インタビュー

「Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JIRITSU/而立」インタビュー

植松氏・ロス氏共に鈴木さんのパフォーマンスを激賞。海外デビューはいつになる!?

12月10日開催

会場:東京国際フォーラム

 日本では約2年振りとなる「ファイナルファンタジー」シリーズのオフィシャルコンサート「Distant Worlds」が12月10日、幕を閉じた。日本では12月8日の大阪公演を皮切りに3公演を行ない、2018年1月から再び海外公演へと旅立つ。

 公演レポートでもご紹介したように、東京公演では11月15日にリリースされた最新の「ファイナルファンタジー」となる「ファイナルファンタジーXV: 戦友」の主題歌「Choosing Hope」の初演が行なわれた。終演後のメディアインタビューでは、初演を終えた鈴木瑛美子さんも参加し、感想を語ってくれた。

【Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JIRITSU/而立】
「FF」30周年のトリを飾った東京公演の模様
「Choosing Hope」を熱唱する鈴木瑛美子さん
「オペラ~マリアとドラクゥ」ではスタンディングオベーションが起こった
インタビューでも語られているように、大阪公演では鈴木さんが期末試験で参加できず、それに匹敵するゲストとして、「FFXV エピソードイグニス」コンポーザーの光田康典氏が登場。こちらも観たかった……(Photo by Shinjiro Yamada)

植松氏「ぜひ海外の皆さんにも聞いていただきたいですよね」

植松氏、ロス氏というお馴染みの2人に加えて今回は鈴木さんもインタビューに参加した
指揮者アーニー・ロス氏
作曲家植松伸夫氏
ソリスト鈴木瑛美子さん
「FF」30周年および「Distant Worlds」10周年を記念して作られた公式パンフレット

――本日の感想をお願いします

アーニー・ロス氏:ファンタスティック! その言葉につきますね。沢山のゲスト、友人、同僚が参加してくれました。そうした中で特別なコンサートにしようと、曲目を変えたり、演出を変えたり工夫を凝らしました。現在、30周年ツアーは中盤を迎えていて、この後2018年1月にはニューヨークのカーネギー・ホールで演奏を予定しており、ロサンゼルス、カンザスシティと続いていきますので、非常にエキサイティングです。

植松伸夫氏:とりあえず盛り上がってよかったなというのが正直なところです。これまでもマレーシア、シンガポール、ロンドン、シカゴなどで30周年コンサートをやってきたんですけど、実はプログラムはいろいろいじっていて、場所によってプログラムが違うんです。中には演奏を予定していた曲があったが、譜面が間に合わずに急遽別の曲を入れたりなど、そういうのも込み込みでライブ感を楽しめる3カ月になると思います。 ニューヨーク、ロス、カンザスと続きますので、スリリングな三カ月になりそうです。でも今日ぐらい盛り上がってくれるとしんどさも吹き飛ぶというかやって良かったよねと思えますし、皆さんに喜んで貰えて良かったです。

鈴木瑛美子さん:初めてこうして「ファイナルファンタジー」に関わらせて頂いて、世界中でコンサートが開かれていて、世界中にファンがいて、こんなに人気のあるゲームに自分が携わっていて、ステージに出られるなんて夢にも思っていなくて、初めての感覚、初めての歓声で、「ファイナルファンタジー」って凄いんだなと思って、愛される理由がわかって、私、なんでここにいるんだろうというぐらい嬉しくて(笑)、これから世界でコンサートを開くということで、世界でいろんなファンが待っているので、全部成功して欲しいなと思います。

植松氏:海外でも歌えるといいよね?

鈴木さん:あーもうぜひ!(笑)。呼んでいただけたら光栄です。

――公演によってセットリストを変えているということですが、日本のファンのために入れた曲はありますか?

