インタビュー

gumi&よむネコのタッグによる“VRMMORPG構想”を聞く gumi國光宏尚氏、よむネコ新清士氏インタビュー

gumi/よむネコが新たに手がけるVRMMORPGについて

自身が考える理想のVRMMORPG像を語ってくれた國光氏
新氏は、國光氏の発言にブレーキを掛けながらも、目指すところは同じと抱負を語ってくれた

——さて、それではそろそろ、國光さんがインタビューの冒頭で発言された「ソードアート」的なVRMMORPGについてですが、お話しできる範囲でその構想を教えていただけますか?

國光氏: そこは結構明確になっていて、まず僕はモバイルゲームで気付いたのは、流行るジャンルって意外と少ないこと。モバイルゲームで勝った会社って、モバイルゲームならではのコンテンツをハイエンドで作った会社が勝った。で、モバイルならではというところの体験がすごく重要で、VRも同じく家庭用の移植とかではなく、VRならではの体験というものをどういう風に作っていくのかということが重要で、ならではの体験ということにあっているジャンルとあってないジャンルが存在したんだろうなと思っています。

 例えばモバイルゲームでいくと、アクションやシューターはほとんど当たってないんですよね。モバイルで流行ったのって、何かしらのRPGと、ストラテジー系とパズル、カジノ系が全世界で流行ったジャンルですよね。そこでいくとしっかりとヒットするジャンルを見極めるということが重要なのかなと思っていて。まだたくさん出ると思いますが、今の時点で僕が思っているジャンルでいうと、FPSって見えたと思うのですね。2つ目のところでいうと「マインクラフト」型。といっても今の「マインクラフト」のVR版はダメですよ。VRならでの体験になってないから。でもVRでのモノ作りはすごい楽しいじゃないですか。だから何かしら物を作ってソーシャルでやるということは絶対にヒットするだろうなと思います。

 そしてあともう1つがRPGです。特にMMORPG。ここは結構日頃から思っていることですが、日本の僕らの会社が何を作るのかがすごく重要だと思っていて、流行りそうなジャンルだから作るってヘンじゃないですか。世界中のみんなから望まれているもので、日本の我々がわざわざ作る価値があり、さらに自分たちが作りたくて作るものという形がベストなのかなと思っていて、それはRPGだろうと。RPGといっても、VRではソーシャル要素がすごく価値のある体験なので、当然MMO的なRPGになってくる。そういうゲームを目指して作っていきたいなと言うことです。

 であれば、今のイメージでいうと「SAO」的というか、みんなでこの辺でダベったりしながら、レイドのボスが現われたというシステムメッセージが出たら、ではみんなで向こう側(VR世界)の方に行こうぜと言って、そっちに行ってみんなで敵を倒したりとか、いよいよ「SAO」的な感じの世界観のゲームがVRだったら実現できるだろうなということをずっと話していているところなんです。

新氏: もちろんまだビジョンの段階です。中村さんはMMOを作るのがいかに大変かということはよくご存じで、そんなに早々と出来上がるものではないということもご存じだと思います。ただ、我々の最終的なゴールはそこです。ただし、では来年それができますかと言われたら、たぶんそこまではいかないです。当初の段階では、まずはMOタイプのゲームを企画して、ある程度VRの市場状況に合ったMOタイプのRPGを開発すると思います。

——それはよむネコさんが?

新氏: そうです。そこに「エニグマ」で培ったノウハウを注ぎ込みます。たとえば、「エニグマ」で手に持っているハンマー。あれを剣にして、モンスターのAIをつければすぐにバトルはできあがりますよね?

「エニグマスフィア」のハンマーとスフィアのノウハウが、そのままVRMMORPG開発に活かされるようだ
よむネコは今後、小説/アニメ「ソードアート・オンライン」に描かれる“VRMMORPG”を実現するという
こちらはアニメをモチーフにしたゲーム「ソードアート・オンライン-ホロウ・リアリゼーション-」(バンダイナムコエンターテインメント)

——なるほど、ハンマーを剣に、あのカシャーンと壊すスフィアをモンスターに、ですか。それはちょっと楽しそうですね。

新氏: それを複数人同時プレイで、剣だけじゃなくて、魔法を出したりするだけで、RPGにはなります。ある程度土台は見えているわけです。今の技術を全く無駄にしないうえに、プラスアルファで足していって、そういう意味でMOが狙えるなというのが我々の中では共通認識として持っているところです。当然それを、人数は最初は少ないところから、人数を増やしていって、これがいろんな世界に広がるような形で、増やしていけば、「PSO」みたいなやつは目指していけるよねというのは協議されています。

——世界観は「エニグマスフィア」と同じ世界観なんですか?

國光氏: いえ、違います。

新氏: それはもちろん新しく。そういう意味では、ゼロから作り直すことになります。

——たとえば、世界観は、「ソードアート」のようなSFなのか、日本のRPGでもっともポピュラーなファンタジーなのか?

