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新進のゲーム会社も採用!! スマホアプリに浸透する「BISHAMON」

モンスター育成RPG「モンスターブリーダー」における活用事例

1月20日取材

ポッピンゲームズ社内会議室

「BISHAMON」をエフェクトに採用する「モンスターブリーダー」のタイトル画面

 マッチロックの「BISHAMON」は、唯一無二とも言える国産のエフェクトミドルウェアだ。その使い勝手の良さとサポートの手厚さから、多くのゲームタイトルに採用されると共に、ゲームスクールでもnにも活用されている。本誌では、かねてから「BISHAMON」の動向に注目しており、これまで幾度となく取り上げてきているから、すでに「BISHAMON」をご承知の読者も多いことだろう。

 これまでの「BISHAMON」は、過去作品での実績を買われて、スクウェア・エニックスやバンダイナムコエンターテインメントといった大手のゲーム会社の作品に、継続的して採用される事例が目立っていた。ところが、最近では新進のゲームメーカーの採用事例が増えているという。今回はその1社であるモバイルゲーム会社ポッピンゲームズジャパン(以下、「ポッピンゲームズ」)が開発する新作RPG「モンスターブリーダー」の採用事例をご紹介したい。

 今回もマッチロックの「BISHAMON」エバンジェリスト後藤誠氏と共にポッピンゲームズを訪問して、ポッピンゲームズ流の「BISHAMON」活用術をお伺いしてきた。今春の正式リリースが予定されている「モンスターブリーダー」とは、どういったゲームなのか。また、ポッピンゲームズとは、いったいどのようなゲーム会社なのか。本稿では、新進のゲーム会社による最新スマホゲームでの活用事例を通じて、「BISHAMON」の最新動向をお伝えしたい。

ユニークなモンスターが魅力の育成RPG「モンスターブリーダー」

レナは「モンスターブリーダー」のゲームプレイをナビゲートしてくれるキャラクターだ

 ビジュアル的に親しみやすいアニメ調のグラフィクスを採用したモンスター育成RPG「モンスターブリーダー」は、ポッピンゲームズ初の3Dタイトルだ。タクティカルな要素やユーザビリティという意味では「DRAGON SKY」の精神的な続編としながらも、モンスター“育成”の楽しさをゲームコンセプトに置いている。ファームでの“収穫”、“修行”、“トレーニング”といった、ひとりで遊べる要素を通じて育成したモンスターを、サーバ側のシステムに委ねて、アリーナで他のプレーヤーと対戦することができる。

 この基本的なルーティンに加えて、経験値、お金、進化素材を効率良く入手することができるスペシャルダンジョンが用意されている。各ダンジョンは、あらかじめ何が得られるか分かるようになっており、ダンジョン探索の目的は明確だ。ダンジョンには、さらに“降臨ダンジョン”と呼ばれる、ボスモンスターと対戦できるダンジョンも用意されている。

 このように「モンスターブリーダー」には、サービス開始初期からかなりのゲーム要素が実装されている。正式サービス時点で、進化形態を含めて70種類ものモンスタービジュアルが用意されることになっており、このことからも、かなり遊べるボリュームになりそうだ。

アリーナでの他のプレーヤーとの対戦シーン。育成の成果が試される

3Dであることがアリーナでの対戦戦闘シーンにも活きている

 本作が3Dゲームとなったのは、同社の従来の作品は2Dゲームであり、それらとの差別化という要因が大きい。スマートフォンのスペックの向上によって、ハードウェア的に無理がなくなったことが背景にある。また、ポッピンゲームズのスタッフに、2Dであれば一定のクオリティラインに達する開発力が備わったため、新しい表現にチャレンジする機運が高まっていたことも挙げられる。

 とはいえ、ただ単に、スマホで3Dが動くから、3Dでゲームを作ってみたいから、というわけではなく、前述したゲームデザインをプレーヤーに訴求するために、3Dグラフィクスを活用している。育成ゲームでは、プレーヤー自身が育成したモンスターに対して愛着を持てるかどうかという点が、プレイを継続するか否かの分かれ道になる。

