【特別企画】

アトラスの名作「真・女神転生デビルサマナー」が誕生28周年! 「真・女神転生」がドラマチックに進化した

【真・女神転生デビルサマナー】

1995年12月25日 発売

 ダークな作風を売りにしているアトラスの看板RPG「真・女神転生(以下、メガテン)」はスーパーファミコンで誕生し、「真・女神転生II」、「真・女神転生if...」と、計3作品がリリースされた。

 その後、次世代機にハードを移し、1995年12月25日にセガサターンで発売されたのが、「メガテン」からの派生作品である「真・女神転生 デビルサマナー(以下、デビルサマナー)」だ。

 「デビルサマナー」は、その後「デビルサマナー ソウルハッカーズ」、「デビルサマナー 葛葉ライドウ」シリーズ、そして2022年には「ソウルハッカーズ」の続編である「ソウルハッカーズ2」がリリースされ、今なお生き続けているシリーズだ。

 誕生から本日でなんと28周年。その節目を記念して、本稿では今なお名作との呼び声が高い「デビルサマナー」を振り返っていこう。

筆者の私物のソフト。今回、初めのうちはオリジナルであるセガサターン版をプレイしていたが難易度の高さに折れ、PSP版を引っ張り出してきた

ストーリーとキャラクターの魅力が増した、新生「女神転生」!

 はじめに、本作のタイトルに「真・女神転生(メガテン)」と入っているが直接的なストーリーの繋がりはなく、本作単体で楽しめる作品となっている。

 しかし、過去の「メガテン」をプレイしているとニヤリとできる要素もあり、初代「メガテン」は駐日アメリカ大使のトールマンが発射したICBMによって東京が壊滅し、悪魔の巣窟と化した世界を生き抜くというストーリーだが、「デビルサマナー」は「メガテン」と同じ世界でありながらICBMが発射されなかったパラレルワールドとなっている。「メガテン」シリーズでは珍しく崩壊した世界が舞台ではないのだ。

「真・女神転生」ではICBMが投下されたことで東京が地獄と化す。画面はメガドライブ ミニ2版
「デビルサマナー」は世紀末な空気感が一切ない、一見平和な世界だ

 本作では架空の都市である平崎市が舞台。詳しい話は後述するが、私立探偵のデビルサマナー(悪魔召喚士)である主人公が、日常で起こる様々な悪魔絡みの怪事件を追っていくというのが大まかなストーリーだ。

 登場キャラクターもかなり個性的。ハードボイルドな探偵という設定の主人公、そして主人公を取り巻く、胡散臭くも頼りになる仲間たちは非常に良い味を出している。ストーリーとキャラクター、その両方が「メガテン」と比べてとっつきやすい作風になっているのも特徴である。

悪魔絡みの仕事の仲介者である如月マリー。ギャラの大半をピンハネしている強欲な老婆
悪魔が起こす事件を解決していくのが、ゲームの目的である
主人公のパートナーのレイ・レイホウ。ヒロインポジションながら少々口が悪いのも個性が際立っている

 マイルドな作風にはなっているものの、アトラス作品のダークな持ち味は健在。ゲーム冒頭で、異界へと迷い込んでしまう一般人の主人公は、探偵業を営むデビルサマナーの「葛葉キョウジ」と出会う。

彼女の秦野久美子の頼まれ事をきっかけに物語が動き出す

 葛葉キョウジが異界化の元凶となる悪魔を圧倒的な力で倒す様は、物語のメインキャラクターとして様々な活躍を見せてくれるかのように思われた。厳密にはとある形で見せ場はあるものの、キョウジがサマナーとして戦うシーンは冒頭のみで、その後最大の敵であるダークサマナーの「シド・デイビス」の手によってあっけなく殺されてしまう。

