【特別企画】

100型超+240Hz表示!BenQの新型“ゲーミングプロジェクター”を試してみた

「サイバーパンク」や「スパイダーマン」が映画みたいな臨場感に

【BenQ TK700STi】

4月10日 発売予定

市場想定価格:220,000円(税込)前後

ジャンル:ゲーミングプロジェクター

 ここ数年、ゲームプレイに特化したゲーミングディスプレイが人気だ。そうした製品の多くは「競技で勝つための道具」という位置づけで、144Hzや240Hzといったハイリフレッシュレートに対応し、画面サイズは一望性に優れた20型から30型前後までという仕様が中心だ。

 しかし、ゲームファンの全員が全員、「ライバルに勝つため」だけにゲームをプレイしているわけではない。ゲーム世界にどっぷり浸って、ゲーム世界への没入感を楽しむためにプレイしたいという方も多いはず。そんなゲームファンは、より大画面の50型前後の大画面テレビなどでプレイすることになるわけだ。

 ただ、もっと大画面でプレイすることができたらどうだろう?一般的なテレビを越える100型オーバーの画面サイズでプレイするFPSは、オープンワールドRPGは、フライトシミュレータは、ギャルゲーは、どんな感覚か……?

 そんな望みを叶えてくれるかもしれない“ゲーミング”プロジェクターがBenQから登場した。製品名は「TK700STi」。日本での実勢価格は22万円(税込)前後で、4月10日に発売が予定されている。本製品は4K解像度での表示に対応しているだけでなく、ゲーミングをうたうだけあり、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)の240Hz表示対応や低遅延など、ゲームプレイを意識した機能も数多く盛り込んでいる。

 この企画では、巨大画面でのゲームプレイを自室で実現できるインパクト抜群のこの製品を多角的に評価してみたい。ド迫力の超大型4Kゲーミングを余すところなく堪能するため、PS5はもちろん、GeForce RTX 3090とRyzen 9 3950Xを搭載した最高クラスのゲーミングPCも用意して臨んだ。

4Kプロジェクターなのになんでこんなに安いのか!? ~秘密はその投射メカニズムにあり!

 「TK700STi」は4K解像度の映像投射に対応したDLPプロジェクター製品となる。「4Kプロジェクターで20万円!?」と驚かれそうだが、このとてつもないコスパを実現している秘密はDLPプロジェクターのコアを開発しているTI(テキサスインストゥルメンツ)が考案した時分割ピクセル数増強システム「XPR」(Expanded Pixel Resolution)技術にある。

 LCOSプロジェクターや液晶プロジェクターでは、赤緑青(RGB)3枚分のマイクロ液晶パネルを用いて映像を生成するが、対して民生向けの小型DLPプロジェクターではたった1枚のDMD(Digital Micro-mirror Device)チップを用いてフルカラー映像を投射する。そう、もともとDLPプロジェクターは小型軽量化、コスパ重視のプロジェクターとして進化してきた。

 このDMDチップこそがTIが開発したマイクロ映像パネルで、液晶を遙かに超えた超高速で駆動できることが特長。このDMDチップ1枚を用いた単板式DLPプロジェクターでは、ある瞬間は赤(R)だけの映像、次の瞬間は緑(G)、次は青(B)、以降その繰り返し…という感じで、超高速に単色の映像投射を切り換えることでユーザーの脳でフルカラー映像を視覚させる仕組みとなっている。この仕組みは「時分割フルカラー表現」と呼ばれる。

 DLPプロジェクターが民生向けにリリースされたのは2000年前後。あれから、時間の経過とともにDMDチップの性能が上がり、同時に光学技術も進化。最新のDLP技術では、ついに"色だけでなくピクセルまでも"時分割表現できるようになってしまったのだ。これが前述したXPR技術になる。

 「TK700STi」に搭載されているDMDチップ自体の解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)となっている。これが低価格の最大の要因だ。そう、前述したこのXPR技術を用いて、4K映像を投射するのである。具体的には、フルHDのDMDチップの光路にSpatial Light Modulator(SLM:空間光路変調器)素子を組み合わせ、DMDチップ上のピクセルを空間的に4回分、時分割表示することで4K(3840×2160ピクセル)表示を行う。

 この方式は疑似4Kと呼ばれることもあるが、実際に4K分のピクセルが投射されるので、リアル4Kといっても差し支えはない。「4Kなのに安すぎて不安」という人も、この解説を読んだことで「だから安いのか」と納得してもらえるはずだ。

HDMI2.0(b)対応で4K/60p対応もバッチリ。4Kブルーレイ、新世代ゲーム機にも対応

 4K投射メカニズムがわかったところで、「TK700STi」のスペック的なところを見ていこう。「TK700STi」は、前述したように4K表示に対応しているだけでなく、HDR映像の投射に対応している。対応HDR形式はブルーレイや一般的なゲーム映像で採用されているHDR10に加え、衛星放送系コンテンツやネット配信系VODコンテンツに採用されているHLGにも対応している。

