたに違いない。

 前半第一幕の最後は「魂斗羅」。本タイトルはアーケード版が初出だが、ファミコン版の音源がより演奏に適しているとの市原氏のこだわりでファミコン版を採用。こちらも月風魔伝と同様にタイトルから1面BGM~3D要塞面~ボス~クリアとゲーム展開に沿ってメドレー形式で進行した。コンバット物を意識したマーチ系の編曲になっており、トロンボーンやコントラバスでリズムを作ることにより疾走感溢れるビートを再現した。

 ここで第一幕が終了、次回公演の「LIVE! #10 くにおくん特集」開催の告知と共に幕間の休憩時間に早割り券が販売され、次回を待ちきれないファンが券を求めて列を作った。なお、オンラインショップでは「くにおくん特集」の一般向けのチケット販売も開始されている。

ゲームに対する思い入れを語るメンバー。中には司会の市原氏の予想を遥かに超えるエピソードやアイテムが披露されるハプニングもあった

 休憩を挟んで後半の第二幕はKONAMI初の本格RPGである「魍魎戦記MADARA」からスタート。原作のテイストをフルート等で再現しつつ、フィールド~ボス~ボス討伐の曲を演奏した。

 次に「レーサーミニ四駆 ジャパンカップ」より各プレイアブルキャラクターとレースBGMが演奏された。観客や演者の中にもミニ四駆を所持していたという“ミニ四駆世代”がちらほら見受けられたが、本タイトルをプレイしたかという市原氏からの問いかけに手を挙げた観客は他タイトルに比べてやや少なかった。

 NJBPは比較的マイナータイトルにもスポットを当てて積極的に演奏を行なっているが、プレイした経験のある観客にとっては、本タイトルの「4人のプレイヤーBGM~セッティング~スタートシグナルからのレースBGM」メドレーが今に蘇るとはとひと際感慨深い思いに囚われたことだろう。モダンな編曲にフィンガースナップでリズムをとったりと、管弦楽をカジュアルに楽しめるNJBPならではの演出と言えよう。中でも特筆すべきは、NJBP公演初のコントラバスのソロだろう。ミニ四駆を所持していたこともあるという古庄正典氏が、難しいとされるコントラバスでのピチカート奏法でソロを務めた。

 そして横スクロールシューティングの金字塔ともいうべき「GRADIUS」が満を持して登場。本タイトルは昨年9月に開催されたオーケストラ公演「NJBP Concert #0 "飛翔"」で演奏されたが、今回は小規模管弦楽用にリアレンジを施してのお目見えとなった。アーケード版が初出で、ファミコンを初めとした複数の家庭用プラットフォームへ移植されているが、敢えてアーケード版を採用した理由としてはなんといっても電源投入直後の基盤ブート時に流れるバブルシステムBGMの存在。このBGMを聴きたくて開店直後のゲームセンタへ通ったマニアにとっては感涙モノの演出だったことだろう。筆者個人としては、空中戦からステージ1へ移行していく際、空中戦BGMの発音トラックが減っていき1音のみになるという原作のフェードアウト手法を忠実に再現していた点に惜しみない称賛を送りたい。

 興奮冷めやらぬ中「悪魔城ドラキュラ」が畳みかけるように続いた。ディスクシステムの「悪魔城ドラキュラ」、「ドラキュラII呪いの封印」ロムカセットの「悪魔城伝説」と初代からのファミコン版3作がメドレー形式で演奏された。ゲーム音楽マニアにとってはこれらタイトルの曲を今でも屈指の名曲と挙げる方も多いのではないかと思うが、その期待通りのナンバーに否が応でも会場内のボルテージが高まった。編曲は弦楽器のみの構成だったが、ゴシックホラーの世界観に弦楽器がピタリと噛み合い、心が中世ヨーロッパにトリップしてしまうほどの破壊力であった。

 トリを務めたのは「がんばれゴエモン」。毎回公演で和モノを取り入れているNJBPにとっては定番ともいえる題材であるが、鼓の音をバイオリンで再現したりと、本タイトルの世界を余すところなく表現した。アンコールでも引き続きゴエモンが登場、前プログラムで入れられなかった「からくり道中」の店内BGMが市原氏たっての希望で組み入れられた。ゲーム内で左右に反復高速移動しつつヘッドバンキングよろしく会釈を繰り返す店員が特徴的なので是非真似して欲しいとは市原氏の弁だが、客席からヘッドバンキングをしてノっている観客の姿が見受けられた。

 また、曲間にはNJBP公演の醍醐味ともいうべき司会進行の市原氏による濃いトークが繰り広げられた。NJBPの公演に参加したことのある読者ならご存知だと思うが、曲間に市原氏がステージに登場し次に演奏される曲のゲームの思い出話や蘊蓄、さらにはゲストを交えてのクロストークが展開、盛り上がる余りに話が弾んでしまい、タイムアップを知らせるベルを運営から鳴らされるシーンもしばしば見受けられる。かくいう筆者も過去参加した公演で何度もうなずいてしまった1人である。今回も例に漏れず市原氏のトークが炸裂。タイムアップのベルこそ鳴らされはしなかったが、氏のゲームに対する深い造詣と軽妙なトークに会場は同意や笑いの声につつまれた。和やかで満たされたシンパシーの中、約2時間にわたる全プログラムが終了、本公演は盛況のうちに幕を閉じた。

 公演を通して感じられたのは、一貫したKONAMIへの愛情だ。演者、観客ともに尋常ではない思い入れが感じられた。昔親しんで文字通りカセットやコントローラがボロボロになるまでやりこんだKONAMIのゲームタイトル、そしてその傍らで陰に日向に存在してゲームに華を添えてくれた忘れようにも忘れられないKONAMIサウンド。その両者が思い出と共に愛情へと昇華したのはごく当然のことであろう。それだけに本特集を待ち望んでいたファンも多かったと思うが、開催を実現するために尽力したNJBP運営、編曲者と演者の手腕、そして公演を許諾していただいたKONAMIへ感謝の念を送りたい。

 このようにNJBPはゲーム音楽を中心とした知る人ぞ知る名曲の演奏や様々な規模や形態による公演を定期的に行なっているので、ゲーム音楽に興味のある方、気軽に公演を楽しみたい方、代表のトークにより共感されたい方(笑)は是非足を運んではいかがだろうか。

 また、2月4日には年に1度のファン感謝デーがあり、おなじみの演者が演奏以外で顔を揃えることになる。こちらもTwitterのNJBPアカウント(@NewJapanBGMPhil)にて告知されているので、演者との触れ合いを楽しみたいファンは是非チェックしていただきたい。