【特別企画】

ホビーにもオーダーメイドの楽しさを! 職人さんに宇宙で唯一俺だけの「戦士の銃」のホルスターを作ってもらった!

 フィギュア、プラモデル、ラジコン、トイガン……ホビーは奥深い。そしていざ入り口に立つとそこからの奥深い世界がドンドン見えてきて、ズブズブと"沼"にはまる。「ちょっと試しに買ってみようか」そう思ってラジコンを買うと、ベアリングやらサスペンションやら凝りたくなる。プラモデルを買うといい工具、塗装、ラインナップを集めたくなるし、ガスガンやモデルガンも同様だ。ターゲット、予備の弾倉、別の銃、サバゲの装備一式……どこまでも、どこまでも凝りたくなる。

 筆者にとって「戦士の銃」はまさに新しい趣味の入り口となった。「夢を叶えた」というと大げさであるが、筆者は先日「銀河鉄道999」に登場する主人公・星野鉄郎が手にする銃「戦士の銃」をモチーフとしたハートフォードのモデルガン「戦士の銃 コスモドラグーン  キャプテンハーロック・モデル」を手に入れた幸せをたっぷり書いた。

松本零士氏の「銀河鉄道999」に登場する主人公・星野鉄郎が手にする銃「戦士の銃」。その架空の銃を"本物の感触"をもたらすモデルガンとしたのが、「戦士の銃 コスモドラグーン  キャプテンハーロック・モデル」である。筆者が、実に40年間追い求めていた"本物の戦士の銃"であり、その銃を手にできた幸せを前回たっぷりと書かせてもらった

 その"夢"は今も続いている。前回の原稿で筆者は最後に「戦士の銃の"元ネタ"である、西部開拓時代初期の銃・コルト ドラグーンを入れていたような古風なホルスターが欲しい。このため、もう少ししたら革製品を扱う工房に銃を持ち込み、ホルスターを作ってもらえないか交渉するつもりだ」と書いた。この願いが、想像を遙かに超えた形で実現してしまったのである。

 筆者の願いを叶えてくれた方は、ネットオークションでオリジナルホルスターを製作・販売しているJon & Maggy Factory氏(以下、Jon & Maggy氏)。Jon & Maggy氏のおかげで戦士の銃ならではの特性を活かし、その上で彼の思い入れを込め、そして筆者の想いさえもかなえてくれた、まさに「宇宙にただ1つの俺のホルスター」が誕生したのだ。

 様々なホビーを楽しんでいても「自分のための特別オーダーのもの」を作ってもらったという経験を持つ人は多くないだろう。筆者はとても幸運だった。そこで今回筆者が体験した幸せと知見を話していきたい。例えば皆さんも自分の趣味で何らかの"職人"に出会い、新しい扉が開けるかも知れない。そのための何かになっていただければ幸いだ。

 今回まずはこのホルスターの面白さ、特性をたっぷり語った上で、筆者がこのホルスターにたどり着くまでの道のり、そしてホルスターをつけた上での知見を語っていきたい。筆者にとって戦士の銃を手にしたのは「夢の実現」だったが、それはまさしく「新たな趣味の始まり」となったのだ。

「戦士の銃 コスモドラグーン  キャプテンハーロック・モデル」を"俺だけのホルスター"に収める! この充実感は筆舌に尽くしがたい

銃を身体の一部とする、職人のこだわりと筆者の想いが作り上げたホルスター

 ホルスター入手までのストーリーはまずは置いておいて、何よりも最初にこのホルスターそのものを語っていきたい。実は今回ホルスターを製作してくれたJon & Maggy氏は基本的にオーダーでの製作はしていない。にもかかわらず今回筆者のオーダーを受けてくれたのは、丁度彼自身が戦士の銃のホルスターを再び作りたいと思っていたこと、筆者の戦士の銃の原稿を読んで共感してくれたためとのことだ。とても幸運な出会いだった。

 製作をお願いするにあたり、筆者はホルスターのイメージをある程度固めていた。このイメージが固まったのはネットで革製品を販売しているショップの「南北戦争時のピストルとホルスターとホルスター」という記事。この記事で筆者が欲しいホルスターがどういうものかが固まってきた。

