【特別企画】

暗殺を通して落ちこぼれクラスが前向きに成長する「暗殺教室」は11周年

殺せんせーに出会えたらもっと学校は楽しいと感じさせてくれる学園モノ

【「暗殺教室」コミックス1巻】

2012年11月2日 発売

 2012年より週刊少年ジャンプで連載されていたSF学園漫画「暗殺教室」。コミックス第1巻が2012年11月2日に発売され、本日で11周年を迎える。

 「暗殺教室」は漫画家の松井優征氏によって2012年から2016年まで週刊少年ジャンプで連載されており、中学3年生の生徒たちが担任の先生を卒業するまでに暗殺することを目標に物語が進んでいく。本作はアニメとして第2期まで放映されたほか、劇場版アニメや実写映画化もされている。

【【公式】暗殺教室ロングPV】

 本作の舞台は進学校「椚ヶ丘中学校」の落ちこぼれクラス3年E組となっており、そこに月を破壊した謎の超生物(殺せんせー)が担任の先生としてやってくるところから物語が始まる。進学校で落ちこぼれてしまった生徒が殺せんせーを暗殺するために様々な出来事を乗り越えながら成長していく物語となっている。

 本作の魅力は担任の殺せんせーによる教育と、3年E組のメンバーたちの成長を体感できるところだ。本作では主人公とは別に話ごとにメインとなる生徒がおり、そのストーリーによってしっかりフォーカスが当たる。そのため、本作の語り手である潮田渚以外のキャラクターたちも個性や性格が確立されており、どの生徒がどういった壁にぶつかって成長していくのかをきちんと楽しむことができるようになっている。

 「暗殺教室」という名前の通り、暗殺を目的とした物語だが、ストーリーはシリアスありギャグあり青春ありとかなりバラエティに富んでいる。読んでいてテンポ感もよくサクサクと読めるのも特徴だ。

落ちこぼれクラスが超生物を暗殺するために成長していく物語

 本作は進学校「椚ヶ丘中学校」の3年E組が舞台となっている。この3年E組は成績や素行が不良な生徒たちが、山の上にある辺鄙な校舎に追いやられて、他のクラスから蔑まれている。そんなクラスに月の大半を蒸発させ、「来年の3月までに自分を殺さないと地球を破壊する」と宣言した超生物が担任の先生としてやってくる。謎の超生物が自身で希望してやってきたが、その真意は謎のまま物語は始まる。

 謎の要望に政府は戸惑うも、そのまま3年E組の担任の先生となった謎の超生物を暗殺よう3年E組の生徒たちに「報酬:100億円」で“謎の生物の暗殺”を依頼する。

 生徒たちは超生物を「殺せんせー」と名付け、卒業までに超生物を暗殺するために様々な手段を試みるが、マッハ20で動けるほどの素早さと予測不能な行動でことごとく失敗していく。生徒たちは暗殺に失敗するたびに殺せんせーから手入れをされてしまう。暗殺をしながら殺せんせーの授業や指導、手入れを受けていくうちに生徒たちは3年E組にいることを楽しみ、前向きに学園生活を送りだす。そしてそこに様々な暗殺者や学校の理事長からの試練が押し寄せてくるというものだ。

 今回は3年E組のメンバーを全員紹介したいところだが、28人全員は紹介できないので、数人の生徒と3年E組に関わる人物たちを紹介していきたい。

殺せんせー

殺せんせー

 椚ヶ丘中学校3年E組の担任の先生で本作の主人公。月の7割ほどを蒸発させてしまった謎の超生物。地球を翌年3月に爆破する予告をしており、それまでの1年間、この中学校の教師になることを申し出る。生徒たちに自身を暗殺するための術を教えながら、授業も行なう。非常に面倒見が良く、生徒1人1人にしっかり目を向けており、教師としてはとても優秀な存在。移動は最高速度マッハ20で移動でき、複数の触手を体に携えているため、普通の攻撃を当てるのは不可能となっている。名前の由来は“殺せない先生”という意味で茅野が名付けた。

潮田渚(しおたなぎさ)

潮田渚

 椚ヶ丘中学校3年E組のメンバーの1人で、本作の語り手。本作は基本的に彼の視点で描かれる。ぱっと見は女の子にも見えるほど可愛らしい容姿をしている。成績不良でE組になった。観察力が高く、殺せんせ-の特徴や性格、弱点などをメモしている。朗らかそうに見えるが、自身をぞんざいに扱ってしてしまう傾向がある。

赤羽業(あかばねかるま)

赤羽業

 同じく椚ヶ丘中学校3年E組のメンバーの1人。素行不良のためE組となった少年。非常に頭が良くいたずら好きな性格の持ち主で、喧嘩も強く敵意を持った人間に対して非常に好戦的な態度をとる。戦略を考えるのが得意でクラス全体がピンチに陥った時にその本領が発揮されることが多い。

