インタビュー

「カオスヒーローズオンライン」開発/運営チームインタビュー

“AOS”の魅力とは? 本作ならではのユニークなシステムについて聞いた

3月収録

 ここ数年、世界でAOS(The Real Action Oriented Strategy)ジャンルのゲームが人気を博している。

 AOSとはRTS(Real Time Strategy)をベースにした対人戦のゲームのジャンルだ。5人でチームを組み、協力して相手チームにある本陣を破壊したチームが勝利となる。通常のRTSでは内政、軍事など全てをプレーヤー1人で行ない、時には数十体以上のユニットを操作することもあるが、AOSではプレーヤーはヒーローと呼ばれる1体のユニットだけを操作するのが大きな違いだ。

 元々はユーザーMODとして登場したジャンルだが、昨今では様々なタイトルが登場しており、例えば「League of Legends」というタイトルでは2012年10月の段階でアカウント数7,000万、月間のアクティブアカウント数は3,200万だという。他にも「Dota 2」や「Heroes of Newerth」といった同ジャンルの他タイトルも人気を博しており、世界中で賞金付きの大会などが開催されているほか、e-Sportsリーグの種目として採用されているタイトルもある。

 しかしこれらのタイトルは全て海外製のゲームであり、日本語にローカライズした上で日本展開を果たしたものは皆無だ。英語版で遊ぼうにもインターフェイスは基本的に全て英語、プレーヤーも英語圏のプレーヤーが多く、我々日本のプレーヤーにとっては敷居が高いため、まだ日本ではそれ程浸透していないジャンルだ。

 そんな中、セガが韓国のデベロッパーNEOACTとタッグを組み、AOSタイトル「カオスヒーローズオンライン」の日本サービスを予定している。今回はそもそもAOSとは何か、本作の魅力はどこにあるのか、セガが運営する強みなどを開発プロデューサーのJung Keuk-Min氏、カオスヒーローズオンラインの日本側のサービスを円滑に行なう役割のサービスコーディネーターのYoon HyeJung氏、そして日本サービスのプロデューサー遠藤峻亮氏にお話を伺った。

「カオスヒーローズオンライン」の魅力とは?

NEOACT社 開発プロデューサーのJung Keuk-Min氏
SESISOFT社 日本サービスコーディネーターのYoon HyeJung氏
セガ 国内サービスプロデューサーの遠藤峻亮氏

――まず「カオスヒーローズオンライン」の概要について教えて下さい。

Jung Keuk-Min氏:本作は「神聖連合」と「不死軍勢」という2陣営に分かれて戦うAOSです。神聖連合は個々のヒーローの強さは控えめですが、味方同士が集まると大きな力を発揮します。逆に不死軍勢は個々のヒーローが強めになっているのが特徴です。

――同じジャンルのタイトルとして「League of Legends」や「Dota 2」などが人気を博していますが、それらのタイトルに比べて、「カオスヒーローズオンライン」がユニークな点を教えて下さい。

遠藤峻亮氏:同ジャンルの他のゲームですと、レーン(プレーヤーや雑魚モンスターが通るルート)が基本的に3本あるんですが、「カオスヒーローズオンライン」は試合中に木を切り倒して新たなルートを作成できるので、攻め方の幅が広がり、どういう戦略を立てるかが面白いと思います。

 また「ワープゲート」というシステムがあります。マップの上端と下端にゲートが設置されていて、そのポイントにヒーローが移動すると反対側のゲートに一気にワープできるというシステムです。ですがワープゲートが使えるのは同時に2ヒーローまでで、3ヒーロー以降は30秒の待ち時間があり、どのヒーローがワープするかなどの駆け引きの要素があります。この様にユニークなシステムがありますので、同ジャンルのゲームの定石がまったく通じないという事も起こりえると思います。

Jung氏:本作は少し違ったゲーム性を持つように設計しています。先ほど遠藤さんがおっしゃっていたように、木を切ってオリジナルのルートを作れるというのもそうですし、他にも「Warding(視界を確保するアイテムをマップに設置し敵の動きなどを監視すること)」といったシステムはありません。

