インタビュー

SIEワールドワイド・スタジオ プレジデント吉田修平氏インタビュー

開発スタジオの“使いこなし”でより光るPS4 Proの4K/HDR。PS VRは再導入からの普及を目指す

9月21日~24日 開催

会場:幕張メッセ

 昨年のPlayStation VR(以下、PS VR)の発売、そしてプレイステーション 4 Pro(以下、PS4 Pro)の発売という大きな動きからもうすぐ1年。そのあたりをソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、『SIE』)のワールドワイド・スタジオ プレジデントである吉田修平氏にインタビューさせて頂いたので、その模様をお伝えしていこう。

――まずは今年度のこれまでの展開に対しての雑感などをお聞かせ頂けますでしょうか。

吉田氏:PS4は6月11日時点で6,040万台以上が普及していて、プレイステーションのこれまでからしても、とても良い形で推移しています。日本は欧米に比べると少し遅れる感じでしたが、去年の「ファイナルファンタジーXV」を皮切りに、今年にも「ドラゴンクエストXI」、今後には「モンスターハンター:ワールド」、弊社の「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」や「グランツーリスモSPORT」など、人気シリーズの最新作が揃ってきたということで、日本でも普及のスピードが上がってきている手応えがあります。

 昨年発売したPS VRは、日本では手に入りにくい状況が長く続いてしまって、買いたいというユーザーさんが買えないなどのご迷惑をおかけしてしまったのですが、やっと生産体制が整って、10月からは新価格で、よりたくさんの供給ができるようになりました。

 PS4もPS VRもすごく元気な状態になってきています。

――先日のカンファレンスではPS VRのカメラ同梱版の値下げを発表されましたが、その価格改定は海外だと先行して行なわれていましたが、日本でもそれに準じて改定したというところでしょうか。

吉田氏:そういうことですね。日本は特に需要が上回る状況だったのですが、それが改善されつつあるので、それにも合わせての新価格です。

――PS VRの普及台数はどれぐらいになっているのでしょう?

吉田氏:世界で100万台を超えています。

――プレイステーション 4 Proの価格にも何か展開があるのかなと、少し期待していたところがあるのですが、そちらはまだ変わらずですね。PS4 Proへの感想はいかがでしょう?

吉田氏:PS4 Proも非常に好評で、だいたいグローバルですとPS4の実売数の中で継続的に2割ぐらいがPS4 Proを選んでもらっています。

 我々が狙ったアーリーアダプター、つまりPS4を最初の年にすぐ購入頂いたユーザーさんですとか、あるいは4Kテレビを買われたユーザーさんなどですが、それに加えて、「初めてPS4を買うんだけど、どうせなら一番いいのを買いたい」というユーザーさんも含めて、我々が想定した以上の手応えを感じています。PS4 ProではPS VRの画面もキレイになるということで、タイミング的にも良かったのだと思います。

 今回のカンファレンスでも「モンスターハンター:ワールド」とのコラボモデル「PlayStation 4 Pro MONSTER HUNTER: WORLD LIOLAEUS EDITION」を発表しましたし、日本でもPS4 Proをより選んでもらえるようになるのかなと思いますね。

――「PlayStation 4 Pro MONSTER HUNTER: WORLD LIOLAEUS EDITION」は、初めてのPS4 Proとの同梱版となっていますが、コラボモデルの本体はどのように決まっているのでしょう?

吉田氏:「グランツーリスモSPORT」は通常のPS4とのコラボモデルになっているのですが、それは「グランツーリスモ」というユーザー層を考えたときに、より幅広いユーザーさんに手に取って欲しいという理由です。もちろんコアなユーザーさんも多いタイトルですが、カジュアルなユーザーさんにも支持されていますので。

――今後のゲームタイトルとのコラボモデルはPS4 Proになっていく……というわけでもないのでしょうか?