 本作では、戦闘中の思わず応援したくなるような何とも言えない攻撃モーションや、ファームのトラックで走り込みをする姿、同じくファームの広場で待機しているときに見せる尻尾を振るしぐさなど、モンスターの能力値以外の視覚的な部分でもプレーヤーを楽しませてくれる。何度も繰り返すルーティンであることから、戦闘の苦楽を共にしたり、ファームでのしぐさを何度も目にしたりしているうちに、おのずと愛着が湧いてくることだろう。

 その他にも、3Dならではの表現が、フィールドや、モンスターのモデル、カメラアニメーション、エフェクトに至るまで、くどくなりすぎない程度にごく自然に施されており、3Dであることを活かしたゲームに仕上がっている。

戦闘シーンからはエフェクトが3Dで作られていることが実感できる

 ところで、この「モンスターブリーダー」をサービスするポッピンゲームズとは、どういう会社なのだろうか。歴史的にはまだ創業5年目の若い会社ながら、スクウェア・エニックスとの協業タイトル「DRAGON SKY」を開発している。また、「DRAGON SKY」の他にも、自社単独でサービスするスマートフォン向けゲームアプリを、すでに9タイトルもリリースしている。同社の自社タイトルは、開発から配信まで、すべて社内スタッフが中心となって行なっており、若い会社ではあるものの、着実に実績を積み重ねてきた会社だと言えるだろう。

代表取締役CEOの辻村尚志氏

 これまで同社がスピーディーに複数のタイトルを展開することができたのは、代表取締役CEOの辻村尚志氏の固定観念にとらわれないマインドによるところが大きい。辻村氏はDeNAの出身で、アメリカでのゲームビジネスのキャリアを持つ。国際的に活躍してきた同氏だが、ポッピンゲームズ設立以前はゲーム開発プロジェクトを直接みてきたわけではなかった。そんな辻村氏が、同社設立以来、ほとんどのタイトルのプロデュースを手がけている。レガシーな開発手法にこだわらない辻村氏は、ポッピンゲームズというまっさらな会社に、アメリカ流、DeNA流の“仕事のやり方”を浸透させている。

 年齢やキャリアにとらわれず能力に裏打ちされた結果の出せる人材の登用や、ツール、ミドルウェアの積極的な活用といった方針は、いずれも辻村氏の哲学によるものだ。人材面では、「モンスターブリーダー」プロジェクトにおいて、今回、辻村氏と共にインタビューに応じてくれたアートディレクターの水野智之氏と3Dグラフィックデザイナーの魚住幸加氏の両名を、本作のビジュアルを決定付ける中心メンバーに置いている。水野氏は、創立の翌年に新卒入社したゲーム開発歴4年の開発者でありながら、モンスターの2Dデザイン担当するに留まらず、ビジュアル全体を統括する重責を担っている。一方の魚住氏も、開発歴3年と水野氏とほとんど変わらない若い開発者でありながら、3Dエフェクトをひとりで一手に引き受けるという活躍をみせている。

 ゲームのストラクチャーの面では、ゲームの基盤となるエンジン部分からフルスクラッチで開発するという考えはなく、従来の2D作品にはCocos2d-xを採用してきた。初の3D作品となる「モンスターブリーダー」では、過去のCocos2d-xでの開発経験を踏まえるために、Cocos2d-x 3D Extentionを採用している。

 エフェクトに対してミドルウェアを採用するのも、辻村氏にとっては必然だ。従来の2DゲームではOPTPiX SpriteStudioを使用しており、ゲームグラフィクスが3Dになっても、2D同様に優れたオーサリング環境と、ゲームエンジンが要求するデータ形式での出力が可能なミドルウェアの採用は大前提であった。そこで、3Dのエフェクトミドルウェア「BISHAMON」に白羽の矢が立ったというわけだ。エンジン、ミドルウェアの積極採用は、いずれも完成リスクをミニマイズし、確実にリリースまで持っていくための施策である。良いものはどんどん使っていくのがポッピンゲームズ流だと辻村氏は語る。

【アイスサーペントの氷結スキル発動】

【フォリーの回復スキル発動】

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「モンスターブリーダー」のビジュアルクオリティを支える「BISHAMON」

