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絶対王者Absolute JUPITERついに敗れる!「EDION VALORANT CUP」レポート

Absolute、DetonatioNら優勝候補を倒したSCARZ、「VALORANT」新世代の幕開けか

10月2~4日開催

会場:スターライズタワー「Studio Earth」

 10月2日から4日にかけて、「VALORANT」の招待制オフライン大会「EDION VALORANT CUP」が都内で開催された。参加チームはBlackBird Ignis、DetonatioN Gaming、Absolute JUPITER、Lag Gaming、REJECT、SCARZと、どれも国内最高峰のチームだ。本大会はRiot公認のIgnition Seriesの一環ではないが、いずれにせよハイレベルな大会であることに変わりはない。

 また、オフラインイベントの開催が困難な昨今、今回のような大会は非常に貴重である。「VALORANT」の大会シーンは活発だが歴史は浅く、これだけハイレベルなオフライン大会は史上初といっても過言ではないだろう。いくら「VALORANT」のオンラインマッチはクオリティが高いとはいえ、選手たちが全く同じ土俵で戦えるのがオフライン大会の良さである。つまり本大会はいつも以上に「実力」がものを言う大会というわけだ。

 元ジャニーズの手越祐也氏がゲスト参戦したり、視聴者数が一時2万人を越えたりするなど、大いに盛り上がった「EDION VALORANT CUP」。本大会優勝の座は一体どのチームに渡ったのか、注目ポイントをピックアップしてレポートする。

「EDION VALORANT CUP」
会場には手越祐也氏の姿も

絶対王者Absoluteが準決勝で敗れる!

 本大会に招待された6チームのうち、圧倒的な優勝候補はやはりシード参戦のAbsolute JUPITERだろう。「CS:GO」の時代から日本のFPSシーンを牽引する彼らだが、「VALORANT」に移行してからも数々の大会で優勝を果たしている。先日の「Asia Showdown」では韓国のVision Strikersに惜しくも敗れたが、それでも国内最強チームといえばやはりAbsolute JUPITERという印象だ。

Absolute JUPITERの面々
下馬評は92%がAbsolute勝利と予想

 そんなAbsoluteの初戦の相手はSCARZとなった。SCARZは1回戦でLag Gamingを2-0で下しており、仕上がりは上々の様子。攻撃時の積極的な姿勢や、1on1になった時の強さはもちろんのこと、最も印象的だったのは彼らの声出しだ。選手間でどのようなコミュニケーションが行なわれているかが分かるのもオフライン大会の魅力の一つだが、6チームの中でも一番声を出していたのはSCARZではないだろうか。特にラウンドを取った時は必ずお互いを褒めていて、これは対戦相手からしたらプレッシャーとなっていたに違いない。

SCARZの面々

 Absolute JUPITERの国内シーンでの強さは圧倒的だが、実はSCARZはAbsoluteを大会で下した経験のある数少ないチームのひとつだ。BO1という一発勝負ではあったものの、「Fiveness Japan Cup VALORANT 2020」において、SCARZは準決勝でAbsoluteを下している。直近の大会「A.W EXTREME MASTERS」で両者が相まみえた際はAbsoluteが勝利しているが、果たして今回はどうなるのか。準決勝ではあったが、ファンたちはこの試合の行方を固唾を飲んで見守った。

 第1マップはヘイブン、SCARZの得意としているマップだ。両者のエージェント構成はほぼ同じで、SCARZが索敵を得意とするソーヴァを採用しているのに対し、Absoluteはデュエリストのレイナを採用している。AbsoluteはこれまでTakeJ選手がレイナを、Reita選手がジェットを選択することが多かったが、この2人がエージェントを交換していたのも興味深い。しかし、得意マップの防衛スタートということもあり、SCARZとしてはこのマップは落としたくない。

両チームのエージェント構成

 試合が始まると、Absoluteはセットアップ重視の攻めを多く展開していた印象だ。セットアップには、あらかじめ用意された動きをすることで、なだれ込むようにポイントを制圧する狙いがある。またAbsoluteはリテイクに対する防御も堅いためSCARZは中々手が出せず、前半戦は一時6-3Absolute有利にまで点差が開いた。

 しかしここで流れに飲まれなかったのが本大会のSCARZの強さだ。特に印象に残っているのが第11ラウンド、ここを落とすとクレジットに大きな差ができてしまう、SCARZにとっては重要なラウンドだ。AbsoluteはAポイントに5人全員でラッシュを試みたが、SCARZはそれを察知。まずサイバーケージを張って待ち構えていたNpoint選手が3キルを決め、Absolute側は慌てて前線から退くも、その先にはSak選手・MARIN選手が待ち構える周到ぶり。Absoluteは完全に動きを読まれ包囲されていたのだ。このラウンドで勢い付いたか、SCARZは前半戦6-6の同点まで巻き返す。

