インタビュー

「メタルビルド マジンガーZ」メカデザイナーの柳瀬敬之氏インタビュー

動かしたときの楽しさ、遊びごたえたっぷりの「メタルビルド マジンガーZ」

 今回は「メタルビルド マジンガーZ」の試作品を見ることができた。今回は金属パーツの使用が確認できる見本と、金属を使用していない彩色見本の2種類だ。

金属パーツなどマテリアルの配置を検証する試作品
背中には背骨のようなパーツがあり、“人間の肉体”のような雰囲気が盛り込まれている
柳瀬氏お気に入りの膝の可動。メタルビルドならではの設計で、膝裏や脛の装甲板の移動など、ギミックが詰まっている

 特質すべきは金属パーツの多さだろう。メタルビルドは関節に金属パーツを使用しマテリアル感と、しっかりしたポーズの保持、手足を動かしたときの独特の重みなどを感じさせるようにしているが、「メタルビルド マジンガーZ」では外装にも金属パーツを使用している。

 手に触れる部分に金属の感触をもたらせることで、実際以上に金属が使われていると思わせる手法も取り入れられている。手足を動かすときに触れる部分に金属があると、その触感はリッチなものになるのだ。また背中部分のデザインも面白い。背中の中央に背骨のようなパーツがあり、独特の雰囲気を放っている。

 このように背骨に限らず柳瀬氏はマジンガーZのデザインに意識的に“人間らしさ”を盛り込んでいる。腹筋部分の分割など、装甲のディテールに関しては人間の筋肉のイメージが込められている。マジンガーZはパイロットである兜甲児そのものであり、マジンガーは彼の肉体そのものである、というイメージを盛り込んでいるという。「メタルビルド マジンガーZ」の細部をチェックするときに、柳瀬氏の「人体そのもの」というデザインの意匠を探してみるのも楽しそうだ。

 バンダイ側の「メタルビルド マジンガーZ」へのアイディアで柳瀬氏が特に感心したのは“膝関節の設計”だという。装甲板が関節の可動に合わせ拡張するように広がり、膝の裏側は尺取り虫のような“トグルアクション”で装甲がスライド、膝を深く曲げることができる。この複雑な構造は柳瀬氏自身がデザインした「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」のCGによるマジンガーZとは大きく異なる、立体物ならではの“楽しさ”を持った部分である。

 もちろん柳瀬氏のデザイン、そしてパイロットフィルムなどで描かれた劇場版のマジンガーZから影響を受けたデザインやギミックも多い。腕を上げたとき胸部分が可動する複雑な可動ギミックは映像から影響を受け、「メタルビルド マジンガーZ」でその動きを取り入れるべく設計されたという。こういった「映像での動きのカッコ良さ」も商品にはふんだんに取り入れられている。

 股関節に関しては金属部品を多めに、しっかり腿の部分も上に上がる構造を実現しているなど、可動範囲の広さを確保している。こういった部分はメタルビルドのこれまでの経験が活かされている部分で、玩具独自でアレンジされている部分である。

 ジェットスクランダーは翼に可動も考えた柳瀬氏のデザインが活かされている。スクランダーは発進時には後退翼、マジンガーと合体すると前進翼へと変形するが、本商品ではさらに駐機状態の翼を折りたたむ姿も再現可能だ。ベルト部分は2種類用意されており、腹部から発射する「ミサイルパンチ」をスクランダーをつけたまま発射する姿も再現できる。ミサイルパンチの発射口は腹部パーツを差し替えて取り付けることができ、翼には発射エフェクトを含む「サザンクロスナイフ」を取り付けることができる。

 今回の面白い付属品の1つが発射状態の「ミサイルパンチ」だ。長く、デカイ。このミサイルパンチの立体化は初ではないかと佐藤氏は語った。このミサイルパンチはマジンガーZの腹部でその場で“製造”されて発射される。だからこそ腹部の奥行きを遙かに超えた長大なミサイルが発射できる。

 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」のマジンガーZでは体内に複数の“3Dプリンター”が内蔵されているという解釈になっている。腹部のミサイルパンチを発射する描写だけでなく、腕部のアイアンカッターなどもその場で製造され、武器として使用される“演出”が盛り込まれているという。現在の技術を取り入れた解釈、描写も映画の見所となりそうだ。

アイアンカッターは差し替えで表現するが、前腕の装甲板か動き、刃が中から作成されるという劇中のイメージを感じさせるパーツ構成になっている
柳瀬氏がデザインした台座

 肘から出る「ドリルミサイル」を再現するためのパーツは前腕部分がついたものと、外したものの2タイプが同梱されている。前腕部分がついているバージョンの場合は肘部分の装甲が上にスライドしてドリルミサイルの発射口をふさがないようにする所などは、非常に細かく、感心させられた。

 付属品に関しては柳瀬氏に限らず映画スタッフのアイディアが盛り込まれている。手刀のように指を揃えた平手のパーツはアイアンカッターを発射せずに刀のように振って機械獣を両断するシーンで使われている。映画の予告でも印象的なシーンとしてみることができる。このように、「メタルビルド マジンガーZ」には、劇中で様々な印象的なシーンを活かすためのアイテムが揃っていると佐藤氏は語った。

 柳瀬氏は「『メタルビルド マジンガーZ』は、私だけでなく、マジンガースタッフによる意見を反映させたアイテムと言えます。ギミックやアイディアは劇場版スタッフがかなり意見を入れています」とコメントした。

 さらにメタルビルド初となる「エフェクトパーツ」も見逃せないところだ。ド派手な噴射炎のパーツがついており、ジェットスクランダーや足の裏、さらにロケットパンチ、ミサイルパンチに取り付けることができる。実際つけるとかなり勢いのある構図になる。「メタルビルド マジンガーZ」の大きな特徴と言えるだろう。

 この派手な炎は佐藤氏が「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」のパイロットフィルムを見て派手な炎の印象に刺激を受けて企画したものだという。また足裏からの炎の噴射にも驚かされたとのことだ。「メタルビルド マジンガーZ」では足裏のシャッターパーツを外してエフェクトパーツを取り付ける。足裏のバーニアは空を飛ぶマジンガーの印象から柳瀬氏が設定しており、劇中でも強い印象があるとのことだ。

 そして「台座」である。柳瀬自身のデザインで、胸のブレストファイヤーと、腹部の分割した装甲板のイメージが描かれている。胸部腹部のディテールをそのまま抜き出し、今作のマジンガーZならではの雰囲気を表現している。

 「胸の装甲板だけだと寂しいなと。飾ったときの印象として今回のマジンガーとしてわかりやすいデザインにしました。柳瀬氏の強い思い入れと共に、映画スタッフ、メタルビルドスタッフの想いが細部まで込められた商品なのだ。

【メタルビルド マジンガーZ】
ミサイルパンチはパーツ差し替えで再現
ミサイルそのものはとんでもなく大きい
サザンクロスナイフのパーツ化も初となるという
ドリルミサイル時、肘の装甲板が動く
脛や足首のアップ。複雑で見所のある設計だ
エフェクトパーツを使うことでより一層アクションが派手になる