吉田氏:それはそのタイトルのユーザー層によると思います。より合った方を選択するのではないでしょうか。

2018年初頭発売予定の「ゴッド・オブ・ウォー」
大量のゾンビに襲われる中生きていく人々を描く「DaysGone」

――4K/HDR規模のゲーム開発についてですが、最近ですと「アンチャーテッド 古代神の秘宝」のグラフィックスクオリティは素晴らしかったです。そうした4K/HDR世代の開発というのはどれぐらい進んできているのでしょう?

吉田氏:それはもう結構なところまできていますよ。海外スタジオは大規模な開発で人数と時間をかけますが、「Horizon Zero Dawn」も6年ぐらいかけて制作していました。来年に予定しています「ゴッド・オブ・ウォー」、「DaysGone」、「スパイダーマン」などもかなりの規模で時間をかけて制作されています。いわゆるAAAと呼ばれるタイトルの制作は今までよりもさらに進化します。

――昨年の4K/HDR対応タイトルというものよりも、先ほどの「アンチャーテッド 古代神の秘宝」などですと、より4K/HDRの力を感じられるクオリティになっていると思えます。今後もまだ、使いこなしていくことによるクオリティアップの伸び率、伸び幅といったものは見込めるのでしょうか?

吉田氏:4K解像度もそうですし、HDR対応もそうですが、やはり去年はまだ手探り状態でしたが、だんだんとモニターの価格も下がってきて普及も進んできていますので、開発スタジオでもどんどんと慣れていっていると思います。

 SIEとしては、「グランツーリスモSPORT」を推奨しています。最初のデータを作る段階からHDRを意識して作っていますので、4K/HDRテレビですと最高品質で楽しめます。

――山内さんはもともと光の表現や質にこだわられていますし、力の入ったものになっていそうですね。

「グランツーリスモSPORT」の見所のひとつ新フォトモードのスケープスモード

吉田氏:彼はもともとカメラも好きですから、光にこだわりますよね。「グランツーリスモSPORT」のスケープスモードもすごいクオリティになっています(スケープスモードはCGモデリングの車と写真を融合できるフォトモード)。

――今のプレイステーションプラットフォームには4K/HDRという進化の一方でVRもあります。その2つはかなりアプローチの異なるもので考え方やノウハウが全く違いますよね。そのあたり、開発スタジオはどう取り組んでいるのでしょう。

吉田氏:VRコンテンツ制作というのは、ジャンルによっては「グランツーリスモSPORT」や「DRIVECLUB」、バンダイナムコエンターテインメントさんの「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」などのコックピット物だとそのままのゲームでVR化しやすいものもありますが、そういうものを除くと、基本的にはVRの特性を意識して、新たにオリジナルで制作した、デザインしたゲームが必要だと思っています。

 我々も去年のPS VR発売のときから「VRコンテンツ制作に特化したチーム」で、集中してVRコンテンツを作るということをやってきています。ただ、カプコンさんが「バイオハザード7」で良いコンテンツを制作されまして、普通のタイプのゲームでもきちんと手間をかけてVR対応させると、両方で楽しめるものができるんだなと思いました。それは良い勉強になりました。

――VRでも遊べるコンパ-チブル対応ですね。そちらもいいなという気持ちに傾いたというか、見直されたところがあったのでしょうか?

吉田氏:少し見直した感がありますね。ファーストパーティが作るのはやはり専用タイトルにすべきと思っていたのですが、「バイオハザード7」や今後出る「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」もそうですが、普通のテレビ用ゲームをVR対応する方向もあると、個人的にですが考えを新たにしたところがあります。

――根本的なお話ですが、そうしたVR専用/対応コンテンツは現在も進行中のものがあり、今後もコンスタントにリリースされていくのでしょうか?

