インタビュー

【特別企画】ロケットパンチ! 三段変形! 「超合金 ハローキティ」を触ってみた

はじめて触る人にも超合金という、“楽しいおもちゃ”を提供したい。プロデューサー・寺野氏の想い

子供の頃は超合金の思い出がないという寺野氏。超合金の歴史を学ぶことで、その“本質”を問いかけるようになったという
走行モードで使用する金属製の車輪。バンダイの乗り物をモチーフとした合金玩具「ポピニカ」の要素を取り入れたギミックだ
台座の「ちょうごうきん」の文字の右上のリボンは、サンリオ側のアイディアだという

――最初に、「超合金 ハローキティ」が生まれた経緯を教えてください。

寺野氏: 「超合金40周年」をアピールするための商品として、広く一般に知られているキャラクターを超合金化しようということになり、「ハローキティ」が候補に挙がりました。“超合金”というブランドをあまり知らない人にもアピールするキャラクターがよかったのです。そこで、サンリオさんに企画を持ち込み快諾いただけました。

 ハローキティを超合金化するにあたり、コンセプトは難航しました。ハローキティは様々なコラボレーションを行なっており、色々な形でグッズになっているキャラクターです。世の中にたくさんあるハローキティグッズとどう差別化するか、写真をぱっと見た時に「あ、ハローキティの超合金だ!」とわかってもらえるようにしたかった。そのため、頭部にコックピットをつけたり、ロボットの記号をたくさん入れたり、ロケットパンチをつけたりと、写真1枚でわかってもらえるようにしました。

 「超合金 ハローキティ」のコンセプトは、「はじめて超合金を触った人にも“おもちゃって面白いよね”と感じてもらえるもの」です。おもちゃとしての超合金、今回はロケットパンチや、関節の気持ちいいクリック感、重さ、コロ走行……色々な遊び方ができるおもちゃを目指しました。こういった要素をどこまで“本気”で盛り込めるかがチャレンジでした。

 例えば、純粋にコロ走行を楽しむならば、体を横に向けるとバランスは悪くなります。でも、ハローキティのポーズといえば足を横にして首をこちらに向けるポーズであり、この格好で走らせたかった。シルバーの車輪は、かつてバンダイが販売していた合金シリーズ“ポピニカ”のオマージュという側面もあります。ポピニカは車輪でコロ走行を楽しめるおもちゃです。「超合金 ハローキティ」は金属製の“フィギュア”ではなく“おもちゃ”なんです。

――「超合金 ハローキティ」で、寺野さんの一番のお気に入りのギミックはどこでしょうか?

寺野氏: 関節を動かした時のクリック感です。触って気持ちの良いクリック感、カメラのスイッチとかもそうですけど、「いかにもメカっぽい」。本来は決められたところにダイヤルが止まるための仕組みなんでしょうけど、何となく気持ちいいんですよね。「超合金 ハローキティ」は腕以外の関節にクリックを入れています。

2013年11月に開催された「TAMASHII NATION 2013」。超合金をテーマにした企画を行ない、新旧様々な超合金が展示されていた
「METAL BUILD デスティニーガンダム」。アクションフィギュアの要素を盛りこみ、金属パーツによる“質感”も重視したシリーズ

――寺野さん自身の「超合金」に関する思い出はどんなものがあるでしょうか?

寺野氏: 実は僕の子供の頃はあまり超合金が出ていなかったんです。仕事の上でも私は3年ほど前からコレクターズ事業部に所属しているのですが、当初手がけていたのは「ROBOT魂」ブランドなどで、“アクションフィギュア”としてのアプローチでロボットを立体化することが多かったんです。いつもロボットに、どのように関節を組み込み、動かすかを考えていました。

 超合金に関わったのは、「METAL BUILD」シリーズからです。こちらも合金玩具ですが、コンセプトはアクションフィギュアに近いアプローチですよね。重さや、金属パーツの見せ方は超合金ブランドと共通するのですが、“おもちゃとしての超合金”という仕事はあまり担当していなかったんです。

 転機は、昨年行なわれた「TAMASHII NATION 2013」で、このイベントのメインテーマが超合金であり、私は企画のメイン担当だったんです。この時自分はあまり超合金に関する知識がなかったので、資料などを集めて徹底的に調べました。栃木には「おもちゃの博物館 おもちゃのまちバンダイミュージアム」があるのですが、ここにも行って調べて、過去の商品を触ったり、超合金が好きな人に話を聞いたりして、ようやく自分なりの超合金の魅力が固まってきました。

――そういった“勉強”から見えてきた超合金の魅力とはどんなものでしょうか?

寺野氏: 自分が作ってきた“アクションフィギュア”とは違うなと。アクションフィギュアのアプローチとしては、「フィギュアをどこまでアニメの劇中に似せるか?」を追い求めていたんです。アクションフィギュアを手がけてた自分としては、正直、超合金は「古い」という程度のイメージしかありませんでした。

 ただ超合金の歴史を調べていくことで、「おもちゃとしての魅力の根幹を突き詰めている」というのがわかってきました。おもちゃが持つ魅力を活かすための手法、超合金が重ねてきたその技術は現在でもっと活用できるのではないかと思ったんです。そのノウハウを「超合金 ハローキティ」に注ぎ込みました。

――「超合金 ハローキティ」は最初に寺野さんが考えて会社に提案して実現したんですか?

