【特別企画】
「ゲームボーイ」生誕35周年! ゲームを持ち歩くプレイスタイルを確立した携帯ゲーム機の金字塔
「ポケモン」も「カービィ」もここから始まった!
2024年4月21日 00:00
- 【ゲームボーイ】
- 1989年4月21日 発売
- 価格:12,500円
任天堂が1989年4月21日に発売した携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」が、本日生誕35周年を迎えた。
持ち歩いて出先でもゲームを遊べる楽しさを同社の「ゲーム&ウオッチ」から継承し、「ファミリーコンピュータ」と同様に専用のカートリッジを交換することで、遊ぶゲームを変えられる機能を持った携帯型ゲーム機だ。
自分だけのパーソナルな画面で好きなゲームを遊べる設計や、ユーザー同士が専用のケーブルを介して通信プレイができるなど、新しいプレイスタイルが提案されたことで新たな市場が開拓され、後継機種も含め全世界で累計1億1869万台(2023年12月末現在)を売り上げた。
本稿では当時からゲームボーイのヘビーユーザーだった筆者が、現在手元にある機器やソフトを使って、当時の思い出や個人的趣味でピックアップしたタイトルを振り返っていこう。
激動の1989年/平成元年に誕生した、持ち歩いてどこでも遊べるゲーム機
ゲームボーイが産声を上げた1989年は、1月に昭和天皇が崩御され、元号が「平成」と改められた年だ。バブル景気と呼ばれた好景気の末期であり、4月には3%の消費税が導入され、世界では天安門事件やベルリンの壁崩壊、東西冷戦の終結といった大きな出来事もあった激動の年であった。
ゲーム業界では、発売から6年が経過して円熟期を迎えていたファミコンに次ぐ新型機、16ビットCPUを採用したスーパーファミコンが前年の1988年に発表されていた(発売は1990年)。またセガのメガドライブや、NECのPCエンジンCD-ROM2なども既に発売済みで、“高性能”や“大容量”といった大きな進化にユーザーの注目が集まっていた頃だ。
そのさなかに発売されたゲームボーイは、当時のトレンドとは明らかに違う“モノクロ画面を備えたカセット交換式の携帯型ゲーム機”という独自の方向性を提示していた。ゲーム機を持ち歩いて、どこでも自由に遊べるという仕様は、任天堂がファミコン以前に発売したゲーム&ウオッチで確立したコンセプトに近いものだ。
ゲーム&ウオッチにあこがれ、LSIゲームをいくつか持っていた筆者は、このコンセプトに大いに刺激され、比較的早い段階でゲームボーイを入手したのだ。初代ゲームボーイは、携帯型といってもポケットに入れるにはかなり大きい、幅90mm×奥行き32mm×高さ148mmというサイズ。電池を含まない重量は約220gで、価格は12,500円(当時の消費税3%込)だった。
ディスプレイには2.45インチ(解像度160×144)のドットマトリクス式モノクロ液晶を採用。高精細で色数も増える傾向にあった最新のゲーム機に対し、モノクロの画面は時代を逆行するものだったが、コストと省電力に優れ、特に後者は携帯型ゲーム機における重要な要素であった。単3アルカリ電池4本で35時間もプレイできるランニングコストは、主要ユーザーの子ども達のお小遣いにも優しかった。
今やノスタルジーを感じられる黄緑色の液晶画面は、お世辞にも美しいとは言えないもので、画面に映るキャラクターが激しく動いたり、背景がスクロールしたりするゲームは残像が目立ち、同時発売タイトルに「スーパーマリオランド」があったことから、その欠点は発売直後から指摘されていた。またバックライトやフロントライトがなく、外光を反射して標示するタイプの液晶なので、薄暗い場所では画面が見づらくなり、布団の中では遊ぶことができなかった。
それでもやはり、前世代のゲーム&ウオッチと比較して、カセット交換によって別のゲームが手元の画面で遊べたのは革新的だ。実はゲームボーイ以前にも同様のコンセプトを持つゲーム機は存在していたが、任天堂や当時のファミコン市場を賑わわせていたメーカーが手がけたタイトルを遊べるのは大きな魅力だった。
そしてゲームボーイ人気に拍車をかけたのが、専用の通信ケーブルを使った対戦プレイである。対応ソフトを挿入した本体2台をケーブルで繋ぐことで、気軽に対戦プレイをすることができる。互いに画面があることにより、同じ画面を見てプレイするファミコンのマルチプレイとはまた違った面白さがあるのだ。同時発売タイトルの「ベースボール」や「役満」も対応していたが、1989年6月発売の「テトリス」が通信対戦人気を一気に押し上げることとなり、誰もがゲームボーイとともにこのソフトと通信ケーブルを持ち歩いた。
ゲームボーイはその後9,800円(1993年)→8,000円(1994年)と価格が改定され、1994年には6色のカラーバリエーション機「ゲームボーイブロス」が発売。1996年にはポケットにも入るサイズまで小型化された「ゲームボーイポケット」が、1998年にはポケットとほぼ同じサイズでバックライトが搭載された「ゲームボーイライト」が発売されている。
小型かつ低価格なこれら2機種は、液晶画面の性能が向上していて、初代よりもグッと画面が見やすくなっている。ゲームボーイポケットが発売された1996年は、初代の発売から7年が経過していたが、同年2月27日に「ポケットモンスター赤・緑」が発売され、それが長期的なブームを巻き起こしたことにより、ハードの価値が再び上昇。この機種を使ってポケモンを交換した経験がある人も多いのでは?