新氏: それも含めて議論をしていくところですね。

國光氏: 作っていく方向性はもうだいたい見えていて、結局MMORPGって、まず重要なのは、ざっくり超大雑把にいうとバトルシーンと酒場、この2つだと思うんですね。それでいくと、まずはバトルをどう作っていくかというところで、今いろいろ試していっているのですが、普通に考えると剣、弓、魔法、あと盾を持ったタンクみたいなイメージになっていって、魔法がヒーラーとウィザードになってくると思うのですが、剣が物理的にしんどいんですよね(笑)。だからといって弓とヒーラーだけだとおもしろくない。

 剣、魔法、弓、それこそサイバーパンクみたいな形なら銃もイけるじゃないですか。だから、やはりMMOである限りはある程度長時間遊べないといけないから、まずはバトルシーンで、何が楽しいのかというのを徹底的に検証していて、真っ先にバトルシーンは全部作り切っちゃおうと思っています。そのうえでここに合った世界観は何なんだということを考えても遅くはないかなと。

 まずはどう考えてもバトルが楽しくて、1人でやっても当然楽しいうえに、一番の醍醐味の連係プレイも楽しい。タンク系が前にいって、こっちをやっているうちに後ろから魔法を投げたところに横からアタックしていくみたいな。こういうのだと思うんですよね。

 なのでそこの戦いの面白さを作り切ったうえで、世界観を決めて、そこができてくると次にマップを広げていこうという形になってくるし、マップを移動の仕方を「Arizona Sunshine」的な形にするのか、新しいギミックを取り入れるのかという議論になってくる。そうこうするとみんなでマッチングするための宿とか酒場が必要だよねと、ゲームの形が出来上がってくると思います。

 なので将来的に作りたいのは、「SAO」的な形のVRならではのMMOです。まずはバトルを作り、世界観を作り、マップを作り、という感じに積み上げていって、3年以内には作りたいですね。

——壮大な構想ですね。いくつか質問ですが、まず新さんが仰ったMOへの落とし込みというのは、1回プロダクトとして世に出すんですか?

新氏: 出すつもりです。外に出すかどうかはまだ議論の余地があるんですが、個人的には出したいです。

——3年なら、1年半後ぐらいには最初のものがリリースできるといいですね。

新氏: スケジュールとしてはそういうイメージで進めています。

——提供プラットフォームとしては何になるんでしょうか?

國光氏: そこは、わからないというのが正直な所です。ここからのVRの進化が僕の中でもう結構明確にあるのが、今はVive、Oculusのスタイルがスタンダードですが、ここからそんなに遠くない1年くらい先の未来に、コードレス、センサーレスみたいなスタンドアロン型のものが出てくると思うんですね。ここの価格帯がよくわからないけど、頼むから10万切ってくれみたいな(笑)。

 だから次の世代のVRデバイスが10万切ってくるくらいになってくると、それなりの台数が来ると思うんですね。これが来るってことイコール、事実上、スマートフォンでもVRができるようになるってことなので、僕らの予想で行くと、3年以内に最新版のiPhoneやGalaxyで、今のViveぐらいの体験ができる時代が来るのかなと思っています。

 僕はVRゲームの本格的な跳ねどころは、その3年後に来ると思っています。まず第1弾ロケットとしてスタンドアロン型のHMDが出て、この技術をもとに3年以内くらいに最新のスマホでVRができるようになった時というのが、大きな跳ねどころだと思います。理想で言うと、ここからしっかり準備をしておいて、3年後のところに何か“iPhone VR”みたいなものができるようになった時のローンチタイトルにできたら楽しいですよね。

新氏: 國光さん、あまり言い過ぎないほうがいいですよ。あとから嘘ついたといわれたら方々から怒られるんで(笑)。

國光氏: でも、最初のMOスタイルのものが、1年なのか、1年半なのかは置いといて、いきなり7時間、8時間のゲーム体験まで作り込む必要もないので、そこは値段を下げて提供することができると思うんですよね。できる限り早くお客さんに出して、そこからフィードバックを聞きながら、コンテンツを追加していくというのが今後の方針なのかなという風には感じてますね。

——常時接続型のオンラインゲームなので、ロケーションではなくてBtoCとしてお家でじっくり遊べる形なんですよね?

國光氏: 将来的な目標はそうです。ただ、MOタイプのゲームを、バトルのところだけ切り出してリリースする場合、ネットカフェでワイワイ楽しめるような形っていうのも、できてくると思うし、未来は1つのIPとして、ゲーム体験を拡張して家庭用にも切り出すし、みたいな。

 ここはたぶん、どっちかに決め打ちするのではなくて、両方やっていく必要があると思っていて、1つはやはりビジネスとして両方やっていった方が収益がということもあるのですが、やはりロケーションがいいのって、VRの良さってやってもらわないとわからない。とはいえ、ハードの値段が極端にこの1年2年で下がるかというとそんなこともないし、依然として超高価だから、まずはロケーションとかで友達に連れていかれたりとかして、みんなでやってみて楽しくてこっちを買おうということで増やしていくという。最終的にハードが流行るか流行らないかっていうのって、どんだけ面白いキラーコンテンツがでるかが勝負だと思っているので。

新氏: あとは早い段階からユーザーテストとか、という形では外に出すことが増えてくると思うんですよね。

——スタッフは「エニグマスフィア」のスタッフが中心になるんですか? それとも別編成になるんですか?