退くLaz選手の先には待ち構える敵影が

 続く後半戦、SCARZは攻めにまわり、今度はAbsoluteの堅い守りをどう崩していくかが課題になった。クレジットのためにもピストルラウンドは取っておきたいところだったが、SCARZはこれを落とし、Absoluteに得意の2オペレーター編成を完成させてしまう。

Absolute得意の2オペレーター編成

 試合の印象としては、やはりオペレーターを持ったTakeJ選手、Reita選手が機能していたラウンドはAbsoluteが勝ち、この両名を早期に排除できたラウンドはSCARZがとっていた。そんな中でターニングポイントとなったのは第21ラウンドだ。SCARZは1人も失うことなくCラッシュを決めると、Sak選手とAde選手がCポイントからさらに敵陣に追い討ちをかける積極的な姿勢を見せた。これが功を奏しこのラウンドでAbsoluteは全滅。クレジット状況がジリ貧だったAbsoluteはここでついにオペレーターを揃える財力が切れてしまう。

Absoluteはここで全滅

 そして第1マップ最終ラウンド、Absoluteは依然としてオペレーターは購入できず、SCARZは再びCへラッシュをかける。まずは待ち構えていたLaz選手がダブルキルを決めるも、返す刀でRyota選手がトリプルキル。しかしここでSCARZは残りの面子でAへ標的を変更し、スパイクを設置した。Absoluteもそれを追うも、最後は2on1の状況でSak選手がTakeJ選手をキルして勝利した。

喜ぶNpoint選手とSak選手

 続く第2マップはアセント、SCARZ防衛のスタートとなった。第1マップを落としたことで後がないAbsoluteだったが、勢いづいたSCARZは誰にも止められない。Absoluteは第1マップよりもゆっくりとした攻めを展開していたようだったが、SCARZがそれを的確に捌いていた印象だ。第5ラウンドでは、Absoluteが時間をたっぷり使って5人でBメインを攻めるも、待ち構えていたSCARZ側はこれにしっかりと対応し、パーフェクト勝利した。この時点での点差は5-0。SCARZ恐るべしだ。

SCARZのパーフェクト

 その後Absoluteはじわじわと巻き返し前半戦終了時の点差は7-5まで縮まったが、しかし後半戦になるとSCARZが再び怒涛の攻めを展開する。Absoluteは2オペレーター編成を整えるために所々でエコラウンドを挟みながらこれを捌こうとするも、SCARZは中々ラウンドを取らせてはくれず、Absoluteがやっとオペレーターを揃えられたのは第17ラウンド。その頃にはスコアは11-5まで開いていた。

 しかしその第17ラウンドも、SCARZが勝利してしまう。これはAbsoluteにとっては相当な痛手だ。SCARZがAポイントへラッシュを仕掛け、Absoluteもこれを果敢に守って1on1まで持ち込んだのだが、緊迫したにらみ合いの末、Sak選手がBarce選手にギリギリで撃ち勝ったのだ。これで12-5、マッチポイントSCARZとなった。

1on1に負けてしまったBarce選手

 Absoluteにとって絶望的な状況となってしまったわけだが、彼らの凄いところは、この時点で心を折れずに12-10まで戦い抜いたことだ。オペレーターへのこだわりを捨て、持ち前のカバー力で人数有利を取り、着実にラウンドを取っていった。土壇場での彼らの強さは、王者としてのプライドがそうさせるのか、やはり目を見張るものがある。しかい「VALORANT」というゲームには連敗のクレジットボーナスがあるため、勝ち続けることは難しい。さしものAbsoluteといえど12-5からの8ラウンド連勝というわけにはいかなかったようだ。

 勝負の決め手となったのは第23ラウンドだ。SCARZはAポイントへ狙いを定めると、ガーデンから攻めていたMARIN選手がTakeJ選手、Barce選手を続けてキル。これが追い風となってSCARZは一気にポイントへなだれ込み、Absoluteは2on4の人数不利でリテイクを強いられる。残されたTakeJ選手とCrow選手は慎重にヘブンを進むも、MARIN選手がしっかりと待ち構えてダブルキルしてみせた。準決勝はまさかの2-0でSCARZが勝利、Absoluteが決勝にも進めないとは、誰が予想しただろうか。

SCARZ勝利の瞬間
悔しさがにじむAbsolute陣営

 これは大番狂わせだ、と言いたいところだが、試合内容を見るにSCARZはまぐれではなく、しっかりと実力でAbsoluteに勝利を収めていた印象だ。これまではAbsoluteが最強という見方が多かったが、この一戦はその一辺倒な見方を大きく変える戦いとなった。国内の「VALORANT」シーンは海外と同様、あるいはそれ以上に成長し続けており、最早Absoluteの独壇場ではなくなっている。今後SCARZの他にもAbsoluteを倒すチームが出てくるのか、はたまたAbsoluteがこの敗北をバネに再び王者へと返り咲くのか、要注目だ。

互いを称えあうSCARZメンバー

DetonatioN対SCARZ、優勝の座はどちらに!?

