インタビュー
「FFXIV London Fan Festival」終了直後の吉田Pにインタビュー
暗黒騎士に至るまでの経緯とは!? フライングマウントやオリジナル蛮神など気になる話を聞いてみた
(2014/11/12 12:00)
10月25日に英国ロンドンで開催された「ファイナルファンタジーXIV」のオフラインイベント「FFXIV London Fan Festival」。イベント終了直後に、「FFXIV」プロシューサー兼ディレクターの吉田直樹氏から話を聞くことができた。10時間を越える長丁場のイベント終了直後なだけに、インタビュー当初は本当にぐったりしていた吉田氏だが、発表された「蒼天のイシュガルド」の内容などを熱く語ってくれた。
イベントの実施から少し期間が空いてしまったため、イベントレポートやデベロッパーズパネルレポート、基調講演レポートなどでおさらいの上、ご一読いただきたい。
なお、11月20日より韓国で開催される「G-STAR 2014」で、韓国のファン向けに「新生FFXIV」を出展する。G-STARでは初めて「FFXIV」に触れる韓国のプレーヤーに向けてのプロデューサーレターLIVE特別版も予定されているそうなので、こちらも後日お伝えしたい。
初のファンフェスの感想について。オペレーションには課題も
――イベントの感想はいかがでしたか?
吉田氏: 放心状態というのが正直な感想ですね(笑)。
――東京が1週間後ではなくてよかったですね。
吉田氏: 1週間後だったら逆にまだ気合が抜けてないかもしれません。東京での開催までは2カ月離れているし、ホームグラウンドでやれるイベントなので、精神状態はまた違うと思います。開催の規模もかなり大きいですし。ファンフェスティバルは、これまで自分たちで1つ1つ手作りしてきたライブ配信を含む「FFXIVイベント」の超拡大版という意識でいます。プロデューサーレターLIVEは誰かがミスったら全部自分たちの責任という感じで、自分たちの手作りだからこそ、準備も入念ですし、現場は意外とピリピリしているのですが、その分放送が始まったら楽しくやらせていただいています。
今回の欧米ファンフェスティバルもその流れのつもりではあるのですが、運営の一部を外部の会社さんにお願いしていることもあり、何が起こるかわからない部分もありました。色々ミスもありましたが、今回やりきったので、ひとまずほっとしています。至らないところは多々あったと思いますが、少なくとも参加して頂いた多くのプレーヤーの方からは「アメージング」、「オーサム」と言っていただけました。もちろん次回ファンフェスの機会があった場合も、今回以上に同じ言葉言ってもらえるようにするため、反省点はしっかり踏まえ、やらなくてはいけないことはたくさんあると思います。
今回開発も運営も主力のメンツを集め、長期間日本を空けるのが初めてだったこともあり、ゲーム本体の運営上でミスが立て続けに発生し、お客様にご迷惑をおかけしてしまいました。帰国したらワークフローから全部見直さないといけないかなと思っています。これまで、気合と根性とノリと魂で突っ走ってきましたが、振り返ってみたら規模が予想以上に巨大になっていたということもあり、足元を見つめ直してみようと思います。
――「旧FFXIV」から「新生FFXIV」に移行する過程で1度マネジメントを見直していますが、もう1度見直す時期に入ったということですか?
吉田氏: ファンフェスは「FFXIV」としては初ということもあり、手探り状態だったので、今回の実施内容はそれぞれに反省点があると思います。日本でずっとプロデューサーレターLIVEを通じて生放送の経験を積んでいたこともあり、ライブでトラブルがあってもお客様にわからない程度にリカバリーができていたのですが、その文法も通用しないところに来たとき、かなりの綱渡りになってしまいました。
ゲーム本編の運営は、ファンフェスに気を遣いすぎたたため、コミュニティチーム側も、いつもならダブルチェックしているものが、シングルチェックもあいまいな状態で進んでいたりなど、ミスが多く反省が残ります。もう少し意思決定権を分散させると同時に、それによって責任意識をもう少し変えないとダメかなと考えています。
――先ほど「ファンフェスにまた戻ってきます!」と言ってましたね。
吉田氏: ギリギリのところでお客様から見て大きなトラブルにはならなかったとはいえ、口惜しさもかなりあります。もう1回「『FFXIV』のファンフェスってすごい!」と言ってもらえるよう、更なる準備をして今回以上のファンフェスを開催しに戻ってきたいですね。
――ゲームを新生させたようにですか?
