インタビュー

3名のクリエイターによる開発秘話が語られる! 「なつもん! 20世紀の夏休み」合同インタビュー

「ぼくなつ」ファンも楽しめる。より自由度の高い作品に

【なつもん! 20世紀の夏休み】

7月28日 発売予定

価格:6,578円

 スパイク・チュンソフトは、10歳の少年となって夏休みを体験するノスタルジックなNintendo Switch用アドベンチャー「なつもん! 20世紀の夏休み」の発売に先駆け、新潟県にて先行試遊会および開発者合同インタビューを行なった。

 「なつもん!」はサーカス一家の長男である主人公がよもぎ町と呼ばれる田舎町にやってきたところからスタートする。約1カ月間の中で魚釣りや虫とりなどの体験に加え、サーカス団のお手伝いや町の人々との交流など夏休みらしい体験が詰まった作品になっている。今回は木下大サーカスが公演中の新潟県で、サーカスの観覧も兼ねたメディアイベントが行なわれた。なお、ゲームの内容についてはこちらの記事でじっくり紹介しているためあわせて確認してほしい。

 インタビューはミレニアムキッチンの綾部和氏、開発のトイボックスの和田康宏氏、そしてスパイク・チュンソフトの榊原昌平氏の3名が登壇。開発にまつわるお話を聞けたので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

ミレニアムキッチン代表取締役 綾部和氏
トイボックス代表取締役社長 和田康宏氏
スパイク・チュンソフト プロデューサー 榊原昌平氏
ゲームではサーカス団が登場するが、ゲームにちなんで木下大サーカスの見学も行なわれた。平日ながら会場は大盛況だった
特別にジャグリングのパフォーマンスも披露!
【Nintendo Switch『なつもん! 20世紀の夏休み』アナウンストレーラー】

圧倒的な自由度の高さは、開発チームの頑張りで生まれた!?

――はじめに、本作の開発経緯など伺えますでしょうか

和田氏:2年ちょっと前の春くらいですね。トイボックスには私と金沢というプロデューサーがいるんですけど、金沢の発案で綾部さんとお話させていただいたのがきっかけです。僕がずっと「牧場物語」シリーズを作ってきて、綾部さんは「ぼくのなつやすみ」という、お互いに“戦わないゲーム”という異端なものを作ってきた仲で、「仕事をしてみたら面白いんじゃないか」ということを金沢が思いつき、始まったのがきっかけになります。

 僕自身としては面白いケミストリーがあるかなと思ってはいたのですが、綾部さんの方に作りたいものの明確なビジョンがあったので今回は一歩引いた立場で開発を見るのに専念して、クリエイティブの方はすべて綾部さんにお任せするという感じで開発が進んでいきました。

綾部氏:以前に「クレヨンしんちゃん 『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~(2021年発売。販売はネオス)」というものを作りました。こちらは背景が2Dのゲームで「ぼくなつ」手法を踏襲したものなんですね。今回はせっかくなんで“同じような仕組みや世界観で完全なオープンワールドのゲームが作れないか”というのが発想のもとなんですよ。そういうところからスタートして一番最初に全体の2Dのマップを作りました。

 この時点で精度をしっかり上げて作ればその後の開発がスムーズにいくだろうというのがあって、その地図を2日くらいかけてかなり細かく作って、それがそのままゲームになっている感じです。プライベートからスタートしてるんですけど、制作環境であったり諸々の要素がすごい良い方向に働いてオープンワールドとしての夏休みゲームが上手く作れたかなと。作っていてこんなに楽しかったり、こんなにアイデアを入れられたのは初めてじゃないかと思えるくらい様々なことができました。制作経緯としては良い機会をいただいて、それを上手く活かせたかなと思っています。

和田氏:綾部さんが話した地図なんですけど、本当に真上からみた地図で等高線みたいなのがあって、地形や高さもわかるようになっているんですよ。先ほど2年前の春と言ったのは世界観やシナリオ、ゲームの要素の話だったんですけど、この地図ができ上がったのは秋口くらいですね。その地図をいただいてから数日で、綾部さんの地図をそのままで3Dにできました。そのときは確かな開発的手応えがあったかなと。綾部さんに見ていただいて、短い期間でここまで作れるんだったら(綾部さんが)もっとアイデアだったりゲームデザインの方に力を入れられるなと感じました。

綾部氏:土台ができるまでがとにかく早くて、そこから先はひたすら上に積み重ねていくっていう期間ができたので、今でも開発スタッフの誰かがアイデアを思いついてこっそり足していると思うんですよ。なので私の知らない要素も入っていると思います(笑)。

綾部氏の作った地図が忠実に3D化された

――今回、主人公の少年をサーカス団の団長の息子にした理由は?