3Dグラフィックデザイナーの魚住幸加氏。「モンスターブリーダー」でエフェクト開発を担当している。なお、本人の希望で顔はマスクしている

 こうした文化を持つポッピンゲームズの最新作「モンスターブリーダー」のクオリティラインを、メリハリのあるエフェクトで支えているが「BISHAMON」だ。「BISHAMON」の導入にあたって、まずは辻村氏の指示に基づいて、チーフ格のエンジニアが「BISHAMON」のみならず、複数のエフェクトミドルウェアの情報収集とそれぞれの評価を行なっている。この際の評価結果は、文句無しで「BISHAMON」の圧勝だったという。ミドルウェアの機能とオーサリング環境の使いやすさ、他作品での採用実績や提供の持続性、サポートやバージョンアップ、Cocos2d-x 3D Extentioに対する組み込み難度、導入コストといった評価項目のすべてにおいて、「BISHAMON」が群を抜いているとの判断を経て、本作への採用が決定した。

 「モンスターブリーダー」の開発プロジェクトにおいて、3Dエフェクトを一手に引き受ける魚住氏は、「BISHAMON」を導入するメリットとして、以下の3点を挙げてくれた。

 ひとつ目は、「BISHAMON」が完全な3Dをサポートしていることだ。非力なハードウェアがターゲットの場合、前後関係の判定が必要がない加算半透明のビルボードエフェクトを多用して、パフォーマンスを稼ぐことがある。この手法をとる場合、2Dのパターンエディタでアニメーションを製作しやすいというのもメリットと言えるだろう。ただし、ビルボードには弱点もあって、あらかじめカメラアニメーションが規定できないゲームデザインの場合、キャラクターの側面に回り込むようにカメラをアニメーションさせても、あくまで3D空間中の平面ポリゴンにすぎないビルボードエフェクトでは、側面からの見た目に変化させることはできない。カメラとの整合性をとるために、ビルボードのエフェクトの見た目は、どうしても中心点から放射状に拡散したり中心点を軸に回転するようなものに限られてしまう。そうしないと不自然さが際立ってしまうからだ。

 「BISHAMON」によるエフェクトは、ビルボードはもちろんのこと、3Dモデルやエミッターから放出されるパーティクルもサポートする。エフェクトが3Dであれば、カメラとの整合性を考慮する必要はなく、エフェクトの軌道も自由度が増す。

「BISHAMON」ツール画面みると氷はモデルが作られているのが良く分かる

 ふたつ目のメリットは、「BISHAMON」のオーサリング環境にある。DCCツールでの3Dキャラクターアニメーションの製作経験がある魚住氏にとって、DCCツール同様にタイムラインベースでキーフレームアニメーションを付けていくスタイルの「BISHAMON」には、比較的容易に学習に入っていくことができたという。また、国産のエフェクトミドルウェアということで、日本語の「BISHAMON」解説書が刊行されているのも大きいとのことだ。比較検討した他のツールには、あらゆるパラメータを数値で入力してエフェクトを組んでいくスタイルものもあり、プレビュー機能もないために、常に実機用のデータを出力してゲームに組み込んでみないとエフェクトがどのように表示されるか確認できないという非効率的なものであった。

 この点においても「BISHAMON」のエフェクトデザインツール環境は優れている。「BISHAMON」ツール環境でのエフェクト単独でのプレビューはもとより、DCCツールからエクスポートしたアニメーション付きのキャラクターモデルを読み込んで、エフェクトのタイミングにアタリをつけることができる。また、カメラもアニメーション付きで読み込むことができるから、簡易的に実機相当のシーンを「BISHAMON」ツール環境に準備すれば、エフェクト製作に関して、かなりの部分を「BISHAMON」ツール環境だけで完結できるようになる。ゲーム開発において、異なる環境を何度も行き来するのは、それだけで時間を取られてしまうから、この部分が解消されるのは大きい。

魔のエフェクトにもモデルが活用されていることが見て取れる

 魚住氏が最後に3つ目のメリットとして挙げたのは、サンプルエフェクト集「BISHAMON」エフェクトデータライブラリの存在だ。ライブラリに収録されているエフェクトを起点に、オリジナルの素材を組み合わせて新しいエフェクトに昇華させているほか、ものによっては、ほとんどライブラリのままの状態で、本作のテイストに馴染むように調整して使用しているという。また、“完成品”「BISHAMON」エフェクトの好例であるライブラリ収録データの作りを丁寧に調べることで、「BISHAMON」エフェクトの習得にも大いに役立ったとしていた。何事も最初はとっかかりのイメージが沸かないものだ。すぐに使えるサンプル集によって、本作の開発スピードが加速したのは間違いないだろう。