 ここで紹介されているホルスターは、ハートフォードのモデルガン「戦士の銃 コスモドラグーン  キャプテンハーロック・モデル」の"元ネタ"である、コルト ドラグーンを収納していたホルスターだ。この時代のホルスターは西部開拓時代後半や、ましてや西部劇に出てくるような洗練され、カッコ良いいモノではなく、どこか野暮ったさも感じられるものだった。

 具体的な形としては、下のアメリカの通販サイトで販売されているホルスターの写真を見ていきたい。大きな革の半分を丸めホルスターにし、折り曲げて布に通すことで輪(ループ)を作り、ここにベルトを通すホルスターだ。この無骨な感じが薬莢が作られる前の"初期の拳銃"に似合うと思ったのだ。

【北米販売のループホルスター】
北米の販売サイトで売られているハンドメイドのループホルスター。後述するコルトSAA用のもので、戦士の銃は入らない

 「基本はループホルスターで行きたい」という筆者の話を聞いた上で、Jon & Maggy氏は自分なりのループホルスターを見せてくれた。上の写真のようにループホルスターは荒く野暮ったい雰囲気のものが多いが、Jon & Maggy氏が作った筆者のホルスターは氏の他のホルスター同様かっちり仕上げられ、艶やかな表面処理を行なった硬質の革で作られている。裏面の革の裏地が出る所は、もう1枚革を当てることでなめらかに仕上げている。「Jon & Maggy Factory」の刻印も楽しい。

【ループ構造のホルスター】
革がベルトのところで輪(ループ)になっているのがループホルスターの特徴だ
ループホルスターは革の裏側がむき出しになってしまうが、Jon & Maggy氏はもう1枚革を張って表面をなめらかにしている。製作者の刻印もカッコイイ

 そして縁部分。ここも革が重ねられ、補強されている。このためホルスターの形が崩れず、銃を引き抜くのに邪魔にならない。デザインとしてもユニークだ。ポイントは前部分に大きく"切り欠き"が入っているところ。この切り欠きにより、銃を抜くときに銃の先がホルスターの縁に引っかからなくなるようにして欲しい、という筆者のオーダー通りの形だ。

 もう1つの筆者のオーダーがボタンではめることができる革の留め具だ。これをはめることで、ホルスターに銃が固定されホルスターをつけて走っても銃が簡単には抜けない。何よりも銃を抜く際、「パチン」とボタンを外すのが良いのだ。……実はこの「早撃ちのための切り欠き」と「銃を止めるための革の留め具」は、他ならぬJon & Maggy氏の作品から得たアイディアだったのだが、それは後で述べたい。

【切り欠きと、革の留め具】
ホルスターの前方は大きく切り欠きがある。この"えぐれ"によって、銃を引き抜く際、先端がホルスターに引っかからないようにしている。縁がちゃんと革で補強されているのも楽しい
筆者が希望した革の留め具。ホルスターをつけたまま走ることがあったりするときを考えて注文。他にも漫画版の鉄郎のように、ベルト手に持ってホルスターを持ち運ぶときにも固定しておくのは良い感じだ

 一方、Jon & Maggy氏の"新しい戦士の銃のホルスター"としてのアイディアを強く感じるのが、ホルスター裏面の革のベルトをはめる箇所である。このホルスターはここに革ベルトを通し、そのベルトを太ももを巡らせて結ぶことで、太もも側面にホルスターを結びつけるのだ。こうすることで戦士の銃を引き抜く際、ホルスターが一緒に持ち上がらない。

 戦士の銃は非常に大きなハンドガンだ。それを包むホルスターも長くなる。歩いても無駄に揺れないように、何よりもしっかり銃を抜くために革ベルトはとても有効だ。実際の南北戦争期、西部開拓期のホルスターは先端に"革紐”がついていてこれを結びつけることで固定していた。Jon & Maggy氏はこれを金具付きの革ベルトにし、しかも使用者の体型に合わせて取り付ける位置を調整可能にしている。

【こだわりの革ベルト】
Jon & Maggy氏が「他では中々見ない設計」という足に固定する革ベルト。体型や好みに合わせてつける位置が変えられる。フィット感を高め、つけるのがとても楽しい仕掛けである

