【特別企画】

「Alan Wake 2」ファーストインプレッション

捜査官の推理や作家の創作をシステムで表現、深淵の恐怖に立ち向かえ!

【Alan Wake 2】

開発元:Remedy Entertainment

発売元:Epic Games

ジャンル:アクションアドベンチャー

プラットフォーム:PS5/Xbox Series X|S/PC

発売日:10月27日

価格:
通常版 6,600円円
デラックスエディション 8,800円

 「Alan Wake 2」は探索要素が強いアクションアドベンチャーだ。プレーヤーはFBI捜査官サーガ・アンダーソンと、作家アラン・ウェイクとなり、"闇の世界"に立ち向かっていく。本作は夢やオカルト要素を含むかなり不条理なホラーサスペンスであり、独特の雰囲気がある。この雰囲気を気に入った人に本作は非常にハマる。……筆者もその1人である。

 本作は2010年に発売された「Alan Wake」の直接の続編となる。「Alan Wake」は、作家アラン・ウェイクがスランプに陥り、アメリカ北西部の片田舎の街ブライトフォールズに静養するために訪れた。しかしこの地には「闇の力」が眠っており、アランはこの力に囚われてしまう。「Alan Wake」では夢か現実か、それとも彼の作品世界なのか、境界線のわからない不気味な世界での物語が展開する。

本作の主人公は小説家アラン・ウェイクに加え、FBI捜査官サーガ・アンダーソンとなる

 「Alan Wake 2」はその13年後、FBI捜査官のサーガが殺人事件の調査にブライトフォールズを訪れるところから物語が始まる。ブライトフォールズ周辺では行方不明者が多く出ていたが、むごたらしい死体で発見される事件が起きていた。サラは調査を進めているうちに、この地に巣くう超自然的な存在と対峙していくこととなる。そして湖から現れたアラン・ウェイクと出会うのだ……。

 前作「Alan Wake」は非常に大きな謎を残したまま物語が終わり、アランは闇の中脱出を目指したまま行方不明となってしまう。筆者を含む前作のファンは続編を希望していた。その願いがついに叶ったのだ。独特の味わいと恐ろしさを持った演出はパワーアップし、プレイをしている中で自分も闇の力に侵食されていくような恐怖を体験できる。

 今回、Epic GamesとRemedy Entertainmentから先行コードを提供してもらい「Alan Wake 2」を発売前にプレイすることができた。かなり独特なゲームシステムと、謎めいたストーリー、のめり込む雰囲気を持った作品だ。本作の魅力を紹介していきたい。

【Alan Wake 2 — Launch Trailer】

探偵の推理の道筋をビジュアル化した「精神世界」に注目

 物語はFBI捜査官のサーガ・アンダーソンが地元の保安官からの要請を受け、同僚のアレックス・ケイシーと共にブライトフォールズに訪れる。被害者は湖であるコールドロンレイクの古いコンビニの近くにあるテーブルに両手足を縛られた上に、心臓をえぐり出されるというむごたらしい殺され方をしていた。

 被害者の身元も明らかになる。被害者の名前はナイチンゲール。FBI捜査官で2010年にアラン・ウェイクの調査をしていたが行方不明になった。実はこの儀式めいた殺人は初めてではない。2010年に失踪した男女がここ数年で4人も似たような殺され方をしているのだ。

サーガは儀式めいた殺人事件を調査するためブライトフォールズを訪れる
目撃者は怪しげなカルト集団が犯人だと証言する

 サーガはブライトフォールズの街で目撃者と面会する。目撃者は被害者が湖から裸で出てきて、数人の集団に捕まり殺されたことを語る。彼等は鹿のマスクをしており、自らを「樹木の教団」と名乗っていたという。

 サーガは現場で「原稿」を見つける。古いタイプライターで打たれ、手描きで修正されたそれは小説だった。そこには奇妙な文章を拾ったFBI捜査官のことが書かれていた。ずっと前に書かれたであろう文章が、現在のサーガ達を描写しているのだ。

 サーガは卓越した推理能力を持っている。彼女は自身が「精神世界」と呼ぶ部屋で情報を整理し、並べることで様々な物事から飛躍した推論を導きだすことができる。彼女はそこから樹木の教団がナイチンゲールの死体に何かを仕掛けたことを推理する。そして彼の死体から一枚の原稿を見つけ出すのだ……。

死体から出てきたのは、小説の原稿だった

 「Alan Wake 2」の大きな目玉の1つはこのサーガの推理システムだ。探偵の頭の中ではどんな思考が練られているか? 本作は様々な事柄を整理し、結論を導き出す過程を非常にうまくビジュアルで提示している。

 推理はサーガの「精神世界」で行われる。彼女の精神世界は広いオフィスのような形をとっており、大きなボードに推理を展開していく。実際に得た情報をピン留めし、糸でつなぎ合わせ自分の推論をメモしていく。新たな情報を得ることで思考の枝葉を拡げていき、真実へと向かっていく。事件で得た様々な情報を整理し、並べる様は自分も名探偵になったような感覚を与えてくれる。

 しかし一方で、プレーヤーである筆者にとっては、この推理は本当にサーガだけのものだろうか? と疑問が浮かんでしまう。サーガの結論は時には見えている事柄から飛躍したものもある。それはまるで物語の作者の思考のように、あらかじめ結論があってそこにたどり着くような感じなのだ。実際、サラが思考をまとめているとき、異質な"声"が混じる。その声は本当にサラのものなのか?