 また他の作品では本陣付近など決められた場所でしかアイテムを購入できませんが、本作ではどこでもアイテムが購入できるようになっています。このシステムはできるだけ戦闘の本質部分を重視し、戦闘とあまり関係のない部分を排除したいという思いでこの様な仕様にしています。見た目にもこだわっていて、スキルのモーションやエフェクトも見た目が派手で、プレーヤーが強さより実感できるようになっているので、その点も特徴的だと思います。

遠藤氏:さらに日本ではセガが運営するという強みを生かして、セガの持つ様々なキャラクターを投入していく予定です。ここは他のゲームとかなり差が付く点だと思っていて、既に現時点で何キャラクターか開発を進めています。

――例えば「ソニック」の様なキャラクターが登場するということでしょうか。

遠藤氏:古い新しいを問わずそういうキャラクターがどんどん出てきます。「懐かしいなぁ!」というのも出てくるかもしれません。このジャンルはキャラクターがどれだけ魅力的か、という点が鍵になると思っているので、セガが運営するというのは武器になると思っています。また、不具合が出た際の対応スピードの速さも強みの1つです。日本と韓国ですと時差がないので、スムーズな対応ができるような体制になっています。

プレーヤーはマッチング時に「神聖連合」か「不死軍勢」を選択する。フロンティアテストでは各陣営10種類のヒーローが選択できる

気になる使用可能なヒーローについて

――AOSの中心はヒーローキャラクター達になりますが、現時点で何体くらいのヒーローが実装されていますか?

Jung氏:正式サービス中の韓国では戦士や魔法使いといった様々なタイプのヒーローが70種類実装されています。各陣営35種類ずつ、各ヒーローの役割が被らないようになっています。例えば相手陣営のヒーローの攻撃を受け止めるタンクの役割でしたり、相手にダメージを与えるアタッカーの役割のヒーローや、建物を破壊する役割のヒーローなどがいて、5人で上手く役割分担して戦えるようになっています。

――最初からこの70種類のヒーローを自由に選べるのでしょうか?

遠藤氏:日本で行なわれるフロンティアテスト(クローズドβテスト)では1つの陣営で10種類、両陣営で合計20種類が使用できる予定です。

――その20種類のヒーローは最初から全て使うことができますか?

遠藤氏:20種類のうち10種類、各陣営5種類のヒーローは基本のヒーローという扱いでいつでも使えます。残りの10種類のヒーローは1日2個ずつ支給される「魔力石」というアイテムがあるのですが、それを消費することで1日2回まで使用出来ます。そこで気に入って使い続けたいなと思った場合はゲーム内通貨を支払い、ヒーローと「永久契約」を行なうとアンロックされていつでも使用できるようになるというシステムになっています。

――ヒーローの成長は毎回リセットされますが、プレーヤー自身の成長要素はありますか?例えば「League of Legends」などですとプレーヤー自身のレベルがあり、レベルが上がることでアンロックされる要素などがあります。

Jung氏:はい、経験値とGPというゲーム内通貨のシステムがあります。経験値を貯めるとプレーヤーレベルがアップし、GPを貯めるとヒーローのアンロックが行なえます。

――プレーヤーレベルを上げるとどんなメリットがありますか?

Jung氏:ゲームプレイが有利になるといった要素はなく、名誉の意味が強いです。プレーヤーが称号を得たり名前に色をつけたりと、他のプレーヤーに見た目で差をつけることができるシステムです。

――ヒーローの永久契約以外にGPの使い道はありますか?

