インタビュー

「真・三國無双8」プロデューサー鈴木亮浩氏インタビュー

マンネリ打破のためオープンワールド採用へ。日本語版でも北京語音声に対応予定

7月27~30日開催

会場:Shanghai New International Expo Center

 今年のChinaJoyで、日本のタイトルとしてはもっとも注目を集めていた「真・三國無双8」。今回は単に簡体字にローカライズするだけでなく、「真・三國無双2」以来、実に10数年ぶりの北京語による音声吹き替えを実現。中国のスタジオ、中国人の声優を使った本格的なもので、中国人が中国語を喋るというまさに「三國志」らしい言語設定で、「真・三國無双」の最新作が楽しめることになった。

 今回は、実機デモの後、プロデューサーの鈴木亮浩氏に単独インタビューする機会に恵まれた。まだ発売まで時間があるためか、質問のいくつかは「未定」という回答になってしまったが、実機デモだけではわからなかったオープンワールドの仕様や世界の広さ、アクション、ストーリーなど、「真・三國無双8」の魅力について回答して貰うことができた。

ファンの熱意に応えて、ついに中国語音声導入へ

「真・三國無双8」プロデューサー鈴木亮浩氏
中国メディア合同インタビューは熱気に包まれていた
SIE上海のプレスカンファレンスで実機デモを行なう鈴木氏
あの曹操が北京語を喋っている!

――実機デモを行なった感想から聞かせていただけますか?

鈴木氏:そうですね、今回初めての実機デモということもあり、中国音声を導入したということもあって、すごく反響が良くて手ごたえがありました。

――北京語が聞こえたとき感動しました。実際会場がどよめいていましたね。

鈴木氏:どよめいてましたね。

――北京語についてはどういう想いで実装を決断したのですか?

鈴木氏:中国語音声については前から要望があったのです、ただ、なかなか実現するのが難しかったので、それがようやく実現できたので。うちの会社の中の中国語スタッフも、社内でも中国語の音声を見た時にも「おお~」と言っていたので、今回は見せた時の反応は大きいだろうなと予測はしてましたが、やはりすごく手ごたえがあってよかったです。

――日本語版でも北京語で遊んでみたいと思ったのですが、それは難しいんでしょうか?

鈴木氏:リリースと同じタイミングではないかもしれないですが、絶対対応しないということはないので、いずれどこかのタイミングで日本の皆さんにも使っていただけるようになると思います。

――初の実機デモを行ないましたが、E3や東京ゲームショウではなくChinajoyを発表の場に選んだ理由は何ですか?

鈴木氏:PS4はアジア先行で発売しましたよね。そのときににも「真・三國無双7 猛将伝」を同時発売で出させていただいて、日本よりアジアが先立ったんですね。その流れがあってアジアの「無双」ファンは非常に、まあ、これは日本のファンがそうではないというわけではないですが(笑)、より熱いんですよね。ファンの声が大きかった。まあそこが1番ですかね。後はちょうどいいタイミングだったということもあります。

――「無双」シリーズは、今後中国市場をもっとも重視していくということなんでしょうか?

鈴木氏:そこは難しいですね。日本と中国が同じくらいって感じですかね。

――逆に言えば、そこまでプライオリティが上がっているんですね。

鈴木氏:そうですね。それは間違いないです。

――今回のデモに虎牢関あたりを選んだ理由は何ですか?

鈴木氏:複数の攻略法があるということを見せやすい、アピールしやすいということと、メジャーな武将が出てくるというプロモーション的な観点からです。正直どこの時代でも見せられたのですが、虎牢関の戦いあたりが1番アピールするのに良かったのです。

――「三國志」シリーズがオープンワールドになって、ゲーム性もかなりリアルになっていますが、計略はどうなるのでしょう?

鈴木氏:どこまでできるか、それは私も楽しみにしています。

――たとえば、風向きを考えて草原に火を放つことで火計を繰り出したりできるのですか?

鈴木氏:草原を燃やすことは無理ですね。ただPVの中で関羽がタルを打って爆発させたと思いますが、あの爆発するタル自体はプレーヤーが置けるので。あれを自分で用意してきて、あらかじめこの辺りにと置いておいて、そこに敵部隊を引き連れてきてバンと撃つと一網打尽、みたいなことはできます。

「真・三國無双7」最大のマップ≒「真・三國無双8」の洛陽の広さ

1km四方で表現された洛陽
雪の残る荒野を疾走する関羽
川を泳ぐこともできる
虎牢関での貂蝉との戦い

――「真・三國無双8」の大きな特徴としてオープンワールドの採用が挙げられますが、ここまで大がかりにゲームデザインが変わるのは、2000年から始まった長いロングランのシリーズで初めてではないかと思います。それは「無双」の伝統の味わいを捨てることを意味しますが、なぜ根本的にゲーム性を変えようと思ったのでしょうか?

