2017年5月18日 07:00
きっかけは「緊急入荷」の文字だった。詳細はわからないが、都内の量販店を中心に3月25日に発売された「メタルビルド ガンダムF91」が、緊急入荷の告知と共に、ゴールデンウィーク中に店頭販売が行なわれたのだ。
本商品が発売された3月は他にも魅力的な商品が多く、筆者は「DX超合金 Sv-262Hs ドラケンIII(キース・エアロ・ウィンダミア機)」を購入してしまったため、「メタルビルド ガンダムF91」の入手は断念していたのである。メタルビルドシリーズの最新作でもある本商品はあっという間に売り切れ、現在は転売屋が上乗せ価格で販売している状況だった。それが、購入できるというのだ! 実際人気はすごかったようで、筆者はその店のラストの商品を入手できた。
ということで、幸運にも入手できた「メタルビルド ガンダムF91」の魅力をレビューしていきたい。メタルビルドならではのフォーマットを活かしたハイクオリティな仕上がり、そしてシリーズの新しい挑戦はどのようなものだろうか?
新時代を告げる小型MSを、大河原氏監修の元に大胆アレンジ
モチーフとなったF91は、劇場アニメ「ガンダムF91」に登場するMS(モビルスーツ)である。F91は厳密に言えばこの時代のガンダムを作っていたアナハイム製ではなく、サナリィ(海軍戦略研究所)の試作MSである。従来のMSが大型化していくなかで、F91は全高15m前後と小型化されており、高い機動力を誇る。
バイオコンピューターによりパイロットと従来以上に深い交感が可能で、パイロットに高い知覚力をもたらし、最適な武装をイメージさせるなど様々な機能がある。しかし一方でパイロットとの“相性”があるようで、主人公・シーブックは相性が良かったためか本機体をスムーズに乗りこなし、少ない経験で大きな戦果を挙げ、「ニュータイプ」と揶揄混じりで呼ばれるようになった。
武装の大きな特徴としては、ヴェスバー(V.S.B.R.:Variable Speed Beam Rifle/可変速ビーム・ライフル)がある。背中に2つ装備している巨大な砲で、フレキシブルに可動し、射撃時には砲身カバーが動いてグリップが露出する。敵のビーム・シールドごと打ち抜く威力がある。背中から両脇に移動し、抱え込む射撃姿勢も印象的だ。
劇中でF91は驚異的な性能を見せる。戦闘に馴れていないシーブックはF91の性能と、優れたニュータイプの資質で切り抜けていく。最後は巨大なサイコミュ兵器「ラフレシア」相手に、まるで分身したかのような現象「質量を持った残像」を発生させ敵を幻惑、撃破した。その桁外れの高機動性と、最大効率時に顔カバーを開いて強制冷却を行なう姿は、強い印象を残した。
そして、メタルビルドシリーズは、“やれることは全部やる”を合言葉に、ハイクオリティな商品を提供するアクションフィギュアシリーズである。関節部分に金属を使い、重量感としっかりしたポージングを可能にし、思い切ったアレンジで原作の雰囲気をよりメカニカルに、よりエッジの効いた方向でキャラクターを表現する。
製作にあたり原作キャラクターをデザインしたメカデザイナーに監修してもらい、アニメではできなかったことや、現在だから考えたギミックを盛り込んでいくという、現在のハイエンドホビーの市場を確立したといっても過言ではないシリーズである。F91に関しては大河原邦男氏が監修を行なっている。
「メタルビルド ガンダムF91」は全身のパネルラインの描き込み、鋭角的になったデザインなど、強くアレンジが加えられている。またオリジナルのヴェスバーの展開ギミックや、より強調された廃熱機構、そして差し替えなしで変形する顔のギミックなど見所たっぷりだ。大河原氏は特に胸のデザイン、ヴェスバー、肩の放熱フィンなどに意見を加えたとのことだ。次章から細かくチェックしていこう。
ヴェスバーの変形、そしてフェイスオープン! 見所たっぷりのギミック
メタルビルドシリーズは、やはりその「手にした満足感」がいい。内部機構の“密度”を感じさせる重み、設定画以上に描き込まれたモールドとマーキング。ヴェスバーや腰装甲に描かれたS.N.R.I.の文字も、試作品であり、サナリィの期待の新作であるところを感じさせる。企業ロゴが随所に配置されているのは今後発展していくであろうメーカーの自信ならではだろう。サナリィスタッフは、F91がその場ですぐに実戦投入されるとは思ってもいなかったに違いない。
デザインの注目ポイントとしてはやはり胸部ダクトだ。F91の胸から腹にかけては、車のラジエターのような網目状の部品で構成されている。そしてそこをのぞき込むと、エッチングパーツによりキラキラ光を放っていて、まるで高性能な工業機械を見ているような気持ちになる。F91はデザインの意匠として「F1カー」を取り入れており、胸の網目状の部分はや、バックパックの上部から胸の上部のデザインもF1カーを思わせるところがある。
