インタビュー

敗因は「慢心」。「CS:GO」プロチームSCARZ Absoluteインタビュー

日本最強チームに訪れた大きな試練。自身を見つめ直し、次の大会へ

10月18日~21日開催

会場:中国上海666号館

 既報の通り、「Counter-Strike: Global Offensive」のアジア大会「eXTREMESLAND 2018」において、日本代表のSCARZ Absoluteは2戦2敗、グループリーグ敗退という結果に終わった。

 2001年からeスポーツを取材してきて1番しんどい仕事は、勝つべきゲームに負けた後のチームインタビューだ。勝つべきゲームにおいて、チームとしてどのように勝ったか、勝つためにどうしたかという言葉はいくらでも用意できても、もともと負けるつもりがないわけだから、負けたときの言葉などまったく用意していないからだ。

 控え室には例えようもないほどの重い空気が流れ、ゲーミングチェアに体を横たえ、うつむき、小さくなった選手達がいる。この静寂を破り、選手達にとって酷な質問を重ねるのは、何回繰り返そうが逃げ出したくなる仕事の1つに変わりはない。ただ、筆者以上に、逃げ出したいのは選手達だろう。にも関わらず、ひとつひとつ言葉を選びながら、応援してくれたファンに対して、あるいは自分たちの次に向けて質問に答えてくれたSCARZ Absoluteのメンバーには敬意を表したい。

 GALLERIA GAMEMASTER CUPに優勝したSCARZ Absoluteは、今回のeXTREMESLAND 2018に続いて、台湾高雄で11月9日から開催されるIeSF World Championship 2018や、全「CS:GO」プレーヤーにとって最高の舞台となるメジャー大会「Intel Extremes Masters Katowice 2019」への出場をかけたアジア予選が11月15日よりスタートするなど、国際大会が続く。ぜひ今回の敗戦を糧に、一皮も二皮も剝けた新生SCARZ Absoluteを見たいところだ

何かが違う……。何がチームの歯車を狂わせたのか?

――eXTREMESLANDお疲れ様でした。0勝2敗という厳しい結果に終わりましたが、まずは本大会を終えた感想から聞かせて下さい。

takej選手:悔しいという想いしかないですね。

Laz選手:最悪の結果ですね。

barce選手:正直、最初はグループ抜けはできるかなと思ったんですけど……、今は言葉が出てこないですけど悔しいですね。特にTrainは自分活躍できなかったんで、自分に対する怒りもあります。

――Reita選手は初めての国際大会出場ということでしたが、いかがでしたか?

Reita選手:ちょっと今メンタルにきてますね……。

――crow選手は今年はIGLとして重責もあったかと思いますが、試合を終えていかがですか?

crow選手:この大会に向けて、チームとして自分個人として練習してきて、勝てると思っていました。ワンチャン5POWERも倒して、1位抜けもないことはないぐらいだと思っていたんです。悪くても2位抜けはできるだろうと。自分たちはそれだけの練習をしてきたつもりだったんですが、結果がこれなんで、悔しいは悔しいですけど、自分たちの実力がここなんだということを認めて、次に向けて頑張るしかないですね。

今回IGLとしてチームを引っ張ったcrow選手

――グループリーグ初日の昨日も2日目の今日も、「いつも通りやれば勝てる」というコメントでしたが、いつも通りやれず、勝てませんでした。SCARZ Absoluteはどこで歯車が狂ったんでしょう?

Laz選手:“歯車が狂う”という表現がピッタリ合うぐらいうまくいっていませんでした。何やってんだろう、みたいな。

crow選手:ミスが結構ありました。

barce選手:ミスはあったね。

crow選手:ただ、いつもなら修正できるぐらいのミスなんです。

Laz選手:俺はもうIGLじゃないんで、自分ができることは増えたんです。試合中、crowが苦しんでいるのはわかっていたのに助けられなくて、ずっとcrowの指示待ちみたいになっていて、もっとできたのかなと思いますけど、今思い出してしまうのは自分の失敗ばかりですね。なんでもっとできなかったのかなと。

IGLという立場を離れて伸び伸びとプレイしていたLaz選手

――個人的には、Laz選手は個人スコアは、チーム内でも1番良かったと思います。どのあたりが「まだできた」と思うんですか?