吉田氏: そう言うと今回が失敗したみたいに聞こえちゃいますが(苦笑)、結果自体はとても良かったと思っていますし、みんな十分全力を尽くしたと思っています。ただ甘んじないようにしなければ、というのが正直な感想です。
――ラスベガス、ロンドンとストリーミング放送されて、東京のファンの期待感がものすごいことになっていると思います。
吉田氏: 僕らはイベントが本業ではなく、ゲームが本業なので、ゲームをしっかり作って、皆さんがプレイしたいと思うようなコンテンツやジョブを提示できることが、お客様が1番望むことだと思いますし、1番盛り上がっていただけるポイントだと思っています。まずは期待を裏切らないようにしっかり開発する。その上でファンフェスを楽しんで頂こうと思います。自分たちでハードルを上げつつ、自分たちで飛び越えていかないと新しいゲームになっていかないので、そこは全力で行こうと思っています。
――ファンフェスについてですが、質疑応答では、本当にコアな質問が多かったですね。
吉田氏: プレーヤーの皆さんならではなのでしょうが、ジョークのような質問をするのがためらわれるのかもしれないですね(笑)。欧州の皆さんと、こうしてライブでお話させていただくのは初めてなのです。だからお客様側も緊張していたのだろうなとは思いました。
――フライテキストを移動させてほしいという質問の時には、ずいぶん長考されていましたね。
吉田氏: 僕がプレイしているときには、特に気にしてなかったので、ああ、なるほど……と。確かにあった方がいいのかなと思い、どうやったらやれるだろうと考えたら、すごい勢いで処理が頭の中にぱーっと走ったまでは良かったのですが、「うわー、これはきついな……」と思って、ちょっと長考に入ってしまいました(笑)。
新ジョブ「暗黒騎士」に至る経緯は!? 暗黒騎士のイメージは「FFXI」ではなく「FFT」や「オウガバトル」シリーズ
――今回も「蒼天のイシュガルド」の発表がありましたが、会場の反応はいかがでしたか?
吉田氏: やはりジョブが1番ですね。ゲーム全体に変化が起きますので、プレーヤーの方の期待値も1番高いと思います。過去のコンテンツも新しいバトルシステムで遊ぶと、今までとはプレイ感覚が違いますし、気づかなかったことも出てくると思います。もう1回新鮮な気持ちでゲームができるのが新クラス、新ジョブ追加のタイミングだと思います。
――暗黒騎士は“両手剣のタンク”というお話ですが、暗黒騎士をチョイスされた理由となぜタンクなのかという理由をお伺いできますか?
吉田氏: タンクはみんなの盾役として常に前線に出ていく花形だと思うのです。プレイの特性上難しい面もありますが、プライドを持ってタンクをプレイしてくれている方は、本当にゲームを好きでいてくれているんだろうなと感じます。ですので追加はまずタンクから決めていこうと。その際に皆さんから「○○ジョブが欲しい!」というアイデアを沢山いただきました。その中に侍という選択肢がなかったわけではないのですが、ギリギリまで検討した上で、「蒼天のイシュガルド」のコンセプトや世界観と照らし合わせ、暗黒騎士で着地させました。
僕の中の侍のイメージは、着流しに刀を下げ、居合の達人という感じです。どちらかと言えば、ロールはDPSのイメージの方が強いのです。また早い段階からパッチ2.4で忍者の実装が決まっていたため、和ジョブが続くのは印象的にどうかなと。「蒼天のイシュガルド」はハイファンジー寄りでダークな雰囲気でいこうと思っていますので、やはり今回はイメージに合わないということが大きいです。リクエストの多いジョブですし、期待している方もいると思うので、今回は見送りとなりましたが、今後も引き続き検討していこうと思います。
――「FFXI」をやっていた人には暗黒騎士というとDPSのイメージが強いかなと思いますが、吉田さんの中ではどのようなイメージですか?
吉田氏: 僕はゲームデザイナー松野さん(松野泰己氏)の描く世界観が好きで、「ファイナルファンタジータクティクス」や「伝説のオウガバトル」のイメージが強いです。あとは漫画「ベルセルク」のガッツ。暗黒騎士、テラーナイトやデスナイトといった重戦士系のイメージがあるのです。重量感のある鎧を着けて、ヘビーアクスや両手剣を振り回す……。また両手剣の実装を願う方も多くいらっしゃいましたので、これもDPSにすべきか悩んだポイントですが、最終的にこの2つが結びついて決まったという感じです。
――暗黒騎士はクラスがないジョブということですが、どういう形になるのですか? 剣術士とは関係のないジョブなのですか?