綾部氏:大きく分けて2つありまして、この夏が終わったら町を去っていく設定にしたかったんですね。短期間だけその町にいるキャラクターを考えたっていうのと、このゲームは成長要素があって「ステッカー」がどんどん溜まっていくと超人的なジャンプだったりいろんなことができるようになるんで、その設定で違和感のない登場人物の成り立ちはどんなものがあるのか――というところからスタートしたと思います。結果的にサーカスの要素も(ゲームの)中に入っていますし。

サーカスという設定は、ストーリーやアクション性に納得を持たせるためであった

――カメラワークのことで、家の中が固定カメラで外は自由なカメラ操作になっている理由は?

綾部氏:制作経緯の順番から言いますと、2Dの「ぼくなつ」的な画面で背景が止まっているところもないと“綾部の味が出せないんじゃないか”という恐れがあり、プロデュースチームの考えで(制作が)スタートしています。しかし、実際には3Dで作った世界の中で固定カメラになっているだけで、狭い所で自由にカメラが動くと画面の表示がおかしなことになりますから。

和田氏:ちょっと補足で。綾部の味というところに繋がるんですけど、割とリアルに近い縮尺で部屋を作っていくと日本の一家屋って狭いんですよね。その中でフリーカメラにするとカメラがいろんなところにぶつかったり、めりこんだりして快適なプレイフィールを保てないというのがあってそれが大きな理由です。結果的に遊んでいただくプレーヤーのみなさまにも快適に感じていただけるよう開発側も頑張ったと思います。

 あとカメラが固定してあると一個良いことがあって、画角を意識して画面を見せることができるんですよ。これは綾部さんが2Dの「ぼくなつ」で培ってきた“どうやったら画面が良い感じに見えるか”という、綾部さんがもっとも得意とするところでもあるので、そことの相性も良いのかなということで今の形になりました。

綾部氏:さらにオマケで1つ言うと、2Dで描き込まないと室内のシーンで情報量が足りなかったりするかと思っていました。一方でゲームが完成すると、3D(制作)の人たちが頑張っていて室内は生活感のあるものができています。今は良いとこどりの結果になっているんだけども、もしかして今から作ったら2Dの所は無くなっちゃうかもしれません。まぁ、狭い所は(快適さ的に)カメラ固定の方が良いんですけどね。

和田氏:合同インタビューですと綾部さんの話を聞くと僕が言いたくなるし、僕の話を聞くと綾部さんが言いたくなるっていう感じになってしまいますね(笑)。

 今回開発的にものすごい気を使った点があって、ローディングなんですよ。オープンワールドの世界において建物の出入りでいかにストレスなく短いロード時間で移動できるか、というところにすごく気を使って開発をしています。もちろんゲームを立ち上げた瞬間っていうのは数十秒のローディングはどうしても入っちゃうんですけど、一旦ゲームが始まってしまえばどんなところに行こうと“ほぼローディングのストレスのない作り”になっていると思います。

 建物の外と中の切り替えにおいても見た目の解像度を保ちながらデータ的に軽くしたり。あと部屋の中から外の景色が見えるんですけど、本当は綾部さんの希望としてはそのまんまのフィールドを窓から見たいっていうのがありました。その実現は難しかったため、開発現場が苦労して“そうではないんだけど、そういう風に見える”という工夫をして、部屋の中から外を見ても外の景色と違和感無いような形にしています。

固定カメラで綾部氏の味を出しつつ、プレイの快適さも考えられている

――いろんな所に登らせようというアイデアはどういった経緯で生まれ、実装するにあたって苦労した点は何でしょうか? また、登ってほしいオススメのスポットはありますか

綾部氏:発想としてはですね、やはりワンパクな主人公にしたかったため、どこでも家でも登っていけるし、実は最初は家というより電柱に登れるつもりでいました。

 ただ開発においては、最初は登れる壁と登れない壁をデザインを変えて、登れないところだけ作っていました。理由が全ての屋根とかを登れるようにしたらデバッグが大変だし作る側も大変だし。ということのハズだったですが、私の知らない間にいつの間にかほぼ全部登れるように作っていただいていて、場所によっては登ったことでいろんな物が置いてあったりとかするし、とんでもない結果になっています。何故そうなったかという理由は多分作ってて楽しかったんだと思っています。