 シドとのやり取りや戦闘描写などは一切なく、喫茶店のテレビで流れているニュースでキョウジの死亡が報道されているだけという淡泊さもアトラス節が効いている。

まさにプロフェッショナルといった働きで、すぐさま事件を解決するキョウジ
キョウジと別れた直後、ニュースで死亡の知らせを目の当たりにする

 かなりキャラが立っていたにもかかわらずゲーム開始10分程度で退場してしまうキョウジに当時プレイしていたときは衝撃を受けた。

 しかし、衝撃はその1度だけではなく、キョウジの死をニュースで見た直後にまさかの主人公もシドに殺されてしまうのだ。衝撃がノンストップで押し寄せてくる、まさに怒涛の展開である。

シドは、主人公が彼女のために図書館で借りた1冊の本が目的であった
出口のないビルで脱出ゲームをさせられた挙句、命を奪われてしまう主人公

 三途の川へ送られてしまうのだが、川の渡し守であるカロンは主人公を死せる定めではないと元の身体に戻そうとするも、どういう理由か戻すことができない。戻せもしないし、川を渡らせる訳にもいかないということで、別の身体に主人公の魂を移すという力業で現世に蘇る。

 主人公の魂が入った先はなんと、同じくシドに殺されたキョウジの身体であった。表向きは葛葉キョウジとなって、主人公はデビルサマナーとして悪魔絡みの事件に挑むこととなる。

 別の人間の身体になってしまった主人公の行く末や、自分の身体を取り戻そうとするキョウジの魂、そして2人を殺したシドの目的とは――といった、見応えしかないストーリーが待っている。本稿を執筆するために筆者も久しぶりにプレイしたが、やはり一度始めたら簡単には止められず執筆そっちのけになりそうになり、かなり危険だった。それほどの名作ということだ。

三途の川を渡れず、キョウジの身体に主人公の魂が入れられた。ここから一般人であった主人公が悪魔との戦いに身を投じる
ちなみに、魂が変わったことで見た目の雰囲気もガラリと変わっているのだが、仲間はその変化に割と気づかないでいる

悪魔的中毒性の高さにファンを魅了! 悪魔合体&会話システムが圧倒的進化

 「メガテン」シリーズがスーパーファミコンからセガサターンに移り変わったことで当時一番驚かされたのは、やはりなんといっても圧倒的に進化したグラフィックスだ。

 まずOPムービーの一部には実写が取り込まれており、スーパーファミコンではできなかった表現にテンションが上がったのを今でも覚えている。悪魔の3Dモデリングも今見ると少々チープに感じるものの、不気味で禍々しい雰囲気はしっかり出ている。

探偵事務所。机に置かれている酒のグラスも大人な雰囲気を出している
キョウジらしき人物が実写で登場
悪魔を召喚して、闇夜に飛んでいくシーンは今見てもカッコいい

 そして一番の注目ポイントは戦闘パートのグラフィックス。これまでのドット絵で描かれていた悪魔たちも味があって素晴らしかったが、本作からはドット絵ではなく悪魔絵師こと金子一馬氏のイラストを取り込んでいる。あの魅力的なイラストがそのままゲームに登場するのはファンにとってはたまらないポイントだ。

金子一馬氏の描く悪魔がそのままゲームで使用されており、当時はかなり興奮した

 他にも細かな部分では、キャラクターとの会話シーンでアップショットのイラストが差し込まれるようになり、これまでの立ち絵だけだった頃と比べてキャラクターが持つ雰囲気がダイレクトに伝わってくるようになった。キャラクターへの感情移入度も爆上がりである。

キャラクターのアップが表示されることでイベントシーンにも深みが増した

 ゲーム部分にも触れていこう。本作は基本的にはこれまでの「メガテン」を踏襲したゲームシステムで、主人公とパートナーキャラクターであるレイ・レイホゥ、そして仲魔にした悪魔でパーティを編成して戦うというお馴染みの形式となっている。

 そんな中、「デビルサマナー」ならではといえるのが「悪魔会話」システムである。うまく会話を弾ませれば悪魔がアイテムをくれたり、主人公の仲魔になってくれる。「メガテン」でも悪魔との交渉は可能だが、基本的には悪魔の問いにYesかNoで答えるのみという簡素なものであった。

 しかし本作の悪魔との会話は選択肢や会話のパターンが豊富で、悪魔とのリアルな(?)コミュニケーションが楽しめる。驚きなのは悪魔との会話はその場限りのものではなく、“次会ったら仕返しする”や“次会ったら仲魔になる”などの約束をしてくるパターンもあり、とにかく細かく奥深い作りになっているのだ。