茅野カエデ(かやのかえで)

茅野カエデ

 椚ヶ丘中学校3年E組のメンバーの1人。殺せんせーという名前を付けた本人。3年生になったタイミングで転校してきており、そのままE組所属となっている少女。渚の隣の席で、渚とも仲が良い。特出したものがないように見えるが、本作の重要なポジションをになっている少女でもある。

烏間惟臣(からすまただおみ)

烏間惟臣

 防衛省臨時特務部所属の自衛官。殺せんせーを椚ヶ丘中学校3年E組に連れてきた本人。その後、殺せんせーの監視とE組の暗殺用の体育教師としてE組に残る。戦闘のプロで、E組に暗殺と戦闘用の技術を教え込むとともに、生徒たちのサポートも行なっている。

イリーナ・イェラビッチ

イリーナ・イェラビッチ

 殺せんせ-を暗殺するために派遣されてきた暗殺者の1人。外から暗殺するのではなく、学校の内部に入り込みE組の英語担当の教師としてやってきた。最初は生徒を暗殺するための駒としてしか見ていなかったため、クラスのメンバーから総スカンを受けたが、烏間の手助けもありクラスの一員となる。特技は色仕掛けによるハニートラップ。

浅野學峯(あさのがくほう)

浅野學峯

 椚ヶ丘中学校がある椚ヶ丘学園の理事長。非常に合理的な性格をしており、生徒たちの成績向上のためにE組を創設した人物。E組の生徒たちが学業面で頑張っているところを自身の信念によってE組を差別的存在にするため、様々な手を使って阻止や妨害をしてくる。殺せんせーを暗殺するためにやってくる暗殺者以外にE組のメンバーを追い詰めてくる人物となっている。

こんな先生がいたらいいなと思わせてくれる「殺せんせー」

 本作の魅力は超生物「殺せんせー」による様々な教えと3年E組のメンバーの成長だ。1年間という限られた時間の中で、暗殺を通して生徒たちが学業だけでなく精神的にも大人になっていく姿は見ていて楽しい。どういった形で成長していくかは生徒によって違うが、様々なイベントや事件、出会いによって多方面に成長していく。

 また、作中では生徒たちから見た様々な大人の姿が描かれている。生徒たちは出会った大人たちをどういった視点で見ていて、大人に対してどう感じているのかがきちんと描かれている。子どものように見えて大人へと成長している中学3年生という多感な年ごろのキャラクターたちが、出会った大人から良いところも悪いところもちゃんと学んでいるのが妙にリアルに感じられる。どんな状況でも意外と見ているし、時には軽蔑もする。成長している時期だからこその大人たちに対する感情や評価は、読んでいて時に耳が痛いし、確かにそういう風に感じていたなと懐かしく思いながら読んでいた。本作は子どもの頃に読むのと、大人になって読むのでは多少印象が異なるのがまたおもしろい作品だと感じている。

 本作では殺せんせーが生徒1人1人に対して親身であり、どんな生徒であっても誠心誠意向き合っている。進学校でなくてもここまでしっかり向き合ってくれると、生徒たちがうらやましくなるほどだ。殺せんせーは見た目こそ異形の姿ではあるが、本作に登場するキャラクターの中でも群を抜いて人間臭い。面倒見がよく、人に対し非常に真摯に向き合うが、自分のことになるとズボラで欲望に忠実、そして下世話。良くも悪くもとても人間臭いと感じられるキャラクターだ。それ故にどこか憎めない愛されキャラクターとして物語の中でも扱われており、普通に見たら幻滅しそうなシチュエーションであっても、生徒たちからは受け入れられている印象だ。学生時代にこういう先生がいると学校が楽しそうでちょっと3年E組がうらやましく思える。

 もちろん本作のタイトルの通り最終的には殺せんせーと悲しい別れをしなくてはいけない。そんな中での生徒たちの葛藤もまた本作の見どころだと感じている。殺せんせーと交流してきたからこその暗殺に対する考えを見ていると人としての成長を感じる。それによって生徒同士の意見がぶつかることもあり、その展開も読んでいて胸がいっぱいになる。最終的に生徒たちがどういった結論を出すのか何度読み返してもドキドキするから不思議だ。

 本作は中学3年生の1年という短い期間が描かれており、その限られた期間の中で、生徒たちが殺せんせーと交流しながらどう変わっていくのかというところが最大の見どころだ。笑いありシリアスあり学生らしい生活を感じられる作品となっているので、是非手に取って読んでみてほしい。11周年おめでとうございます。

こちらはコミックス2巻。各巻の表紙には様々な色の殺せんせーがデザインされている。全21巻が発売中