素晴らしきかな魂アイテム

【魂インタビュー】「METAL STRUCTURE 解体匠機 νガンダム」のディテールに迫る!

到達点であり、新たな出発点。次世代フィギュアの道しるべだ

題字:浅野雅世
【第55回 魂アイテム】
「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム」 12月21日に発売。価格は102,300円(税込)。このディテール、スケール感、質感において他の商品の追随を許さないクオリティを持ったアクションフィギュア。まさに新しい時代の到来を告げるアイテムだ
【話を聞いたクリエイター】
BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部商品企画マネージャーの野口勉氏。「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム」は、「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」と並んで、野口氏が実現したかったアイテムだという

 「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム」は、BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の“マイルストーン”となる商品といえる。全高約370mm、総重量約6kg、その大きさはもちろんだが、金属パーツを含めた約2,000パーツにより構成される圧倒的な情報量と密度、そして造形物としてのクオリティの高さはこれまでの商品の概念を塗り替えるような存在だ。

 この記念碑的商品に挑んだのは弊誌でもおなじみの野口勉氏だ。「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム(以下、「解体匠機 νガンダム」)」は野口氏がコレクターズ事業部に異動になって以来の“目標”であったという。野口氏は本商品にあえて「解体新書」にちなんだ「解体匠機」という名をつけている。

 解体新書は日本において初めて人体の構造を紹介した書物である。「解体匠機 νガンダム」はνガンダムを「実在するメカ」として捉え、パーツ単位でその機体を再現した上で完成品ロボットフィギュアとして構築する。解剖学のように構成部品1つ1つに意味を持たせ、それは「玩具」を超えた「インテリア」なのだと野口氏は語る。

 今回は野口氏に解説してもらいながら「解体匠機 νガンダム」の写真を中心にレポートしていきたい。ストロボでの撮影のため実際の商品と色味が異なる場合があるが、「解体匠機 νガンダム」を実際に間近に見たときの“凄さ”を感じていただければと思う。


大迫力のパッケージ開封、箱を手にしたときからワクワクが止まらない

 「解体匠機 νガンダム」は、パッケージから凝っている。まず両面が異なる写真を掲載したダブルパッケージになっている。片側がコクピットハッチを開いてたたずむ姿。もう片方が全身のメンテナンスハッチを開き、作業用タラップを配置した姿となっている。シンプルさと、“豪華さ”を意識したデザインにしたとのこと。

 箱を開くと2つのパッケージが現われる。片方がνガンダム本体が入っており、もう片方武器、ビーム・ライフル、ニュー・ハイパー・バズーカ、シールドと共に台座などの部品が入っている。

ダブルパッケージとなっている
本体と、オプション品がわかれたパッケージ

 同梱されているのは「取扱説明書」、本商品の特性を紹介する「解説書」、そして12月20日より受注を開始する「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム専用オプションパーツ フィン・ファンネル」のチラシ。解説書は特設ページで見ることができる「解体匠機 νガンダム」のコンセプトやテーマの紹介をさらに掘り下げたものになっている。

 最後のページには見開きで、「解体匠機」―我々が望み、到達した絶巓。その視界は先に望む明星に―という言葉が書かれている。「解体匠機 νガンダム」へ野口氏が込めた想いが伝わる文章だ。

取扱説明書や解説書

 思わず声を上げてしまうのはやはりνガンダム本体だ。次の章でより掘り下げていくが、まさに「圧倒的」という表現がぴったりだ。一流モデラーでも相当な時間をを掛けても作り切れない凄まじいクオリティと密度、素材感を持ったνガンダムが目の前のある。この立体物が“商品”として生産されたのだ、という事実が衝撃である。

 野口氏は、プラモデルを作るホビー事業部から、低年齢向け完成品を作るボーイズトイ事業部を経て、大人向け完成品フィギュアを扱うコレクターズ事業部に異動になった。コレクターズ事業部へ異動となった2015年、2つの企画を考えていたという。1つは完成品としての優位性を最大限引き出し、従来の商品と差別化したスタンダードな商品。もう1つは完成品だからできる究極のハイクオリティフィギュア。この2つをしっかりと実現したいということを考え様々な企画を進めていったとのこと。

 「前者は『ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.』として皆様に愛されるシリーズとなりました。そして後者が今回の『解体匠機』です。さまざまなマテリアルを使用し、精密かつ圧倒的な情報量を持ち、玩具からインテリアへ昇華させたような存在。“物”への拘りが一目でわかる商品です」と野口は語った。

