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「ファイナルファンタジーXV」が追求した“リアルなファンタジー”とは何か?

舞台設定にとどまらず、コンテンツの開示と、何よりもテーマでリアルを問う

2月27日~3月3日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 GDC2017ナラティブセッションでは、「Bringing Fantasy to Life in 'Final Fantasy XV'」として、Lead Writer and Localization Directorを務めたDan Inoue氏による講演が行なわれた。“人生にファンタジーをもたらす「ファイナルファンタジーXV」”、というのはどういうことなのだろうか?

Lead Writer and Localization Directorを務めたDan Inoue氏
「ファイナルファンタジーXV」は若者達が活躍していく物語だ
様々な作品で世界を掘り下げていく
人生にファンタジーをもたらす、そのテーマを実現するためのアプローチ

 「ファイナルファンタジーXV」は新しい世界、キャラクター、戦闘システムなど、すべてに革新性を求められた。そして「ファイナルファンタジー」には、モンスターや魔法、どこか無国籍間のある世界観なども求められる。

 シリーズが、そして「ファイナルファンタジーXV」が求めるファンタジーとは何なのか、Inoue氏が最初に投げかけた言葉は、「This is Fantasy Based on Reality」……現実感のあるファンタジー。「ファイナルファンタジーXV」は長い開発期間を要したタイトルであったが、“現実感”というのは繰り返し求められていたことだった。

 本作は少年達が世界を旅するオープンワールドRPGがゲームの根幹となっている。そして発売前にフルCG映画として公開された「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」、アニメーション作品「BROTHERHOOD FINAL FANTASY XV」とも世界観やキャラクターを共有している。

 これらはそれぞれが独立した作品でありながら、本編とクロスし、それを補完する存在である。これは新しいチャレンジだったとInoue氏は語った。もちろんこれらの作品にも、現実感は強く求められている。日本の作品でありながら、世界のマーケットで通じるRealityを実現させるために気を配られていた。

 このため「最も良い設定」、「時間の試練」、「人生の意味を考える」という形で、ファンタジーを突き詰め、それを人生にもたらす方法が考えられていった。「最も良い設定」の1つとしては、「緻密な世界観」がある。説得力のある世界を実現するためには現実の世界をモデルにする。

 「水の都オルティシエ」はベネチアをモチーフとしており、パリなどヨーロッパの雰囲気が盛り込まれている。そして「インソムニア」は東京やニューヨークなどの都会の街の要素がふんだんに盛り込まれている。試しに街の広告を現実のものにするとびっくりするほど違和感がない。多様性と、特徴的な場所を盛り込むことで、実在感の強い街を作り上げたのだ。

 次はキャラクターである。主要キャラクターは“親しみやすさ”を大事にした。JRPGに見られる線の細い美形のキャラクターをベースにしながら、イグニスはジェームズ・ボンのようなミステリアスなスマートさ、プロンプトは親しみやすい明るさ、グラディオラスは「ダイ・ハード」のマクレーン刑事のようなパワフルさを持たせている。

 彼らが主人公ノクティスを中心に物語を紡いでいく。さらに他の作品で主人公達の過去を書き、よりキャラクター性を掘り下げていく。日本の声優達による会話劇でもキャラクター性はより掘り下げられていく。会話は4人の関係性が複雑に絡み合い、化学変化を起こして、より強くプレーヤーにキャラクター達の“存在感”を印象づけていく。さらに超自然の存在や、個性的なキャラクター達との関係性といった“幅”も持たせていく。

 こういった設定を練り込みつつ、開発そのものの足並みにも注意を払った。ゲームのデモやトレーラーを出すタイミングなど、時には開発の手を止めて、クロスメディアで情報を出し、世界観や物語の一部をユーザーに提供していくことで、世界観や物語、情報から受け取るイメージなどを統一させる。それぞれのコンテンツの足並みをそろえさせ、関係性を強めるということも行なっていった。ゲームの開発は時間との闘いだが、あえて3つの作品の相乗効果による「リアルなファンタジー」を実現させるために時間をかけたのだという。

 そしてゲームのテーマである。ゲームの中で、“人生の意味”を探っていく。プレーヤーはゲームをプレイし、映画やアニメを見て、キャラクター達の人生、そして自身の人生の意味を問いかけていく。「人生は短い」、「人生は複雑だ」、「そして、人生は楽しい」このテーマをきちんと伝え、共感させることで、「ファイナルファンタジーXV」は“現実感のあるファンタジー”を追求したのだと、Inoue氏は語った。

【The Holodeck Year 2】
現実の要素を盛り込みながら、緻密なファンタジー世界を作り出す。
キャラクター達は親しみやすく、そしてつながりでキャラクター性を掘り下げていく
過去を描く映像作品と足並みをそろえさせ、掘り下げることで、より物語をプレーヤーに印象づける