【特別企画】

「ファイナルファンタジーXII」本日で20周年! ガンビットが魅せた戦闘の革命、最強の矛マラソンとヤズマットのフルケア反射事件——イヴァリースの空を駆け抜けた記憶

【ファイナルファンタジーXII】
2006年3月16日 発売
「ファイナルファンタジーXII」キービジュアル(画像提供:スクウェア・エニックス ※以下同)

 スクウェア・エニックスより2006年3月16日に発売されたプレイステーション2用RPG「ファイナルファンタジーXII」(以下、「FF12」)が、本日2026年3月16日で発売から20周年を迎えた。

 「FF12」の舞台は、緻密で重厚な設定が作り込まれた世界「イヴァリース」。当時のRPGの常識であった「フィールドから画面が切り替わってのエンカウントバトル」を廃止し、シームレスに繋がる広大なフィールドのままシームレスに戦闘へと移行するシステムとなった。

 そして「ガンビット」という、自らの手でAIを構築する全く新しい自動戦闘システムは、多くのゲーマーに革命的な衝撃を与えた。本稿では、20周年という記念すべき節目に、筆者の人生の多くの時間を文字通り溶かした(そして今も溶かし続けている)「FF12」の思い出を振り返っていきたい。

 なお、本稿にはストーリーの核心や、隠し要素、そして一部のプレーヤーにとってはトラウマを呼び起こす裏ボスのギミックに触れるネタバレが含まれている。まだイヴァリースを旅したことがないという幸せな未プレイの方は、くれぐれも注意してほしい。

この物語の「主人公」は誰だ? 魅力的なキャラクターたちが織りなす大人の群像劇

 本作の舞台となるイヴァリースは、強大な軍事力を持つアルケイディア帝国とロザリア帝国が対立する世界。その狭間にある亡国ダルマスカがアルケイディアに侵攻され、属州となってしまうところから、物語は大きく動き出す。

 本作の主人公は、亡国ダルマスカの王都ラバナスタで暮らす孤児の少年・ヴァン(CV:武田航平さん)だ。彼は帝国への反抗心を胸に秘めつつ、いつか自分の飛空艇を持つ空賊になることを夢見ている。……のだが、本作をプレイしたことがある人なら誰もがこう言うだろう。「この物語の主人公って、どう見てもバルフレアだよね?」と。

 そう、空賊バルフレア(CV:平田広明さん)である。彼はヴァンが王宮に忍び込んだ際に偶然出会う空賊なのだが、その登場シーンからして既に大物感が漂いすぎている。相棒のヴィエラ族・フラン(CV:深見梨加さん)と共に、飄々とした態度でトラブルを潜り抜け、あろうことか「この物語の主人公さ」と自ら公言してはばからない。

 そして、その言葉に違わぬ圧倒的な活躍と、背負っている過去の重さ、ここぞという時の決断力。平田広明さんの色気と余裕がたっぷりと詰まったイケボで「俺が主人公だ」なんて言われたら、そりゃあ誰もが「はい、仰る通りでございます!」とひれ伏してしまうに決まっている。

 だが、だからといってヴァンの存在意義が薄いわけでは決してない。ヴァンは、王国の再興と復讐の重責に押し潰されそうになっている気高き王女アーシェ(CV:園崎未恵さん)や、祖国を裏切った汚名を着せられた将軍バッシュ(CV:小山力也さん)といった、重い宿命を背負う大人たちを一般人の視点から繋ぎ止める、極めて重要な役割を担っているのだ。

 ヴァンが空気を読まずに放つ明るい言葉や、ふとした瞬間に見せる前向きな姿勢が、アーシェたちの凝り固まった心を救ってきたのだ。つまり彼は「物語を引っ張る主人公」ではなく、「プレーヤーの視点となる主人公」なのである。

 若き空賊の卵であるヴァン、頼れる兄貴分であるバルフレア、そして迷いながらも進む王女アーシェ。彼らが織りなす大人の群像劇は、年齢を重ねてからプレイし直すことで、より一層そのシナリオの深みが心に染み渡ってくるのである。

本作の主人公であるヴァン
ヴァンと幼馴染のパンネロ
バルフレアとフラン

革命的システム「ガンビット」。自らAIを構築する底なしの沼

 「FF12」を語る上で、絶対に、何があっても避けて通れないのが「ガンビット」システムだ。このシステムこそが、「FF12」をゲーム史に残る傑作たらしめている最大の要因であると筆者は断言したい。

