【特別企画】

【スト6】はじめよう、SFLパブリックビューイング! 広島 TEAM iXA主催パブリックビューイングに参加してみた!!

【ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024 Division F 第7節】

10月25日開催

 カプコンの格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズを用いたプロリーグ「ストリートファイターリーグ」の原型が作られたのが2018年の「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」であり、それから6年となる。使用キャラクターを制限させるBANルール、4人1チーム制の導入、世界最強を決めるワールドチャンピオンシップの開催など常に進化・変化を遂げ、昨年2023年からは最新作「ストリートファイター6」を用いての大会となった。

 昨年からの変化は競技に用いるタイトルの変化だけではない。各地方を代表するチームを応援するパブリックビューイングイベントが多く開催されるようになったのだ。筆者も昨年はひとりの観戦者として応援に参加したのだが、その魅力をまだパブリックビューイングを体験していない人たちへ伝えることが出来ないかと今回の記事を執筆することにした。

 今回取材を行なったのは、10月25日に行なわれた「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024 Division F 第7節」にて、広島 TEAM iXAの開催するパブリックビューイングである。

 会場は広島県広島市中区のショッピングモール・パセーラ6階の施設、スカイパティオにて行なわれた。

筆者が撮影した昼間のスカイパティオ。非常に広く、PCでの作業をしている方や、ご年輩の方が軽食を取りながら談笑していた。また近くには広島城も見られるロケーションだ

 広島 TEAM iXAだけでなく、多くのチームが色々な施設を用いてパブリックビューイングを行なっているが、屋外施設でのパブリックビューイングは珍しいのではないだろうか?

【「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024」Division F 第7節 ☆☆18時40分より初心者必見!SFリーグ: ウォームアップ☆☆】

秋の夜空の中、いよいよSFL2024観戦へ!!

 今回のパブリックビューイングは19時入場可能ということで、筆者もその時間帯に来場したが、すでに会場には20人程度の方が入場を完了していた。広島 TEAM iXAのパブリックビューイング観戦において、基本的には予め準備するものはないので、開催日時に直接会場に赴けば直ぐに観戦出来る。昼間とは違い、暗くなった会場に驚きつつ、会場で昨年参加した時のパブリックビューイングにはなかったものを発見した。それはチームグッズの物販ブースである。iXAのオーナー、板垣氏によると、物販ブースは今年からの試みだそうだ。

物販で見かけたTシャツ。大きめのサイズ(XL)は開場直後にも関わらず、すでに売り切れだった。また、筆者がさらに大きいサイズを着ていることを伝えると、スタッフの方から3XLサイズの販売も検討しますとのこと。今後Tシャツのサイズが追加されたら嬉しい
もう1つ販売されていたのがチームのロゴが入ったマフラータオル。これを首にかけて応援に臨んでいる人が多く見受けられた

 第7節の広島 TEAM iXAの試合順は最終試合であったが、パブリックビューイングでも通常の配信のように、1試合目から視聴することが出来るので安心してほしい。他チームのリアルタイムの動向を観ながら観戦するのもリーグ戦の面白さだと筆者は思う。実際、20時からのYogibo REJECT vs VARRELでは広島から専業プロとして活躍しているあきら選手が駆るキャミィがもけ選手の春麗にODキャノンストライクを密着ガードになるように打ち込んで投げを誘い、そこをデルタレッドアサルトで刈り取った際は同郷の選手の活躍に大きな歓声が上がった。REJECT側の圧倒的エース、LeShar選手が操るEDとVARREL側大将マゴ選手のジュリの対決では、圧倒的な攻めを見せるEDに対して値千金の無敵技での切り返しで勝利をもぎ取った際に「間違ってVARRELの応援に来たのではないのか?」と一瞬勘違いするほどの熱狂に包まれた。間違いなく広島 TEAM iXA以外の試合で広島を最も沸かせたのはこの“2D神”だった。神、広島でも愛されてます。

会場では昼間には無かった椅子が並べられ、年齢・性別問わず幅広い人々が観戦に訪れていた。今回の会場では飲食物の持ち込みが許可されていたため、時間帯的に夕飯を取りながら観戦していた人が多かった

広島 TEAM iXA出陣! かつてない大ピンチにラスボスが“救世主”に!!