寺野氏: はい。僕の方から提案しました。「超合金40周年になにをやるか?」というアイディアを求めている時に、「超合金 ハローキティ」を提案し、商品化が決定したという形です。

 本当にあの時期は大変でした。超合金の勉強を続けながら、イベントの企画準備、「超合金 ハローキティ」の企画、全てが同時進行でしたから(笑)。さらに5月に発売された「スーパーロボット超合金 カンタムロボ」もこのタイミングで提案しました。

 こちらは「クレヨンしんちゃん」が実際に劇中で持っているおもちゃというなので、合金を使ったりねじ穴はあえて埋めなかったり、「超合金 ハローキティ」同様におもちゃとして作っています。「クレヨンしんちゃん」のファンの世代は、超合金との接点がない人が多いので、そういった方にも超合金の魅力が伝わる商品にしました。こちらもほぼ同時でしたねえ(笑)。

 ただ、「スーパーロボット超合金」はアクションフィギュア寄りのブランドですので、劇中のポーズがきちんと再現できたり、ロケットパンチも「超合金 ハローキティ」の用に実際に発射するのではなく、パンチを外して発射しているシーンを再現できるように気をつかっています。別売りの「スーパーロボット超合金マジンガー武器セット」のエフェクトパーツも使えるようにしました。

【スーパーロボット超合金 超電導カンタム・ロボ】
アニメ「クレヨンしんちゃん」に登場するロボットを立体化。“しんちゃんが持つおもちゃ”というイメージも盛り込まれている

寺野氏の言葉からは、“おもちゃ”に対する強い思い入れが伝わってくる

――寺野さんご自身は玩具業界を志すきっかけは何だったでしょうか?

寺野氏: 元々おもちゃが好きだったからです。触って楽しめる、お客様に遊んでもらいたいおもちゃが作りたくてバンダイに入りました。アクションフィギュアは、お客様に色々なポーズをとる遊びをして欲しい。だからこそより楽しく遊んでもらえるように、フィギュアを劇中のロボットに近づけます。“遊んでもらうおもちゃ”を作る、というのが理想です。

 商品によってバランスは変わる。関節の強度を上げるために可動範囲を狭くするのも、ポーズの自由度を求めるために可動範囲を幅広くするのも、ケースバイケースです。「この商品を欲しがる人は、どんなおもちゃを求めているか?」ということを考えて仕様を決めていきます。方針ではなく、商品ごとにバランスを考えています。

――「超合金 ハローキティ」もそういったバランスを考えていった上で、現在の形になったんですね。

寺野氏: 繰り返しになりますが、「超合金 ハローキティ」は、はじめて超合金を触る人も多くなると思うので、わかりやすく作りました。今回は、「超合金らしさって何だろう?」というところを考えてから、その手法でハローキティを表現するという発想で作っていきました。もし、「ハローキティのおもちゃを作る」というテーマだったら、全く違うおもちゃがになったと思います。

――寺野さんの次回作はどのようなものでしょうか?

寺野氏: おもちゃショーで発表しましたが「超合金 超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」です。「超合金 ハローキティ」とはまた違う、超合金の“合体変形”という魅力を押し出した商品です。藤子・F・不二雄キャラクターズと合体はギャップが大きく感じますが、その分、幅広い層に超合金の魅力を知ってもらえるような商品になればうれしいです。

――超合金とは縁遠いキャラクターを超合金化する、その方程式がある程度できたというような感じがしますね。

寺野氏: いや、方程式が固まるというわけじゃなく、キャラクターによってアプローチは毎回変わってきます。そのため、やはり「超合金らしさって?」という問いかけはとても難しいと思っています。

 「超合金 ハローキティ」には採用しませんでしたが、“合体”も超合金を象徴する要素ですし、そもそも合体の仕方だって色々あります、合体1つとっても、5機のメカが合体する「コンバトラーV」と、“合身”と呼ばれるロボットの中にロボットが入る手法もある。車が合体するのか、人型が集まって巨大ロボになるのか……「ダルタニアス」なんて、人型と、ライオンと、戦闘機の“異種合体”ですからね。“超合金ぽさ”というのは、本当に色々あるんですよね。

 今回の「超合金 ハローキティ」は“初めて触れる超合金”というテーマだからこその表現です。他のキャラクター、テーマでは全く違うけど、それでいながら超合金らしさを感じさせるものにしなくてはいけない。毎回リセットして、考えていきます。

――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

寺野氏: 「超合金 ハローキティ」は超合金40周年と同時に、ハローキティ40周年だからこそ実現できた商品です。その特別感を感じていただきつつ、できれば、実際に「超合金 ハローキティ」を手に持ってこの大きさでしっかり重い、超合金ならではの重さを感じて欲しいです。

 箱の状態でも結構。持っていただければ十分に重量感を感じてもらえます。手に持って欲しいです。触っていただければ金属ならではのひんやりした感じも、
グッとくると思います。

 そして、今年は「超合金40周年」として、「超合金 ハローキティ」だけでなく、「超合金 太陽の塔」や新作の「超合金 超合体SFロボット 藤子・F・不二雄キャラクターズ」他にも現在はまだ秘密のものもたくさんあります。まだまだご期待下さい。