 いよいよ次の章から、「解体匠機 νガンダム」にグッと迫っていこう。

本体を前にすると思わず声が出てしまう。武器や台座などパーツは非常に充実している


いつまで見ても見飽きず、新たな発見がある。圧倒的な情報量

 全高約370mm、1/60スケールクラスの「解体匠機 νガンダム」は目の前にすると圧倒的な存在感だ。実物を前にして驚かされるのは、その情報量である。目を向けて、細部を見る。例えば装甲の隙間から見える足の付け根を見ていくと、装甲のマーキングやディテール、足の付け根の構造の複雑さ、そしてそのパーツ1つ1つのパネルラインやパーツの形状の情報量の多さに圧倒される。

 カメラが寄っていき、細部を拡大すれば拡大しただけそこにディテールがある。それは一流のモデラーがプラモデルを際限なく改造しようと思ったとき、部品の1つ1つにまで手を入れ、こだわり抜く作業と同じかも知れない。

 また、実在の自動車などもメカ部分を細部まで見ていけば部品1つ1つに機能を最大限に活かすための工夫や、メーカーの刻印などが確認できそのディテールには圧倒される。「解体匠機 νガンダム」はまさに実在の機械のような情報の集合体なのである。

全体のプロポーション。全身にマーキングが施されている
カメラを寄せ細部を見つめる。パネルラインやメカニックのディテールのすさまじさが確認できる

 面白いのは細部を見ていく中で色々なことに気がつくこと。フィン・ファンネルを繋ぐためのジョイントの構造や、武器をマウントしてない右腕の構造、後ろのスカート部分の装甲が長めになっているなど様々なところで「解体匠機 νガンダム」オリジナルの解釈が見て取れる。ちなみに右のバックパックはビームサーベルマウントと、ファンネルのジョイントが交換できる。「ダブル・フィン・ファンネル」も前提としたセット内容なのだ。

 野口氏は「解体匠機 νガンダム」では、後のMSに繋がる設計、思想を盛り込んであると語った。様々なガンダム作品が出ている現在、現実の我々はνガンダム以降もMSが作られることを知っている。だからこそ、「この設計は後のあのMSに繋がる」といった要素を見せ、手に取った人の想像力を刺激したかったという。

膝の関節、装甲のパネルライン、関節部分の表現など細部を見るほど新しい発見がある
リアスカートは大きめ。ここにも秘密が詰まっている
横顔は野口氏のお気に入りとのこと

 「解体匠機 νガンダム」はメカデザイナーの阿久津潤一氏がデザインを担当している。「解体匠機 νガンダム」の製作にあたってはプロポーションを設定するための全体の設計画、ディテールアップを検討するための設定画、さらに全体から見た上でのディテールを足していく設定画という3つの設定画を描き起こしているとのこと。νガンダムとしての基礎は押さえながら、全く新しい要素を盛り込んでいるという。

 「引いた視点で見ていた情報が、カメラを寄せることで情報が一気に更新され、印象が変わる。側面を見て得たイメージが少しだけ角度を変えると『ここはこうだったのか!』と新しい発見がある。しかも『解体匠機 νガンダム』はここから内部メカを見ることができるハッチの開放があります。この驚きはさらに拡大していくんです」と野口氏は語った。次の章では、ハッチ開放の写真を見せていきたい。


後のMSへの発展も想像させる、戦闘時の開放モード

 「解体匠機 νガンダム」の大きな特徴は全身のハッチの開放である。各装甲が可動することで内部パーツがのぞく。このギミックは商品独自の解釈で「戦闘機動用」と、「メンテナンス用」に設定されている。

 もちろんこの設定は強制するものではなく、一部を開放させたり、ディスプレイ用に左右どちらかだけを開放させたり、ユーザーのイマジネーションのまま楽しんで欲しいとのことだ。例えば野口氏は頭部の装甲開放はνガンダムの“顔”の印象が変わってしまうので、イベント時のディスプレイでは積極的にはしなかったとのことだ。

 戦闘時の開放は機動力や放熱効率を増すように常時開くように設定されたものもあれば、姿勢制御用に一瞬開くなどを想定したギミックもある。放熱も例えば戦闘時は行なわず、一旦戦場を退避し被弾する恐れがないときや、緊急時に放熱し急速に冷やすなど、ストーリーを想像しながらギミックを動かすのも楽しいだろうと野口氏は語った。