 この革ベルトが極めて心地いい装着感を生み出すのだ。そして実際に銃を引き抜くとそのベルトの効用がわかる。腰と足でホルスターを固定してくれるからこそ、しっかりホルスターにフィットした戦士の銃を素早く引き抜くことができるのだ。この感覚は"居合い切り"に近い。鞘を抑える左手のように、革バンドがホルスターを止めてくれるのである。

 勢いよく銃を引き抜けることで、そのエネルギーをそのまま銃を構えることに使える。「こんな馬鹿でかい銃でファストドロウ(早撃ち)なんて……」と思っていたのだが、このホルスターから引き抜くと、意外なほど早く銃が構えられる。動画でノリノリの筆者から、その雰囲気も感じて欲しい。

【モデルガン「戦士の銃」を、ホルスターから抜いて構える!】

 これまでも筆者は仕事机のすぐ横にアクリルケースを置き、仕事の合間でもことあるごとに戦士の銃を眺め、しょっちゅう箱から取りだしては手に持っていた。今ではそれがホルスターまで引っ張りだし、装着し、引き抜いてる。何度やっても満足感がこみ上げてくる。自分でもかなりアホだな、と思うのだが、これが止められない。

 戦士の銃を収めた、ホルスターの重みが良いのだ。ホルスターに包まれた戦士の銃を持ってすらその幸せを感じる。そして装着したとき右腰に感じるずしりとした重み。戦士の銃を包み込むホルスターから引き抜く爽快感と、両手で構えたときに感じる銃の重み。お気に入りの玩具を手に入れた実感を持つ人ならこの気持ちに共感してくれるだろう。ホルスターを得て、筆者の"宝物"は、さらに輝きを増したのだ。

【ホルスター各部】
ホルスターに包まれた銃というのは、また一味違う。職人さんのこだわりを聞けばその魅力はさらに増す。この大きさも強い満足感をもたらしてくれる

幸運が重なった、"戦士の銃ホルスターの作り手"との出会い

 ここからは筆者がどのような紆余曲折を経て、このホルスターを手に入れたかを語っていこう。戦士の銃を手に入れた後、筆者はホルスターが欲しかった。「銀河鉄道999」のコミックス版では鉄郎は時にはパンツ一丁で星に降り立つ。そのときでもホルスターに入った戦士の銃は手放さない。ベルトを肩から下げて大きな戦士の銃を背負うように持つのだ。ホルスターに入ってこその戦士の銃なのである。

 前回も書いたが、「戦士の銃」はこれを販売したハートフォードから"公式のホルスター"が販売されている。価格は67,000円(税別)。躊躇ったのは正直値段の問題もある。しかしそれ以上に「俺のホルスターじゃない」と思ったのだ。筆者が戦士の銃を望んだのは、ハーロックや鉄郎になりたいのではなく、彼らのように星の海に旅立ちたかったからだ。彼らの姿をそのまままねるのではなく、自分が旅するにはどのような姿で、どのようなモノを持っていくか、それが大事だと思ったのである。

【ハートフォードのホルスター】
ハートフォードの"公式ホルスター"、価格は67,000円(税別)。販売店の店頭で見たが、これが実に良い出来で、筆者は「トランペットに憧れる黒人少年」のように、展示品の前で釘付けになった。流石ハートフォードというところで、西部開拓時代のホルスターとしての考察もキチンとされているのだ

 ただ、「ホルスターが欲しい」と言ってもどうするのか? 自分で作るには余りにハードルが高い。それならば革製品をオーダーメードで作る「革工房」を探して話を持っていけば? ……しかし財布や鞄を作る革工房の人達が、いきなりホルスターを作ってくれるのか? 筆者はひとりでぐるぐる悩んでいた。

 ホルスターが欲しい。この"妄念"が筆者に失敗をさせている。ネットで「ホルスター」を検索しているうち、ヤフーオークションでカッコイイホルスターを見つけたのだ。もう何も考えず購入した。購入したのは「コルト・シングル・アクション・アーミー(以下、SAA)」、通称「ピースメーカー」用のホルスターである。

