インタビュー

現在の日本人の傾向に「Fallout 76」はどう向き合うか? 開発者インタビュー

現在の「Fallout 76」はどんな世界か、初心者はどう生き抜けばいいのか?

【Fallout 76】
2025年12月2日「Burning Springs」アップデート実装

 ゲーム、マンガ、アニメ、ドラマ……エンターテイメントコンテンツは人々の生活にどのような影響を与えるだろうか? Bethesdaは、調査会社に依頼し、ゲームや動画コンテンツに親しむ日本の成人1,000人以上を対象としたオンライン調査を実施した。

 その調査により見えてきたのは、エンターテイメントコンテンツが人々の"アイディンティティの一部"として重要なものとなっているということだ。例えばドラマを気に入った人がそのドラマの原作のマンガを読んだり、関連グッズを買ったりする。さらにそのコンテンツをきっかけに友人を増やしたり、劇中のキャラクターのコスプレをしたりする人までいる。好きなコンテンツがどれだけその人の生活に影響を与えるか? Bethesdaは近日その詳細な結果を公開するという。

 Bethesdaがなぜこういった調査をしたか? それはエンターテイメントコンテンツの中でも"ゲーム"はドラマや映画、漫画などの世界にプレーヤーとしてその中に入ることができる特別なコンテンツだからだ。ゲームでは劇中世界の様々な場所を歩いたり、登場人物と話をすることができる。ゲームによっては、原作と異なる物語を探ることすらできる。

 逆にゲームが原作のドラマはどうだろう? Amazonのドラマ「Fallout」はシリーズの"空気"を再現、様々な生き物だけでなく、人々の生活、派閥の争いなど、ゲームの要素をしっかり盛り込み、ゲームファンをうならせるほどに作品世界を表現した。そしてドラマを見た人が「ドラマで描かれた世界を歩いてみたい!」とオンラインゲーム「Fallout 76」をプレイしているというのだ。

 より深いエンターテイメント体験を求める人々に対し、Bethesdaは、そして「Fallout 76」の開発者はどのように応えていくだろうか? 今回は「Fallout 76」開発者、Bethesda Game Studiosの「Fallout 76」クリエイティブディレクター ジョナサン・ラッシュ氏と、プロダクション ディレクターを務めるビル ラコステ氏に話を聞いた。

 今回のインタビューでは特に現在の「Fallout 76」の魅力は何か? プレーヤーコミュニティはどのようになっているか? 初心者はどのように遊べるか? といった現在の「Fallout 76」の世界の特徴を語ってもらった。

【Fallout 76 -「Burning Springs」トレーラー】
【「Burning Springs」アップデート】
2025年12月2日よりスタートした新アップデート「Burning Springs」により、かつてオハイオ州と呼ばれた新地域「バーニングスプリングス」が解放され、プレーヤーはウェイストランドにやってくる新たな派閥、ユニークな武器や装備と出会うことになる。
そして「Fallout」ドラマシリーズでお馴染みのザ・グールが「Fallout 76」に登場し、新しいタイプのミッション、賞金稼ぎを提案してくる。新たに実装された血なまぐさいレイダー仕様のオブジェクトも注目だ

ドラマ「Fallout」によって活性化した「Fallout 76」の世界

ジョナサン氏:まず最初に、私たちがどのように日本人プレーヤーに働きかけたか、説明させてください。Bethesdaは世界中のゲームをプレイしたり動画コンテンツをストリーミング視聴したりする日本の成人1,000人以上を対象とし、エンターテイメントコンテンツをどのように楽しんでいるか、どういったことに興味があるか、どんなコミュニティ活動を行っているかなど、調査会社を通じてアンケートを行いました。

 そこから見えたのが、日本人にとってエンターテイメントコンテンツそのものが、それを愛する人々の“アイデンティティーの一部になっている”ということがわかってきました。例えば回答者の30%が特定のシリーズのファンであること、コンテンツのエッセンスが自分に影響を与えていると言うことでした。

Bethesda Game Studiosの「Fallout 76」クリエイティブディレクター ジョナサン・ラッシュ氏
プロダクション ディレクターを務めるビル ラコステ氏

 そして60%の人が現実世界でそれらに関係のある行動を起こしています。コンテンツに関する書籍やマンガを読んだり、グッズを購入したり、コンテンツをきっかけに新しい友人を作ると答えた方もいました。コンテンツがその人の生活そのものに何らかの影響を与えているということです。