吉田氏: そこはまだ言えないです(笑)。
――いま発表されているものは「3.0」シリーズ中に実装されるというものではなく、スタート時点ですべて遊べるものなのですか?
吉田氏: 基本的に今お話ししているものはほぼそうです。
――つまり、暗黒騎士は最初から使えるということですか?
吉田氏: 皆さんすぐに触りたいと思いますし、そのつもりです。まずはレベルキャップが開放された既存ジョブのレベルを上げるか、新ジョブを育てるか悩ましいと思います。シナリオも気になるでしょうし、新作「FF」のつもりで作っていますので、宣伝やPRでも盛り上げていきたいです。
――吉田さんの着ていた007のTシャツで色々な憶測が飛んでいるのですが、コメントをいただけますか?
吉田氏: 何か撃つのではないですかね(笑)。ただ、シンプルなだけのものでは面白くないと思っています。「FF」シリーズの過去作をじっくり見ていただきつつ、どんなものが来るのかご想像ください。
――東京ではそのあたりもお話いただけるのですよね?
吉田氏: もちろんです。東京はファンフェスのトリですから。
――ビジュアルワークスが作っている「蒼天のイシュガルド」の正式トレーラーも東京でお披露目ですか?
吉田氏: フルバージョンのトレーラーに関しては、そちらも僕が字コンテから書いているのですが、パッチ2.5の内容を含んだトレーラーになっています。「時代の終焉」トレーラーと同じように、物語的に大きくつながっている話です。12月のファンフェスのタイミングではまだパッチ2.5が実装されていないので、フルバージョンの公開はもっと後になる予定です。東京のファンフェスでは、インゲームの素材を増やしてお話しできればと思っています。
――東京のファンフェスでプレイアブルで出展されたりしますか?
吉田氏: いいえ、スケジュール的にまだ無理です。
――パッチ2.5では何か情報が出る可能性はあるのですか?
吉田氏: 2.5についてはいろいろお話しできる予定です。
――今回アクティビティのひとつとしてプレイできたオーディンバトルは、今後ゲーム内に実装されるのですよね?
吉田氏: そうです。ファンフェス先行公開という形で仕上げたバトルになっているので、ファンフェスが全会場終わったらのちのアップデートにて実装しますので、いずれ世界中のプレーヤーに楽しんでもらえるようになります。どういう経緯でオーディンと戦うことになるのかについては専用のクエストを作りますので、パッチをお待ちいただくことになります。
――今回の強さはイベント用なのですよね。
吉田氏: はい。真くらいの強さで作ってもらいました。
――その上には「極」が控えているわけですね。
吉田氏: そうですね。やると思います。
フライングシステムのあれこれ。制限時間なしのフライングで竜の国へ
――「蒼天のイシュガルド」についてですが、フライングマウントはエオルゼアのすべての地形を飛べるのですか?
吉田氏: 新規エリアはすべてそうなります。ただし、2.0のフィールドは飛べません。申し訳ないですが、飛べるように作っていないのです。飛行をシームレスに行なう場合、MAPのリソース分割や、別途読み込みを行なう「上物」の配置など、速度と描画範囲を仕様に合わせる必要があります。いずれ将来的に手を入れるかも知れませんが、3.0スタート時点ではエオルゼアフィールドは飛行できません。
――飛行時間に制限はあるのですか?
吉田氏: ありません。ただゲーム的に破たんしない仕組みにはなっています。いきなりどこでもフライングできたら、クエストやコンテンツを全部飛ばせてしまうので、そこはゲームとフライングがリワードとして繋がっていく感じで組み込まれていきます。レベルキャップに到達して、エンドにいくような時期になると相当解放感が出ると思います。
――フライングマウントは数種類あるということですが、性能に差はあるのですか?
吉田氏: そこはまだ調整中の部分です。色々なアイデアが出ているので。もう基本形はできていて、開発者は飛べているのですが、段階を付けたり、面白いギミックをいれてみたりというのはこれからだと思っています。1回の実装で終わらせるつもりはない要素ですし、いろいろ考えていきたいです。
――フライングマウントは6種類か7種類というお話だしたが?