 Absoluteを下して決勝戦へ駒を進めたSCARZだが、その相手は準決勝でBlackBird Ignisを下したDetonatioN Gamingとなった。彼らも実力は十分、いくらAbsoluteを下したSCARZといえど油断はならない相手だ。

DetonatioNの面々

 第1マップはバインド、SCARZのディフェンダー側でスタートとなった。両チームともにエージェント構成は準決勝から変わり、SCARZはソーヴァに代わりブリムストーンを、DetonatioNはセージに代わりソーヴァを採用している。

両チームのエージェント構成

 DetonatioNの攻めはかなり時間を使ったものが多かった印象で、第3ラウンドではスパイク設置からタイマー切れまで粘り続けたCLUTCH勝利が見られたほどだ。SCARZは最初のうちはこれに中々対応できず一時スコアは4-0まで開いたが、続く第5ラウンドでMARIN選手がオペレーターで3キルを決め、流れをがらりと変える。

MARIN選手のオペレーター

 試合は依然としてゆっくりとしたペースで進むも、徐々にSCARZがその主導権を握っていく。特に第11ラウンド、SCARZが時間いっぱい設置をさせず守り切ったのは圧巻だった。

時間切れまで守り切ったSCARZ

 前半戦を7-5のSCARZ有利で折り返すと、後半戦はSCARZが積極的な攻めを展開する。撃ち合いに強いMARIN選手を中心とした攻めに対し、DetonatioNは所々で良い守りやリテイクを見せるも徐々に圧倒されていき、試合は12-10でSCARZのマッチポイントとなる。

 第1マップの決め手となったのは第24ラウンド、SCARZはブリムストーンのスモークで上手く視界を遮断し、5人残してAポイントにスパイクの設置を成功する。するとSCARZは一旦ポイントを明け渡し、そして壁越しに温存していたローリングサンダーを放った。これがリテイクにきたDetonatioNに上手く刺さり、DetonatioN側は全滅、第1マップはSCARZが勝利した

温存していたローリングサンダー

 続く第2マップはヘイブン、SCARZはブリムストーンをソーヴァに入れ替え、DetonatioNは第1マップそのままのエージェント構成で挑んだ。アタッカー側のSCARZは持ち前の攻撃力で攻めを展開するが、今度のDetonatioNは後がないだけに粘り強く、試合は拮抗した展開になった。

 前半戦はDetonatioNが7-5有利で終えるが、後半戦始まってすぐにSCARZが追い上げ、すぐに8-8の同点となる。その後先にマッチポイントに手をかけたのはDetonatioNだったが、後がないラウンドでまたもMARIN選手がACEの大活躍を見せチームを救い、試合はオーバータイムにまでもつれ込んだ。

MARIN選手のACE

 オーバータイム突入後も両チームは競り合い、試合は第28ラウンドまで続いた。スコアは13-14、リーチをかけられ後がないDetonatioNは、4人でAロングを攻める。しかしこれを読んでいたか、待ち構えていたMARIN選手がZODIAX選手を落とし、SCARZは人数有利な状況を作る。その後DetonatioNはAポイントへの侵攻を進めるも、Ryota選手のフォールトラインが相手を完全に捉え、最後にはRyota選手、Npoint選手による同時キルで華麗に試合を終わらせた。

SCARZ華麗な同時キル

 激戦の末、「EDION VALORANT CUP」はSCARZの優勝で幕を下ろした。喜びを分かち合うSCARZの面々の中には、目に涙を浮かべる者もいた。優勝インタビューで感想を聞かれるとMARIN選手は「大きな大会での優勝を目指して今までやってきて、それが達成されたので、これからチームで新しい目標を決めて頑張っていきたいです」と話した。優勝した彼らには賞金50万円と、他副賞が贈与された。

感涙するAde選手
賞金を手にするSCARZ

 オフライン大会という環境下で絶対王者Absolute JUPITERを倒し見事優勝を決めたSCARZ。まだまだ伸びしろ満載のSCARZ、今後の彼らの動向には要注目だ。