 「ガンビット」とは、自らの手で仲間の行動をプログラミングするシステムのことだ。ターゲットとアクションを組み合わせてリスト化し、上から優先順位をつけてキャラクターにセットしていく。

 ガンビットの本質は、戦況に応じた「最適解の取捨選択」にある。リストの上位にあるものほど優先度が高いため、より「緊急性の高い事態」を上に配置するのがセオリーだ。

 1:「目の前の敵」→「たたかう」
 2:「味方1人」→「ケアル」

 例えば、このように組んでしまうと、キャラクターは「目の前の敵を倒す」ことを最優先してしまい、味方のHPがどれだけ減ろうが回復してくれない、ただのバーサーカーと化してしまう。

 1:「HP<50%の味方」→「ケアル」
 2:「目の前の敵」→「たたかう」

 そこで、このように組むことで、初めて「普段は攻撃しつつ、味方のHPが減ったら回復に回る」という自分の思い描いた行動パターンが誕生するというわけだ。

ガンビットシステムのON/OFF設定画面

 これが見事にハマった時の快感は言葉では表し尽くせない。冒険が進み、様々なガンビットの指示語が揃ってくると、もうこのシステムの沼から抜け出せなくなる。

 敵が複数いる時は「範囲内の敵」に「ファイラ」を撃ちたいけど、MPが枯渇するのは避けたいから、「MP<20%の味方」には「チャージ」をさせたい、だとか、飛行タイプの敵には近接攻撃が届かないから、「飛行タイプの敵」には「魔法」を……、とか、アンデッド系の敵には「アンデッドの敵」→「ケアルラ」でダメージを与えよう、などなど、メニュー画面でガンビットのリストとにらめっこしつつ、ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返す。

ガンビットシステムの条件変更画面

 気づけばストーリーを進めることなどすっかり忘れ、何時間もガンビットの調整に費やしているのだ。そして自分が構築した完璧なガンビットによって、コントローラーから手を離していても、キャラクターたちが次々と敵の弱点を突き、ピンチになれば的確に回復し、ステータス異常も瞬時に治癒し、流れるように敵集団を殲滅していく様を眺める。この「俺のガンビットが完璧に機能している!」という全能感は、他のRPGでは絶対に味わえない「FF12」だけの特権である。

ガンビットが完璧に動けば、あとは歩いているだけで勝手に敵と戦って倒してくれるのだ

トラウマと歓喜の「最強の矛」絶望マラソン

 さて、「FF12」のやり込み要素を語る上で、多くのプレーヤーに共通する巨大なトラウマであり、また狂気の思い出として語り継がれているのが、「最強の矛」を巡るエピソードだろう。

 オリジナル版「FF12」において、圧倒的な攻撃力を誇る文字通りの最強武器「最強の矛」。これを入手する方法は、大きく分けて二つあった。

 一つ目は、「ゲーム中の特定のトレジャー(宝箱)を開けずに進めること」。

 ラバナスタのダウンタウンなど、序盤から何気なく置かれている特定のトレジャーを「うっかり開けてしまう」と、ナブディスというダンジョンで「最強の矛」が入ったトレジャーが出現しなくなってしまうのだ。「宝箱があったら絶対に開ける」というRPGプレーヤーのDNAに深く刻み込まれた本能を逆手に取った、まさに悪魔のような仕様。攻略情報なしでこの罠を回避できたプレーヤーは、世界中を探しても皆無だったのではないだろうか。筆者も当然、序盤で意気揚々とトレジャーを開けまくり、後になって攻略本を見て絶望のどん底に突き落とされた一人である。

 そして、うっかりトレジャーを開けてしまった愚か者たちに残された二つ目の入手方法が、「ヘネ魔石鉱での超低確率マラソン」である。

 隠しダンジョンであるヘネ魔石鉱の奥深く、特定のポイントに低確率で出現するトレジャーから、これまた天文学的な低確率(およそ0.1%程度だったと記憶している)で「最強の矛」が出るのだ。しかも、そのエリアはレベル99でも油断すれば一瞬で全滅するようなモンスターがウヨウヨと群れている魔境である。命がけで出現ポイントまで行き、トレジャーがなければエリアを数回切り替えて戻る。トレジャーがあっても、中身がギルやサビのかたまりだったら無情にもリセット。