戦闘時をイメージした装甲開放。情報量はさらに増える
スラスターの熱を放熱させる肩アーマーの開放
各部が連動して開く。足部分はムーバブル・フレームが露出する

 この装甲開放ギミックの面白いところは“連動”が随所に仕掛けられているところ。肩のバーニアをスイッチのように押すと肩アーマー中央部がガシャリと開く。足の脛部分の装甲を引っ張ると膝の装甲も連動して動いて内部のムーバブル・フレームがのぞく。

 ムーバブル・フレームは駆動することで熱を持つ。バーニア部分もかなり熱がこもる。肩や脛の開放は車がオーバーヒートを防ぐためにボンネットを開くように装甲を可動させることで効率よく放熱をさせるイメージだという。

 腰回りの装甲はスライドさせたり、ハッチを開くことでバーニアが露出する。こちらは高速移動時に展開するか、もしくは急制動をかけたり、姿勢制御を行なう時に瞬間的に使用されるかはイマジネーション次第だ。特に腰のリアアーマーのバーニア露出はユニコーンガンダムを思い出させる。

 戦闘時の開放はνガンダムとユニコーンガンダムの関連性を思い起こさせるものが多い。ムーバブル・フレーム冷却のための装甲開放ギミックが、後のユニコーンガンダムのサイコフレームを露出させる技術へのヒントになった、そういう考え方もできると野口氏は語った。

 装甲開放の中で特に圧巻なのはふくらはぎのバーニアだ。2つの大型バーニアが露出するのは大迫力だが、一方で凄まじい出力のため推進剤の消費もものすごそうだ。「解体匠機 νガンダム」の膝裏には太いパイプが確認できるが、このバーニアに推進剤を供給するためのものと解釈すると納得できる。このように“物語”がギミックを見ながら無限にふくらんでくるのがとても楽しい。

 次は装甲をフルオープンしたメンテナンス状態である。「解体匠機 νガンダム」の表情がさらに変わる。開発チーム自慢の台座のギミックも触れていこう。

ユニコーンガンダムのギミックを連想させるリアアーマーの展開
ふくらはぎの展開は特に大きくシルエットが変わる
装甲の展開は大きくイメージがふくらむ。想像するのが楽しい


ハッチフルオープン! メカの質感の楽しさが爆発するメンテナンス時の姿

 いよいよハッチフルオープンだ。メンテナンスハッチを開放し内部メカを明らかにするのは、ガンプラの改造例でも最高難易度でありながら多くのモデラーが挑戦するモチーフである。

 「解体匠機 νガンダム」は、完成品のしっかりした手応えと堅牢な部品構成で、何度も開放ギミックが楽しめるのだ。すごい時代になったものだ。「解体匠機 νガンダム」の“到達点”を実感できるギミックと言えるだろう。

 コクピットハッチだけでなく、胸のダクトのガード部分を開けることでダクト内部のメンテナンスもできるように開放する。肩のバーニアは下のバーニアが倒れることでバーニアに繋がる配線回りまで手が届く様になる。左腕のサーベルラックの開放はもちろん、右腕の装備をつけられるであろうジョイント部分まで可動することが可能だ。

フルオープン。通常時とはがらりとイメージが変わる
胸ハッチ、コクピットハッチ開放
コクピットをのぞき込む
スラスターを倒すと配線がのぞく
左右の腕部分の開放

 太ももを開いてフレーム露出、足のカバーを開いてくるぶし部分のフレームも露出できる。そして頭部の開放である。センサー類やバルカンのメンテナンスなどを行なうであろう可動である。バックパック、脛の装甲など、本当に全身の装甲が開くことに驚かされる。大スケールのモデルでもここまでの細かい表現をしているものはないだろう。繰り返すが、このクオリティが“商品”で実現できているその事実は、本当に驚異的だ。

 野口氏のお気に入りは露出した内部でキラリと光るエッチングパーツ。腰中央ブロックや、胸のダクト内部、頭部側面の内部など様々など様々な所に使われているとのこと。本当にライトとルーペを手に持って、細部の細部までのぞき込みたくなる。