遠藤氏:一部のアバターアイテムの購入や、キャラクターを少し強くする「カード」というアイテムの購入に使用します。

ヒーロー達の派手なスキルエフェクトも本作の魅力の1つ

ヒーローを自分好みにカスタマイズできる、「カード」システムと「アバター」システム

アバターを使うことでヒーローのグラフィックに幅が出る

――「カード」について詳しく教えて下さい。

遠藤氏:ヒーローに装備する装備品をイメージして頂ければわかりやすいと思います。ヒーローにはカードを装備するためのスロットが用意されていて、そこにカードを装備していくというイメージです。

――カードの種類は何種類くらいあるんでしょうか。

遠藤氏:ヒーローは大別して、力、敏捷、知能の3タイプに分かれています。今のところそれぞれのタイプに3種類ずつ用意されているので合計9種類が実装されています。同時に装備できるのはその中で1種類だけですが、今後拡張する予定もあります。

――カードにはどんな効果があるんでしょうか?

遠藤氏:実はカードを装備したからといって極端にパラメータが強化されるという事はないんです。例えば魔法をメインに使うヒーローですと、魔法攻撃力を追加して攻撃に特化する、魔法防御力を追加して防御に特化するといったように、自分のプレイスタイルに合わせて、ヒーローの性能を特化させるというシステムです。

――ということは、カードを持っているプレーヤーが必ずしも有利になるというわけではないんですね。

遠藤氏:その通りです。カードを持っていないプレーヤーも参加するので、カードの有無で極端に強さが変わると、ゲームの面白さが損なわれてしまうと考えています。あくまでもヒーローの特性を変化させるというイメージです。カードが有れば自分の好きな方向性に近づけることができますが、カードがなくても問題なく戦えるようになっています。

――アバターにもカードのように効果が付いているんですか?

遠藤氏:アバターは完全に見た目だけです。キャラクターやアバターは課金でも購入できるので、アバターに効果を付与すると課金したプレーヤーが強くなり不公平感が生まれてしまいます。そうならないようにしています。

――「課金でも購入できる」ということはGPでもアンロックできるという事ですか?

遠藤氏:ヒーローやカード、一部のアバターがGPでアンロックできますので、手っ取り早く色んなヒーローを使いたいプレーヤーは課金してアンロックするなど、プレイスタイルにあわせて選択して頂ければと思います。アバターに関しては基本的には課金でアンロックする様に考えています。

――アバターは何種類くらいありますか?

遠藤氏:現時点で50種類以上は準備しています。韓国の方ではもっと多くて80種類以上が実装されていますし、今も随時アバターが追加されていますので、日本でサービスが始まる頃にはかなりの数のアバターが用意される予定です。その中からどれを実装していこうかという検討を進めています。もちろん新規のアバターも準備しているので、ぜひ楽しみにしていてください。

――どんなアバターがあるか教えていただいても良いですか?

遠藤氏:例えばですが、男性の大好きな水着のアバターがあって、これは韓国でもかなり人気あります(笑)。実は本作のアバターシステムは見た目だけでなく、キャラクターボイスまで変わる様になっていて、先ほどの水着のアバターですと、ゲーム内のボイスが夏の水着を着ているっぽいセリフに変化します。またスキルエフェクトも変化し、通常時は魔法を撃っていたのが、水着のアバターを付けると水鉄砲を撃つアニメーションに変化します。スキルまで変化するのは斬新なシステムでアバターに高級感もあると思います。

――ボイスの種類は相当な数になりますよね。

遠藤氏:そうですね、日本サービスでは各ヒーロー毎に個別の声優さんにお願いする予定です。通常のキャラクターで40~60種類以上のボイスがあって、アバターが1種類増えると更に40種類位増えるイメージです。ここは大変ですがプレーヤーさんに楽しんでもらえるように頑張っています。今までシリアスだったキャラクターがはじけたボイスになったりするので、様々なセリフを聞くのも楽しみの1つだと思います。

対人戦がメインのタイトル。世界大会も視野に入れ、AOSというジャンルを日本にも普及させていく

――ゲームの対戦ルールについて教えて下さい。5対5の対人戦以外にどのようなルールがありますか?

