インタビュー
エリーの血みどろの復讐劇が幕を開ける!! 「The Last of Us Part II」プレビュー
圧倒的なビジュアル、アニメーション、そしてアクション。そのすべてがAAAクオリティ
2018年6月15日 11:11
2013年にプレイステーション3専用タイトルとして登場、Game Developers Choice Awardを筆頭としたあらゆる賞を総なめにし、世界中から絶賛された「The Last of Us」。その続編「The Last of Us Part II」が、いよいよプレイステーション 4にやってくる。それは来年なのか、再来年なのかはわからないが、E3 2018で最新トレーラーが公開されるや否や再生数は瞬く間に500万回を突破、その関心の高さは群を抜いており、今地球でもっとも発売が待ち望まれているタイトルのひとつといっても過言ではない。
E3 2018では、開発機を使用したプレゼンテーションおよび開発者への質疑応答が行なわれ、E3 2018トレーラーだけではわからない、より深い情報を得ることができたのでたっぷりご紹介したい。E3 2018トレーラーについては「PlayStation E3 2018 Showcase」レポートで取り上げているのでそちらも合わせて参照いただきたい。
前作「The Last of Us」をDLCまで含めてすべてクリアしたファンのひとりとして、どうしても知りたかったのは、なぜエリーはそんなに残虐になってしまったのかということだ。
前作「The Last of Us」では、15歳の少女エリーは常にジョエルに守られる存在で、ゲーム後半にジョエルが倒れ、ジョエルに変わってエリーがプレーヤーキャラクターになったときも、あくまでか弱い少女として描かれ、その必死でけなげな活動は、ラストシーンの大きな感動の伏線に繋がった。
しかし、「The Last of Us Part II」に登場する、昨年から5年が経過してすっかり大人びたエリーは、容赦の無い殺人鬼と化したように見える。敵の後ろからナイフを突き立て、ピストルでヘッドショットし、矢が突き刺さり致命傷を負った輩に容赦なく鉈をふるう。トレーラーの冒頭とラストで、女友達と甘いキスを交わし、屈託のない笑顔も見せていただけに、そのギャップは衝撃的だ。
この冒頭とラストシーンは、エリーが身を寄せているジャクソンにあるコミュニティパーティーの風景で、トレーラーを見た誰もが想像できるように、このコミュニティに惨劇が起き、エリーは復讐の徒となる。しかし、ここまで暴力的な表現にする必要があるのだろうか?
担当者は「『The Last of Us』は、人類の文明が崩壊した後の世界を描いている。エリーは小さいコミュニティに安息地の地を見つけ、そこで友達もできた。しかし、そこで“暴力的な出来事”が起き、エリーはある集団を見つけ出し、正義のために復讐を決意する。エリーがセラファイトから生き残りを賭け、正義を求めるためにすべてを捨てて復讐する。この行為を正確に表現するためにはこういった暴力表現が必要不可欠だった」と回答してくれた。
彼らのいう“ある集団”とは、シアトルで発足したセラファイトと呼ばれる集団で、エリーの目下の敵は彼らになる。E3 2018トレーラーに登場する敵達もおそらくこのセラファイトで、そのほかにもParis Games Week 2017で公開されたトレーラーでは、謎のアジア系の組織の存在も明らかになり、ラストシーンではその彼らにインフェクテッド(感染者)が襲いかかってくるなど、ジャクソンコミュニティの生き残り対セラファイトという単純な構図のストーリーではないようだ。
今回のデモンストレーションでは、トレーラーと同じ内容をなぞったが、トレーラーを見る度に新しい発見があり、「The Last of Us Part II」は単にネームバリューだけでなく、現行最高峰のテクノロジーを詰め込んだ名実併せ持つAAAタイトルであることを否応なく実感させてくれた。
たとえばキスシーン。ゲーム業界では異例のレズシーンだの、エリーがレズになったのどうでもいいことが話題となっているが、このシーンで重要なのは、世界最高水準のフェイシャルモーションが実装されていることだ。
このシーンでは、エリーの唇が動き、鼻が動き、頬が動き、そして頬を赤らめて豊かな表情で笑顔になる。このシーンはプリレンダーではなく、すべてリアルタイムで処理されており、それを可能にするだけのフェイシャルアニメーション技術が導入されているわけだ。これは前作「The Last of Us」はおろか、同じNaughty Dogの「アンチャーテッド4」以上のクオリティであり、これらはすべて新たなグラフィックスエンジンによって実現されているという。
そしてもうひとつ驚かされるのは戦闘シーンのアニメーションだ。あまりに自然すぎて気づかないが、エリーと敵は常に、状況に応じた適切なアニメーションで処理されている。たとえば、敵の剣戟を避けるエリーの避け方、エリーが攻撃をヒットしたときの敵ののけぞり方、組み合ってから押し返される動き、それらのすべてが流れるような一連の処理になっている。
このほかにも物陰に隠れたときはそこに手をついたり、体を狭めて狭い場所を通ったり、車の下に潜ったりなど、オブジェクトに対して常に適切な反応を行なう。その処理の豊富さと自然さが本作の凄いところだ。
また、エリーは途中、敵から弓矢攻撃を受け、肩に矢が刺さってしまう。これは従来の“矢が当たったからダメージを受ける”というゲーム的な処理で終わりではなく、「The Last of Us Part II」では矢が刺さったままであり、かつ刺さったままだと身体能力が下がるという。このため、エリーは安全な場所で矢を引き抜いている。
ゲームの構造については、前作同様、オープンワールドは採用せず、ストーリードリブンのステージクリア型の構造を採用する。といってもクリア方法は1つではなく、ステージをクリアするためには複数の方法が用意され、ステージを意識させないように、戦闘エリアと非戦闘エリアはシームレスに繋がっているという。
前作で多用した“耳を澄ます”ギミックは本作にも登場する。ということは、インフェクテッドと相対するシーンもあるということだ。ビンを投げて誘導するなどの前作で使ったテクニックは今作でも引き続き有効だが、インフェクテッドのAIも高度に進化しているため、同じ戦術がそのまま通じるとは限らないようだ。
現時点で意図的に伏せられている情報は、メインストーリーの鍵を握るジャクソンのコミュニティがどうなっているかだ。全滅しているのか、誰か生き残りがいるのか、ジョエルは一緒に居るのか、あるいは実は健在でエリーは豊かなコミュニティを育むことができるのか。
前作でもジョエルの娘サラが特殊部隊に撃たれて殺されるというプロローグシーンの内容は発売まで伏せられていた。その後に出会ったエリーは、サラが生き残っていれば同じぐらいの年と背丈だったことがジョエルの旅の大きなモチベーションになっている。「The Last of Us Part II」でも、トレーラーのパーティー後に起こる出来事がエリーに決定的な影響をもたらすことになりそうだ。
最後にもうひとつ。マルチプレイモードを実装する予定もあるという。担当者はその存在を認めながらも、「まだ詳細は説明できないが、ワクワクしている」と語り、前作以上に世界観を活かしたユニークなマルチプレイモードになりそうだ。
残念なのはここまで仕上がっているにも関わらず、発売時期がアナウンスされなかったことだ。このE3のタイミングを外したということは年内発売はほぼ絶望的で、早ければ「God of War」や「Detroit Become Human」のように2019年の春頃か、本命はやはり2019年のホリデーシーズンだろうか。じっくり発売を待ちたいところだ。