特に大きなアレンジが加えられているのがヴェスバーである。「メタルビルド ガンダムF91」のヴェスバーは原作以上に複雑な変形をする。原作では中央部分が展開し、グリップが現われるが、「メタルビルド ガンダムF91」のヴェスバーは、さらに前方部分が伸張、カバーが左右にわかれ、砲身も延長される。そして後部部分もカバーが開きフィンが広がる。F91は“廃熱”表現に力が入っており、ヴェスバーもより効率よく熱を逃がす形になっているようだ。
ヴェスバーはF91の背中から脇の下にかけて設置されているレールに接続されており、ジョイントでフレキシブルにスライド、可動する。射撃をするときは脇の下に抱え込むような形になる。差し替え手首で角度のついた握り手が用意されているので、ヴェスバーを構える姿も自然に決まる。
そしてF91ならではの廃熱システムだ。原作以上に強調されているのが肩の放熱フィン。上部スラスターの基部をスライドさせ、さらに放熱板を引っ張り出し広げることができる。ふくらはぎ部分の装甲も可動し、脚部の熱を効率よく排出する。
特に力が入っているのが、顔部分。口を覆う装甲板が左右に展開し、人間の顔のようなエアダクトが現われる。この“フェイスオープン”と呼ばれるギミックは「メタルビルド ガンダムF91」のウリであり、とさか部分を上げることで設定通りカバーが2つに割れて頬から後頭部に収納される。このギミックは実際に操作するとなかなかカッコイイ。
顔パーツは小さく、この凝ったギミックは感心させられる。また、「通常時の分割線や、変形ギミックで変わる部分が気になる」というこだわりのユーザーのために非変形の頭部パーツが用意されているのもうれしいところだ。
肩や足の放熱板を展開すると「メタルビルド ガンダムF91」の雰囲気は大きく変わる。ヴェスバーを展開し、顔の装甲板も開くと、F91が“最大効率”で可動しているような感じになるのがいい。ユニコーンガンダムや、シャイニングガンダムのような“変身”の雰囲気もあり、本来の設定とは異なるが、フェイスオープンのままの状態で飾るユーザーも多いだろう。
劇中の活躍を再現! 多彩な武器を構えて楽しむ
「メタルビルド ガンダムF91」は武器としてビーム・ライフル、最終決戦時に使用したビーム・ランチャー、さらに腰のラックに収納してある2本のビーム・サーベル、左腕と、腰に予備を収納したビーム・シールド発生器を同梱している。ビーム・ライフルやビーム・ランチャーは設定通り腰の後ろに取り付けることができるが、これをつけるとヴェスバーを動かすときに干渉してしまう。
武器は対応した持ち手が設定されているのでしっかり構えることができる。F91は劇場版のみの機体なので活躍シーンは多くはないが、武器を構えたいろいろなポーズをとらせてみるのは楽しい。F91はその高い機動力を活かしビーム・サーベルで素早く切りつける戦いを得意としており、切りつける瞬間をイメージした動きを追求してみるのも良いだろう。
「メタルビルド ガンダムF91」の肩は引き出し関節になっており、ビーム・ライフルの両手持ちもスムーズにできる。足も付け根が可動するので腿が高く上がる、またメタルビルドシリーズとしては“腰”の設計が見直されており、従来のシリーズと比べ腰が大きくひねられるようになってるところも注目だ。
ビーム・ランチャーはケーブルや砲口のモールドなど細かく、細部をチェックするだけでも楽しい。肩に担ぐだけでなく、劇中の最終決戦と同じように脇に抱えて持てるのもうれしい。DVDなどで見直して、色々なポーズをとらせたくなってしまうだろう。専用の台座は太いアームでしっかりと本体を支えるので、飛行をイメージした姿でディスプレイすることが可能だ。
動かしてみると、やはりかなり楽しい。角度でも大きく表情を変え、様々な角度から眺めたくなる。「DX超合金 マクロス」シリーズは変形させることが第一で、ポーズ付けより変形の方を重視して遊んでしまうし、「ROBOT魂」は原作キャラクターの雰囲気でポーズ付けを楽しむが、メタルビルドシリーズはその強いアレンジで、様々な方向から眺めるのが楽しいし、複雑な関節構造は「こんな所も動くのか、こんな動かせ方もできるのか!」と触る度に新しい発見がある。
「メタルビルド ガンダムF91」は非常にリッチな雰囲気を持ったアクションフィギュアであり、高い満足度をもたらす商品だ。同じメタルビルドでは「ガンダムエクシア」が様々なバリエーション展開をしているが、F91もコミック「クロスボーンガンダム」に登場した量産型はもちろん、大きく手を入れてクロスボーンガンダムまで展開して欲しい。今後のメタルビルドの展開にも期待したい。
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