 この終わりの見えない「最強の矛マラソン」に、筆者はどれほどの週末を費やしたことだろう。画面の前で虚ろな目をしながらエリアチェンジを繰り返し、「サビのかたまり」という文字を見るたびに「ギィィィッ!」と奇声を上げそうになるのを必死に堪える。

 しかし、何百回、何千回という試行の末、ついに画面右上に「最強の矛」の文字が表示された瞬間、「出たあああああ!!!」と筆者は一人でコントローラーを放り投げてガッツポーズを決め、歓喜の叫びを上げた。かかった時間は、およそリアル時間で100時間強ほどだったと思う。

 あの瞬間の達成感……否、解放感はその後のゲーマー人生において未だに超えるものがないかもしれない。あんな地獄のマラソンは二度とやりたくないが、あの瞬間の快感だけは永遠に忘れられないのだ。

HP5000万の絶望。モブハントの頂点ヤズマットと、フルケア全快事件

 そして「FF12」には、各地で困っている人々から依頼を受けて特定のモンスターを討伐する「モブハント」という素晴らしいシステムがある。このモブハントの最終目標にして、本作の裏ボスとも言える絶対的な存在。それがヤズマットである。

 初めてヤズマットと対峙した時の絶望感を、筆者は今でも鮮明に覚えている。巨大なコロシアムのような場所に鎮座する巨大な竜。戦闘に入り、ライブラでステータスを確認すると、画面上部に表示されたHPゲージの下に、小さな丸いゲージがいくつも並んでいる。「このゲージなんだ?」戦い始めて数分で気づく。ヤズマットのHPは、なんと50,000,000(5,000万)なのだ。通常のRPGのボスのHPが数万、数十万というのに対し、桁が2つも3つも違う。文字通り桁外れのバケモノである。

ヤズマット戦

 これだけHPが多いと、当然ながら数十分で倒せるような相手ではない。ガンビットを極限まで洗練させ、回復と攻撃のローテーションを自動化し、ひたすらヤズマットのHPを削っていく。ヤズマットは「必殺」「驚異」「サイクロン」といった凶悪な全体攻撃を連発し、一撃でパーティを壊滅状態に追い込んでくる。

 だが、ヤズマット戦は途中で逃げてセーブポイントに戻れるという仕様になっており、ヤズマットのHPゲージは逃げてもある程度保持されるため、1時間戦ってゲージを数本削る→一旦逃げてセーブし、アイテムを補充する→再び戦いに赴く、という戦い方ができるのだ。筆者も、休日の朝からヤズマット戦を開始し、お昼ご飯を食べるために一旦セーブ、午後から再開し、夕食前にまたセーブ……という具合に、リアルに1日がかりで死闘を繰り広げた(実際にはガンビットが戦うのでほぼ見ているだけなのだが)。

 ……さて、ここからが本題である。「FF12」を極めたと自負するプレーヤーたちが、ヤズマット戦において等しく絶望のどん底に叩き落とされた、ある悲劇について語らねばなるまい。

 ヤズマットの攻撃は苛烈を極めるため、中途半端な回復魔法では全く追いつかない。そこで筆者は、ガンビットの回復役に、対象のHPを最大値まで一気に全快させる究極の回復魔法「フルケア」を組み込んだ。

「HP<30%の味方」→「フルケア」

 詠唱時間こそ長いものの、発動さえすれば瀕死の味方を一瞬で立て直すことができる。この完璧なガンビットのおかげで、戦闘は非常に安定していた。

 ヤズマットの残りゲージもあとわずか。発狂モードに入り、ヤズマットの連撃が怒涛の勢いでパーティを襲う。筆者は画面を見つめながら、勝利の美酒に酔いしれる準備をしていた。コントローラーは握っているものの、基本的にはガンビットによる自動戦闘に任せている状態だ。

 その時だった。ヤズマットが突如としてプレーヤー側に向かって、「リフレガ」を詠唱したのだ。謎の行動を疑問に思ったのも束の間、リフレクがかかった味方キャラクターがヤズマットの猛攻を受け、HPが急激に減少。その瞬間、筆者の組んだ完璧なガンビットが、冷酷なまでに正確に作動した。