Laz選手:最近は自分のスキルを磨くことに集中して、いかに大会でパフォーマンスを発揮するかに注力していて、その意味では自分だけ見ればそんなに良くはないですけど、悪くもなかったと思います。ただ、俺がチームに対して何ができたのかという点では最悪だったと思います。

――D13もあまりデータのないチームでしたが、どのような作戦で臨んだのですか?

crow選手:たまに練習試合をするぐらいの相手で、データもあることにはあったんですけど、それをちょこちょこ参照しつつという感じで、練習では1度も負けたことなかったんですが、1度も……。

――D13は練習で勝てていないからこそ逆にしっかり研究していたわけですね。

crow選手:研究されていたのはあると思います。それはわかっていることなんです。その上で俺らのミスを付いてきたというのはあるんですが、極力ミスは避けようとしていますが、それでも起こるのは仕方がないと思っています。ミスしたあとしっかり修正していくのが大切なんですが、それが今回うまくいかなかったと思っています。

――1ゲーム目にSCARZ AbsoluteがピックしたCacheで勝てなかった。「おや、これはおかしいぞ」と気づいたんですが、チーム内で何が起こっていたんでしょう? 途中ダブルAWPを投入したり、試行錯誤しているのは感じていましたが、1度も波に乗れていないなという感じでした。

ダブルAWPという新たなカードも切られたが、劣勢を覆すまでには至らなかった

crow選手:少し前に自分たちの課題を洗い出して、少しずつ良くなってはいたんですけど、その課題を克服する以前の自分たちに戻ってしまったかのような感覚を覚えましたね。

――その課題とはズバリ何だったんですか?

crow選手:うまく言葉で表現するのが難しいんですけど、良くないラウンドの取られ方、殺され方をしたときに、どう修正していくかということです。

――2試合観戦していて感じたのは、2試合とも、まったく“らしさ”が感じられないと思いました。

crow選手:正直、自分もやってて、昨日の試合からいつもの感じと違うぞと感じていました。ただ、それがなんなのかは今はまだよくわかりません。

Laz選手:普段、こんな感じで行けば取れてるだろというところで、なぜか取れなくて、それがまさに大会中に発生してしまって、今は取れなかった理由がよくわからないですね。全体的にいつもと違うなとは感じていて、まあ大会なので、いつもと違っていて当然なんですけど。

crow選手:この間のGALLERIA GAMEMASTER CUPやFACEIT Asia Minorの時も比べても違う感じがしましたね。

――もともとSCARZ Absoluteは緻密なセットプレイでラウンドを取るというよりは、華麗な個人技で押し切るという展開が得意ですが、その肝心の個人技も鳴りを潜めていた印象がありました。

Laz選手:鳴りを潜めていたというのは僕も感じてました。

――一例を挙げるとtakej選手、barce選手が暴れて敵を圧倒する、これがひとつの勝ちパターンですが、そう言う展開がほとんど見られなかった。

takej選手:原因は一杯あるんですけど自分が弱かったというだけで、単純に実力不足だったんだと思います。

barce選手:俺もtakejと一緒で、今はあんまり考えたくないですね。昨日も今日も、単純に俺の実力が足りなかったという話で、もっと練習を重ねて個人技を高めて、大会で結果を出せるようにしていきたいですね。

――Reita選手は、専門のAWperとしてSCARZ Absoluteに加入して、しっかり仕事はしたという印象ですが、自身の感想はいかがですか?

Reita選手:個人としてはまあ普通かなという感じです。いつもまったく活躍できてないから、いつもよりは良い立ち回りができたかなと思っています。ただ、チームとして考えると、こういう負け方をするということは、試合数が圧倒的に足りない気がする。試合数が足りなすぎて、どうしようもないときの対応ができていない。

Laz選手:それはそうだね。

Reita選手:最近練習試合をそこまでできてなかったじゃん? その影響がモロに出てしまったかなという感じです。

Laz選手:1年ぐらい繰り返し練習できていたら、あれぐらいになっても十分対応出来ていたと思うんですが、poemが完全に抜けるとなって、Reitaが選手として入ってから、eXTREMESLANDまであまり期間がないにも関わらず、あまり練習できていなかったというのもあると思います。

――Reita選手を含めたマップごとのセットプレイはもうしっかり準備できていたんですか? それともまだ練習中だったんですか?