購入したホルスターと戦士の銃

 ……ホルスターが小さすぎる。全然、全く、少しも戦士の銃は入らない。しかし筆者が初めて手に入れたホルスターだった。失敗は失敗として受け止め、これを「お手本」にしようと決めた。これがあれば、ホルスターを作ったことがない革職人さんにもホルスターがなんなのか提示できると思った。Jon & Maggy氏に依頼した、「抜きやすい切り欠き」、「銃を止めるための革バンド」はこのホルスターから得た知見だ。……実はこのホルスターもJon & Maggy氏の作品だと気がついたのは、戦士の銃を発注するときである。

 もう1つ大きな問題があった。ホルスターを作るためにはそれを入れる銃が必要だ。俺の宝物の戦士の銃を何日間も職人さんに預ける? それならば近いところが良いが、そこの人が本当にホルスターを作ってくれるのか? 色々煩悶する毎日だった。

筆者がホルスターを考える上で大いに参考になったSAA用のホルスター。Jon & Maggy氏の作品だと気がついたのは、戦士の銃を発注するときだった

 そんなとき、筆者の戦士の銃の記事をリツイートして下さった方の中にJon & Maggy氏を見つけたのだ。そしてフォローさせていただいた。彼は定期的にヤフーオークションに自作のホルスターを出品している。彼ならば作ってくれるのではないか? そのとき、Jon & Maggy氏は基本的にはオーダーは受け付けてないことすら知らなかった。

 Twitterのメッセージで依頼をしたときJon & Maggy氏は快諾してくれた。Jon & Maggy氏自身「新しい戦士の銃のホルスター」を作りたいと考えており、筆者の戦士の銃の記事を気に入っていただけたのだ。そう、Jon & Maggy氏は筆者の1年前に「戦士の銃 コスモドラグーン  キャプテンハーロック・モデル」を購入し、そのためのホルスターを2作品も作っていたのである。

 このため筆者がホルスターを依頼したときも、ご自分の戦士の銃で合わせていただいている。筆者のホルスターが到着した特、すでにホルスターにはしっかり戦士の銃の形に合うように革が調整されており、購入してすぐに銃がホルスターになじんだのだ。本当に、幸運が重なったホルスターだった。改めてJon & Maggy氏に感謝したい。

【Jon & Maggy氏の最新作】
そして彼の最新作が「戦士の銃のホルスター」である。筆者のものと大きく違う、よりJon & Maggy氏の想いを強く込めた作品である

 筆者はこのホルスターを手に入れる顛末、そしてホルスターそのものは何としても記事にしたいと、ホルスターを頼む前から思っていた。その記事には、「作り手のインタビュー」もぜひ盛り込みたいと考えていたのだ。筆者の思いだけではなく、作り手の思いにもフォーカスすることで、改めて「俺のホルスター」がいかに生まれたか、オーダーメードで商品を作ってみる面白さが見えてくると思った。

 そこで、ホルスターを製作したJon & Maggy氏へ行ったメールインタビューを書いていきたい。職人としてのJon & Maggy氏のこだわりの一端が感じ取れるインタビューとなった。

 Jon & Maggy氏は、ヤフオクで2018年4月から自作のホルスターを販売するようになったという。きっかけは、「太陽にほえろ!」で 神田正輝氏扮するドック刑事が使用したバックサイドホルスター、通称「ドックホルスター」のレプリカを作成したいと思ったから。
 「ドックホルスターは昔から憧れていたんですが、自分が思う様な物が中々手に入らなくて『無いなら作れば良いじゃないか!』との思いで自分用に作りました」。そして自分と同じ様に「ドックホルスター」が欲しいと思う人に向け、ヤフオクへの販売を始めたとのことだ。以降、Jon & Maggy氏は様々な商品を販売するようになる。

 このようにJon & Maggy氏の製作・販売スタイルは「自分が欲しいと思った作品を作ること」。「私自身アマチュアのクラフターなので製作依頼に完全にお答えできる自信も無く、どの程度のクォリティーの物が手元に届くかを理解して下さっているリピーターの方からのオーダーだけを受け付けているのが現状です」とのこと。このためオーダーは基本的には受けていない。ただ、一部だけヤフオクでのリピーターの方のオーダーや、面白そうなご依頼の場合は好奇心からオーダーを受ける場合はあるとのこと。筆者のオーダーを受けてもらえたのは後者に当たる。改めてとても幸運だったわけだ。

