インタビュー

怖さを抑えたら怖くなった……? 「バイオハザード レクイエム」開発者インタビュー【TGS2025】

グレースの成長も見どころ。「RE:2」系統のアクション寄り作品に

【バイオハザード レクイエム】
2026年2月27日 発売予定
価格:未定

 現在開催されている「東京ゲームショウ2025」カプコンブースにて、2026年2月27日に発売を予定している「バイオハザード レクイエム」の先行試遊が開催されている。

 ナンバリングシリーズ第9作目となる本作では、強い恐怖と臨場感を楽しめる一人称モードと、キャラクターの動きを把握してアクションを楽しめる三人称モードの2つの視点を自由に切り替えてプレーできる事が特徴で、バイオハザードを構成する「恐怖」と「アクション」の両面を味わえるタイトルとなっている。

 進化を遂げたグラフィックで表現されるクリーチャー達、過去作との繋がりを感じさせる舞台や主人公設定など、シリーズファンには堪らない要素が随所に散りばめられているのも見逃せないだろう。

 今回はカプコンの「バイオハザード レクイエム」ディレクター中西晃史氏と、「バイオハザード レクイエム」プロデューサー熊澤雅登氏にTGSでの反響を踏まえてインタビューする事ができたので紹介しよう。

左から、カプコン「バイオハザード レクイエム」ディレクターの中西晃史氏、プロデューサーの熊澤雅登氏
【TGSで展開中の試遊ブース】

デモは”酷い目にあうこと”重視。クリア率は低くてOK

――今作は一人称視点と三人称視点を自由に切り替えられますが、どのような意図があったのでしょうか?

中西氏:「バイオハザード」シリーズは「1」~「6」までが三人称視点、「7」以降が一人称視点だったんですが、人によっては一人称視点だと酔ってしまったり三人称視点だと操作しづらかったり、プレーヤーによって得意な視点があるとの反応をいただきました。今作では両方のプレーヤーに楽しんで頂けるようにした、というのが1つですね。

 もう1つは私が「バイオハザード7」のディレクターもやってるんですけども、「7」の時は「とにかく怖いバイオを作ろう」という強い気持ちで作りまして、その結果として「7」が主観視点になったんです。それ自体は良かったんですが、一方で「怖すぎるからゲームができない」というフィードバックも一定数貰いまして、ではということで、怖さが少し軽減される三人称視点も選択肢として入れようという事になりましたね。

――開発側としては一人称と三人称どちらがオススメなどありますか?

中西氏:一人称にした方がより怖いと思ってるので、ゲーム内の案内でも「怖さを楽しみたかったら一人称がオススメですよ」位のニュアンスでアナウンスを出しています。ただ、推奨とまではいかないですね。あくまでもプレーヤーに自由に選んでいただきたいです。それぞれの視点の利点などをゲーム内でも説明している形にしました。

――今作もかなりホラー部分に力を入れた作品に見えましたがこだわりなどありますか?

中西氏:怖さに関してはカメラ視点も踏まえまして「7」よりは怖くないように調整はしています。カットシーンを多用したり敵の登場の際に画面を揺らすなどして心の準備をさせたりなど、演出的な部分を分かりやすくしてマイルドにしたつもりだったんですが、結果的にかなり怖くなってしまいました(笑)。

 実際、三人称視点だと怖さを抑えられるのは確かなんですけど、三人称だとグレースが不安そうに歩いたり逃げ惑うように動いたりなど、一人称では見えないアニメーションがあるんですよ。シチュエーション的にそうなるのが適切なんですが、その姿を見ているとプレーヤーも一緒にパニックになっちゃうんですよね。なので怖くしないようにという意図で三人称視点を作ったのですが、思わぬところで怖くなっちゃったなと思っています(笑)。


一人称視点での画面。直接的に怖い
三人称視点での画面。怖さは軽減されるが、グレースの怖がるリアクションにつられて逆に怖くなることがあるという

――デモ版はかなり難易度が高く感じましたが、本作の本編の難易度はどのような感じでしょうか?

中西氏:ホラーゲームなので、デモ版は正直クリアできる事よりも”酷い目にあうこと”を重視していました。9月25日(会期初日)のクリア率が体感だと10%位だったんですが、クリアが目的ではなく本作がどんな雰囲気なのかが知れる事の方が大事だったので問題はないかなと思います。

 ただ製品版はいつもの「バイオ」通り難易度設定ができる形になってるので、謎解きが難しいという人は「カジュアル」を選んでもらえれば、演出やストーリーを十分に楽しめるようにおもてなしをしていますのでご安心ください(笑)

――デモ版が普通に怖すぎてアイテムを探すのに時間がかかってしまいました……!

中西氏:すみません(笑)。製品版では時間制限などなくたっぷり楽しんでいただけますので、自分のペースで遊んでいただければと思います

――主人公のグレースにつきまして、意外なほどに“一般的な女性”でした。ある意味でシリーズ史上最も頼りないといっていいほど素朴な人物に見えるのですが、どのような意図で生まれたキャラクターなのでしょうか?

中西氏:1つはその方が怖いからですね。頼りない、勝てなそう、大丈夫か? と思わせながら普通の人間と同じ目線で見れるキャラクターになっています。さらに彼女は今回「バイオハザード」体験も初めてなので、見た事も無いクリーチャーに対する驚きを表現してくれる存在でもありますね。

 で、ここからがポイントなんですが、「バイオハザード」って脅威存在から逃げ惑うだけで終わるゲームじゃないですよね。最終的には怖い対象を乗り越えて、大きな達成感を感じられる事がシリーズのポイントだと思ってます。

 なので、あんな状態のグレースが今作では色々な経験をして成長します。その姿をプレーヤーも一緒に体験できるのが醍醐味になっています。

――となると、グレースもいっぱしに戦うようになるのでしょうか?