Jung氏:ゲームの中ではマッチメイクという機能があり、これは基本的に5:5です。他にカスタム戦というルールがあり、こちらは2対1で対戦したり、プレーヤー5人対5体のAIなど、柔軟なルールが設定できます。

Yoon氏:9年前の「Warcraft 3」のMODとしてAOSジャンルが生まれ、韓国ではそこからプレイしているユーザーが多いので慣れているプレーヤーが多いんです。ですが日本では初めてAOSというジャンルを紹介しますので、日本でサービス開始する際はガイドやチュートリアルなどを充実させる予定です。

 例えばコンピューターを相手に戦うAIモードでは、韓国では難易度が1つだけですが、日本サービスでは3段階の難易度を用意する予定です。今後も日本のユーザーに合うAIやモードなどを用意していく予定となっています。

――ランキング要素はありますか?

Jung氏:はい、対戦結果はランキングに反映されます。もちろん友人と一緒にプレイしたり、クラン戦を行なうこともできます。マッチメイクのランキングとクラン戦のランキングは別に実装されています。

――本作は日本だけではなく、海外でもサービスしているタイトルですよね?

Yoon氏:2011年に韓国でサービスを開始し、その後インドネシアでもスタートしました。今年4月にタイでもサービス開始予定で、今年中に中国と台湾、ヨーロッパでもサービス開始予定です。

――今サービス中の2カ国でどのくらいの数のプレーヤーがプレイされているんですか?

Yoon氏:韓国では70万人がプレイしていて、今も増え続けているので今はもっと多くのプレーヤーが参加していると思います。

――AOSというジャンルは世界中の様々なe-Sportsのリーグなどで採用されています。韓国でも大会などを開催されているのでしょうか。

Yoon氏:韓国で正式サービスを開始した後様々な大会を開催していて、例えば女性プレーヤーがメインとなる大会なども展開する予定があります。また公式大会だけでなくユーザーが自発的に大会を行なったりもしています。

――日本でも大会などを開催する予定はありますか?

遠藤氏:はい、日本でもオフラインイベントなどを企画していて準備もかなり進んでいます。あとはリリース後に発表するだけという段階です。やはりAOSはe-Sportsジャンルですのでオフラインで盛り上がらないと、ジャンル自体が浸透しないと思っています。ですのでオフラインは抑えるべきポイントだと思っていて、随時行なっていく予定です。

――今後世界各国でサービス開始していくわけですが、国際大会などの予定はありますか?

遠藤氏:是非やりたいですね。

Yoon氏:実は既に準備が進んでいる国もあります。

――最後になりますが、日本ユーザー向けにコメントをお願いします。

Jung氏:AOSというジャンルは非常に魅力的で世界でも流行しているジャンルです。1度触って頂ければ面白さがわかって頂けると思います。その中でも「カオスヒーローズオンライン」は他のゲームと異なる点が沢山ありますので、違う楽しみ方ができると思います。ぜひ楽しんでください。

Yoon氏:「カオスヒーローズオンライン」はすごく楽しいゲームに仕上がっていて、みんなで楽しめるゲームです。現時点でもヒーローは70種類以上実装されていますし、今後も月に2体位のペースで新たなヒーローを実装していく予定です。ぜひ好きなヒーローを見つけて遊んでみてください。遠藤プロデューサーが日本のプレーヤーのために開発元に様々な提案をしているので、世界の中で日本が1番ローカライズに力が入っている国です。セガもNEOACTもがんばりますので宜しくお願いします。

遠藤氏:まずは日本でAOSというジャンルを流行らせないと始まらないと思っています。ライバルタイトルと言われるタイトルもいくつかあるんですが、ライバルと思わず、日本と一緒にAOSを展開していく仲間として一緒に頑張って行きたいなと思っています。その中でも「カオスヒーローズオンライン」は「細かいところまで調整が行き届いていて面白いな」と、プレーヤーの皆さんにと言ってもらえるように皆さんからの意見を吸い上げて、面白いゲームを作って行きたいです。まずは一緒にAOSを一緒に流行らせましょう。

――ありがとうございました。

(八橋亜機)