【特別企画】
本日βテスト開始! 元DICEメンバーによるカオスFPS「THE FINALS」体験レポート
マップのあらゆる建物を壊すことができる新感覚FPSのプレイフィールはいかに
2023年3月7日 03:00
- 【THE FINALS:グローバルβテスト】
- 3月7日 開始予定
「THE FINALS」は、スウェーデンのゲーム製作会社Embark Studioが開発を手掛ける基本無料の対戦型FPSだ。2018年に設立されたEmbark Studioは、過去に「Battlefield」や「Mirror's Edge」などのタイトルを手掛けたDICE社の元メンバーたちが中心となって結成されたスタジオで、業界のベテランたちが揃っている。パブリッシングはネクソンが務める。
本作は3月7日からSteam版のクローズドβテストが実施される予定だが、それに先立ち都内でメディア向けの体験会が開催された。本稿では、筆者が「THE FINALS」を2時間ほど遊んでみての感想や具体的なプレイフィールについてレポートしていく。
ハイスピードでカオスなゲーム展開と硬派な射撃アクション
「THE FINALS」においてプレーヤーはヴァーチャル空間で繰り広げられるゲームショウの参加者となり、賞金獲得を目指して他プレーヤーと戦うことになる。これは「イカゲーム」や「ハンガーゲーム」にインスパイアされた設定らしく、マップの外を見てみると観客がいたり、順位に変更があると実況が流れたりと、そのフォトリアリスティックなグラフィックスに反して、ゲーム内の雰囲気は非常にポップだ。プレーヤーがキルされると周囲にコインが飛び散るエフェクトなどがあり、お祭り感を演出している。
Embark Studioによれば「THE FINALS」の主たるコンセプトであり本作が他のFPS作品と違う点は、環境のダイナミズムにあるという。なんでも、マップ上のあらゆる建物は銃撃や爆発物によって破壊可能であり、そのため試合開始から終了までの間に地形がどんどん変わっていくらしい。彼ら曰く本作は「シューターとして作られていない」作品であり、ただ単にエイム力の高いプレーヤーが強いゲームではなく、環境を巧く使えたプレーヤーが有利になる設計になっているとのことだ。
ゲームの詳細に入る前に、まずは本作における3つのクラスの説明をしよう。本作にはライト、ミディアム、ヘビーという性能の違う3つのクラスが存在し、それぞれ扱える武器やHP、移動速度などが大きく異なる。例えばライトは動きが素早い代わりにHPが150と低く、扱える武器はサブマシンガンやピストルなどの近距離武器になる。ミディアムならば体力は250あり、味方の回復や蘇生に仕えるスキルやガジェットを使える。一番動きの遅いヘビーはHPが350と多く、バリケードを張ってライトマシンガンを乱射し、タンクのような立ち回りができる。なお、扱える武器やガジェットの種類はレベルが高くなるにつれて増えていくようだ。
ロードアウト画面で印象的だったのはガジェットの種類の豊富さだ。フラググレネードやC4爆弾などFPSの定番アイテムから、ジャンプパッドや毒ガス爆弾など、プレーヤーの創意工夫が試されるアイテムも用意されていた。
その反面、セカンダリー武器の携行は許されておらず、倒した敵の武器を拾うこともできない。そのため、慣れるまではメイン武器のマガジンを撃ち切ってしまうとあたふたしてしまうことも多かった。また、ナイフやハンマーなどの近接武器も用意されているが、これらをメイン武器で使うとなると銃を持たずに戦場へ行くことになる。このあたりも「シューターとして作られていない」所以の仕様だろうか。
またプレーヤーは自分のキャラクターをある程度カスタマイズできるようで、体験版では選択肢が限られていたものの、相貌や髪型、服装やアクセサリーといったものまで、自分好みに変えることができる。さらにストアでは洋服や武器用のスキンも販売される予定で、このあたりのキャラクリ要素も楽しい。
肝心の射撃だが、プレイフィールは意外と硬派で、筆者の主観では「Battlefield」シリーズに近いような気がした。ADS(サイトを覗き込む)までの時間は比較的長く、一発一発のリコイルも重い。敵の胴体に着弾してもあまり手ごたえはなく、特にヘビーなどを相手にする際は、ヘッドショットを狙うことが求められる。高い機動性からくるハイテンポな展開の中で正確な射撃を求められるため、1対1の撃ち合いで勝つにはかなりの技術が要りそうだ。
展開で攻守が切り替わるメインルール「キャッシュアウト」