【Jon & Maggy氏の作品】
Jon & Maggy氏の作品の一部

 「ホルスター製作においてこだわっているところはどこか?」という筆者の質問にJon & Maggy氏は、「出来上がったホルスターからは感じられないかもしれませんが、自分的には意外と色々こだわってるんですよ(笑)」と答えた。まずは「デザイン」。ホルスターのシルエットが極力小さくなる様にデザインしているという。Jon & Maggy氏が大事にしているのは「あくまでも銃が主役であって、ホルスターはその主役を引き立てるドレスの様な物」という考え方だ。このためホルスターのシルエットはだと控えめで、しかし"華やかさ”も持たせる様に心掛けているという。

 この考えから過度な装飾も入れない。装飾という雰囲気を持たせながら、補強等の機能性を持たせたデザインになる様にしているとのこと。このこだわりはもう1つの。「綺麗に作りすぎない」ということへも繋がっている。高級ブランドの鞄や財布等の"エレガントな革製品"ではなく、「ある程度ワイルドな作りになっていないと革のホルスターとしての面白味が出ない」という思いを持っており、あまりり神経質になりすぎない様に作っているとのことだ。

 今回の筆者の「戦士の銃のホルスター」においてのこだわりは「スリムさ」。ループホルスターはその構造から横幅がポッテリしてしまう。ここを極力スリムになる様にデザインしたところがこだわりポイントだという。「ホルスターの裏面が通常のループホルスターだと切れ込みが目立ってカッコ悪いと以前から思っていたので、今回は裏から革をあてて切れ込みが見えない様にしました」というところも、"自分なりのループホルスター"を突き詰めたところとのこと。

 もう1つホルスターを脚に固定する為のストラップの位置を上下に調整できる様にしているのもこだわりポイント。「この機構は他でも余り見かけないかと思います」とJon & Maggy氏は語った。筆者のフンワリしたオーダーから「自分なりのループホルスターの理想」をぶつけてくれたのが、この筆者のホルスターというわけなのだ。

【Jon & Maggy氏の作品】
インタビューを聞いてから作品を観ると、氏のこだわりが見えてくる

 「今後どのようなホルスターを作りたいですか?」という筆者の質問に、Jon & Maggy氏は、「完全なワンオフとかメーカー製では手に入らない様な『Jon & Maggy Factory』でしか買えないホルスターです」と答えた。さらに以前販売していたホルスター達のアップデート版も作っていきたいとのことだ。

 最後に今後のユーザーへメッセージとしてon & Maggy氏は、「機能的で手入れの必要もなくお手頃価格で買えてしまう樹脂製のホルスターが山程有ります。それに比べると、手入れが面倒で機能的にもそれ程優れておらずサバゲーにも不向きで今や絶滅危惧種の様な革のホルスターですが、そこにはロマンが有ります。ハンドメイドの温もりも有ります。是非、革製のホルスターもコレクションに加えてあげて下さい(笑)」とユーザーへ語りかけた。

 Jon & Maggy氏のホルスター製作への想いが伝わってくるインタビューだ。それでは次に、

Jon & Maggy氏が過去に作成した戦士の銃のホルスター。この経験が筆者のホルスターに活かされているのだ

"西部を征した銃"を前にして改めて気づく、戦士の銃への愛

 ここでもう1度、「戦士の銃」そのものに立ち戻りたいと思う。今回入手した「SAA」と比べることで、改めて自分の中での戦士の銃への思いを再認識できたのだ。

 前述の通り大きな勘違いをして手に入れたSAAのホルスターだが、これを前にしているとこのホルスターに収まる銃が欲しくなる。ネットオークションはまさに底なし沼で、その気になってチェックしていると思わず触手を伸ばしたくなる商品がたくさんある。

