【特別企画】

なぜ配信者たちは「スイカゲーム」に夢中なのか? 熱狂的ブームを呼ぶ落ち物パズルの"深すぎる"ゲーム性

【スイカゲーム】

2021年12月9日配信

価格:240円

 2023年9月は「スイカゲーム」の月だった。ゲーム配信者たちがこぞって実況プレイを行い、ゲーマーたちのあいだで大流行を巻き起こすと、マイニンテンドーストアの「ダウンロードソフトランキング」1位にまで上り詰めたのだ。

 同作は、かわいらしい顔が付いたフルーツをモチーフとした落ち物パズルの一種。2021年12月9日からNintendo Switchで配信されていたが、1年半以上の時が経った今になって、突如脚光を浴びている。一見すると子ども向けゲームに見えるものの、年齢を問わず多くのゲーマーが夢中になっており、ブームが過ぎ去る気配は一向にない。

 なぜここまで人気が加速しているかといえば、それはひとえに、同作の完成度と中毒性があまりに高かったためだと言えるだろう。一体、何がそこまで人の心を捉えているのだろうか。

まさに「時間が溶けていく」恐ろしいゲーム性

 「スイカゲーム」のメーカーは、家庭用プロジェクター「popIn Aladdin」を展開するAladdin X。元々はプロジェクター内蔵アプリだったが、ユーザーに好評だったことを受けて、Nintendo Switchでの配信を行ったという。

シンプルイズベストを体現するようなタイトル画面

 そんな同作が大ヒットするきっかけとなったのは、ゲーム配信者の界隈で熱狂的なブームが起きたからだ。OPENREC.tvの人気配信者「布団ちゃん」が人気に火をつけた後、さまざまな配信者が実況配信を行っていき、今やそのビッグウェーブは「にじさんじ」や「ホロライブ」の人気VTuberたちをも飲み込んでいる。

 配信者たちが夢中になっている理由は、いくつも考えられるだろう。ゲームが苦手でも気軽に楽しめるシンプルさ。奥が深く、やり込めばやり込むほどハイスコアを狙えるゲーム性。耳に残るBGMやフルーツたちの豊かな表情もクセになってしまう。

 「スイカゲーム」に触れたことがない人のために説明すると、同作は11種類のフルーツを組み合わせ、高得点を目指していくのが主な遊び方。そこでプレイヤーは「フルーツを落下させること」と「落下地点を決めること」、この2つの操作しか行う必要がない。しかしそれにもかかわらず、一度プレイすると止まらないほどに奥が深いから恐ろしいのだ。

十字キー(もしくは左スティック)とAボタンだけで際限なく楽しめる

 基本的なルールから説明すると、フルーツはサイズがそれぞれ分かれており、同じものを2つ合体させると次の大きさへと進化を果たす。サクランボからイチゴ、ブドウと徐々に大きくなっていき、最終進化はスイカなのだが、途中で箱からフルーツがはみ出すとゲームオーバーとなる。

錚々たるフルーツの顔ぶれ。ちなみにスイカやイチゴは農林水産省の統計では「果実的野菜」として扱われる
進化で一回り大きなフルーツへ

 降ってくるフルーツの種類はランダムなので、上手く積み重ねていかないと、たちまち詰みを迎えることだろう。よくある詰みパターンとしては、底の方に進化しきれなかった小さなフルーツが溜まっていき、その上から大きなフルーツがフタをすることで、リカバリー不可能になってしまう現象がある。

闇雲にフルーツを重ねていった結果、絶望的な状況に…

 さらに鬼門と言えるのが、挙動を予測しにくい物理演算だ。フルーツは進化する際に爆発的なエネルギーを発生させる…のかどうかは知らないが、隣り合っていたフルーツを勢いよく移動させたり、吹き飛ばしたりすることがある。とくに大きなフルーツの上は振動が伝わりやすいようで、気を抜けばすぐに大事故が起きてしまう。

勢いよく箱から飛び出していったパイナップル。苦悶の表情が痛々しい

 人を夢中にさせるゲームは、思い通りにいく部分と、思い通りにいかない部分が絶妙なバランスを保っているものだが、「スイカゲーム」はその典型。次にどのフルーツを"ツモ"できるのかという運や偶然性の要素も絡んでくるため、ファンシーな見た目とは裏腹に、「麻雀」に似た面白さがあるとも言えそうだ。

「配牌」がカキとデコポンだった回。どちらもオレンジ色で縁起がいい

「みんな」で作り上げるムーブメント

 「スイカゲーム」は、ほかにもプレイヤーを虜にする要素を秘めている。それは一言でいえば、競技性の高さだ。

 ゲーム内にはオンラインで記録された「スコアランキング」が用意されており、「本日」「月間」「総合」の上位スコアとランカーが表示される。そして「マイスコア」として自分のスコアも事細かに記録されているため、己との戦いに集中することも可能だ。

スコアランキングを見れば自分の成長を実感できる

 またゲームのなかで段階的な目標を見出せることも、競争心をかきたてる要因になっているのではないだろうか。あくまでプレイヤーが勝手に想像するハードルだが、最初は「メロンを完成させること」、次に「最終進化のスイカに到達すること」が疑似的な目標となり、その先には果てなきハイスコアへの挑戦が待ち受けている。

まずはメロンを作ることを目指そう
やっとスイカが完成。しかしゴールではなくスタートにすぎない

 ハイスコアの基準としては、配信者とその視聴者たちのあいだで、「3000点」が1つの目安となっており、多くのプレイヤーがこの点数を超えることを目指しているようだ。これはスイカを1つ作るだけでは届かない点数だが、かといって初心者が到達不可能なほど難しいわけではなく、絶妙な難易度と言えるだろう。

 攻略法の研究も日進月歩で進んでおり、「布団ちゃん」が提唱した「アップルシフト」のように、特殊な用語が出回ることも。ソロプレイのゲームでありながら、みんなで遊んでいるような感覚を味わえることが、大きな醍醐味となっている。ちなみに「アップルシフト」とは、フルーツの進化時に位置が微妙に変わることを利用し、任意の方向へと誘導するテクニックだ。

多彩なセオリーがあるが、そのなかでも小さいフルーツから大きいフルーツへと段差ができるように並べていく手法が好まれがち。「階段」理論などと呼ばれることも

 配信者のなかには、さっそく「スイカゲーム」の才能を開花させている人もいるので、上達を目指すうえで参考になるかもしれない。たとえばANYCOLORが運営するVTuberグループ「にじさんじ」に所属する不破湊さんは、9月26日に行った配信で、スイカを2個作るというチャレンジを実施していた。

 当初の目標は惜しくも達成できなかったものの、"3000の壁"を大幅に超えた「3648」というスコアを叩き出すことに成功。これは配信が行われた時点で、当日付けの「スコアランキング」10位にランクインしたほどの好記録だ。

【【スイカゲーム】スイカ2個チャレンジ爆誕【不破湊/にじさんじ 】】

 また、『ストリートファイター』シリーズで有名なプロゲーマー・マゴさんは、9月18日の配信で圧巻のゲームセンスを発揮。わずか3回目のチャレンジにして、「3063」という記録をマークしていた。

【【スイカゲーム】初プレイであっさりと高得点を記録し日本代表の才能を見せつけるプロゲーマー【マゴ】】

 やって楽しい、見て楽しい「スイカゲーム」の底知れない魅力。240円(税込)と安価で購入できるので、ぜひともその中毒性を味わってみてほしい。