 私自身、作ってて楽しくて勝手にいろいろなものを膨らませているのが多くて、本当は作業効率を考えたらそこまでやらない方がいいのに何故かこうなってしまいました。恐ろしいなと思ったのは、相当後半じゃないと行けない所、山小屋なんですけど、もしかしたらこのルートだと行けるかな? と思って試しにプレイしてみたら、始めて3日でそこに行けちゃったんですよ。工夫すればですけど。この場所からはかなり違う景色が見られるのでオススメです。自由度は高いし楽しいんだけどデバッグしている人たちは大変そうでした(笑)。

和田氏:苦労した点ですがやはり、どこでも行けて登れるようにしちゃったという所なんですよね。今、開発も終盤なんですけど、全部見ているつもりでも、たくさんのプレーヤーの方に遊んでもらうと自分たちが想像もしない登り方などが発見されるかもしれないですが、楽しみでもあり怖くもありみたいなのはあります。

 僕のオススメも山小屋だったんですけど綾部さんに言われちゃったので煙突とかにしておきますか。みなさん子供の頃を思い返して、登るのって大人からは危ないからやめろと止められるんだけども登るとめちゃめちゃ楽しいじゃないですか。その楽しさっていうのを少しでも感じてもらえたら嬉しいなと思っています。

綾部氏:もう1つだけオススメを言わせてもらうとですね灯台山という場所がありまして、そこに花火師さんがいます。週に1回花火大会があるんですが、それとは別に毎日花火を3回くらいずつ打ち上げているんですよ。かなりの頻度で実験的に花火を打ち上げてて、打ち上げる夜中の時間に灯台の外壁を登って行って、できるだけ高い所から花火が上がるのを待っていると自分の目線よりも低い所で花火が打ち上がってるんですね。花火を上から楽しめるという。なかなか珍しい光景なんでそれもオススメです。

当初の予定とは大きく変わり、どこでも登れる自由なゲーム性になった

――親子世代に刺さるかなといった感じですが、子供に向けて推しのポイントなどありますか?

綾部氏:大きな魚を釣ったり数が多いときは、それをおばちゃんに渡すとその日の晩御飯に出してくれます。これは子供の体験としては相当スペシャルだと思うので、ぜひ料理を目指して魚を釣ってください。あと虫捕りに関してなんですが今回200匹(種類)を用意したんですけど中には「虫じゃないんじゃないの?」っていうのもいて、私がテストプレイで最初に捕ったのがそれだったんですよ。虫じゃないのもいたりするんでそれも探してみてください。都会のリアル世界でもみつけることができるんで、「なつもん!」に出てきたあれがある! みたいなこともできますんで。

和田氏:子供にオススメとは思ってなかったんですけど、困っている人を助けたりというエピソードが結構入っています。ですので自分が名探偵になったかのように、物事を解決したときの爽快感が味わえるんじゃないかなと。そこをオススメしたいです。

榊原氏:今回20世紀の夏休みということで、世代的には僕たちというか親の世代の子供の頃だと思うんですけど、遊んでみると今の子供も我々が子供だった頃とやっていることは変わらないというか、「やってることは同じだけど昔はこうだったんだ」みたいな所とかを親子で遊んでもらえたら嬉しいなと思っています。

綾部氏:ちなみに「ぼくなつ」のときに私は覚えてないのに親戚の子が「(『ぼくなつ』の)○○にいるカラスアゲハは何で夕方になるといないの?」とか、私より詳しいんですよ。ゲームを通じて虫博士を生んでいるというのがあって、今回もそうかもしれません。

虫捕りや魚釣り、探偵イベントなど面白い要素が詰まっている

――みなさんのサーカスのお気に入りの演目などありますか?