鈴木氏:マンネリがやはり社内でもすごく言われていますし、私は1作目から関わっているので、自分自身でも感じているのですね。毎作、そこを打破しようと思ってやっているのですが、もうさすがに限界がきていると感じています。

 ユーザーの意見を聞くとやはりそういう意見が多くて、それが理由で離れていくお客様も非常に多いと感じているので、ここで大きく変えない限りは右肩下がりというか、日本のゲーム市場も右肩下がりなのにさらに右肩下がりの状況は覆せないのではないだろうかと思っていまして、そういう意味で大きく舵を切りました。

――今回は中国が全部一枚マップで表現しているということです。それ自体はすでに「三國志」シリーズで実現していることですが、アクションゲームとシミュレーションゲームではスケールがまったく違いますよね。マップはどれくらい大きいのでしょうか?

鈴木氏:そうですね、ちょっと大きさ自体は発表していないのですが(苦笑)、相当大きいです。

――例えば「真・三國無双7」の収録マップを全部足したよりも何倍もあるのですか?

鈴木氏:ありますね。「真・三國無双7」のマップで1番大きい戦場がだいたいリアルスペースで1km四方くらいあるのですが、今回の洛陽の都が1lm四方です。洛陽の都だけで今までの「無双」ゲームの1番大きなマップと同じサイズなんです。

――ではひょっとすると100倍とか、そういう規模感で大きそうですね。

鈴木氏:面積でいったらそのくらいあります。

――今回意図的に「オープンワールド」という表現を使っていますが、オープンワールドにもいろいろありますよね。例えば「Witcher 3」から「ゼルダの伝説」、「Grand Theft Auto」など。どのオープンワールドに近いイメージなのでしょうか?

鈴木氏:私としては、「三国志」の世界を表現するのに適しているなと思って採用しているので、どれかのゲームを模しているというよりは、「三国志」の世界を表すにはこれだなという感じで採用しました。

――なるほど、どれかのゲームの影響を受けてということではなく、「三国志」独自のオープンワールドを追求しているということですね。

鈴木氏:そうですね。どれかというのはないですね。もちろん自分が好きなこともあって、参考にするためにオープンワールドのゲームを割とたくさんプレイしました。まあ強いて言えばそれらの“いいとこどり”ですかね(笑)。

――昼夜の概念もあるということですが、戦っているうちに夜になったりするのですか?

鈴木氏:します。

――1日は何時間くらいで表現するのですか?

鈴木氏:それもまだ調整中ですが、1日が40分だったかな。たしか半日が40分だった気がするので、1時間くらいで丸一日経つ感じですね。

――ではバトルに熱中して戦ってボス戦に時間が掛かっているなと思ったら、日が暮れてきたりすることもあるわけですか?

鈴木氏:そうですね。時間はまだちょっと調整中なので明言はできませんが、例えば夜を意図的に短くしたりということはすると思います。夜が長いと正直プレイしづらいので。ただ、夜になった時に、視界が狭まるので、敵のAI的に索敵範囲が狭まって行動が変わるというふうなAIにはしていくので、そこで少しゲーム性の違いを出したり、夜を待ってから侵入しようとか、奇襲をかけようとかいうプレーヤーの攻略法も引き出すということも考えているので、夜は夜で重要です。

――夜はどのくらい暗くなるのですか?

鈴木氏:ちょっとそれもまだ調整中です。

――今回のデモでは時間の変化は見せませんでしたね。

鈴木氏:そうですね。今は割と暗くしているのですが、プレイしづらいので明るめには調整します。最近のでいうと「ゼルダの伝説」は夜はかなり明るいですよね。あれに近いくらいは明るくします。

――松明が必要になることもありますか?

鈴木氏:正直、松明が必要なほどにはしないです。ただ夜で雨が降っていたら、割と見づらくてすごく暗いかもしれないですね。くらいの調整です。

――天候については、悪天候も含めてどのようなバリエーションを用意する予定ですか?

鈴木氏:風と雨ですね。雪もあるかな。ただ、雪は北の方に行かないと遭遇しないと思います。

――嵐とか、台風は?