新氏: 「エニグマスフィア」のスタッフが入ります。さらにそこに人を入れていきます。

——gumiさんのスタッフも?

國光氏: 入れます。

——どれくらいのイメージで?

新氏: 中心になるのは15人くらいでしょ。アセットとかは外に出したりするので。

——では、MMOの開発としては結構少数精鋭になるんですね。

新氏: そうですね。

——ただ、ゲームコンテンツとしてのVRは、MMORPGを遊ぶための条件がまだいくつか整っていないと思うんです。例えば長時間の連続プレイが構造的に難しい。MMOって遊びだしたら1時間、2時間という尺で普通に遊ぶじゃないですか。そこはどのようにしようと考えているのですか?

新氏: 我々としたらやはりワンプレイが15分くらいのものになると思います。1時間のものは想定はしていません。

——では、最初から1コンテンツの最大単位を15分まででカチッと作り込んで、その集合体でひとつのオンラインゲームを作り上げるイメージですか?

新氏: そうです。それを繰り返しするという形で。それで十分楽しめるという形のものを作るのがまず1つの目標ですね。やはり1時間いきなりやると疲れます。15分程度の小さなコンテンツで、それが達成できるということを確認できるのが、最初のMO開発の段階だと思います。

——あともう1つは酔いの問題があると思います。VRは、もうずいぶんベタなVR酔いというのはゲーム側で解消されてきていますが、ユーザーの状況によっても変わってきますよね。たとえば、海外取材で連日徹夜状態で、疲れている状態でVRヘッドセットを被ると、「うわあ、酔うなあ」ってことがまだあります。例えばパーティプレイ中に酔ったとなると、ロールプレイどころではないですよね。そのあたりってどうやっていくんですか?

國光氏: そこは、結構GDCも含めてノウハウが蓄積されていて、現場でもすごく解消され始めているので、結構海外の方でだいたい出てくるゲームはデモでやっているんですが、もう酔わないですよ。

新氏: そうなんですよ。もう酔わないです。かつてVRゲームをデバッグ会社さんにお願いするときに、値段がすごく高かったんですよ。なぜかというと、酔うので、連続してテストができないので、そのバッファを取っていたからです。「いや、うちのは酔わないですから」といって、お渡しして確認してもらうと、「ああ、確かに酔わないですね」と。それで経費を安くしていただいたみたいなことも起きてるんですね。ジョイポリスさんでも酔うという人がいないので、本当にすごく安心してコンテンツとしてお客さんに提供できるという点が評価を頂いている点なので。酔わないようにするというのは、ワープモーションが基本ではあるのですが、酔わないようにする移動方法は明快にあると思いますね。それを当然のことながら徹底していくつもりです。

國光氏: それはもう世界的な傾向だと思います。うちの投資先なんかもそうだし、投資先じゃないところも全部そうなんですけど、割とみんなかなりコラボラティブというか、一緒にノウハウを共有していって面白いものを作っていこうという形なので、今後も海外の方のノウハウだったり、このインキュベーションのやつもそうですし、アメリカのファンドもそうだしとか、いろんなネットワークを通してみんなで共有して、で、酔わない面白いゲームを作れるようなそういうところを作っていきたいなという。

——わかりました。その2020年にリリースされるVRMMOのタイトルは何になるんでしょうか?

新氏: まだ未定です。

——どんな世界観を採用するかもまだ未定?

新氏: ノーコメントで(笑)。

國光氏: なので、そういうVRMMOを作りたい人はぜひ僕らの仲間に入ろうよとアピールしたいですね(笑)。

新氏: それができる日本国内では最高のスタジオを作るというのが、まず最大の目標ですね。

——ゲームファンに対して、メッセージをお願いいたします。

新氏: 特にVRというのは新しい分野なので、新しい、今まで見られなかったものを体験として中に入る気持ちよさは圧倒的なものがあります。そこを軸にVRの未来というのは、来ると信じています。今この瞬間にいろいろ課題を抱えているとしても、VRの特有の凄さは、これが浸透していった暁には皆さんに楽しんで頂けるものを我々は確実に作っていくつもりです。同時にもちろん、そういったものを作ろうという人は我々もメンバーを募集していますので、是非参加して欲しいですね。

國光氏: やっぱりキラーコンテンツだと思うんですね。VRがヒットするためには。日本初というもので世界に求められているキラーコンテンツはどう考えてもMMORPGだと思う。そういうのを一緒に作ろうと思っている人は、是非仲間になって欲しいなと思います。よろしくお願いいたします!

——これからの展開に期待しています。ありがとうございました。