綾部氏:後半にならないと出てこないんですけど大きな大車輪を買ってできる、一般的には「ホイール・オブ・デス」と呼ばれているものがあって、命がけで大きな車輪の上で行なわれる演目は見応えがあるのでオススメです。今回どうやって曲とサーカスを同期していくかという所もかなり工夫しているので音楽も込みで見てもらえると面白いかなと思います。

和田氏:どれがオススメかは非常に難しいんですけど、サーカスの華である空中ブランコだったり、綱渡りだったり、案外他のゲームでサーカスを扱っていたりとか世の中に無いなという感覚があって、そういう意味ではゲームの中でちゃんとサーカスを取り上げたレアな感じが出ていると思います。

 僕が子供のときに実際に見た、輪っかの中でバイクがぐるんぐるん走る演目が印象にあって、実は今でもそういった演目がやられているというのがこの開発に携わったことで思い出したし、今でもやってるんだと知りました。世の中どんどん窮屈になって様々なルールだったりできないことが増えていっている中で、サーカスはギリギリの線で頑張ってらっしゃるんだなと印象的に思いました。

榊原氏:最初から用意されているシーソーの演目が個人的にオススメです。演出はリアリティが無くゲームらしい演出で、ちょっとクスリとしてしまうような演出も入っていますので楽しんでいただけたらと思います。

コミカルな演出でさまざまなサーカスの演目が披露される

――オープンワールドで時間がリアルタイムに進行するようになっていますが、1日の長さの調整、時間の流れの速さを変更できる機能を入れたことについてのお話を伺えますか

綾部氏:時間の長さに関しては正解が無いんですよ。これぐらいなら丁度いいなっていうのが無くて、“ちょっと足りないくらいを目指そう”と考えていました。なので夕方になって「ああー、良いタイミングで時間ギリギリ足りないよ」っていうのを目指しました。なんだけど、遠くまで歩いてきたのにここでシェアハウスに呼び戻されたらさすがに泣くだろっていう所もあるため“ここは時間が流れてない”という場所もあります。なので程よく足りないんだけどうまくフォローすることによって破局を回避しています。みたいなバランスで結果的に成り立ってるかなと。

 あともう1つ時間の長さでいうと、(夏休みの)30日間という長さは上手く配分できたかなと思っています。「ぼくなつ」のときもそうなんですけど正解が無いからこそ、もっと時間をゆっくりにしたり早くしたりっていう機能も付けようと三段階用意しました。どうしてももう少し遊びたいから少しゆっくりにしようみたいな切り替えてもらって、でも忘れずにもとに戻さないと困ることもあるよっていう。

和田氏:これについては実際大変でした。今でも正解だったのかわかりません。綾部さんのイメージは開発にちゃんと伝わっていて、例えば時間帯によって“この時間はちょっと遅く流れる”という綾部さんのイメージがあってそれは死守していました。どうしても最初はコンテンツが揃わないので時間が余りがちな傾向にあるんですね。すると「このゲームの密度が足らないんじゃないか?」と感じるし、密度を埋めるためにコンテンツを増やしていくと、こんどは“時間をゆっくりにしても足らない”ということが起きたりして。

 じゃあ時間の経過を感じさせないためだけに増やしたコンテンツは本当にこのゲームに必要なコンテンツなのか? というところも吟味する必要があり、開発最後の数カ月間というのはずーっと現場は調整してくれているように見えました。最終的には(時間の流れが)普通でちょっと時間が足りないというバランスになっていると思います。ぼーっとここに座っているだけで、懐かしくていいなぁーという空気感を感じてもらえるものを目指していたので、そういった人はゆっくり自分のペースで遊んでもらえたらいいし、早く1周をクリアしたいという人はスピードを上げて楽しめるよう配慮して最終的な形になっています。

時間がちょっと足りないというバランス。まさにリアルな夏休みのようだ

――「ぼくなつ」と比べてアクション性が増していますが、ここは差別化を図ろうというのはあったのでしょうか?

綾部氏:計画的にそうした訳ではなくて、いろいろなことをできるようにしていった結果なし崩し的になので、差別化しようとしてこうなった訳ではないです。

和田氏:僕も自分でゲームを作ったりするんですけど、変な話ですけど“僕が作ったら僕が作ったものにしかならない”みたいなところがあって、綾部さんが作ったものはどう見ても綾部印のものになっちゃうんですね。そんな中で「ぼくなつ」は綾部さんの中ですごい大切な作品だし、今回オープンワールドの作品を作ろうってなったときに差別化というより“作りたいものを作ろう”って思っていると思うんですよね。

 できることが増えた結果、差別化のように見えてしまっているんじゃないかなと思いました。シンプルにワンパクでやんちゃな少年が自由に動き回れるオープンワールドのゲーム作るというのが綾部さんの原点だと思うので、技術的な意味での差別化とはちょっと違うかなと思います。