 その上で私たち「Fallout 76」開発者は何をすべきかを考えました。私たちのプレーヤーもドラマ「Fallout」からゲームに興味を持った、という方もいました。ドラマを見ることで好奇心が刺激されたり、キャラクターに感情移入し、ゲームに触れてみたという人もいることがわかりました。彼らは、ドラマで見た要素を実際にプレーヤーとしてゲームで実際体験することで、この世界に没入したいと「Fallout」シリーズを始めたとのことです。

 オンラインゲームである「Fallout 76」は”没入感”を感じるのにぴったりなゲームです。ゲームの中で世界を思う存分探索できますし、現実に世界のどこかで住んでいる人と友人になれます。実際にその世界に生きているかのように没入できます。今回は改めて、より多くの人に「Fallout 76」の世界とコミュニティの魅力を日本のプレーヤーの皆さんに知ってほしいと思っています。

「Fallout 76」は他のシリーズ同様核戦争で現代文明が滅んだ世界が舞台となる。他のシリーズより過去の時代を舞台としている。サービス開始から7年が経過し、様々な新地域が追加、既存のフィールドも変化している
ドラマ「Fallout」は「Fallout」の世界を非常にうまく表現しており、ゲームコミュニティを活性化させている

――ドラマ「Fallout」は「Fallout 76」の世界を活性化させましたか? その手応えを教えてください。

ビル氏:ドラマ「Fallout」は「Fallout 76」の世界を活性化させてくれています。新しくゲームを始めるだけでなく、ドラマに刺激されこの世界に戻ってきた人も多いです。なぜならばドラマ「Fallout」は「Fallout」シリーズの世界を非常にうまく表現しており、「Fallout」ならではの世界観がしっかり感じられる作品になっているからです。

 ドラマのキャラクターの設定、そして彼らが歩く環境、出会う物事、彼らに起こる「Fallout」シリーズならではの事件や、人々の関わり……。ドラマの感覚は「自分もあの世界に行ってみたい」という気持ちを強くさせます。「あの世界を歩いてみたい」、「もう一度あの世界を体験したい」そう思った人たちが「Fallout 76」を活性化させてくれています。

――様々な国でアンケートを採ったと言うことでしたが、日本の特徴、他国と大きく違った点はありましたか?

ビル氏:特に「Fallout 76」の日本人プレーヤーに見られる特徴ですが、「非常に創造的である」というのが、彼らの大きな、そして印象的な特徴です。それはアンケートだけではなく、「Fallout 76」の世界での彼らのプレイスタイルから強く感じました。

 「Fallout 76」では自分の拠点の「キャンプ」が作れるのですが、そこに通常のプレイと明らかに違う、普通では考えつかないようなアイディアが盛り込まれているのです。私はプレーヤーとして機能を重視した最小限の建物を作るだけです。

 しかし日本のプレーヤーは様々なものを組み合わせ「チェーンソー」とか「バイク」とか、本来この世界にないものを作り出しているんです。なかには「巨大な魚」を作ったプレーヤーもいます。通常では思いつかない、「どうやったら作れるんだ?」と思わせるものを生み出しているんです。

7年間熟成された「Fallout 76」のコンテンツが、新しいプレーヤーを待っている!

――活性化し、この世界を訪れる人が多くなっている状況を受け、「Fallout 76」の開発者/運営者として、今後どんなことをしていきたいでしょうか?

ジョナサン氏:我々は今後数年先まで様々なコンテンツを投入する計画を立てています。……ただ具体的な内容を今話すことはできません。お話ができる「今後の方向性」として、プレーヤーはこの世界に生きていく中、「ストーリーを紡ぎ出していく」、「様々な物を創造的に作り出していく」といった体験に対して期待が高い、ということを感じています。私たちはこれに応えていきたい。

 私たちもこの世界に「ストーリー」をもたらし、「スカイバレー」や「バーニングスプリングス」といった新しい地域をさらに拡張していき、様々な体験をプレーヤーにしてもらいたいと考えています。

――現在は以前のように数時間もゲーム世界に没頭するようなプレイスタイルそのものが、スマホゲームなどの普及により、難しくなっているのではないか? と感じています。こういったユーザーの嗜好の変化に、「Fallout 76」はどのように対応していますか?

