【特別企画】

「GO SEGA - 60th ANNIVERSARY Album -」&「SEGA 60th Anniversary Official Bootleg DJ Mix」先行試聴レポート

「DJ Mix」編:聴けば聴くほど楽しくなる、1時間ブッ通しの超大作CDが誕生!

 「SEGA 60th Anniversary Official Bootleg DJ Mix」は、本アルバムオリジナルの「Opening」から、「あかどこスタッフロール」(※「赤ちゃんはどこからくるの?」のエンディング曲)まで、セガ60周年にちなんで全60曲を「DJ Mix」として収録したアルバムだ。プロデューサー/DJは、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズのサウンドディレクターを務める大谷智哉氏が、スーパーバイザーは「スペースチャンネル5」シリーズなどを作曲したことで知られる幡谷尚史氏が担当した。

 筆者がまず驚かされたのは、全60曲を1曲ずつ、いかにもDJっぽくテクノ調などにアレンジして収録したアルバムなのかと思ったら、「ノンストップDJ Mix」として60曲をつないだ1作品となっていたのでビックリ! しかも、ジャンルもハードも全然異なる曲同士が、1時間13分19秒という長尺のなかで違和感なくつながっていて、筆者の知らない曲がつながっていた部分ではどこから曲が変わったのか、全然気付かない箇所もあったほど。DJの経験も豊富に持つ、大谷氏のスキルが存分に生かされた、まさに超大作だ。

昭和時代のレコードを想起させるクラシカルなデザイン。ジャケットは紙製で、CDはビニール製の内袋に入っており、セガ音楽の長い歴史を視覚と触覚でも体験できる

 まず最初に注目したいのが、1曲目の「Opening」だ。CMでおなじみのセガのアイキャッチをはじめ、藤岡真威人さんの「セガだよ! 60周年」のボイスや、懐かしのドライブゲーム「アウトラン」より、スタートシーンの効果音など、セガ歴代のあらゆる曲やボイスがたくさん盛り込まれている。わずか1分弱の短い時間で、聴く者をセガ音楽の世界へとスーッと引き込んでしまう、楽しいかつ素晴らしい構成だ。

 なお、「Opening」はセガ公式Twitter、およびInstagramにて映像付きで公開されているので、まだご存じない方はぜひご試聴を。その楽しさがきっとおわかりいただけるハズだ。

 「DJ Mix」と銘打っていることもあり、収録曲は全般的に明るいノリノリの曲ばかりだ。「maimai」の「炭★坑★節」をはじめ、「ファンタジーゾーン」「サンバ de アミーゴ」など、新旧多彩なタイトルからチョイスされ、聴いていてとにかくテンションが上がる。

 80年代からのオールドファンにとっては、「ファンタジーゾーン」や「コラムス」(※海外版の「Arabian Jewelry」)など、古いタイトルの曲が聴けるのもうれしいところ。また、「共闘ことばRPG コトダマン」の曲「ナニガデルカナ 神のみぞ知る歌~言霊祭ver.~」は、あの「ペンゴ」のBGMとして有名な「Popcorn」を織り交ぜ、懐かしさとともに新たな面白さを生み出しているのも「DJ Mix」の魅力だ。さらには、元々ラップのボイスが入った「カルテット」の「Oki Rap」も収録されているので、もし原曲を知っていれば「ナルホド、その手があったか!」などとうなずきつつ、楽しく聴くことができるだろう。

 音楽ゲーム好きであれば、「クラッキンDJ」(※2000年稼働開始のアーケードゲーム)の「in chaos」を収録している驚きと懐かしさのあまり、思わずニヤッとするハズ。ほかにも、「スペースチャンネル5 パート2」からは「Mexican Flyer[ビッグバンド完全版](Swing It Black Mix)」「ゴーゴーチアガール」「THIS IS MY HAPPINESS」の3曲が、「初音ミク -Project DIVA- F 2nd」からは「DECORATOR」、そして「maimai」シリーズからは前出の「炭★坑★節」や「セガサターン起動[H.][Remix]」など、実に幅広い年代の作品が収録されている。これらの曲がいっぺんに聴けて、なおかつ他のセガの音楽との共演が楽しめるのも「DJ Mix」ならではの面白さだ。

 曲同士のつながりや順番にも、意味やメッセージが込められているのも要注目ポイントだ。テンポやキーが似たもの同士を巧みにつなぎつつ、タイトルによっては歌詞や曲のテーマに共通項があるもの同士を組み合わせている。3曲目の「まちでうわさの…」(※「オシャレ魔女 ラブ and ベリー」の曲)と、4曲目の「Tokyo Daylight」(「ペルソナ5」)は、前者は歌詞で、後者は作中で「渋谷」が登場するのがその一例だ。

 また、7曲目の「Stardust Speedway Act 2」(※「ソニックマニア」の曲)から、12曲目の「Cruising Together」(※「ナイツ~星降る夜の物語~」の曲)までの間は、いずれも宇宙空間や夜を題材にした曲を並べた感があり、大谷氏の遊び心が満載の構成となっている。なお曲のつながり、構成については、ライナーノーツに大谷氏による解説が書いてあるほか、拙稿のインタビュー記事でもいろいろ紹介しているので、併せてぜひご一読いただきたい。

 55曲目に流れる、セガの社歌を原曲とする「セガ・ハード・ガールズ」版の「若い力 -SEGA HARD GIRLS MIX-」だけは、ほかの曲よりも長めに尺を取っているのも大きなポイント。長くしたのは、単に社歌だからという理由ではなく、本曲には途中で歴代のセガハードをラップで語るパートがあるため、ここをカットせずに収録したからだ。筆者は元のイラストやアニメをまったく知らなかったが、SC-3000から始まり、ドリームキャストで終わる歴代ハードのラップは聴いていて実に楽しく、何て粋な演出なのかと、只々うならされるばかりであった。

「GO SEGA」はブックレットなのに対し、こちらのライナーノーツは折りたたみ式だ

 筆者は150タイトルほどのゲーム音楽アルバムを持っているが、本アルバムのように全60トラックの曲をつなぎ、「DJ Mix」という1作品として聴けるようにした例は、過去に記憶がほとんどない。正確に調べていないので断言はできないが、もしかしたら本曲は「世界で一番長尺のDJ Mix版ゲーム音楽」かもしれない。しかも、ただ曲同士をくっつけただけでなく、そこには意味や意図を盛り込んでいるのだから、まさに大作、もとい超大作だ。

 ゲーム、あるいはゲーム音楽ファンを自称していながら、「『DJ Mix』って何だろう?」と身構えている人が、もしかしたらいるかもしれない。だが、そんな心配は一切ご無用と断言したい。実は、筆者も当初はプレイ経験のないタイトルの曲が多く、楽しめるのかどうか少なからず不安があったが、聴いているうちにどんどんテンションが上がり、1時間を超える長尺を大いに堪能することができた。本作は、尺が長くても最後まで楽しく聴けて、セガあるいはゲーム音楽にとどまらず、音楽そのものの楽しさをも伝えてくれる、そんなアルバムに仕上がっていると言えるのではないだろか。

 長年のセガファン、セガマニアな方々は、ライナーノーツをあえて読まずに、収録曲を何曲当てられるか、もしくは知っているかをクイズのように自問自答しながら聴くのも一興だろう。「GO SEGA」ともども、おすすめの逸品である。