【特別企画】

「チャレンジャー」発売40周年! ファミコンでオープンワールドの概念を導入!? “裏ワザ”ブームの火付け役にもなったリアルタイムアクションアドベンチャー

【チャレンジャー】
1985年10月15日 発売
※画像はファミコン版での撮影(以下同)

 ハドソンのファミリーコンピュータ用ゲームソフト「チャレンジャー」が本日2025年10月15日をもって発売40周年を迎えた。

 “リアルタイムアクションアドベンチャー”のジャンルを掲げ、ファミコン発展期の人気タイトルとして貢献した本作。劇場用映画「インディ・ジョーンズ」シリーズを意識したというストーリーのもと、4つのシーンを体験するゲーム内容は、直前に発売された「スーパーマリオブラザーズ」とはまた違った冒険を味わうことができた。

 システム自体は単純ながら、制限時間内であれば自由に行き来ができるオープンワールド的な概念をこの時代から取り入れていた本作を、実機のゲーム画面とともに振り返ろう。

「チャレンジャー」のパッケージ。イラストやロゴも完成度が高い

“裏ワザ”ブームの火付け役!? 裏ワザを仕込んで口コミで流行らせる

 この「チャレンジャー」が発売された1985年はファミコンタイトルが少しずつ充実してきた頃。同年9月に「スーパーマリオブラザーズ」が発売され、ファミコンというゲーム機をエンターテインメントの確固たる地位へと押し上げている。この年に発売されたゲームソフトと一緒にファミコン本体を買ったという当時のゲームファンも多いのではないだろうか。

 「チャレンジャー」は「スーパーマリオブラザーズ」のわずかひと月後に発売されたタイトルながら、多数のタイトルに埋もれることなくファンの印象に残っている。それはひとえに、「裏ワザ」と呼ばれる“プレイヤーが特定の操作を行うことで何らかの現象が発生する隠し要素”が多数存在したからだと筆者は勝手に思っている。

 当時のゲームメディアは雑誌が最盛期。主に読者投稿という形で紹介される裏ワザの記事は読者の大きな注目を集めていて、筆者もそれを毎号楽しみに読んでいた。この「チャレンジャー」にも裏ワザが多数確認されていて、それらがゲーム雑誌の記事を賑わわせていた。筆者が本作を手にした理由は曖昧なのだが、恐らく当時購読していたゲーム雑誌の裏ワザを含む記事を見て魅力を感じたからだと思われる。

「チャレンジャー」の説明書の一文。裏ワザや隠れキャラクターがあることが明示されている

 かつてハドソンに在籍した高橋名人は、自身のブログで本作の裏ワザが14種あったことを述べている。そのほとんどは意図的に仕込まれたものなのは間違いなく、実際説明書にも「裏ワザはあるのか」というFAQ的な解説が添えられていて、この手の要素を作品に盛り込んで、口コミによって発売後のゲームの売上げを伸ばすマーケティングの先駆けとなったタイトルと言えるかもしれない。

名人の公式ブログを参考に表示させた隠しメッセージ。ゲーム中に「ABAABBAAABAABBBBABABABBAABAAABAB」とボタンを押すと表示される。これは開発陣のお遊びらしく、「バイナリィランド」にも入っていることもブログで名人が言及している

 筆者もシーン1の電車の冒頭でクジラ(正式名は「まっとうくじら」)を出して無敵になって楽々とクリアしたり、シーン2で同じ敵を16体倒すと飛んでくるクジラを撃って1upしたりするテクニックは、本作のプレイスタイルとして当たり前のように身体が覚えていた。

シーン1でBGMの一部にある踏切のような「カンカン」という音に合わせてAボタンかBボタンを4回連打するとクジラが出現し、ボーナス1万点+チャレンジャーが無敵になる
同じ敵を16体連続で倒すとクジラが飛んでくるので、これを撃つと1up。出現させるまではナイフを1発も外してはいけない

100画面分の広大なフィールドの移動は、洞窟に入っての制限時間のリセットがカギに。入るとミスになる罠もある!