ジョナサン氏:私の子供も映画を1本見ることが困難になっています。普段はYouTubeのショート動画や、TikTokなど短時間のコンテンツを好む傾向があります。現在のユーザーの嗜好は変わってきている。だからこそそういった人々にも楽しめるように「Fallout 76」は工夫しています。本作にはバックグラウンドとして壮大なストーリーを描きつつ、クエストなどのコンテンツは短時間で楽しめます。さらにマップ上にたくさんのアクティビティを用意することで、短時間の冒険を好むユーザーに対応できるように設計しています。

ビル氏:ゲーム内のイベントやボス戦などは5~7分程度でクリアできるようなアクティビティをたくさんちりばめています。または、10分くらい遊んでいったん離れ、また遊んで前回の続きから始める、ということができるコンテンツもあります。

 以前から実装されているコンテンツ、例えば「レイド」では20名のプレーヤーが必要で、プレイ時間も5~6時間かかるというものもありました。その中で現在の「Fallout 76」では1回のプレイ時間が短い時間での挑戦でも、しっかりとキャラクターが成長することが実感できるデザインへと進化していきました。

 こういった我々の工夫は長く世界に没入することを好む「Fallout」シリーズのファンだけでなく、ライトなプレイを好む新しい層のプレーヤーにも好まれるゲームへと進化し、スマホゲームに親しむようなプレーヤー達にも訴求できる作品になったと考えています。

――私は「ウルティマオンライン」から、15年以上オンラインゲームに没頭していたのですが、テキストで仲間と話していることが多かった時代では、性別の異なる、現実では男の人なのに女の子のキャラクターを使い、他のプレーヤーにも自分が女だと信じ込ませる、“ネカマ(ネットオカマ)”というプレイスタイルをとる人がいました。ボイスチャットを行える「Fallout 76」ではそういったプレーヤーは減ったのではないでしょうか? 日本では女性のふりをすると助けてもらったりすることが多かったんです。

ジョナサン氏:私も「ウルティマオンライン」を遊びすぎて大学の単位を落としかけました(笑)。……ただ、「Fallout 76」でもあまりボイスチャットを行っているプレーヤーは多くないのではないかと思っています。

ビル氏:そうですね、ボイスチャットはごく親しい人とくらいしか使いません。テキストチャットも実はあまり使われていないです。親しい人以外はあまり話をしないんですよ。そして、男性でも普通に女性キャラクターをプレイしていますが、過度に性別を偽って自分が女性であることを主張する……ひょっとしたら一部のコミュニティにはそういう人もいるかもしれませんが、あまりいないと思います。

 一方で、「Fallout 76」は女性男性分け隔てなく、「助けてくれるプレーヤー」が多いのが特徴の1つだと私たちは感じています。言葉は交わさずとも有用なアイテムを目の前に落としてくれたり、敵に襲われているときに助けてくれたりと、親切なことをしてくれるプレーヤーが多いので、自分もそういった行動をしたくなります。

 私たち開発者は「Fallout 76」の世界は、他の「Fallout」シリーズ同様文明が滅んだ荒廃した世界なので、人々は他の人のアイテムを狙い、ひたすら殺し合うような殺伐とした世界になるかもしれないと、サービス開始時は思っていました。しかし現在の「Fallout 76」はプレーヤーが助け合う、非常に暖かい世界になっています。

――過酷な世界を演出している「Fallout 76」だからこそ、プレーヤーは助け合い、この世界で生き延びようとしているんですかね?

ジョナサン氏:もちろんそういった面も否定できませんが、「Fallout 76」の暖かさはそれだけじゃないと思うんですよ。荒廃した世界を舞台にしたオンラインゲームは他にもありますし、そこでは殺し合いが日常のような殺伐とした世界になっている作品もあります。そこではもちろん助け合いは存在しません。「Fallout 76」はそうではなく、助け合う世界となった。それは「Fallout 76」のコミュニティの特徴の1つとしてしっかり定着しているんです。

――日本にも「Fallout 76」のコミュニティがあります。これから「Fallout 76」を始める人は、積極的にコミュニティに入るのがいいでしょうか?

ジョナサン氏:私は初心者へのアドバイスを求められたら、「ぜひデスクローアイランドに行ってみて欲しい」と答えています(デスクローは『Fallout』シリーズの最強/最凶モンスター。デスクローアイランドにはこのモンスターが棲息している)。この世界の過酷さと、シリーズで恐れられたモンスターを見ることができるからですが、本当に具体的なアドバイスはビルに任せましょう。

ビル氏:初心者の方は、まず1人でこの世界を探索して欲しいです。ストーリーを進めるもよし、モンスターとの戦いに明け暮れるのも、生産を始めてみるのも、やりたいように進めていって欲しいです。他の方のキャンプを覗いてみて、その作りに面白がったり、自分のキャンプの参考にしてもいいでしょう。まずは1人で「Fallout 76」の世界を楽しんで欲しいです。

 パブリックチーム(各が別々に行動するが、目標を達成することでボーナスがもらえる。プレーヤーメニューから気軽に参加できる)に入ってみるのもオススメです。他のプレーヤーの元に瞬間移動ができたり、一緒にクエストに挑戦もできます。

