インタビュー

「BRA★BRA FINAL FANTASY」出演者インタビュー

今年のテーマはビール!? 植松伸夫氏「ぜひ気軽に来て楽しんでいってほしい」

4月2日開催

会場:東京オペラシティ コンサートホール

 4月2日より東京オペラシティ コンサートホールでスタートした植松伸夫氏制作総指揮の「ファイナルファンタジー」吹奏楽コンサート「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO with Siena Wind Orchestra」。

 初日は昼公演と夜公演の2公演が行なわれたが、昼公演終了後、制作総指揮の植松氏、指揮者の栗田博文氏、コンサートマスター兼サックス奏者の榮村正吾氏の3人によるメディア向けの合同インタビューが行なわれた。夜公演を直前に控え、短い時間のインタビューとなったが、植松氏ら出演者に初演の感想や今後の抱負、セットリストの狙いなどについて話を伺うことができたので、これから行こうと考えている人、行こうかどうか悩んでいる人はぜひ参考にして貰いたい。公演の模様はコンサートレポートを参照いただきたい。

初演を終えてリラックスした表情の3人。左から指揮者の栗田博文氏、作曲家兼制作総指揮の植松伸夫氏、コンサートマスター兼サックス奏者の榮村正吾氏

植松氏「初日からお客さんが熱かった」

――初演の感想を聞かせて下さい。

植松氏: お客様が熱かったですね。後半からバーッと盛り上がるんですけど、1発目からあんなに盛り上がるのは珍しいですね。通して聴いてみると前回、前々回以上にバリエーションに富んだ音楽が並んでいて、いいな楽しいなと思いました。今回の1回目は台本通りやってみたんですけど、なかなか出捌けの部分でお客さんを待たせる部分があったので、夜公演ではそこを修正して、よりシェイプアップしていこうと思っています。

栗田氏: 1回目終えたばかりですが、一昨年も去年も同じなんですが、お客さんが最初から熱いぞ、盛り上がっているぞという中で良い緊張感を持って、シエナの皆さんと良い音で初回からバンと行けたので、とても楽しかったです。

榮村氏: 3回目になってお客さんも聴き方も参加の仕方も慣れて、こなれてきた感じで、良い意味で最初からテンション高く良い演奏会だったと思います。演奏する側は転換が多かったり、色々編成が変わったりして、やってる側はいろんな緊張が走るんですけど、夜公演の時はその辺の緊張感も取れてもっと良い演奏会になるのではないかと思っています。

初演フィナーレの記念撮影

――出だし好調ということで、これから全国公演が始まるわけですが、これから19都道府県と台湾の23公演あります。全国行脚の意気込みを聞かせて下さい。

栗田氏: 23公演の1つが終わった訳なんですけど、残り22回が良い形で熟成していくというか、去年一昨年のツアーでもそうだったんですが、みんなの想いが土地によって変化もするし、色んな出会いがあるので、今後の船出が楽しみですね。

植松氏: やっぱり1回目は探り探りの状態なんですね。裏方さんにしても、MCのまみちゃんにしてもシエナさんにしても、まだ慣れてない。でも、何十回もやっていくうちに楽しくなってくるんですよ。早くその段階にならないかなと言う感じですね。

シエナ・ウィンド・オーケストラの皆さん

榮村氏: 地方で待ってる「FF」ファンの皆さんに良いものを届けられればと思っています。先日の侍ジャパンのように、1試合1試合目強くなっていくみたいな、そういうところが僕らの世界でもあって、1つ1つ公演をこなしていくことでなんか新しいものが生まれるというところがあって、それによって間違いなく良い方向に進んでいくので地方の皆さんは楽しみにしていただければと思います。

――ちなみに、今植松さんサックスをお持ちですが、「マンボdeチョコボ」いかがでしたか?(笑)

植松氏:(笑)。ひどかったですけど途中で戦線離脱するかもぐらいに思っていたら、緊張して、でもなんかそれがなかったので意外と楽しかったですね。これなら頑張っていたら20何回やっていたら多少は楽しくなるかなと(笑)。先ほど、榮村さんにお借りしたマウスピースとリード、僕が使っている奴と全然違って少ない量で音が出しやすいので、これ借りるんじゃなくて買っちゃおうかなと。昼公演と夜公演で僕の演奏全然違うと思いますよ(笑)。

フィナーレ「マンボdeチョコボ」でサックスデビューを遂げた植松氏

――榮村さん、どうでしたか、植松さんの演奏は?

植松氏: こらっ(笑)。

榮村氏: まだもうちょっと練習ですね。練習は嘘をつきませんから(笑)。

記者の希望に応じて「Somewhere Over The Rainbow」を吹く植松氏

――3年目ということで、皆さんの息もピッタリだと思いますが、ここが聴き所というところがあれば教えて下さい。

栗田氏: 毎ツアー変化に富んでいてそれが面白いんですけど、2017年も前半1曲、後半1曲は前回と重なっている曲があるんですけど、それ以外は全部入れ替わっています。しかも、アレンジの仕方も昨年とは異なる刺激が入っていますので絶対楽しめると思いますし、新曲が多いのでマニアックなファンも楽しめると思います。

――まだ初公演が終わったばかりですが、過去公演の曲ばかりをもう1度再演するという試みをやるつもりはありませんか?