【デビルの断罪スキル発動】

【サボの攻撃“サボテン爆弾”】


アートディレクターの水野智之氏。本作のモンスターデザインとグラフィック統括を担当している

 ところで、「BISHAMON」の採用にデメリットはないのだろうか。直接「BISHAMON」環境で作業する魚住氏には、特に不満はなく、目立った問題点もないのだという。魚住氏と同じく本作のアートディレクターであり、ビジュアル全体を統括する立場の水野氏も、これには同意見だ。両氏共に「BISHAMON」を活用したエフェクト開発においては、一定のクオリティをキープするために過度な開発負荷がかかることはなく、製作進行に大きな問題がないということ重視しているのだろう。

 基本的には不満はないとしていた魚住氏だが、「BISHAMON」ツールに対して、ふいに大きなリクエストがふたつ飛び出した。ひとつは、DCCツールからインポートしたエフェクト用モデルに対して、「BISHAMON」ツール環境上で、スケルタルアニメーション(ボーンアニメーション)を付けたいというものだ。

 なるほど気持ちは理解できる。ポッピンゲームズでは、モンスターキャラクターの製作でさえ、モデリング、スキニング、リギング、テクスチャ、モーションといった作業単位の分業がなされておらず、一人のスタッフがモデリングからモーションまで一貫して作業を担当するスタイルを採用している。比較的簡易なエフェクト用モデルならなおさらで、魚住氏自身がすべての作業を一人で行わなければならない。DCCツール上でエフェクトの部品としてモデルを製作している段階では気がつかない、ひとつのエフェクトとして組み上げてみて始めて感じる違和感もある。この段階でイメージにそぐわないモデルのアニメーションを微調整したいというニーズがあるのだろう。確かに「BISHAMON」ツール上で、モーションアニメーションを修正する方が、一連の作業効率が上がるように思われる。

 ただし、このリクエストには、「BISHAMON」の未来を大きく左右する命題が含まれているのかもしれない。現在の「BISHAMON」ツール環境は、決して統合ツールではない。あくまでエフェクトのアニメーション製作を容易にするために、アニメーション付きのモデルデータをインポートする機能が実装されているに過ぎない。3Dモデルに付けられたモーションアニメーションの編集を可能にするということは、「BISHAMON」ツールが、統合アニメーション製作ツールへと向かう第一歩となることを意味する。ニーズは、エフェクトの素材モデルに留まらず、さらに進んでキャラクターモデルのアニメーションにも及ぶだろう。キャラクターのアニメーションをも編集可能にするということは、リグをインポートしてコントロール可能にするということになる。IKソルバが必要になり、将来的には、リグの作成や編集機能も必要とされていくだろう。アニメくくりで、ブレンドシェイプによるフェイシャル、ヘアやクロスのシミュレーションといった機能にまで、要求は際限なく広がっていく可能性もある。

 加えて、双方向にデータの編集結果を可搬にするワークフローには、データのハンドリングにミスが生じやすいという問題もある。個人的には、DCCツールと機能的にかち合っても仕方がないということもあり、「BISHAMON」のツール環境は、あくまでエフェクトに特化した、より扱いやすいツールとしての進化を突き詰めて欲しい。領域を絞り込む方向性では、モーションデータは編集不可のほうが望ましいように思われる。

 マッチロックの後藤氏によると、「BISHAMON」の最新版には、複数のFBXファイルをインポートする機能が実装されているとのことだ。ただし、最新版においても、キャラクターのアニメーションは再生オンリーで、編集することはできない。この最新版は、まだ正式リリース前のバージョンであるため、もちろんアニメーションの編集が可能になる可能性もある。「今後にご期待ください」とだけ後藤氏はコメントしていることから、現時点ではイエスともノーとも、その真意をうかがい知ることはできない。

コントラストの高いエフェクトは「BISHAMON」の得意分野だ

 魚住氏のふたつ目のリクエストは、Mac OS版の「BISHAMON」ツール環境が欲しいということだった。iPhone向けとAndroid向け両方のアプリを並行して開発するポッピンゲームズでは、全スタッフの開発環境はMacなのだという。なるほど、iPhone向けアプリのビルドにはXcode/Objective-Cの環境が必要となることから、歴史的なしがらみのない若い会社なら、iPhone向けとAndroid向けのクロス開発には、素直にMacの開発環境を用意した方が好都合だと言える。こうした開発環境にも、良いものは積極的に採用していきましょう、という辻村氏のマインドが色濃く現れているように感じられた。