Reita選手:うちはセットプレイをあまりしないので、そこはあまり問題ではないですね。

Laz選手:昔に比べると数は減っているんですけど、そこはできていると思います。

敗因は「慢心」。現実を認めて立て直しへ

――今回の課題を1つ挙げるとすると何でしょう?

crow選手:色々要因があるのでパッと1つ出すのは難しいんですけど、勝ちへの意識が低かったということだと思います。

――これはツアーに参加していた他の日本チームの選手達も言っていたことですが、SCARZ Absoluteはとにかく声が出ていなかった。D13が1ラウンド取るとすぐにわかるんですね、ドッと声を挙げるから。逆に静かなままだとSCARZが取ったことがわかる。今回は他の大会と比較しても静かだった印象があります。“意識の低さ”というのはわかる気がしますね。

Reita選手:正直、相手を舐めてたからだと思います。勝って当たり前だと思ってたから。

Laz選手:クラッチシーンでとったときとかは声は出ていたと思うんです。最初の方は声が出ていたんですけど、途中で雰囲気が悪くなっちゃって、その後静かになってしまいましたね。

――敗因をひとつ挙げると何ですか?

barce選手:ミス? なんやろうな。

crow選手:ミスじゃない。

Reita選手:慢心。

barce選手:慢心やな。

――チーム内に“勝てて当然”という慢心が充満してしまっていたということですか。

Reita選手:俺はそうだと思いますよ。

――今後も台湾高雄のIESFへの出場をはじめ、大会が続いていきます。どのように反省して、次に向けて修正していく予定ですか?

次の目標となるIeSF World Championship 2018

Laz選手:デモを見直して地道に問題点を探し出して改善していくしかないと思います。

――本大会、点数を付けるとすると何点ぐらいですか?

Laz選手:自分自身だけなら割と50点ぐらいは出してもいいかなと思いますね。普段よりも良かったんで。ただ、チームへの貢献という点で評価すると10点も出せないですね。

――チームへの貢献というのはどういった点ですか?

Laz選手:チームの雰囲気が悪くなったときに声がけすれば良かったというのもありますし、crowがキツそうなのはわかっていたんで、それでも何もしてあげられなかったのが反省点ですね。

crow選手:1勝もできなかったんで、点数は付けられないですよね。良いところがないです。

――実際2戦全敗ということで反省点も多い大会になったと思いますが、強いて収穫を挙げるとすれば何ですか?

crow選手:NASRもD13もそんなに格上のチームじゃないんで、それらに負けてしまったので収穫はないですね。

――2試合見ていて感じたのは、勝った2チームとも、SCARZ Absoluteのことを良く研究しているなと感じました。つまり、強豪チーム、マークすべきチームとして研究対象になっている。これはひとつ収穫かなと思いました。ただこれは、世界的に存在を認知されて、Tier1を目指していくすべてのチームに訪れる試練だと思います。この試練をどう突破していくつもりですか?

Laz選手:研究されていることを前提に、立ち回りを研究していくしかないんじゃないかと思います。自分たちの選択肢を増やしたりですね。

crow選手:それに関してもパッとできることはそんなになくて、マップの練度をひとつずつ上げていく。そうすれば研究されていたとしても、対応が良くなっていくと思います。ただ、1つ収穫があったとすれば、今までは去年、自分たちが出場したときと比べると、注目されるようになったことですね。1年前まで、自分たちが研究されることってあまりなくて、今回は自分たちが思っている以上に、まわりは見ているんだなと。それは感じましたね。

eXTREMESLAND優勝チームに贈られるトロフィー。ひょっとしたらと思っていたが、やはりまだ遠かった

――最後に日本から応援してくれたファンに向けてメッセージをお願いします。

Reita選手:完全に不甲斐ない結果に終わって申し訳ないです。でも、まだこれからだと思っているので、まだ大会は残っているし、そこでどう勝つかを見ていて欲しいです。

barce選手:すいませんでしたとしか言えないですね。応援してくれていたのに、こんな不甲斐ない結果に終わって、本当にすいませんでした。

takej選手:次の台湾までに全部修正して臨みたいと思いますので、引き続き応援よろしくお願いします。

Laz選手:なんといっていいのか……。勝てなくてすいませんでした。自分は、大会でパフォーマンスが出せるかどうかというのが個人的な課題で、それについては結果を出せたと思っているんです。今後、もっと活躍できるだろうなという手応えも掴めています。個人はいいんですけど、チームに関しては最悪だったんで、ただ、それはチームに対して「うわ」というんじゃなくて、あくまでチームにおける自分の問題なので、今後はチームが巧く回るように動いていけるようにしたいなと思いますね。

crow選手:今回の結果の現実を受け止めて、次の大会までに強くなった姿を見せられるようにしたいと思います。

――頑張って下さい。ありがとうございました。

インタビューに応じてくれたSCARZ Absoluteのメンバー達。左からReita選手、barce選手、マネージャーのzyoutan氏、crow選手、takej選手、Laz選手