中西氏:そうですね。今回のデモ版でもマップ内に「ハンドガンの弾」などが落ちていたと思うのでおわかりになると思うんですが、今作でも探索する中で戦う手段を得ていく形になります。

 ただグレースは一般人で、パンチやキックで戦うような感じではないので、プレーヤーが銃弾などのリソースやアイテムの使い方を考えながら進める、といったゲームプレイになっています。2ndトレーラーではイカつい銃を持ったグレースの姿なんかもワンカットありますので、ぜひ見て頂ければと思います

【『BIOHAZARD requiem』 2nd Trailer】

「レイクイエム」は「RE:2」系統のアクション作品に

――グレースはFBIの分析官という設定ですが、頭の良さみたいな所がゲーム面にも出たりするのでしょうか?

 中西氏:ストーリー内ではキャラクター設定に基づいて洞察力がある場面などは出てきますが、ゲーム面的な部分ではそんなに出て来ません。ゲームなので頭を使う所はプレーヤーに楽しんでほしいので、ピンチの場面なんかをどう乗り切るか、みたいな所はあくまでプレーヤーが考えられるようにしています。

――前作で「イーサン」の物語は完結したように見えたのですが、今作は完全に新章という立ち位置になるのでしょうか?

中西氏:そうですね。僕たち目線では今作「レクイエム」から新たな「バイオ」が始まるといった気持ちで作っています。

――今作の舞台やグレースの設定など、過去作との繋がりを感じる設定がチラホラ見えます。プレイしておいた方がいい過去作などはありますか?

中西氏:前提としてまず重要なのは、「絶対にプレイしなきゃいけない作品」はありません。本作が初めての「バイオハザード」でも、全く問題なく「レクイエム」のストーリーを100%楽しめる形で作っています。

 もちろん「ラクーンシティ」やグレースの母親など過去の人物も出てくるので、知っていたらより深く楽しめる要素はありますが、基本的にはマストはありません。

熊澤氏:その上で、あえて事前にプレイした方が楽しめるタイトルを上げるなら、同じく「ラクーンシティ」を舞台とした「バイオハザード RE:2」や「バイオハザード RE:3」などは遊んでいただけると良いかなと思いますね

中西氏:逆でも良いかもしれないですしね。「レクイエム」から入って、「自分の知っているこの場所、昔はこんなに綺麗だったんだ」みたいな(笑)。


「バイオハザード RE:2」
「バイオハザード RE:3」

――「ラクーンシティ」を再び舞台にする構想はどのように生まれたのでしょうか?

中西氏:僕自身、長い事「バイオ」に関わっているので「今ラクーンシティってどうなってるんだろう」みたいな話をちょくちょくしていました。

 「レクイエム」の舞台となっている現代の「ラクーンシティ」は政府が管理している閉鎖された「隔離区域」のようになっている状況なんですが、以前から”そんな感じなんじゃないか”というアイデア構想は常にしていた感じですね。

熊澤氏:ストーリーから企画の構想が始まるよりも、どんなゲーム体験を最新作でお届けするかという部分を試行錯誤してから、内部を詰めていく事が多いですね。

――本作のプレイ時間は大体何時間位を想定していますか?

熊澤氏:過去作の「バイオ」シリーズと同様のスタンダートなプレイ時間を想定頂ければなと思います。クリア後のやりこみコンテンツも過去作と同様に用意していますので、お楽しみ頂ければと思います

中西氏:過去作と違う点で言えば今作は視点切り替えがあるので、そこを変えると結構体験が変わります。切り替えて、もう1回遊んでみるのも面白いかなと思います。

――ズバリ本作は「アクション寄りのバイオ」と「ホラー寄りのバイオ」どちらでしょうか?

中西氏:これは分かりやすく言うと「RE:2」系統ですね。ホラー寄りのジャンルに分類されると思うんですけども、「7」よりはアクションゲームしていると思います。その路線の作品だと思って頂くのが一番分かりやすいかなと思います。

――今作のメインクリーチャーのデザインや系統はどんなイメージでしょうか?

中西氏:大きく言うと今作のクリーチャーは「感染系」になります。直近だと「カビ」だったり「プラーガ」等の寄生生物がありましたが、平たく言えばいわゆる「ゾンビ」系統になります。

 一方で、今回のデモにも登場した「なんだこれは……?」となるような存在もいたり、2ndトレーラーにもそれ系の人達も出ているので、続報をお待ちいただければと思います。


なんだこれは……?

――TGSのデモ版を多くのプレーヤーが遊んだと思いますが反響はどうでしょうか?

中西氏:直接ブースに行ったりしたんですが本当にもう声に出して怖がる人や、後ろにたじろいでぶつかる人が居たりなど、しっかり怖がっていただけてるようで、「やって良かったなぁ」と思っています。嬉しい限りです(笑)。

 実際のゲームはまだ開発中にはなりますが、こういう場は直接プレーヤーの声が聞けますので、この声を製品版で活かせればと考えています。

――最後に、発売を待っているファンへ一言お願いします!

中西氏:TGS等で体験してくれた皆様がしっかり怖がってくれて嬉しい限りです。

 僕も今まで色々な「バイオ」を作ってきましたが、今回一番盛り上がっているなと肌で実感しています。チームに今回のフィードバックを伝えて、期待に応えられる作品になるよう努力しますので、楽しみに待っていただければと思います。

熊澤氏:中西も言った通り、僕らがここで話している裏で開発が一生懸命製品版を作っています。開発としても自身のあるコンテンツに仕上がってきていると感じていますので、発売までぜひ楽しみにして頂ければと思います。

ゾンビポーズでノリノリで撮影に望んでいただいたお二人。ありがとうございました!