 ただ、残念なことに、現時点の「BISHAMON」にはMac OS版が存在しないから、本プロジェクトの開発メンバーでは、魚住氏だけがWindowsとMacを併用することになってしまっている。Macで作成したエフェクト素材のデータを、Windowsで実行している「BISHAMON」環境に持って行ってからエフェクトを付け、またMacにデータを戻すという作業の流れは、わずかではあるものの、やはり効率が悪いのだろう。こちらも1台のマシンで開発が完結するように要望する気持ちは良く分かる。

 後藤氏によると、こちらの要望に対しては、現時点の「BISHAMON」が、Windowsの.NET Frameworkに依存して開発されているため、すぐにMac版を用意することはできないのだという。ただし、時代の流れから、ツールのマルチプラットフォーム化の必要性は認識しているため、あと1年程度先の将来のバージョンには、Mac版のリリースを計画しているとのことだった。

 Mac版リリースまでのプロジェクト側の暫定措置としては、次のような対応が考えられる。デザイン作業のほとんどを「BISHAMON」といくつかのグラフィックツールで完結させることができるのだから、いっそのこと「BISHAMON」以外のツールもWindows環境の方に用意して、エフェクトの開発者はWindowsメインで開発するというのも検討の余地があるだろう。iPhone向けの開発にはMacが好都合だと言っても、アプリのバイナリパッケージをビルドしなければならないプログラマ以外は、必ずしもMacが必要というわけではない。実機テスト前のXcode環境下のiOSデバイスシミュレータと、実機テスト用のバイナリのビルド、その他の日常的な業務上のドキュメンテーションだけにMacを使うようにしても、特に不都合はないように思われる。

 また、iOSデバイスシミュレータが我慢できるなら、リソースデータがプログラム本体のバイナリと完全に分離されて前提で、テスト用にビルドしたバイナリをプログラマなどの他のスタッフから配布してもらえば、極端な話、Macを使わない開発を行うこともできると思われる。全開発者の開発環境を統一することで得られるツール等の社内サポートコストの低減は崩れてしまうが、データの取り回しの煩わしさとのトレードオフである。どちらを優先するのかは、魚住氏とプロジェクトのチームメンバーの考え方次第だろう。

本作のキャッチからもモンスターのアクションを重視していることが分かる

 根っからのゲーム好きで、ついついゲームプレイに夢中になってしまうという辻村氏。そのせいもあってか、今回のインタビューでは、ポッピンゲームズという新たなフィールドを得たことから、経営者やプロデューサーとしての役割の枠を超えて、ゲーム作りにのめり込んでいる様子がうかがえた。

 辻村氏のコメントからは、アプリ動作の軽快さや、モンスターの魅力作りを重視していることが良く分かった。本作は60FPSのフレームレートを維持しており、実際に実機で動くアプリを見てみると、小気味良く動作する様がよく分かる。従来型のゲーム開発では、どうしても色や形の豪華さにリソースを多く割いてしまい、結果としてフレームレートの低下を招いてしまいがちだ。フレームレートを犠牲にしてしまうと、モンスターのアクションやエフェクトのアニメーションがもっさりしてしまい、しぐさの愛らしさも、エフェクトの爽快感も、その効果が半減してしまっていただろう。

実機でのスキルエフェクト発動シーン。60FPSで軽快に動作している

 辻村氏は、正式サービスの開始以降も、月に1度のペースで継続的に実施されるアップデートを通じて、モンスターにごはんをあげるといった、プレーヤーとモンスターのふれあいの要素を、もっともっと豊富に実装していきたいとしていた。モンスターとのふれあいに意味付けするために、性格や体格といったパラメータの導入が起案されている。また、ゲームプレイの実利的な目的となるレアアイテムの入手や、ボスとの戦闘を行うことができる塔の新コンテンツの導入も計画されている。

 ポッピンゲームズの若い力が、今後も「モンスターブリーダー」というゲームそのものを、“育成”していってくれることだろう。固定観念に縛られない文化を持つポッピンゲームズならではのゲーム運営に期待が持てそうだ。