植松氏:「FFVI」の「Searching for Friends - 仲間を求めて」を抜いて、あともう1曲、ああ、チョコボを抜きました。海外公演では「FFXI」が入ってなかったので入れて、日本では鈴木さん呼んで「Choosing Hope」をぜひやろうよという話もあって、鈴木さんパートの5分間を入れたら何か他の曲を抜かないといけないじゃないですか? 一昨日の大阪公演では、鈴木さんが来れなかったんですよ。期末テストで(笑)。だから光田君(光田康典氏、コンポーザー)の「FFXV」の曲を入れたり、場所場所で色々やっていますよ。来月のプログラムも変わるかもしれません、その直前にならないとわからないんですよ。

――割とその場の雰囲気で勢いで決めちゃっているところがあるんですか?

植松氏:勢いといっても今日決めて明日変えるというわけにもいかないので(笑)。1~2週間前には決めてなきゃいけないので。

――「FFXI」を入れたのは、「FF」30周年を意識してのことですか?

植松氏:そうです。ところが全作入ってるかというとそうでもなくて、「FFII」とか「FFIII」とかは今回入ってないんですよね。2時間しかないんで、いろんな曲をやりたいんだけど、譜面があまりに多くて、譜面が100曲を超えていて、それを2時間でやらなきゃいけなくて。しかも、お客さんが何を望んでいるかわからないじゃないですか。お客さんの世代があまりにも多岐にわたっていて、初期のものが聞きたいのか、最近のものがいいのかは毎回悩むところです。ただ、「FFVII」ファンが異様に多いので(笑)、「FFVII」についてはいつも多めになっていますね。選曲はいつも悩んでいます。

――「Choosing Hope」の鈴木さんの声に衝撃を受けました。日本での初演を終えて、皆さんの感想を聞かせて下さい。

ロス氏:5,000人の観客の前でステージに上がり、そして歌うというのは非常に難しいことですが、しかもその5,000人は「FF」を熟知している方々です。その前でよく歌うのは難しいことだと思いますが、鈴木さんはよく歌いきったと思います。歌うだけじゃなく、最初は優しく柔らかく歌いつつ、どんどん最後に向けて盛り上げを作っていく組み立て方は見事だと思います。本当におめでとうと言いたい。エミコ、とても良かったよ。

植松氏:鈴木さんの「Choosing Hope」は明らかに分が悪いですよね。他の曲は一番古いやつで30年前の曲なわけで、みんな知ってる曲が多いわけですから。イントロが鳴っただけで「おお!」となりますが、「Choosing Hope」は一番新しい「FF」の曲なのでまだ知らない人も多い。そうした中で「Choosing Hope」をやるというのは鈴木さんも不安だったと思うんですけど、お客さんは正直ですよね。鈴木さんがはけた後も延々続く拍手は、お客さんの胸を打っている証拠ですよね。つまんない曲はすぐ拍手なくなっちゃいますから(笑)。あれがすべてを物語っていると思います。

メディアから「何かポーズを」との要望にピースをしてしまう鈴木さん。今後の活躍が大いに期待されるアーティストだ

鈴木さん:もちろん2日間すごく緊張していました。なんの緊張かというと、自分がミスするかどうかじゃなくて、まだリアルな反応を見聞きしたことがなかったので、受け入れられるかというところで、5,000人の前で歌うのも初めての経験だったので、そういうところでも緊張していたんですけど、レコーディングの時よりも歌いこんで慣れてきて自分のものというか、ストーリーに入って歌えたかなって自分では評価をしています。観客の方々が凄く喜んでくださってTwitterやSNSでも凄くコメントをいただくことができたので、今凄くホッとしています。

――海外公演でも「Choosing Hope」を望む声は大きいと思います。鈴木さんの海外デビューはいつになるんですか?

鈴木さん:えっ(笑)。

植松氏:アーニーさんいつにする?

ロス氏:よし、次のカーネギー・ホールだね。もう数週間後なんだけど(笑)。

植松氏:ぜひ海外の皆さんにも聞いていただきたいですよね。

ロス氏:鈴木さんがコンサートに参加することで、オケやコーラスだけじゃなくて、声が入ってくることで全体的なバランスが良くなるので、今回鈴木さんが参加してくれたことはとても良かったと思います。

――今回一番盛り上がった「オペラ マリアとドラクゥ」の完全版について、オペラをやろうと思った理由はなんですか?