 なんといっても「Fallout 76」には7年も進化し続け、追加され続けているコンテンツがあります。まずは1人でこれらのコンテンツを満喫していただきたいです。「アパラチア」、「オハイオ」、「スカイバレー」これらをどんどん探索してください。

――日本のプレーヤーの皆さんにメッセージをお願いします。

ジョナサン氏:: Bethesda Game Studioは世界最高のコミュニティを持っていると誇りを持っています。私たちにとって日本のコミュニティも非常に大切だと考えています。皆さんの継続的な応援、特に皆さんの熱い、熱のこもった応援に感謝しています。これから先何年もお付き合いください。

ビル氏:日本の皆さんから非常にたくさんのフィードバックをいただいており、感謝しています。そして何よりキャンプです。あなたたちが作る、私の想像を超えた驚異的なキャンプを見せてくれることにはとても感謝しています。私個人では本当にどう頑張ってもあれだけのものは作れません。皆さんの創造性と、常識を超えた発想力はとても尊敬しています。私たちは皆さんに喜んでいただけるアップデートをこれからもどんどんしていきますので、これからもご期待ください。

――ありがとうございました。

開発者をうならせた日本人キャンプ

 ここからはBethesdaから提供された日本人プレーヤーのキャンプを紹介したい。ゲーム内のオブジェクトを組み合わせて作るキャンプの建物はデザインや使うパーツが似たような物になりかねない。しかし今回紹介するプレーヤー達はオブジェクトを非常にユニークに使い、そして独自の世界観を生み出している。

 スクリーンショットから伝わるその驚くべき世界を堪能して欲しい。今回は提供されたアンケートからコメントを抜粋して紹介したい。

【OBORO氏のキャンプ】
こちらはOBORO氏のキャンプ。密度が非常に濃く驚かされる
OBORO氏のキャンプのコンセプトは「ぼーぼーもじゃもじゃ」。事前に脳内で設計してから構築することが多いが。その設計起点は、アパラチアを駆け巡り、お気に入りのロケーションを探し、深い森林の奥地やスカイラインバレーの絶景、滝のほとりなど、風景そのものがインスピレーション源になるとのこと
【スシモンスター氏のキャンプ】
スシモンスター氏のキャンプ。「Fallout 76」の世界に突然日本家屋が現れるという衝撃が面白い。「直感とリアリティ」がスシモンスター氏のスタイルとのこと
「その場のひらめきで作っていて、日常生活で見つけたものからインスピレーションを得たり、好きな世界観を想像してみたりと、使いたいキャンプアイテムを使ってみたり、割と気分で作っています!」とのことだ
【Voltex氏のキャンプ】
Voltex氏のキャンプ。現代のおしゃれな家のようなスタイル。「Fallout」の世界観を活かしながら、独特のセンスで作られている
「土地にマッチしたキャンプが作れた時があって、それ以来どハマりしました!」とのことだ
Voltex氏のキャンプのスタイルやこだわりは「一つのコンセプトを決めてフォールアウトの世界に沿った作品」。「大雑把なコンセプトを決めたら閃きで作ります」だという
【ホワイト氏のキャンプ】
ホワイト氏のキャンプ。「昔から物作りが好きなことと建築業のお仕事をしてると言うのもありcampを作り始めました!」とのこと。ゲームの世界を忘れてしまうような世界観だ
「創造した物をcampで形にする」というのがスタイルとこだわりだという
「ロケーションに因んだ構造物や乗り物などなど調べた写真を参考にしつつ、アレンジを加えて作ることが多い」という。インスピレーション源は「写真」だけでなく「構造物を見に自ら行き参考にすることもある」という

 長く続くオンラインゲームは「新規プレーヤーをどう取り込むか」が大きな課題だ。本作においてはドラマ「Fallout」が新規の人だけでなく、これまでのシリーズのファンを「Fallout 76」に誘い込むきっかけになっている。本作には7年の積み重ねによるコンテンツがあり、プレーヤーを飽きさせないだろう。

 その上で今回紹介した「日本人プレーヤーのキャンプ」はとても面白い要素と言える。他の「Fallout」シリーズではこのように他のプレーヤーの"作品"をゲームの中で見ることはできない。プレーヤーは彼らが作ったキャンプをただ見て回るだけでも楽しだろう。もちろん今回紹介した技巧を凝らしたキャンプだけでなく、効率重視なキャンプ、掘っ立て小屋のようなものもある。途中で作るのをやめた廃墟もあるかもしれない。そういったプレーヤー活動を見ることができるのも本作の大きな魅力だ。

 今回、開発者自身からゲームの中の世界を紹介してもらい、日本人プレーヤーのすごいキャンプを紹介してもらった。「Fallout 76」に飛び込んでみてはいかがだろうか?