「THE FINALS」のメインとなるゲームルールは「キャッシュアウト」と呼ばれるもので、これは3人1チームの4チーム対抗戦、計12人のプレーヤーで競い合うルールだ。ゲームが開始するとマップ上に2つの金庫がスポーンし、これを確保してキャッシュアウトステーションに持ち帰るとポイントが獲得できる、というのが基本的なルールだ。敵プレーヤーをキルすることでもポイントは獲得できるが、これは微々たるもので、金庫を狙うことが勝利には不可欠だ。1ゲームの時間は8分で、基本的には非常にハイテンポな銃撃戦が繰り広げられるが、リスポーンまでの時間は30秒ほど設けられているため無茶は禁物だ。
このルールの面白いところは、金庫を獲得するまではマップ全体でバトルロワイヤルのような乱戦が繰り広げられるのに対し、あるチームがキャッシュアウトステーションに金庫を持ち帰ってからは、開錠が完了するまでの間そのチームは金庫を守らねばならないため、ステーションをめぐる攻防戦に切り替わるという点だ。開錠までにはかなりの時間がかかるが、途中で他チームにステーションを取られてしまうと開錠の進捗がそのまま奪われてしまうため、最後の最後まで気が抜けない(開錠まであと1秒のところで防衛に失敗すると、相手チームはすぐに金庫の開錠に成功できるため、大量のポイント獲得を許してしまう)。
「THE FINALS」ではひとつのマップに4チームが混在するため、角を曲がればすぐ敵がおり、三つ巴戦は当たり前の乱戦が常だが、試合終了間近になると特殊ルールが追加されるようになっており、突然ダメージ量が増加したり重力が軽くなったりと、さらにカオスな状況になる。先述のように他チームが進捗を進めた金庫を途中で奪えば一発逆転を狙うことも可能なため、最後の最後まで誰が勝つかは分からない。このあたりは色々な戦略が開拓される余地のある部分だろうが、体験会では戦況がよく分からないまま負けてしまっていることもあった。
次にマップを紹介しよう。今回プレイアブルになっていたのは「モナコ」と「ソウル」の2マップだったが、「THE FINALS」では実在するロケーションをマップにするのがひとつのテーマのようだ。どちらのマップも沢山の建物が入り組んだ密度の高い設計になっており、コンクリートや金属の描写が美麗で細部までとても見応えがあった。天候にも種類があり、昼と夜の他にも、晴れの日もあれば視界が悪くなる霧や雨の日もあり、その度に街の雰囲気ががらりと変わる。
次の瞬間に床が抜けるリスク。常識を覆す新たな対戦型シューター
ゲーム面では、どちらのマップも高い建物が多いため高低差のある銃撃戦が頻発していた。キャラクターの機動性は高く、あらゆる段差や建物をスペースキーひとつで乗り越えられる他、ステージの各所に移動用ワイヤーが仕掛けられており、また落下ダメージも一切ないため、縦横無尽にマップを駆けまわることができた。遠方から銃撃するとあまりダメージが入らないため、狙撃をするよりは接近戦を挑む戦いの方が有効な感があり、プレーヤーたちは皆思い思いに走り回っていた印象だ。加えてマップ上にはガスボンベやオイルタンクなどのFPSお馴染みアイテムが多く転がっており、これらを使って敵を攻撃したり建物を破壊したりすることが可能となっていた。
さて、本作の目玉である「建物の破壊」についてだが、たしかに触れ込み通りどんな建物も破壊可能だった。壁抜きなどはもちろんのこと、建物ごと壊すことも可能なため、例えば、敵チームがキャッシュアウトステーションを防衛しているときに階下からロケットランチャーを発射し、床ごと敵チームを引きずり下ろすなんて戦い方も可能だった。このあたりはプレーヤーの想像力しだいで戦略の幅を大いに広げる要素になるだろう。また、どんなに大きな建物が崩れても、処理落ちせずリアルタイムで他プレーヤーと状況が同期されていたのも目を見張る点であり、これは建物が倒壊する処理をサーバー側が担っていることで可能になっているらしい。
ほとんどのFPSでは高所が有利とされていたり、場合によってはマップ上の特定の場所が安全地帯となっていたりと、FPSはいわゆる「地の利」が大切になってくるジャンルだが、建物を破壊できることから従来的な「地の利」の概念が覆されている点が非常に面白い。どんなに「ここは安全だ」と思って芋プレイに勤しんでいても、次の瞬間には床が突き抜けている可能性さえあるのだ。
以上が筆者が「THE FINALS」を2時間ほど遊んでみての感想だ。射撃のフィールや基本的な操作性、UIの視認性などは遊んでいて非常に快適であり、この辺はさすが元DICEのメンバーが手掛けているだけのことはある。その上で、ユニークなゲームモードや建物の破壊など新鮮な要素が詰め込まれており、「THE FINALS」からは従来のFPSとは違う新しい体験を得ることができたように思う。
マップのあちこちで色々なことが起こるので、体験会の短い時間ではカオスな戦況をうまく把握することが難しかったが、これから多くのプレーヤーによって攻略され、競技として成熟していくだろう「THE FINALS」の未来が今から楽しみだ。この記事を見て本作が気になったプレーヤーは、是非βテストに参加してみてほしい。