 高橋名人は本作が元々同社がPCでリリースした「暴走特急SOS」というゲームのリメイク企画だったことも同ブログにて明かしている。同作の主なゲーム画面である列車の内外で展開されるスクロールアクションを本作のシーン1に当てはめ、ストーリーやゲーム展開に基づく3つのシーンを追加して構築している。

 プレイヤーは考古学者でナイフ投げの名人チャレンジャーを操作し、悪の組織ブラッディワッカーのボス、ドン・ワルドラドに連れ去られたロスマリー国の王女マリアを救出するための冒険を体験する。ゲームのステージは「シーン」と呼称され、上記の「暴走特急SOS」をモチーフとした列車の屋根と内部を移動するシーン1、100画面分とされるトップビューのフィールド探索がシーン2、洞窟の奥にある「キーワード」と呼ばれるアイテムを取るのがシーン3、そしてドン・ワルドラドと対峙するクライマックスがシーン4となる。多彩なシーンが展開し、プレイフィールもそれぞれ変わる設計は、当時としてはかなりリッチな仕様であった。

シーン1は、最後尾で車内に入って折り返すのが斬新。先頭のドン・ワルドラドは無敵状態でも倒すことができず、押しやられて強制的に列車を降ろされてしまう

 ゲームのメインはシーン2となるわけだが、“100画面”の広さを売りとしたフィールドは最初からどこへでも自由に行くことができる。実際には厳しめの制限時間の壁があるので、完全な自由ではないのだが、プレイヤーの腕次第で攻略手順に選択肢ができる、オープンワールド的な概念を取り入れたゲームデザインは個人的に高く評価している。

無数の敵が出現するシーン2。左上に表示された制限時間内であればどんどん進んでいけるが、時間経過は意外に早く、迷ったりすると時間切れになってしまう
シーン2のほとんどの敵の動きは“進行方向に進む”と“チャレンジャーを追跡する”の2パターンで、壁やチャレンジャーと接触したときにそれが切り替わる挙動を繰り返す
カラのいる洞窟がチェックポイントの役目も果たし、ここをクリアするとタイムがリセットされる

 制限時間はフィールドの各所にあるシーン3に入るための洞窟をクリアするとリセットされ、そこがミスしたときのリスタート地点となるわけだが、洞窟の門番のスケルトン「カラ」が通常のナイフ攻撃では倒せないのがポイントで、周囲にいる敵を4連続で倒して「パワーアップアイテム」を出してカラを倒すのが定石となる。このパワーアップアイテムは、カラと同様に通常攻撃では倒せない火の玉「タマ」が群れている場所でどのように出現させるかも重要で、場所ごとに異なる敵の出現パターンや敵キャラクター共通の動きの法則などを繰り返しプレイすることで身につけていくのである。

パワージュエルとパワーソードの2つのパワーアップアイテムの出し方がゲーム進行のカギに。出すにはナイフを外さずに敵を4体倒さなければならない
シーン2後半の大きな建物の入口は罠で、入ると強制的にミスに。覚えていればなんてことはないが、残機が少ないときに引っかかるととても悔しい
シーン3の左奥にある「キーワード」。アイテムなのにキーワードという呼称は当時の筆者も気になったところ。3種を集めなければならないが、設置がランダムなので揃わないこともある(!)

 筆者が悩んで心が折れかけたのがラストのシーン4である。ここはシーン1とシーン3を融合したようなジャンプアクションのステージで、ここまで来た腕と忍耐があればどうということはなく、ドン・ワルドラドもナイフ4発であっさりと倒せてしまうわけだが、捕らえられた王女の手前の足場に飛び移ろうとすると、なぜか下に落ちてしまうのである。

ワルドラド島の最深部「プレシオランド」にあるワルドラドのピラミッドにたどり着いた。中に入って一度出ると、ミスしたときにここからリスタートできる

 その攻略手段はなんてことはなく、ジャンプをせずに左へ移動して落ちればいいのだが、当時それに気付くまでかなりの時間を要したことをここに告白する。後の裏ワザとして、シーン4に入ったら一度外に出ることで、ミスをしたときにピラミッド前からリスタートできることを知り、何度かのチャレンジの末、ついにクリアできて晴れ晴れとした気分になったのもつかの間、余韻やエンドロールはなく、すぐに2周目となるラウンド2が始まった思い出……。

ナイフ4発であっさり倒せてしまうシーン4のドン・ワルドラド。シーン1の強さは何だったんだ。そして左の黄色い床は下りるときジャンプをすると乗れずに落ちてしまう。そんなの分からんよ!
王女のところにたどり着くとメッセージが出てラウンド1がクリアに。難易度が1つ上がってラウンド2が始まる……

 この「チャレンジャー」、近年では2013年にニンテンドー3DSの「バーチャルコンソール」でリリースされて以来、復刻の機会がないタイトルでもある。この記事が掲載される40周年のタイミングを機に、「ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online」での配信を望みたいところだが果たして……。