吉田氏:我々もファーストパーティとして、PS4やPS VRのハードの開発そのものにも携わっていますし、ゲームクリエイターが実現したいものをハード開発チームとともに作ってきましたので、VRの良さを上手く活かしたコンテンツを出し続けていきたいと思っています。

 ユーザーさんもいろいろなコンテンツを楽しむなかで、より体験が深いもの、ゲーム性の高いものを求めるようになると思いますので。普及台数が増えるに連れて、それに平行するような形で1タイトルごとの投資金額を増やしていき、より大きなタイトルを出していく態勢を整えています。

 新しい体験という点では、「Farpoint」と「シューティングコントローラー」の組み合わせがとても評判が良いです。VR空間の中で自分が触っているものがそのままVRの中で表現されると、そのなかにいる感覚、センス・オブ・プレゼンスがすごく高まります。ですので、「シューティングコントローラー」は「Farpoint」と「BRAVO TEAM」で終わらずに、その先のタイトルでも仕込みを考えています。サードパーティーさんのゲームでもシューター系のものというのは対応しやすいので、「シューティングコントローラー」で遊べるように働きかけています。

――4K/HDR、VRとコンテンツに2つの軸がありますが、日本のユーザーさんは携帯機が好きな人も多いです。そちらのコンテンツは少しおとなしいのかなという印象があります。

吉田氏:PlayStation Vita(以下、PS Vita)用の新作タイトルは変わらず出ていますし、今回のカンファレンスでも新しい発表がありました。インディーゲームで「Salt and Sanctuary」や「UNDER TALE」もPS Vitaで楽しめます。個人的には「いただきストリート ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー 30th ANNIVERSARY」を楽しみにしています。

 PS Vitaユーザーさんへの継続的なゲームコンテンツの供給を続けていきますが、自社としてはまずはPS4の普及を加速させること、PS VRの普及台数を増やすことに集中しています。

――わかりました。昨年あたりから日本のタイトルで世界でも高く評価されているものが多くあります。そちらについてはいかがでしょうか。

吉田氏:いや、それは嬉しいですよ。欧米でも「日本のゲームが帰ってきた!」というように言ってもらえてますし、「ファイナルファンタジーXV」、「NieR:Automata」、「仁王」、「ペルソナ5」、弊社の「GRAVITY DAZE 2」や「人喰いの大鷲トリコ」も評価していただき、すごく嬉しいです。それがPS4というプラットフォームの深さというか、タイトル群の特徴のひとつとして、海外のユーザーにも喜ばれているところです。

 日本のパブリッシャーさんは、今回のカンファレンスで英語のトレーラーを用意しているところもありました。日本市場よりもさらに大きな海外市場での日本ゲームファンを含めてのリクープ(投資を取り戻す)が計算できる環境になってきたと思います。

――海外も含めてゲームデベロッパーやスタジオからの新たな要望などは出てきていますか? 例えば、よりスペックの高いハードの発売を期待されたりなどですが。

吉田氏:PS4 Proに関しては対応がしやすくて4K/HDRテレビで見るとすごく効果が出るという評判はいただいています。

 開発者は、うちはプレイステーションだけですけども、マルチプラットフォームで展開される場合が多いので。そこは自由度を持たせて、幅広い対応がすぐできるようにされているのだと思いますね。

――SIEのスタジオとしては、PS4 Proでの4K/HDRの使いこなしや進化にまだまだ先があるというところで、そちらに取り組んでいるところでしょうか。

吉田氏:そうですね。昨年はまだ短期間に対応アップデートをしてもらったりしましたが、今は環境がもっと整って慣れてもきて、より良い表現ができるようになっていると思います。まだまだこれからじゃないかなと思いますよ。

――これからもっとクオリティは上がってくるということですね

吉田氏:はい。それはPS4 Proだけでなく、ベースのPS4でもそうだと思いますね。同じアーキテクチャなのでPS4 Proだけに特化するということではなく、PS4自体の使いこなしがPS4 Proにも反映されていきます。まだまだこれから高まっていきます。

――わかりました。ありがとうございました。