 ……そんなわけで、これから戦士の銃のホルスターを買うというのに手にしてしまったのが、ハートフォードのモデルガン「コルトSAA.45 アーティラリー ヘビーウェイト」の中古品である。本来は組み立てキットなのだが、組み立て済みで、さらにSAAの大きな特徴である"エジェクターロッド(排莢用の銃身の横にあるパイプ)"を削るという改造を施していた。

中古で購入したモデルガン「コルトSAA.45 アーティラリー ヘビーウェイト」
製品版と比べると銃身の下のエジェクターロッドがない

 SAAでエジェクターロッドを取り外したのは、持ち主がこの装置がないバージョンである「シェリフズ」を表現したかったのかもしれない。筆者は「早撃ち」用にホルスターで引っかかりそうなこの装置を外したのではないかと思っている。元々薬莢が熱で膨張しないモデルガンではこの排莢装置を使わずに弾を取り外せるのだが、元の持ち主がこの改造をしたために、安価で入手できたのだ。

 実際にモデルガンを手にし、ホルスターにつけ銃を収め、そこから引き抜き構えるのがとても楽しい。SAAは小さく、軽く、それでいてしっかりしている。戦士の銃と比べるとずいぶん小さいが、実銃では弾の威力も結構あるのだ。堅牢な設計も相まってSAAは西部でベストセラーとなった。ウインチェスターM1873ライフルと共に、「西部を征服した銃」と呼ばれるのも納得できる。

 筆者も早撃ちの真似をしてみたのだが、スムーズに撃鉄が起こせる上、引き金が敏感ですぐハンマーが落ちる。SAAは「西部劇」の代名詞であり、早撃ち競技やくるくると指で回す「ガンスピン」のショーの小道具としても使われる。「西部劇で最も有名な銃」といえる存在なのだ。触ってみることで、それを実感できる。

【西部劇の銃、「コルト ピースメーカー」をホルスターから抜き、構える】
しっかりと収納され、気持ちよく引き抜けるホルスター
構えてみると改めて"武器としての機能性と完成度"を強く意識することとなる

 対する"戦士の銃"はどうだろう? 構えて気がつくのは銃の上部にキャリングハンドルのような盛り上がりがあるため、銃で対象を狙うアイアンサイトが使えない(そもそもついていない)ところだ。そして比べてみるとわかるのだが、前が重い。チューリップ状のフラッシュハイダーなどSF銃としての装飾で銃としてはバランスが悪い。オートマチック拳銃のような後部のボルトも片手では操作できない。

 西部の歴史の中で進化してきたSAAとSF銃である戦士の銃、手に取り比べると戦士の銃が"架空の存在"であることが痛感できる。実銃のような重さ、大きさがあるモデルガンだからこそ、フィクションの部分がはっきりしてしまう。……でも、本当に自分の中でも不思議なのだが、筆者は戦士の銃が好きだ。この銃が"特別"なのだ。

 S&W M29 6インチモデルの完璧と言えるバランスは大好きだ。S&W M36の危なっかしい細いグリップも好き。グロック17の機能美、ベレッタ92のスマートさも、93Rのケレン味も好きだ。大砲のようなスターム ルガー・ブラックホークも良いし、「ハイキャパD.O.R.」を手にしてからはコルト1911も好きになった。それでも、それとは別格に戦士の銃が好きなのである。

やはり戦士の銃が好きだ。この充実感はほんとうに自分でも不思議だが、こういうものが「宝物」なのだろう
"もし自分が戦士の銃を持って旅に出たら?"を考えて色々詰め込んでいるアクリルケース。戦士の銃、ホルスター、雰囲気のある懐中時計、ナイフ、そしてパスと一応完成という所まで来た。1つだけ「星野鉄郎のコスプレアイテム」として、「クレアの涙」を入れてある。ただの手芸用部品だが、ちゃんと設定と同じクリスタルガラスである

 自分の中でも「これほどか」と思う愛着は、やはりモデルガン「戦士の銃 コスモドラグーン  キャプテンハーロック・モデル」を手にできたからだと思う。優れたアイテムが自分の中の"好き"をより強く、大きくしてくれた。「宝物」を手にするのは、本当に楽しく、日々新しい発見がある。皆さんもぜひ自分の宝物を大事に愛して欲しい。