 そしていよいよ本日の最終試合であり、この会場にとってはメインイベントの広島 TEAM iXA vs Belc FAV gamingの試合が開始された。

広島 TEAM iXA

 筆者がこの取材を行なう時点で、この試合の裏テーマが1点あった。前述のあきら選手と同じく、かつて広島に在住し、念願のプロへの道を勝ち取り、現在はBelc FAV gamingに所属しているりゅうきち選手がこの試合に参戦するのか? ということだ。

 「SFL」では「ホーム」と「アウェイ」の概念があり、アウェイ側のチームはホーム側のチームより先に選手の出場順を申告しなければならないというルールがある。今回アウェイとなるのは広島 TEAM iXA側であり、りゅうきち選手の投入タイミングは後出しでわかることになる。ここで大将戦で出てきたらこの会場では面白いことになるな、と思っていたのだが、モニターに映し出されたのは先鋒りゅうきち! 事前に申告されていた広島 TEAM iXA側のじゃじぃ選手の豪鬼と対決することになった。

 試合は1試合目をりゅうきち選手が得意のコンボ判断で瞬く間に獲得。続いて広島 TEAM iXA側はインターバルを取り、じゃじぃ選手が2試合目は1-1のフルラウンドへ持ち込む! 試合はバーンアウト中に着実にダメージを積み重ねる戦法が功を奏し、りゅうきち選手が今リーグにて念願の初勝利をもぎ取った。その時の会場は「あぁ~~~!!」と広島に縁がある2人の対戦に悲喜交々、嬉しくもあり、悔しくもある複雑な感情が混じったような声があがっていた。

 次鋒戦は広島 TEAM iXAのACQUA選手のブランカに対し、豪鬼やケンを操るts選手の試合となった。今回の申告では豪鬼をチョイスしていた。

 ここで一旦状況をイーブンに戻したい広島 TEAM iXA。1試合目をts選手が制すも、ACQUA選手も土壇場で踏ん張り勝負は最終戦へ。しかしあと1歩及ばず、ts選手が勝利し、ホーム側の優位を生かし、FAV gamingが20PTを獲得とチーム順位を上昇させる大チャンスを継続させた!!

 広島 TEAM iXAが参戦しているディビジョンFでは、プレイオフに進出できる3位までの順位争いが熾烈であり、僅かなポイントでも取りこぼしたくない状態である。だが、会場の空気は秋の夜とは思えないほど熱かった。その空気を保っていた要因は今年からSFL・広島 TEAM iXAに初出場を果たしたひかる選手の存在だろう。

 前年の「スト6」ではあまり評価の高くない「A.K.I.」を使用して圧倒的な実力を誇った彼は今年のSFLでも大活躍。その様は実況、解説をして“ラスボス”と例えられるほどである。

 対してFAV gaming側はりゅうせい選手を大将に投入。使用キャラはJP。会場で実況していたeスポーツキャスター池田弘輔さん、配信内の実況ふり~ださん、解説のハイタニさんも口を揃えて珍しいキャラのマッチアップとなったと発言していた。

 マッチアップだけで予測不可能な試合はその内容も奇妙なものとなった。1試合目の1ラウンド目からタイムアップ直前でのKO決着、2ラウンド目はSA3で連取という広島 TEAM iXAの反撃に会場は熱狂に包まれた!

 インターバルを取ってからの2試合目の1ラウンド目は1試合目の1ラウンドと同じ長期戦の様相へ。りゅうせい選手はJPの強力なガード崩し手段であるラヴーシュカを用いる前試合の修正を加えた立ち回りで襲いかかるが、なんとひかる選手はこの強力な攻めを全て凌ぎきり見事タイムアップ勝ちをもぎ取る。この驚異的な防御でのラウンド獲得に湧いた会場の歓喜の声が今も耳に残っている。

 再びインターバルからの3試合目、ラヴーシュカをバーンアウトしたA.K.I.に放ったことが功を奏し、ガードを崩すことに成功するJP。りゅうせい選手が1ラウンド目を先取する。が、次のラウンドは絶妙なタイミングでのバックステップで技を空振りさせ、そのスキに反撃をねじ込んだひかる選手が取り返す。最終ラウンドではJPの特徴を生かしにくい近距離戦をキープし続けたひかる選手が勝利し、iXAは首の皮一枚残した状態となる。

 「SFL」では基本先鋒戦・中堅戦・大将戦の3試合で決着する。しかし、この3試合で獲得したポイントが双方同じだった場合、延長戦を行なうこととなる。延長戦は2ラウンド先取の1試合だけ行なわれる。短期決着のシビアなルールだ。

 この勝負に投入されたのはiXA側は大将を務めたひかる選手が連戦。FAV gaming側はりゅうきち選手、しかもキャラクターをケンからキャミィに変えての起用。広島拠点チーム所属 vs 広島出身者というこの地と縁のある2人での決着戦となった。

 キャミィの得意な接近戦の距離をキープし、1ラウンド目はりゅうきち選手が制す。しかし“ラスボス討伐”は最後まで気を抜いてはいけない。ひかる選手は巧みな間合い調整とバーンアウト中のみ発生するガードの上からの体力削りを活かしイーブンへ。最終ラウンドは画面端の背負わせ合いというスピーディな展開から中央へ戻ってのジリジリとした立ち回りと緩急織り交ぜの戦いから、ゲージ状況、体力量から1手読み勝てば勝利できるキャミィと、2手は必要なA.K.I.の構図へ。A.K.I.がそこからジワジワと体力を奪い、タイムアップまで後9カウントといったところでA.K.I.がしゃがみ中キックから超必殺技「SA3」へ繋ぎ大逆転勝利! 薄氷の上を歩くような読み合いを制しきったのはラスボスだった!!