鈴木氏:台風はさすがにないですね。

――先ほどのデモでは、鍵縄を使ったアクションなど、いくつかの新アクションも確認できましたが、キャラクターのアクション性はどのくらい拡張されているのでしょうか?

鈴木氏:大きなところでは、鍵縄を使って登っていくというところと、あとはいわゆる三角飛びです。壁を蹴って高く飛ぶことができるので、都市の中ではそれを使うと屋根の上に乗れて、ちょっと違ったことができます。

――先ほど攻城戦で、攻城兵器を誘導することでより勝利に近づくという説明でしたが、これは直接指示を出せるのですか?

鈴木氏:出せません。あれ自体はAIで動いているので、そこをめがけて敵部隊がそれを壊しに来るので、それを保護してあげるという形になります。

――なるほど、あの戦いにおいて、自分は袁紹軍の中でどういう位置づけなのでしょうか?

鈴木氏:部隊全体で言うと、遊撃隊という感じです。

――敵将との戦いはどのような内容になりますか?

鈴木氏:アクションについては、正直今までとそんなに変りないと思います。ただAIがどう変わっていくかという形なのですが、今回さっきのプレイだとあまりお見せできなかったですが、盾を持っている兵隊がプレーヤーの前に来ると、盾を目の前に出してガチッと守る態勢になったり、その兵科特有の動きをしたりするのですが、そういう考え方で敵武将も固有のAIというか、クセ付けをしていくので、今までよりはもう少し攻略法のある戦い方にはなると思います。

――AIについて、どの程度進化するのでしょうか?

鈴木氏:今回お見せしたのはまだかなり低い開発段階のものです。あまり調整していない状態なので、まだゴールには遠いです。わかりやすい例で言うと、過去に「ブレイドストーム」というゲームを作っていて、あれは部隊同士の戦いで割とAIをしっかり作ったので、プレーヤーが傍から見ていても、部隊同士の戦いがしっかり見える形にはなっています。最低限あれくらいまでは実現したいですね。

 今回は本当に数千人レベルの戦いを表現するので、ちょっと見づらいですが、実際にそのくらいの部隊を展開しているので、それがまさに戦場で戦っているようにAIを動かしたい。今はそこにいるだけというところがちょっと目立ってしまっていますが、そこは当然改善していきます。

――今回はオープンワールドということもあり、物見櫓に登ったり、崖の上に登ったりなど、高いところにも移動できますよね。そこから高さを使ってドーンと攻めたりすることもできますか?

鈴木氏:できます。

――大ジャンプみたいなことができたりするのですか?

鈴木氏:今回は、二段ジャンプができます。高いところからやれば、そういう絵面になりますね。

――森や崖、山など、様々な戦場が用意されていますが、そういうところにも部隊や敵将がいたりするのですか?

鈴木氏:います。伏兵が潜んでいたりすることもあります。

――オープンワールドなので、色々期待してしまうのですが、MMORPGのレアモンスターのような感じでフラっといたりするのですか?

鈴木氏:そういうのは盗賊とかですね。武将がフラッといることはないです。基本的には、例えば曹操が許昌を持っている時代だったら、許昌の周りに曹操の配下の部隊の誰かが、張陵とかがパトロールで回っていてという感じではありますが。

――街の中はどのような内容になっているのですか?

鈴木氏:今回はお見せしませんでしたが、当時の建物などを再現する形で作っています。もちろん文献がすべて残っているわけではないので、ある程度、この都市にはこういうランドマーク的なものがあったというものを実現しつつ、当時の風土にあったものを探してきて建物を作っています。

――例えば「信長の野望Online」みたいに、街に入るとお店や町民がいて、何かを買えたりするのですか?

鈴木氏:買えますね。店は用意しています。

――そこは本当にオンラインゲームみたいな雰囲気で?

鈴木氏:そうですね。入ると、その街の住人が歩いて、売っている人がいて、話しかけると売ってもらえます。

――たとえば、洛陽でいえばどのような形で再現しているのですか?

鈴木氏:今回実現しているのは1km四方なので、相当広いのは広いですが、文献によると洛陽自体は当時4km四方だったらしいです。だから少し小さめにはなっていますが、たぶんゲームで歩くには十分な広さではないかと。宮殿とかもありますし、街もありますしという感じです。

――そういう街があって買い物ができるとなると、例えば家を持ちたいとか城を持ちたいという欲望が出てきますよね。そのあたりっていかがなんですか?