 これだけの大きさだけでなく、凄まじいまでに内部メカ描写を詰め込んだ「解体匠機 νガンダム」だからこそ、重さは2kgを超える。この重さを支える構造も驚くべきものだ。金属パーツやシャフトを使うことで重さを支えているという。また膝など数カ所にクリック関節を採用している。関節の径を大きくすることで、クリックを細かく設定し、表情が出せるようこだわった部分とのこと。

 こちらも繰り返しになるが、「解体匠機 νガンダム」で得られた様々なノウハウは、今後の商品に活かされていくだろう。本当に「解体匠機 νガンダム」はこれからのホビー商品の未来を明るく照らす光を放つ存在だ。

太もももフレーム露出が可能
頭部の装甲開放
腰アーマー。エッチングパーツがのぞく
足部分を開放すると印象が変わる
細部のメカニック描写は本当に圧巻だ
独特のフィン・ファンネルジョイント
見る度に発見がある
ニュー・ハイパー・バズーカは折り曲げて背中にマウントできる。伸ばした時にはグリップをスライドさせることで安定するロック機構がある。


作業工程そのものから新しい、これからの時代を切り開く「解体匠機 νガンダム」

 そして発光ギミックである。「解体匠機 νガンダム」は両脇にあるカバーを外し、電池を入れることで内部のライトが点灯する。スイッチを入れることで目と左胸のセンサーが点灯し、コクピット内部が点滅する。コクピット部分は別スイッチになっており、点灯箇所を選択できる。

 発光はコクピット内部が緑に照らされる描写が楽しい。この緑の光はサイコフレームのイメージに感じられる。光らせることでよりはっきりとコクピット内部を見ることができるのも楽しいところだ。台座にもライトが仕掛けられており、ライトアップさせることが可能である。

腕を外してパネルを外すことでスイッチが確認できる。電池はネジ止めしたパネルの奥で、左右に入れる
ライト点灯。台座からの光も当てる

 スタッフ一押しの台座は、裏側に金属フレームが入っており、「解体匠機 νガンダム」を立たせても重さで台座がたわまない様にしているのだ。支柱もロック機構がついており、しっかりとガンダムを支えてくれる。支柱のデザインも凝っており、メカニカルな雰囲気が楽しい。

 支柱には作業用の足場が取り付けることができ、メンテナンスシーンをイメージしたジオラマとしての完成度を上げている。商品にはクレーン、宇宙服を着た作業員のフィギュア、アムロフィギュアも同梱されており、凝りに凝ったディスプレイが可能なのだ。

非常に凝った台座。裏に鉄のフレームが入っており、しっかりと支える
作業台を設置。作業員スタッフなどのフィギュアも同梱されている

 「解体匠機 νガンダム」は、これまでの商品とは次元の異なる、新しい世界を切り開く商品だ。だからこそ多くの苦労がかかった。最大のポイントは「この商品をいかに生産するか?」だったと野口氏は語った。

 腕1本、足1つとっても従来のプロダクト1つを凌駕する「解体匠機 νガンダム」。工場では複数の金型工場で分散して加工を行い、部位ごとに生産できる金型レイアウトを作り出した。量産するためにはいかに効率よく同時並行で商品チェックが進めらるかが重要となる。また、設計、部品の厚み、品質等、検証の積み重ねにより解体匠機が成立する。このため⼯場間の連携や全体のハンドリングに⼤きな課題があり、苦労をした点とのこと。

 「今回、このプロダクトは『究極のハイクオリティフィギュア』を⽬指したものです。玩具を超える“インテリア(室内装飾品)”のイメージに近いです。『解体匠機 νガンダム』を商品化できたことで、1つの到達点にたどり着けたと思います」と野口氏は語った。

 さらに野口氏は、「時代の変化も感じています。5年前、10年前ではできないことでした。今だから挑戦できた企画だと思います。この先に何を提供できるかがこれからの課題ですね」と言葉を続けた。そんな中で、もちろん「解体匠機 νガンダム」に続く提案も温めているという話も語っていた。

新たな世界を切り開く「解体匠機 νガンダム」

 本当に驚くべき商品だ。全体のシルエットに魅力があり、細部を見て驚かされ、さらに目を部品単位まで近づけるとそこにも凄まじい情報量があって改めてびっくりする。しかも内部パーツまである。本当にいつまででも見て、触っていたくなるアイテムである。まさに新しい時代を作る商品だ。これからどんな世界が待っているのか、ワクワクさせられる。