植松氏:  できればそれはファンの方も聴きたい方は多いと思うし、僕もやりたいですけど、この短い時間の中で、まずはこの前出したCDの曲は聴いて欲しいしというのがあるし、CD3枚あるので、たとえば次の年は3枚のCDから色々チョイスするという選択肢もありますね。

――来場者の皆さんは、楽器とか持ってきている方もいて常連が多いかと思いきや、意外と初めての人が多かったみたいなので、1回目、2回目の曲を再演するのは需要がありそうですよね。

植松氏: そうですね。待っててください。

――吹奏楽の「FF」コンサートの取材は初めてです。過去に比べて色々グレードアップしていると思いますが、始めた時と比べて、ここが良くなっているという部分があれば教えて下さい。

植松氏: 僕はどんどんやりやすくなっています。スタッフの皆さんと知り合いになれました。1回目は、栗田さんもシエナの皆さんも初対面だからどういう性格の方で何が好みでということがわからないじゃないですか。何回か回数重ねて酒飲んだり、タバコ部屋でお話ししたりしていくうちに、お互いを知り合えて1回目、2回目回を増す毎に結束力が凄く高まって来たなというのは感じていて、僕はやりやすくなっていますよね。

栗田氏: 植松さんの発言とも共通していますが、社会の縮図ではないですが、人間同士がチームを組んでやっているのでお互いの感じ方は手探り状態で、やってみて思ったのは全員が正直な人だということです。植松さんをはじめ、シエナの皆さんもそうで、嘘は絶対につかずに、要するにボケたら必ずツッ込んでくれるわけです。これは言葉としてもそうだし、音楽の面でもバーッと球を投げたときに、行ったっきりってことがなくて、むしろ凄い勢いの球が返ってきてこちらが痛い思いをするみたいな、反応がどんどん良くなってきていて、どの社会でもそうだと思いますが、人間がお互いのことを尊重しながらやれると音楽的にもこんなに良くなるんだということをコンサートで感じていて、特に今年は3回目ですから、相乗効果で良くなっていくという風に僕は確信しております。

榮村氏: お二方と一緒ですけど、普段違うところで色んなことをやっている中で、パッと集まった時にチーム力の強さは感じるし、普段喋ってたり、バカ話したり、酒飲んでてもいい感じで、1つの公演を作るためのチームになっているというところがとても良いと思います。回を重ねる度にどんどんそれが普通のことになっていっているし、僕らも演奏しててやりやすいですし、僕らがただ座って演奏するだけじゃないということをお客さんもその辺はすごく敏感で感じてくれています。

――今年の公演のテーマを教えて下さい。

植松氏: て、て、て、て、テーマ?(笑)。マジですか。正直言うと、毎回のテーマとかは、あまり意識したことはないんですけど、毎回毎回、前回よりもバリエーションに富んだものにしたいなという意識は常にありますけど、テーマとかは考えたことはないですね。

栗田氏: 共通しているテーマは、「マズいビールはあるのか」ですよね(笑)。

植松氏: そう。僕らはずっとマズいビールを探しているんですよ。マズいビールに出会ったら、そこで僕らのビール探しの旅は終わりで、もうビール飲むの辞めるんですよ。ところがマズいビールに出会えないもんだから、毎晩飲み歩いているわけ。

栗田氏: 毎日「残念!」と(笑)。

植松氏: 「また出会えなかった!」と(笑)。

栗田氏: それがテーマかもしれません(笑)。

――(公演が予定されている)台湾もビールが美味しいですしね。

植松氏: そうですね。色々探しに行かないとダメですね。

――今回のセットリストの選曲意図はどのようなものですか?

植松氏:それはもういつも通りです。これまでオーケストラや管弦楽でセットリストに上がらなかった曲ですとか、それでもファンの方が好きだと言ってくれる曲、皆さん意外と地味な曲が多いんですよ。「水の巫女エリア」とか「FFIII」で1回だけ掛かる曲とか、「いつか帰るところ」なんて、皆さん予想していなかったんじゃないかな。でもそれでもやっぱり美しい演奏は美しいし、あまり知られていなくても良いものはいいじゃないかというところです。いわゆる「FF」クラシックスだけ集めようというつもりはありません。

――いつも少人数編成の曲が増えていますが、それは楽曲の多彩さを表現するための小編成なのか、それともDistant Worldなどフルオーケストラコンサートとの差別化を図るためなのか、どちらでしょうか?

植松氏: えっと、バリエーションですかね。クラリネット、サックスとか、みんなで一斉に吹く迫力というのは確かにあるんですが、小編成ならではのクァルテットなら4つの楽器の音が明確に聞こえるというのは同じ曲でも味わいが違うじゃないですか?

――では、楽曲をアレンジしていく中で自然とこの編成にしようという風に決まっていったというわけですか?

植松氏: そうですね。だからフルオーケストラや管弦楽でそういうこともできなくはないんでしょうが、吹奏楽だとフットワーク軽くできちゃうのはなんでなんでですかね。僕もよくわからないんですけど、色んなバリエーションがやりやすいですね、吹奏楽って。

――まだ公演に来ていない人に対してメッセージをお願いします。

植松氏: いつもコンサートの前に言うことなんですけど、皆さんが思っているような堅苦しいオーケストラコンサートじゃなくて、ゲーム音楽なりのコンサートです。そういうコンサートがあっても良いじゃないかということで、楽しめるコンサートを作っていきたい。僕らも楽しみたいし、来てる人も聴いて楽しむ、参加して楽しむ。気楽に来て欲しいですし、来た以上は積極的に参加していってほしいですね。

「マンボdeチョコボ」演奏風景。シエナ・ウィンド・オーケストラと参加者でステージがギッシリ埋まっている
客席から見たシーン。このフィナーレだけは自由に写真撮影可能で、掟破りの気軽さが人気の秘密になっている