 そして、物語はさらに現実から離れオカルト的な要素を帯びていく。その中でサーガとアレックスは湖から出てきた男アラン・ウェイクと出会うのだ……。

【精神世界】
サーガは精神世界で推理を行う。得た情報を並べ上げ、推論を導き出していく。探偵の推理の道筋をビジュアル化したユニークなシステムだ

創作の力で世界を変え、闇からの脱出を目指せ!

 ここからは推理システム以外の「Alan Wake 2」の基本システムを紹介しておこう。本作は3人称視点のアクションアドベンチャーだ。ゲームは探索がメインだが戦闘要素もある。

 「Alan Wake 2」では闇に囚われた人が敵となる。彼らは闇を体に纏っていてただ銃を撃ってもダメージが与えられない。このため懐中電灯を集中的に当て、闇を剥がしてから銃を撃つことでダメージが与えられる。懐中電灯の光を集中させるにはバッテリーが必要で、プレーヤーは弾丸の消費に加え、バッテリー量にも気を使う必要がある。さらに的はテレポートして急に距離を詰めてきたりするのだ。

 本作においては最初の敵がちょっと強い。最初の敵と出会うのはコンビニの店内になる。こちらの動きが制限される上、敵はワープして距離を詰めてきて、何度かあっという間に倒されてしまった。まずは店の外に出て距離をとった上でライトを照射、闇を剥がした上で、敵の胴体を狙って銃弾を撃ち込む。数発撃ち込まないと倒せないので無理をしようとせず距離を離して撃ち込むのがコツだ。ここの戦闘以外でも「Alan Wake 2」の戦闘での操作は独特でバランスは厳しい。ストーリーを重視するプレーヤーは難易度の低い「ストーリー」でプレイするのもオススメだ。

【最初の戦闘】
最初の敵はバランスが結構きつい。敵との距離を意識し、ライトで闇を剥がした上で銃弾を数発撃ち込む。逃げながら撃ち、常に距離をとる戦いが大事

 ゲームを進めていくと主人公はサーガからアランへと変わる。アランは自らの小説世界である「闇の世界」を進むこととなる。闇の世界では敵が多く、戦う場面も多くなるが、戦闘はできるだけ避けるのがオススメだ。闇の世界では実体を持たずライトだけで撃退できる敵も存在する。ライトや弾丸の消費を抑え、ダッシュなども組み合わせて探索していこう。

 「Alan Wake 2」は"セーブポイント"でセーブするシステムだ。ゲームのシナリオが進んだり、アイテムを得た時などでセーブし忘れて倒されるとセーブしたところからのやり直しになる。セーブポイントは細かく設定されているが、結構緊張させられる。ちょっと古風な雰囲気のあるシステムだ。

【アラン】
13年間行方不明だったアラン・ウェイク。彼はその間も創作で闇の力と戦い続けていたのだ
アランは闇の世界をさまよう。闇は彼の小説に合わせニューヨークとなっている
闇の敵はライトだけで撃退できるものも
セーブポイントを拠点に探索を進めていく

 サーガの推理に対し、アランは「執筆部屋」で創作を行うことで世界そのものを変えていく。推理以上に能動的なシステムで、着想を得た場所で、プロットを書き換えることでマップが変化し前に進む道ができる。現実世界が歪んでいくような奇妙なシステムだ。

 この「執筆部屋」は対応する場面まで移動しなければ作動しないところがポイントだ。闇の敵をくぐり抜け、精神世界で対応する場所を参考にマップを探索する。暗闇の世界を手探りで進んでいくような不安感を味わうことができる。

【執筆部屋】
小説を書き上げていくことでマップや展開が変わっていく
プロットによってマップそのものが変化する

 筆者は前作である「Alan Wake」の大ファンであり、今回の「Alan Wake 2」はとても満足している。ブライトフォールズに再び訪れることができ、アランの物語の続きを見ることができるのはまさに13年間願っていた思いが叶えられた喜びがある。

 一方で本作をはじめてプレイする一は最初はクセの強さにびっくりするかもしれない。FPSのようにバリバリ撃ったり、他のサバイバルホラーほどシステムはかっちりしていない。ストーリーもステージ構成もわざと不条理なところを採り入れていて思うように進めないと感じる部分がある。

 また、結構グロテスクなシーンもある。グラフィックスは実写的なのでその表現も結構きつい。正直人を選ぶタイプのゲームだと思う。しかしだからこそ味わい深い。本作は日本語字幕だけでなく吹き替え音声も収録されており、声優の熱演も物語へと没入させてくれる。何より現実が歪み、物語世界に引き釣り込まれる本作のコンセプトは本当に魅力的だ。ぜひ手に取って欲しい。

【スクリーンショット】