そして1998年10月には、上位機種と呼んで差し支えない、カラー液晶や赤外線通信機能を備えた「ゲームボーイカラー」が発売。ソフトは初代でも使えるタイトルからカラー専用のタイトルへと徐々に移行し、21世紀に入る頃には、次世代機の「ゲームボーイアドバンス」シリーズへと繋がっていく。これらも魅力的なゲーム機だったが、そのお話はまた次の機会に。
筆者が独断で選ぶ、モノクロ時代の個性的なゲームボーイタイトル5選!
ここからはゲームボーイで発売されたちょっと個性的なタイトルについて触れていきたい。筆者は、ゲームボーイの1990年頃までに発売された初期タイトルの多くを実際にプレイした経験がある。1990年夏にゲーム雑誌編集部にアルバイトとして所属した際に、編集アシスタントの仕事として当時刊行が予定されていたゲームボーイのムック本に掲載するカタログ記事のソフト収集と簡単なレビュー執筆を依頼されたのだ。
そのムック本は企画が頓挫してしまい、残念ながら世に出ることははなかったのだが、多くのタイトルを実際に遊んで長所と短所を見つけて執筆するという、ゲームライターとしての大きな経験値を得ることができたのである。
以下はそんな筆者が、個人的な思い入れにより独断で選んだ5タイトルだ。国内で発売された初代ゲームボーイのタイトルは700本以上、ゲームボーイカラー対応&専用タイトルを含めるとその数は1200本以上にも及ぶ。それらの中には現在、Nintendo Switchの「ゲームボーイ Nintendo Switch Online」での配信やリマスタータイトルなどもリリースされているが、ここでは現行のゲーム機ではプレイできないものをあえて選んでみた。使用したソフトは全て手持ちの実機で、ゲーム画面はゲームキューブの「ゲームボーイプレイヤー」を使用して撮影している。
スーパーマリオランド
1989年4月21日 発売
メーカー:任天堂
“「スーパーマリオ」シリーズの新作を外で遊べる”という夢の実現により、筆者にゲームボーイを買おうと思わせた本体同時発売タイトル。プレイフィールこそ「スーパーマリオブラザーズ」に近いものだが、画面に対してマリオがとても小さく、スーパー化してもその大きさにあまり変わりがなかった。反射するボールを投げる「スーパーボールマリオ」の登場やシューティングステージの導入など、ガラパゴス的なゲームデザインが施されていて、前年に大きな進化を遂げて発売された「スーパーマリオブラザーズ3」とのギャップにいささか戸惑ったが、今遊んでみるとこれが実に味わい深い。
そしてこの3年後に発売される続編「スーパーマリオランド2 6つの金貨」で、本作のプレーヤーはゲームボーイタイトルの大きな進化を体感することとなる。同作は「ゲームボーイ Nintendo Switch Online」で配信中なので、画面だけでも比較していただきたい。
クォース
1990年3月16日 発売
メーカー:コナミ
「テトリス」や「ドクターマリオ」など、パズルゲームの傑作が多数発売されたゲームボーイで、筆者が延々と遊んでいたのがこの「クォース」である。画面上から下りてくるブロック群に対し、自機が下からからピースを撃ち出して四角形を作って消すという、パズルとシューティングを融合したようなルールが設定されている。
元々はアーケードゲームでリリースされ、MSXやファミコンなど多くの機種に移植されたが、このゲームボーイ版は自機の種類が多く、BGMが2パターンあるのが特徴。もちろん通信対戦にも対応していて、筆者はその面白さに中古で手に入れた2本目のソフトと通信ケーブルを持ち歩いて、他のゲームボーイユーザーに布教するほどハマっていた。現在はSwitchでアーケード版が「アーケードアーカイブス」で配信されている。