シンプルに綾部氏が作りたいものを作った結果、今の形に完成したのだそうだ

――先ほどサーカスのお話の中で「世の中が窮屈になっている」とおっしゃられてましたが、本作では線路の上を歩けたりオモチャの銃で人を撃ったり、やんちゃなことができますよね。窮屈な世の中という観点から見るとこういった表現を入れるのは勇気が必要だったかと思いますが、踏み切った意思を伺えますでしょうか

和田氏:窮屈というのは僕個人の感覚なんですけど、基本的にオープンワールドのゲームというのはプレーヤーがやりたいことをできるのがゲームとしては正しいと思っています。その上で我々作り手の思いとは別にパブリッシャーであるスパイク・チュンソフトさんが判断されるというのは当然あって、世の中の矢面に立つのがパブリッシャーさんだったりするので。僕らがやりたいことを好き勝手にやらせていただいているんですけど、その中でスパイク・チュンソフトさんが判断して調整していただいているのではと考えていますがいかがでしょうか?

榊原氏:そうですね。我々の方でもここまでは良いよってところは逐一見せてもらってやってきたんですけど、綾部さんの世界とかをなるべく尊重したいと思うので、そういった部分ではあまり口を出さなかったというか、我々の見た範囲では大丈夫だったんで特にそれほど口を出さなかったんじゃないかなと。安心してお任せできたなと思っています。

綾部氏:例えば高圧電線に上に登ってそれを真似したらさすがにマズイだろというのがあって、設計的に高圧電線の鉄塔は登れないようにしてるんですよ。

 なんだけども、すごい高い山の上からマントとかで飛び降りたらどうなるかとか、我々の考えを超えちゃう可能性があります。また、動物を撃って気絶させるとアイテム扱いになって運べるみたいなこととかはできるんですけど、それ以上のことができる訳ではないので多分そういった意味では安全な範囲ではあると考えています。

榊原氏:綾部さんの繰り返しにはなりますが、スパイク・チュンソフトの中で「子供が真似しちゃったらどうするんだ」といった意見はありました。でもやはりゲームですので遊びの体験を潰してしまうと(面白さが)損なわれてしまうなと思いましたので、我々の中でも意見はあったんですけどそこは僕の判断でこうなりました。

和田氏:トゥーン調とはいえ、古びた感じやリアルな感じを再現しているので、だからこそ出てくる懸念はあると思います。例えば車が走っていて車の前に出ても車が停止するなどフィクションとしての要素についても取り入れています。

ゲーム体験の楽しさを重視し、やんちゃな遊び方ができる仕様になった

――本作は周回プレイがあると伺いまして、周回プレイの明確なメリットなどはありますか?

綾部氏:このゲームが何で周回プレイができるかというところからまずお話するとですね、要素がそこそこたくさんあるのでかなり効率よく回ったプレーヤーでもやり残しが出ると思います。

 人によっては「夏休みは1回だけだからやめておこう」、「周回は引き継がないで最初からやろう」という人もいるだろうし、本当にこの先が見たいから(引き継いで)やりたいって人もいると思うので。やり込み要素をコンプリートするというよりは、やり残しは気持ち悪いのでそういうための周回プレイになります。完全に引継いで2週目というよりは、この要素はやり残したくないよなというものを2回目のプレイのときに進めるための引継ぎという感じになっています。ただ普通に考えたら2週目の引継ぎの一言で済む内容になっていますので、心残りがある人に夏休みをもう一度といった仕組みになっています。

本作は周回プレイができることで、プレーヤーごとの夏休みが楽しめる

――オープンワールドという言葉もあまり知らないくらいの、あまりゲームを触れていない人たちに向けての売りを教えていただけますか?

綾部氏:「ぼくなつ」のファンの方も安心して楽しめる、でももっと自由度の高いゲームができましたと。和田さんにゲームを立ち上げるときによく言われたのが「これは夏休みのお話ではなく、体験だよ」と。とにかく夏休みを体験して、やんちゃに遊び回ることができる自由度の高いゲームです。体感的には4キロ四方の町が入っている感じなんですけど、新しい大地でみなさん遊び倒してください。

和田氏:小っちゃい子供って、公園に行くと「アレやれ」、「コレやれ」って言われなくても自分で駆け回ったり好きに遊ぶじゃないですか? それがゲームになったという感じだと思うんですよね。

――ありがとうございました