鈴木氏:城を建てたりはできないですが……、その質問ちょっとノーコメントで(笑)。すいません。

キャラクター毎に異なるシナリオボリューム。歴史IFは導入せず

新キャラクターとなる「満寵(まんちょう)」と「周倉(しゅうそう)」。このほかに83人の既存キャラクターも使用できるという
実機デモ冒頭で繰り広げられたイベント。このようなイベントシーンが数多く用意されているようだ

――次にキャラクターについてです。これまでの全武将83人をすべて使えて、さらに新規キャラも出てくるということですごいボリュームですが、個々のストーリーはどの程度カバーされるのでしょうか?

鈴木氏:基本的には設定上大きなIFは用意していません。全キャラプレイはできるのですが、基本的にそのキャラの人生というか、活躍した時代から死ぬ直前あたりまでを描いています。劉備だったら最初の黄巾の乱から、白帝城で死ぬ間際くらいまでプレイできるようになっています。逆に言うと、董卓とかも一応選べるようになっていますが、董卓とかを選ぶと黄巾直後くらいから、いわゆる今回お見せしたシナリオの反対側の地点のもので、死ぬ直前まで。時代的にはすごく短いです。

――では、董卓のストーリーを進めていくと、自分が突然死んでしまって強制的にエンディングを迎えるような?

鈴木氏:クリアしたときに、死ぬかどうかはキャラによります。基本的には死なないのですが、これからやるぞというエンディングにはしていますが、歴史上はこのあと死んでるよねという(笑)。

――キャラクターによってボリュームが全然違うんですね。

鈴木氏:そうですね。時代的なボリューム感は違います。ただ、オープンワールドなので寄り道がし放題なので、どういう風にプレイしていくかというボリュームで言うと、どのキャラでも同じです。時代を進めないまま、ずっとプレイし続けることもできます。

――デモの虎牢関のバトルでは、プレーヤーは逃げてもいいわけですか?

鈴木氏:逃げても大丈夫です。あそこ自体プレーヤーが董卓を倒さない限りはストーリーは進みませんので、どこかで寄り道していててもそのままです。

――自分が寄り道しすぎたことによって、戦いに敗れて歴史が悪い方に転がるということはない?

鈴木氏:ないです。歴史は変わらないです。

――イベントシーンにおける武将同士のコミュニケーションはどの程度盛り込まれますか?

鈴木氏:今回は今まで以上のボリュームになっています。カットシーン自体は、オープンワールドなのでなかなか入れづらいところがあるのですが、逆に会話イベント的なちょっとしたものはたくさん用意しています。

――デモの冒頭で見られたような、画面を止めて、キャラクター同士の会話シーンを表現するイメージですか?

鈴木氏:そうですね。先ほど、プレイしたときに最初、袁紹と曹操と伝令が集まっていて、それを横から見たような会話イベントみたいなものは、たくさん用意しています。

武器はどのようなシステムになりますか?

鈴木氏:武器は装備変更できます。ただし、前作のように2つ持つことはできません。メニューで装備を切り替えることで様々な武器を使えます。武将毎に得意武器があって、その武器を使うことで特別名攻撃が行なえます。

――気になるのは発売日ですが、だいたいいつくらいですか?

鈴木氏:それに関しては、ちょっとまだお答えできません。

――今年出るかどうかも回答できませんか?

鈴木氏:まだですね。

――発売プラットフォームについては、日本とアジアでPS4向けにリリースするという発表のみですが、他の地域やプラットフォームの展開予定についてはいかがですか?

鈴木氏:現時点では、日本、アジアだけの発表で、PS4です。

――たとえば、Nintendo Switchで遊べたりはしないのですか?

鈴木氏:それについては未定です。

――仲間と一緒に戦う協力プレイは可能ですか?

鈴木氏:それは未定ですね。

――オンライン対戦は可能ですか?

鈴木氏:それも現状はまだ未定です。

――ちなみに今回簡体字が発表されましたが、香港、台湾では繁体字版をリリースするのですか? その際、音声はどうなるのでしょうか?

鈴木氏:香港のACGで発表する予定ですが、繁体字の方も日本と同時期に発売を目指していて、基本的には同時発売ですね。繁体字版には簡体字は含まれません。音声については現時点ではまだ発表できません。

――わかりました。最後に日本のユーザーさんにメッセージをいただけますか。

鈴木氏:今回中国で世界初実機プレイを公開ということになりましたが、日本の皆さんには実機プレイと同等の内容のものをムービーの形でお届けする予定ですので、そちらの方をまずはご覧いただくと。後は、TGSでは何かしらの形で出展いたしますので、そちらの方をご期待ください。

――ありがとうございました。