【4K HDR映像で表現力を検証】
YouTubeで公開されている4K HDR映像を用いて発色を検証した。HDRオンでは、明暗がハッキリとして機体の立体感が増すと共に、背景に対して浮き立っている
HDRオフでは白・黒共に情報量の減少が目立つ
異なるシーンでHDRオン。スクリーン上でもメリハリの効いた映像になる。船体下部や背景の建物の暗い部分も描写されている
HDRオフ。夕焼けが白っぽくなったり船体下部の陰影が潰れている
HDRオンでは夕日の赤とシャドウのコントラストがくっきりと見て取れる
HDRオフでは色域が狭くなったことで全体的にぼんやりとした印象に

 プロジェクターといえば輝度性能が気になるが、本機は出力240Wの超高圧水銀ランプを採用することで3000ルーメンの高輝度性能を有している。3000ルーメンというと、筆者の経験では薄明るい蛍光灯照明下では、普通に見られてしまうほどの輝度だ。情報番組やスポーツ中継を楽しむならば暗室にしなくても映像鑑賞が楽しめると思う。

 公称コントラストは1万:1を謳う。「TK700STi」は投射レンズに動的絞り機構を持たないので、この値は高輝度DLPプロジェクターとしては標準的な値だ。感覚としては一般的な液晶テレビのコントラスト性能と同程度という理解で良いと思う。

 光源ランプの寿命は公称4000時間(標準輝度で運用時)となっている。光源ランプはユーザー交換が可能なので、交換後は新品時の輝度に復活できる。プロジェクター製品は交換ランプの入手性や価格が重要になってくるわけだが、本機の場合、交換光源ランプは型番「LTK-700STi」として設定されており、価格はおよそ35,000円(税込)で購入することができる。家電量販店などで販売される予定となっている。

 本体サイズはW312×H110×D246(mm)。設置面積的にはA4用紙よりもやや大きい程度。とてもコンパクトだ。重量は3.1kg。大人であれば両手で普通に持って移動は行える程度の重さ。

本体正面
本体背面
本体右左側面
本体右側面
本体上面
本体底面

 入力端子はHDCP2.2対応のHDMI2.0(b)端子が2系統。ともに4K/60pまでの18Gbps HDMI接続に対応する。4Kブルーレイ機器、PS5などの新世代ゲーム機などの4K/60p出力にも対応できる。また、2系統あるHDMI端子のうち、2系統目のHDMI2はAVアンプやサウンドバーとの相互連携に便利なeARCに対応している。

 なお、D端子やコンポジットビデオなどのアナログ映像入力端子は実装されていない。本機は映像入力に関してはデジタル接続のみに対応する点に留意したい。

 選択されたHDMI入力に含まれている音声信号は、本体内蔵の5Wモノラルスピーカーでの再生に対応する。カジュアルにコンテンツを楽しむには便利な機能だ。音質的にはスマートスピーカーのそれに近いイメージだ。

 本体には、φ3.5mmのミニジャック型のアナログステレオ音声出力端子もあるので、市販のアクティブスピーカーに接続することもできる。サラウンドサウンドなどを楽しみたい場合には、前述したeARC対応のHDMI端子を活用したい。

 定格消費電力は最大380W。高輝度モデルなので意外と消費電力は大きい。動作時の騒音レベルは最大35dB、エコモードだと29dBにまで下げられるが、せっかくの高輝度モデルなので、多くの活用シーンでは35dBということになろう。この値は一般的なホームシアター機としてはやや大きめな値だが、静かに映像鑑賞を楽しむ……というよりは、わいわいとゲームをみんなで楽しむ用途ということであれば、それほど気にならないかもしれない。気になる場合は、設置位置と着座位置をできるだけ離すような設置を心がけるといいだろう。

本体上面には操作パネルを搭載
付属のリモコンではさらに細かい操作も可能
レンズ操作で映像の拡縮とピント合わせができる
BenQ「TK700STi」基本仕様
製品名TK700STi
投写システムDLP 0.47”
解像度4K UHD(3,840x2,160)
輝度3,000ルーメン
コントラスト比(FOFO)10,000:1
色再現性10億7,000万色、色域: Rec.709カバー率 96%
アスペクト比16:9
色再現性(Rec.709)96%
投写比0.9~1.08、2mで約100インチ
ズーム比1.2倍
レンズF値=1.94~2.05、焦点距離=9.25~11.1mm
台形補正垂直± 30°; 水平 ± 30°; 回転補正 ± 30°
投射サイズ60~200インチ
騒音35/29 dBA
サイズ(WxHxD)312x110x246mm
重量3.1kg
画像モード明るい/リビングルーム/ゲーム/スポーツ/シネマ
/3D/HDR10/HDRGame/HLG/ユーザー
ゲームモードFPS/RPG/SPG
その他HDR10/HLG対応、3D 120Hz対応
応答速度4K: 16.67ms@60Hz
1080p: 16.67ms@60Hz
1080p: 8.33ms@120Hz
1080p: 4.16ms@240Hz
BenQ「TK700STi」端子仕様
HDMI仕様x2(HDCP2.2)
 HDMI-1 /HDMI-2(うち1つはeARCをサポート)
USB Type Ax1 USB 2.0 Type A-1(給電 1.5A)
内蔵端子x1 for BenQ HDMI Media Streaming(QS01 ATV dongle)
 - HDMI-3(supports ATV dongle in hidden compartment)
 - Micro USB Cable(5V/1.5A power)
RS232x1
音声出力(ミニジャック)x1
音声出力(S/PDIF)x1
スピーカー5W x1 (CinemaMaster Audio+2)
赤外線受光部x2 (Front+Top)