 回復役のアーシェがHPの減った味方に向かって、究極の回復魔法の詠唱を開始する。画面に表示される「フルケア」の文字。嫌な予感が脳裏をよぎる。フルケアは、魔法である。そして、ターゲットの味方には、今しがたヤズマットがかけた「リフレク」のバリアが張られている。

 「う、うわあああああああ!!!!!」

 筆者の叫びも虚しく、無情にも詠唱は完了した。そしてあろうことかその「フルケア」は、画面奥に鎮座する巨大な竜、ヤズマットへと一直線に降り注いだのである。ヤズマットの最大HPは5000万。画面上部のHPゲージに目をやると、20数時間かけて血と汗と涙を流しながら1ドットずつ削り取ってきた、あの50本もの丸いゲージが一瞬にしてすべて満タンに戻っていったのである。

 思わず手に持っていたコントローラーが、ポロリと床に落ちた。全身からサーッと血の気が引き、魂が口から抜け出ていくのがわかった。数時間の死闘が、綿密に立てた戦略が、筆者の組んだ「完璧なはずのガンビット」のせいで、文字通りたったの1秒で「完全にゼロ」になったのだ。

 ヤズマットの、こちらにリフレクをかけ、そこに回復魔法を反射させて自身を全快させるという、あまりにも悪魔的であまりにも知的であまりにも外道な戦術。これこそが「ガンビットによる完全自動化」を逆手に取った、開発陣からの強烈な挑戦状だったのだ。

 筆者はそのままPS2の電源を無言で落とし、ベッドに倒れ込み、しばらく起き上がることができなかった。その後、己の慢心を深く恥じた筆者は、ガンビットに「リフレクの味方」→「デスペガ」を最優先で組み込むということを、文字通り血の涙を流しながら学び直したのである。あんな絶望的な体験は、20年経った今でも、他のどんなゲームでも味わったことがない。

画像はPS4版「FFXII THE ZODIAC AGE」より

20年経っても色褪せない、イヴァリースの空へ

 「ファイナルファンタジーXII」は、20年という歳月が経った今こそ、本作がいかに素晴らしい良作であるかが見直されている。本作のガンビットシステムが時代を先取りした革新的なものであったか、そしてイヴァリースという世界の構築、それを彩るBGMと映像による演出などがいかに綿密で美しいものであったかを。

 現在では、様々な遊びやすさが向上し、ジョブシステムが導入された「ザ ゾディアック エイジ(TZA)」が、PS4やSwitch、Steamなどでプレイ可能となっている。ハイスピードモードを使えば、あの過酷だったヘネ魔石鉱のマラソンも(少しは)快適になるし、ヤズマットとの死闘もまた違ったテンポで楽しむことができる(ちなみにTZA版では最強の矛の入手条件なども変更され、より遊びやすくなっているので安心してほしい。代わりにザイテングラートという新たなハードルも足されはしたが)。

 もし、昔プレイして途中で挫折してしまったという人がいれば、あるいはまだこの広大な世界に足を踏み入れたことがないという人がいれば、ぜひこの20周年を機に「FF12」をプレイしてみてほしい。そこには深いストーリーと、考えれば考えるほど沼にハマる戦闘システム、そして、気が狂うほどのやり込み要素が待っている。

 ちなみに筆者が当時Sモブも全て倒したり、交易品なども揃えて、ヤズマットや最強の矛を手に入れ、「もうこのゲーム完璧にやりきったわ」と思えるまでに500時間ほどを費やしたと思う。しかし「TZA」では4倍速モードの搭載もあり、ここまで時間を費やすゲームではなくなった(それでもフルコンプしたと納得するには100時間以上はかかると思うが)。

 とにかくボリュームがあって1本で遊べるだけ遊び尽くしたい、というタイプの人にはぴったりのタイトルである。ぜひ今でも手に取ってほしい作品だ。20年経った今でも筆者は(殿堂入りの「FF7」を除いて)「FF12」こそが最も至高の「FF」であると思っている。それほどまでに完璧な一本だったと心から言える作品だった。

 20年経っても「TZA」でまだまだ遊びます! ありがとう「FF12」。20周年おめでとう。