植松氏:なんでやるかというとウケるからですよ(笑)。コンサートの最後の曲を何で締めるかを考えたときに、静かに終わると終わった感じがしないじゃないですか? ダダダダンとかザンッと終わりたい。そういう曲がオペラしかなかったということですかね(笑)。海外公演では、オペラ以外のフィナーレも使っているんですけど、オペラで終わるのが一番反応が良いんですね。

 「FFVI」を作ったときに、最初はラルスとドラクゥのバトルがなくてちょっと中途半端な曲だったんで、6~7年前にバトルシーンを入れて、最終的にドラクゥがラルクをやっつけて、マリアと結ばれるという中間部分を僕が作ったんです。ただ、オペラの完全版は、そんなにしょっちゅうやってるわけではないんですが、今回は30周年ということで、すべてオペラで終わって「FF」のメインテーマに繋がるのが感動的だという意見が多いですね。

ロス氏:私はオペラ完全版をとても気に入っていて、演奏できてすごく良かった。植松さんが言ったようにバトルシーンを入れることでプログラム自体が楽しくなるし、流れができると思います。神秘的なオープニングではじまり、ペースを作って、ソリストに持っていって、それからどういう風に終わらせるか。30周年と言うことで、 ベストなエンディングはなんなのかということを考えたときに、オペラもいいじゃないかと。他の曲によるエンディングもやってきましたが、オペラのインパクトが最適ではないかと考えました。シドニーやロンドンなど様々な海外公演でもやってきましたが、必ずスタンディングオベーションになりました。

 ただ、オペラをやるということを軽々しく考えたらいけないといつも自分を戒めています。自分としてはそうしたチャレンジがあるほど指揮をするのが楽しくなります。曲を変えたり、フィナーレを考えるなど要素が増えていきますが、私はオケを指揮するだけでなく、ナレーションやソリスト、コーラスに対してキュー出しをしなければなりませんし、それらのタイミングを上手くはからなければなりません。しかも、毎回違う都市、違うオケに対して教えていかなければなりません。これはすべて自分にとってチャレンジですが、楽しんでやっています。

――今回は30周年ということもあり、前半では鈴木さんの歌唱があり、後半にも様々な趣向が凝らされ、ゲームのコンサートなのかなというほど充実していましたが、来年以降、挑戦してみたいこと、やり残していることがあれば教えて下さい。

植松氏:先のことはあまり考えたことがないんで、わからないんですよね。皆と話してこれおもしろいんじゃないの、あれおもしろいんじゃないのってやってるだけなので。「Distant Worlds」をアーニーさんと一緒に10年続けてきて感じているのは、みんなフットワークが軽いんですね。物事をじっくり考えて計画的にやるというよりも、これおもしろそうだと思ったらポーンといっちゃうほうなので、そこらへんもアーニーさんと凄く気が合って、おそらくふたりともそんな先のことは考えていませんよ。そのときに何が楽しいかを考えてすぐ実行しちゃっているだけのような気がします。

 でもこういう仕事って実はフットワークの軽さは重要だと思うんです。もちろん熟考して計画的に実行して長い時間掛けて良いものを作るというのも大事なんですけど、とりあえずやってみて失敗したら、反省点を活かして次に行くというのも大事だと思います。だから、ふたりとも来年とかこれからのことはあまり考えていませんね。あ、わかんない、アーニーさんは考えているかも(笑)。

――今回は海外からの参加も多く、お客さんの多様性も増していた印象がありましたが、来場者のすべてのニーズを満たしていったら、とても2時間のボリュームでは足らないという気がしました。

植松氏:そうですね。2時間というのがネックですよね。 譜面の数は一杯あるのに、どれをセレクトして2時間に納めるかが大変です。5日間ぐらい連続で、全曲演奏するってことやってみたいですよね(笑)。

ロス氏:譜面は100曲以上あるので、5日間では収まらず2週間ぐらい掛かるとおもいます。

植松氏:では、スクウェア・エニックスさん、2週間コンサートの企画をお願いします(笑)。

――ありがとうございました。