 続編の「デビルサマナー ソウルハッカーズ」では悪魔会話がさらにパワーアップしているが、それを除くと「デビルサマナー」ほど練られた会話システムのアトラス作品は現在でもなく、作り込みの凄さを改めて痛感させられる。

お気に入りの仲魔でパーティを組んで戦う。これこそ「メガテン」シリーズ醍醐味
多彩なパターンが用意されており、飽きることなく悪魔との会話が楽しめる
怒らせると急に襲ってきたり、逆に会話を上手く進めれば仲魔にすることもできる

 仲魔にした悪魔2体、または3体を合体させて新たな悪魔を生み出すシリーズ伝統の「悪魔合体」システムももちろん健在。「メガテン」ファンのほとんどがこのシステムに魅了されたといっても過言ではないほど、ゲームの肝となる部分である。

 悪魔の種類は250体以上存在し、お気に入りの悪魔を作るため合体に合体を重ねる作業だけでも終わりが見えないのに、それに加えて本作には剣と悪魔を掛け合わせて装備を作る「剣合体」や、仲魔を養分にして最強の悪魔を作れる「造魔」など、無限大のやり込み要素が用意されているのだ。

新しい悪魔を作るだけではなく、武器や造魔など様々な合体のバリエーションが用意されている

 間違いなく名作であるものの、本作を誰にでも気軽にオススメできないポイントが1点だけある。それは本作の難易度が“正気じゃないほど難しい”のだ。元々アトラスのRPGは難しいで有名だったが、90年代中期の頃の作品である「デビルサマナー」や「女神異聞録ペルソナ」などは難しさがピークに達していた。

 まずダンジョンの構造や仕掛けがとてもいやらしい。一人称視点の3Dダンジョンという性質上、周囲から得られる情報量が少なくかなり迷いやすい作りになっている。

 ただでさえマップが広大で迷いやすいことに加えて、音もなく急に向いている方向が反転しているトラップや、間違えて入るとダンジョンの入り口まで戻されるワープなど、作ったやつらは悪魔か!? と言いたくなる仕掛けが待ち構えている。

 最大1個しか持てない消費アイテムのバックアッパーを使わなければ、どれだけ進んでも基本的にはダンジョン内でセーブすることはできない。ボス直前でセーブアイテムを使えれば安心なのだが、この先にボスが待っているなんて親切な警告も有るわけもなく、セーブおろか最悪の場合、体力がボロボロのままボス戦に突入してしまうという地獄のような状況に陥るなんてこともしばしば。

とにかく迷子になりやすい3Dダンジョン。これが本作の難易度を大きく上げている

 これまでの「メガテン」同様、仲魔やパートナーキャラが生存していても主人公がやられた時点でゲームオーバーとなってしまうシビアなゲームバランスなのだが、エンカウントするザコ悪魔が繰り出す一撃死魔法の「ムド」で主人公をやたらと狙ってきて、しかもこれが結構な確率で直撃するものだから油断ならない。

 少年だった頃、筆者は平日の早朝に起きて学校に行く前によくプレイしていたのだが、好きなときにセーブが出来ないのでどうしても区切りが付かないときはテレビの電源だけ切って、セガサターンの電源を入れっぱなしで学校に行くという荒技を強行したこともあった。

 親にバレていないかドキドキのワクワクで帰宅して無事プレイを再開できたが、その後ものの5分でムドを食らってゲームオーバー画面を見させられた日には、さすがに「デビルサマナー」から数日間距離をとったのを今でも覚えている。

油断をしていると、今度は本当に三途の川を渡る事に

 セガサターン版の「デビルサマナー」は鬼のような高難易度だが、今回画面撮影にも使用したPSPのリメイク版では難易度の緩和やセーブがどこでもできるようになっていて非常に遊びやすいゲームになっている。PSPやPS VitaがあればPS Storeからダウンロードできるので未プレイの人にはこちらをぜひ遊んでもらいたい。