吉田氏: リソースを見積もっている初期実装フライングマウントの数が6か7というだけです。ただデブチョコボのフライングをみなさん楽しみにしているようなので、がんばって少し浮くんだけど……やっぱり無理!というのも面白いかなと思っています。余裕というか、そういう遊びもちょっとはあってもいいのかな。どうしても移動スピードをあげない、結局は一時的なネタで終わって使ってもらえないのではと、ためらうところはあります。デブチョコボがスピーディに滑空しているところはあまりイメージが掴めないのですが、ジャンプしたときにぶら下げた餌をさっとサベネアの野菜に切り替えると、猛烈にでぶチョコボが飛ぶのもありかなあ、など……。「FF」シリーズでもあるので、面白さ重視でもいいのかなと。今日、お話しながらステージ上でそんなことを考えていました。
――今もでぶチョコボは走りながらジャンプできますが、あのまま飛んでいったら可愛いかもしれないですね。
吉田氏: それですね、餌をさっと取り替えて……で、さらに飛ぶ、みたいな。短いステージではありましたが、みなさんに会うと色々なアイデアをいただけるなと思いました。
――新しい蛮神が発表されていましたが、完全新規のラーヴァナが結構衝撃的でしたね。
吉田氏: プレーヤーの方から、そろそろおなじみではないサプライズが欲しいという声をいただいていました。ここまでは、いわゆるクラシック「FF」王道でした。シリーズ通じて最初に戦うイフリート、シヴァ、ラムウ、タイタンがいて、終盤近くにリヴァイアサンが出て最後はバハムートという。順番は変えましたが、ここまでは「新生FFXIV」の流れでやりきったので、ここからは新しい挑戦もいれていきたいと思っています。新しい定番蛮神みたいなものを作っていかなくてはいけないと思っているので、その1回目としてビスマルクが獣型なので、ラーヴァナは昆虫型。とにかくかっこいいものをと、みんなで頭をひねって考え出しました。
――ビスマルクは雲の蛮神で、ラーヴァナにも羽根がありますが、空を飛びながら戦ったりもするのですか?
吉田氏: どこまで最終的なバトルコンテンツデザインに落とし込むのか次第です。今まさに企画中です。バトルに関してはラスベガスの権代の講演にもありましたが、今は新ジョブを含めたレベル60のベースを作っている最中です。ここが決まらないまま蛮神を詰め始めてしまうと、どっちを先にフィニッシュしていいのかわからなくなります。新ジョブが入り、既存ジョブも60になると使い心地も変わってくると思いますので、今は1番そこに力を入れて作っています。
――空に竜の国があって、フライングで近づいたら危ないよということをイベントで言われていましたが、それは飛んでいる最中に敵に襲われるということですか?
吉田氏: いえ、飛行中の戦闘はイベント以外ではやらないと思います。
――すると飛んでいる時には敵からターゲットされないのですか?
吉田氏: その言い方が必ずしも正しいわけではないのですが、詳細はもう少しお待ちください。少なくとも通常フィールド上で普通のモンスターと空中でバトルをするつもりはありません。相当な負荷とコストがかかるわりには、制約が多すぎておもしろくならないと思います。ですのでコンテンツとして実現させるか、イベントで実施することになると思います。
――あの“竜の世界”には冒険者も行けるのですか?
吉田氏: 行けます。「旧FFXIV」の反省から、「新生FFXIV」では“名前が出た場所には行ける”をポリシーにしています。いずれにせよ今回見ていただいているもののほとんどは「3.0」スタート時点で目的地になっているので、色々な出会いがあると思います。
――最後にお客様へのメッセージをお願いします。
吉田氏: 「FFXIV」を引き受けることになった時、漠然と「しっかり立て直して、いつかファンフェスをやりたい!」と思ったのです。特に「FFXI」がやっていましたし、「旧FFXIV」の運営中にも、「ファンフェスをやってほしい!」という声も頂戴しました。当時はまだまだやるべきことがあるだろうと、新生に向かって突っ走ってきました。もちろん、今もMMORPGである以上、他にやることがあるだろう、といわれたらそうなのですが(笑)。世界規模でファンフェスをする、という夢がかなったので、日本ではもっと練度の高い素晴らしいファンフェスにしたいと思っています。僕の中でスタート地点だったラスベガスが終わった時点で、まだやれることがあるぞと思っています。日本でも大いに盛り上がっていただいて、みなさんと一緒に「蒼天のイシュガルド」を更にたくさんの人にお伝えし、心から楽しんでいただけるようなイベントにしたいです。
――ありがとうございました。
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