ニュース
感動のフルオーケストラで「FF」サウンド25周年の締めくくり!
ワールドコンサートツアー「Distant Worlds THE CELEBRATION」東京公演レポート
(2012/12/28 00:00)
スクウェア・エニックスは12月26日、東京国際フォーラムにて「Distant Worlds THE CELEBRATION」の東京公演初日を開催した。
「Distant Worlds THE CELEBRATION」は、「ファイナルファンタジー」(FF)シリーズ25周年を記念し、「FF」サウンドをフルオーケストラ演奏で楽しむワールドコンサートツアー。ロンドン公演、シカゴ公演に続き、今回12月26日の公演が日本公演の初日となった。今後は12月29日に大阪公演、そして12月31日にも再び東京公演が行なわれる。
今年の「FF」25周年を締めくくるオーケストラコンサートの模様をお伝えするとともに、公演後に行なわれた植松伸夫氏、水田直志氏、アーニー・ロス氏、クリスタル・ケイさん、スーザン・キャロウェイさんの5人に伺ったインタビューの模様も掲載しているので、ぜひご覧頂きたい。
初代から最新作まで「FF」サウンド25周年を最高の形で楽しめるコンサート!!
「FF」25周年ということもあり、今回の「Distant Worlds」は「FF」初期作品のメドレーから始めて、最新作「FINAL FANTASY XIV」まで、各作品より1曲を演奏して順に進んでいくという構成。それに加え、オーケストラコンサートならではのオペラやコーラス、ボーカルのある曲をプラスアルファに交えていくというスタイルだった。
なお、公演内容の詳しいセットリストは、本レポート掲載のタイミングでは後日にまだ公演があるので、来場される方の楽しみを損なわぬよう、本文中では一部を除いて伏せておきたい(記事の最後に公演データとセットリストを掲載しているので、プログラムのネタバレを避けたいという方はご注意を)。
曲目についてぼかしつつ書くと、「やっぱりこの曲だよね」という定番もあれば、「この曲もいいですよね! 」という曲もある。また、オーケストラという印象からおとなしめの曲が多めかと思いがちだが、バトル曲や、ちょっと変わった曲もある。構成に緩急があって非常に楽しめる内容だ。
オーケストラ演奏をするのは、神奈川フィルハーモニー管弦楽団。指揮は「Distant Worlds」のツアーではおなじみだが、グラミー賞受賞歴もある音楽家アーニー・ロス氏が務めた。その生演奏の良さ、ホールの響き、そして何より楽曲の良さは、格別に贅沢な時間を与えてくれる。
音楽と同時に、映像も非常に見応えのあるものになっていた。演奏中のタイトル、そして曲にまつわる名シーンが連続して流れるよう構成されており、リンクさせている。選出しているシーンやその見せ方は非常に凝っていて、映像制作者の愛情が感じられるレベルだった。やはりゲームプレイの思い出と共に音楽の記憶があるので、この演出は嬉しい限りだ。
曲の間にはアーニー・ロス氏が次曲の紹介などを話してくれるのだが、数曲終えたところで客席の中央あたりを指さした。なんとそこには、植松伸夫氏の姿が! 隣にはスクウェア・エニックスのコンポーザーであり、「FINAL FANTASY XI」シリーズを代表に多数作品の曲を手がける水田直志氏の姿も見られた。客席に混じって楽しんでいたわけだ。
ちなみに植松氏は、第1部と第2部の間にあった休憩の時に、周囲のお客さんに何かを話していた。後ほどインタビューの際に伺ったところ、第2部からは曲が終わったあとに「良かったと感じたら、大きな声で『ブラボー!』と言ってあげてもらえない?」と、植松氏のコンサートでは恒例になりつつある“ブラボー係”を指名していたそうだ。第2部の演奏終わりにはブラボーの声が挙がり、一層の盛り上がりを見せていた。後日の大阪公演や大晦日の東京公演に行かれる方は、ぜひブラボーの声をめいいっぱいに伝えてもらいたいと思う。
ナンバリングシリーズを順に辿っていき、最新作「FINAL FANTASY XIV」では、植松氏作曲のテーマソング「Answers」が演奏された。この曲でボーカルを務めているスーザン・キャロウェイさんがソリストとして登場した。壮大さと同時に世界崩壊の悲壮さを感じさせるこの曲は、スーザン・キャロウェイさんの伸びやかな歌声がなんと言っても印象に残る。オーケストラの生演奏に負けぬ声量で、たっぷりと歌い上げた。
最新作まで歴史が追いついたところで、続いてはコンサートならではの趣向が凝らされた特別曲へ。そのひとつ「Eyes on Me」では、日本でも人気アーティストのクリスタル・ケイさんが登場! 王菲(フェイ・ウォン)さんが歌う元々の曲もオーケストラサウンド調たが、この生演奏ではひと味もふた味も音が伸びやかに密度濃く聞こえてくる。そこにクリスタル・ケイさんは、アレンジを加えつつたっぷりの声量で原曲よりも強く、ホール中に響かせるように歌い上げた。そのパワーと透明感は圧倒的。会場はこの日、最も大きな拍手に包まれていた。
もうひとつ、特殊な趣向が凝らされていた楽曲を紹介したい。それは「FINAL FANTASY VI」より、マリアとドラクゥの「オペラ」だ。完全版と銘打たれた今回のオペラは、オーケストラ演奏に、ナレーターでオペラ中に綴られる物語を、そしてメゾソプラノ、テノール、バスバリストンでマリア、ドラクゥ、ラルスの歌詞を歌う。まさに完全版だ。
もともとこのオペラは、初代スーパーファミコン版では歌声を入れたいものの「マシンスペック的なところから到底不可能だ」と、苦肉の策の疑似音声で収録された曲。それが「FF」25周年を迎え、ついに「完全版」になったというのは、感無量なものがある。本式のオペラで綴られる「マリアとドラクゥ」は圧倒的に豪華で、もはやゲームミュージックを超えている。だが、当時ゲームプレイした場面が次々に浮かんでくる。本格オペラとオーケストラに圧倒されつつも、どこか頭の中ではゲーム中のオペラを思い出しているという、不思議な高揚感があった。
こうして、約2時間半で25周年の「FF」サウンドを味わいつくし終了した東京公演初日。それは非常に贅沢で、最高の時間だった。年末のこの時期に、この1年を思い出すどころか、「FF」シリーズを楽しんできた想いの全てが駆け巡るような、そんな時間だった。忙しい毎日の中で忘れそうになる大切な何かを思いだしたかのような、そんな清々しい感動が筆者の中にあった。
それは来場した方もみな同じだったのか、アンコールを含めて全楽曲の演奏が終わり、ステージ場から全員が退場してもなお、激しい雨のような拍手は、退場を促すアナウンスが流れるまで何分も何分も、ずっとずっと鳴り止まなかった。
(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.