カエルの為に鐘は鳴る
1992年9月14日 発売
メーカー:任天堂
クセ強めな熱血漢の主人公・サブレ王国王子と、ライバルのリチャード王子が、悪の魔王とその軍団に攻め込まれたミルフィーユ王国を救うための物語を描いた、ゲームボーイオリジナルのアドベンチャーゲーム。ゲームは当時流行っていたRPG風の見下ろし型マップと、アクションやパズル要素のあるサイドビューのダンジョンという構成で、主人公の王子が旅の道中でカエルやヘビに変身する力を得て、それぞれの特技を使いこなして進めていくという独自のシステムが施されている。
主人公やリチャード達が織りなす清涼感のあるハートフルコメディと、ゲームボーイ向けに最適化されたシンプルかつテンポのいいゲームシステムは唯一無二であり、発売から32年が経過した現在もファンが少なからず存在する。そろそろリメイク版の発売に期待がかかるところだ。
X(エックス)
1992年5月29日 発売
メーカー:任天堂
ゲームボーイのドットマトリクスの画面にワイヤーフレームの3DCGを描画し、筆者を含むゲームボーイユーザーの度肝を抜いたこの「X」。コクピット視点で展開するアクションシューティングで、プレイヤーは宇宙戦闘タンク「VIXIV(ヴィクシヴ)」を駆り、エイリアンの侵略に立ち向っていく。フィールドはゲームボーイ上に広がる3D空間で、敵や建造物、アイテムなどはワイヤーフレームで描かれている。
後にスーパーファミコンで発売される「スターフォックス」のようにCGを制御する特殊なチップなどは使っておらず、ゲームボーイ本体の機能で3Dを制御していた。3D空間で行動するためのチュートリアルもしっかり作られていて、この手のゲームに初めて触れる人にも優しい作りだ。2010年にはニンテンドーDSiで続編の「X-RETURNS」が配信。ゲームの全体のグラフィック表現とともに、名物キャラクターの顔だけの司令官もワイヤーフレームから3Dポリゴンへと進化している。
ポケットカメラ
1998年2月21日 発売
メーカー:任天堂
価格 ポケットカメラ:5,500円(税別)
ポケットプリンター:5,800円(税別)
携帯電話にまだカメラが付いていなかった1998年、ゲームボーイにカメラ機能を持たせるゲームソフト「ポケットカメラ」が発売された。ゲームボーイのモノクロ画面に合わせて画像もモノクロで、画質も決していいものではなかったが、撮った写真に落書きをしたりスタンプを押したり、あるいは顔写真をゲームのキャラクターとして使ったりと、後の携帯電話の写真機能でできるような要素を備えていた。
驚いたのは、撮影した写真をプリントするための「ポケットプリンタ」が同時発売されたこと。ゲームボーイを通信ケーブルで接続し、専用のシール感熱紙で印刷することで、当時流行っていたプリントシール機風の写真シールを作ることができたのだ。今となってはその荒い画素が味わい深く、この機器を使って写真を楽しむ愛好家が世界中に存在している。
駆け足で振り返った、栄光の初代ゲームボーイ。ユーザー個別の画面を備え、ゲームをそのまま出先に持っていって楽しむ携帯型ゲーム機の方向性は、現行のNintendo Switchにも受け継がれている。
また「ポケットモンスター」や「星のカービィ」、「Sa・Ga」、「聖剣伝説」、「スーパーロボット大戦」など、このゲーム機で生まれ育った傑作シリーズもたくさんあり、その原点を「ゲームボーイ Nintendo Switch Online」やリマスタータイトルを介して遊んでみて、35年の月日を改めて噛みしめてみるのもオツかもしれない。
(C) Nintendo