パブリックビューイングは配信後もお楽しみが! パブリックビューイングへ行くメリットは?

 通常のSFL視聴であれば、この後は配信ページを閉じて視聴終了、という流れになると思うが、パブリックビューイングはそうではない。何と選手とコミュニケーションをとる機会が設けられている場合があるのだ! 昨年この仕組みをパブリックビューイングで観たときは驚いたが、今年もiXAは同じファンサービスを行なっていた。

激闘を制したiXAのメンバー及び、応援していた会場が繋がれている様子。iXAの選手たちは広島の夜空を背景に応援していた我々の様子に驚いていたようだった

 ここで選ばれた3名の観客の方からの質問にiXAの選手たちが答える、という場が設けられた。

 1つめは大将戦で鉄壁の守りを行なったひかる選手へ「なぜそのような判断が出来たのか」という質問だった。ひかる選手はかなり綿密な情報群からそう判断していたようで、それを麻雀の守りを表す用語「ベタオリ」と例えていたのが驚きだった。

 2つ目は面白い内容だったので後述する。前後するが、3つめの質問は女性参加者からの、ひかる氏が配信者のコミュニティに参加して得たものは何か? という質問にそのコミュニティで良かった出来事を説明していた。

 まとめに入る。自宅でも観られるSFLの試合を敢えてパブリックビューイングで視聴するメリットは何か?筆者は2点が挙げられると考える。

1.同じ空間で他者と感情を分かち合える場が提供される
2.チームのファンとしての空気が味わえ、この場にしかないファンサービスが受けられる

 1の具体例を挙げると自宅では時間帯等の環境で出来ない場合も多い声援を送れることだ。スポーツでもそうだが、サポーターの声が会場を盛り上げる。その独自の心地よさは他では味わえない。また、本当に様々な人がこのゲームを愛していることが感じられた。

 特に面白かったのは本日パセーラでパブリックビューイングが行なわれることを知らなかった人も急遽立ち寄っていたことだ。その方によると、広島の街を歩いていると近くからキャミィの声が聞こえたから見渡してみるとパブリックビューイングの開催の情報を知り、すぐに駆けつけたらしい。会場の近くには広島城や原爆ドーム、Jリーグチーム・サンフレッチェ広島の新スタジアムもある。そこからキャミィの声が聞こえたというのは中々のパワーワードだ。

パセーラ内にあったパブリックビューイングの宣伝広告。高層建てのパセーラの様々な階に設置されていた

 2に関しては、前述の選手とのZOOM会議やグッズ販売が挙げられるだろう。筆者が確認した所、広島 TEAM iXAの公式オンラインストアにはないアイテムが存在していた。これらは会場に足を運んだ人への特権だろう。

 前述のファンからのインタビューについてだが、ここでは選手たちがリーグ戦前にどのような食事を摂っているのか? という質問だった。質問の答えを箇条書すると……

ひかる選手:うなぎ。だがうなぎがシーズンオフになったので同じ店の親子丼やうどんにした。また試合開始の2時間前に食べるようにしている。
あくあ選手:軽めにおにぎりや麺類を食べるが、満腹にしないようにしている。
ひびき選手:エナドリを飲んでいる。応援のために今日も飲用したとのこと。
じゃじぃ選手:普段は糖質制限しているが、試合の時は糖質解禁し、バナナやご飯を取る。その方がコンディションが良くなるとのこと。

と、各選手ごとに特徴的な返答があった。これは本配信ではない、選手の意外な一面を知れる貴重な機会だと思う。

 広島 TEAM iXAが主催するパブリックビューイングへの参加についてだが、何かしらの準備をする必要はない。しかし、会場によっては会場ごとのルールが存在するので、事前にチームの公式Xアカウントにて情報を収集すると良いだろう。また当日に会場スタッフから指示がある場合もあるので、それに従って頂きたい。

 広島 TEAM iXA主催のパブリックビューイングについて、今後の「SFL2024」の開催予定の情報を提供していただいたので、こちらに表記しておく。開催日の2日前辺りには公式Xにて確定情報が出る場合がほとんどとのことなので、そちらも合わせて最終確認を行なってほしい。また、今回は参加無料だったが、会場によってはお店でのワンオーダー制など別途参加料がかかる場合があるため注意してほしい。

・11月1日(第8節)開催なし
・11月15日(第9節)広島工業大学 五日市キャンパス
・11月22日(第10節)広島空港 1F到着ロビー

 以上がSFL2024のパブリックビューイングの取材レポートとなる。筆者のような格闘ゲームとゲームセンターで育ったようなゲーマーが、同じ空間で共通の趣味を持つ人たちと出会う機会は年々貴重なものになっている。それが気軽にかつ、入場料もなく参加できるこのパブリックビューイングは大変素晴らしい思い出となり、これは家でSFLを視聴していては決して得られないものだ。

 改めて今回の企画に賛同してくださった広島 TEAM iXA運営の方々には心からお礼申し上げる。