インタビュー
「Vainglory」、アップデート「2.0」の変化を現CEOに聞く!
鉱山、ショップ変化で「序盤の有利の持続」を調整。ドラフト方法にも変化あり?
2016年12月5日 12:37
Super Evil MegacorpのAndroid/iOS用アクション戦略ゲーム「Vainglory」の世界大会「2016 World Championship」にて、同社CEOのKristian Segerstrale氏に話を聞くことができた。
今回、世界大会の会場ではトーナメントの実施と同時に、すでに告知があった12月15日の新アップデート「2.0」に関する発表も行なわれた。
Segerstrale氏にはこの最新アップデート「2.0」の詳細やその狙いのほか、「Vainglory」の現状について伺うことができたので、こちらをお届けする。
アサシン系の新ヒーロー登場を明言!
――大会の様子はいかがですか?
Segerstrale氏: とても良いです。この世界大会は、初めて異なるリージョンのチームが集まって開かれているものですが、とてもレベルの高い試合が見られて、素晴らしいものになっています。
――今回、世界大会を開催した狙いは何でしょうか?
Segerstrale氏: 「Vainglory」はチームでプレイする対戦ゲームで、学校や街、アマチュアからプロまで、あらゆるプレイ層で人気にしたいと考えていますが、特にプロのレベルはとても高いものになっています。
1年前はアマチュアの大会しか開かれていませんでしたが、次第にプロトーナメントが各世界で立ち上がってきたこともあり、初めての世界大会を開きたいと考えました。
――大会で注目のチームは?
Segerstrale氏: すべてのチームが素晴らしいです。DetonatioN Gamingはトーナメント1回戦で、本当に惜しかったですよね。最後の攻撃が当たるか当たらないか、ほんのわずかの差でした。
また韓国のPhoenix Armadaはすごく良いプレイをしていました。勝ち上がっていくのが楽しみなチームですね。
――ちなみにSegerstraleさん自身はどんな戦い方が好きですか?
Segerstrale氏: 観戦するのは韓国の攻撃的なスタイルが好きです。私自身はロームで、アダージオやフィン、アーダンを使って、アグレッシブなコシュカやタカをサポートするのが好きですね。
――話を「2.0」に移しますが、新シーズンのテーマは?
Segerstrale氏: この1年、「Vainglory」はとても速い成長を遂げましたが、この成長を続けていくために、まず1つにはコミュニティ面の強化を行ないます。具体的にはギルド機能をアップデートして、ゲーム内でギルドを探せるようになります。
ギルドの情報には、カジュアル志向なのか大会志向なのか、主なプレイの時間帯、主要言語など、詳細な情報が書かれていてプレーヤーのプレイスタイルにあわせたものが探せるようになっています。
2つ目は、初心者へのサポートです。ヒーローの詳細画面にはそのヒーローが攻撃的か、防御的か、傾向がグラフとして表示されるようになり、またプレイする際のTIPSも見られるようになります。
また、フランチャイズプログラムもあります。プロフェッショナルチームをパートナーとして、健康的なエコシステムをより良いものにしていくプログラムです。
さらに開発者向けAPIも配布されます。これによってプレーヤーの統計や試合結果にアクセスできるようになるので、コミュニティがゲームの状況をより深く理解できるようになります。
――ゲーム内のコンテンツではどのような変化があるのでしょうか。
Segerstrale氏: ゲーム内のバランスに大きな変化があります。これは序盤の有利がスノーボール(雪玉を転がすように、有利を膨らましてそのまま押し切ること)に繋がることを防ぐような狙いがあります。
具体的には、まずマップ中央のショップが開始4分になるまで現われなくなります。このショップでは体力回復アイテム「ハルシオンポーション」を購入できなくなり、ジャングルでポーションを買って、そのまま居座るということが難しくなります。
また小さな変化ですが、最初の手持ちゴールドが625に増えて、アイテムが2つ買えるようになります。所持アイテムも少しだけ変化して、これまで消費アイテムは1枠に5つまで購入できましたが、これが3つまでとなります。
さらに、「ミニオン鉱山」は「クリスタル鉱山」となります。「クリスタル鉱山」は開始4分から登場するのですが、中立ミニオンではなく、最初から青側は青陣営、赤側は赤陣営のミニオンとなって、敵を見つけると自動で攻撃を仕掛けるようになります。
クリスタル鉱山はほかのミニオンと同じように各陣営のベインクリスタルから歩いてやってきて、倒すとゴールドを獲得できますが、ミニオンの強化要素はなくなります。今のミニオン鉱山はレーンの有利を作るためのオブジェクトでしたが、今度はジャングルを守ってくれるオブジェクトになりました。
そして私が気に入っているのは、新たな4つのアイテムが加わることです。1つは武器アイテムの「ポイズンナイフ(Poisoned Shiv)」で、これはこれまでアビリティでしか与えられなかった「致命傷」ステータス(回復量減少)をアイテムで与えられるようになります。
もう1つはクリスタルアイテムの「エコー(Echo)」。これは最後に使ったアビリティのクールダウンをリセットできるもので、ウルトアビリティに使用すれば2連発できるようになります。ただしアイテム欄が1つ埋まりますし、クールダウンは長く設定されているので、リスクも含んでいます。
ほかには、1度に多くのダメージを受けると、大量の強化体力を得て1撃で倒されないようになる防御アイテムの「スランバー・ハスク(Slumbering Husk)」、使用した敵が5秒間アイテムを使えなくなる消費アイテム「ヌルウェーブガントレット(Nullwave Gauntlet)」というものがあります。
また体力バーの横に小さな丸い黒枠が加わるのですが、ここにはウルトアビリティが使用可能状態の時に、味方にだけ見える青いドットが灯るようになります。
――前CEOのBo Daly氏がPresident and Chief Business Officerに就任するという発表もありましたが、Boさんはどのような仕事をしていくのでしょうか?
Segerstrale氏: Boは世界各国に向けて、その地域独自のビジネス、協力関係を強固にしていくような仕事に従事していきます。国際ビジネスのシーンにより力を注げるような体制になります。
――今回新ヒーローは加わるのでしょうか?
Segerstrale氏: 入ります。アサシンですが、今はまだ秘密です。もう2つほどサプライズがありますので、来週を楽しみにしていてください。
――今後も新ヒーローは加わっていくことになると思いますが、アビリティ面のデザインで気をつけていることは何でしょうか?
Segerstrale氏: 良い質問ですね。「Vainglory」は、常に統計的な選択を考え続けることが大事です。たとえば最新ヒーローのフリッカーが加わったとしたら、敵としてぶつかったときはどのような対応が求められるか、味方だったらどのタイミングでウルトアビリティを放ちたいかをプレーヤーは考えることになります。
新ヒーローをデザインするときは、そのヒーローが加わることでチームプレイの考えが変わるようなものを意識しています。
もう1つの側面としては、とても強いポイントと、とても弱いポイントを同時に入れるようにしています。例えばスカーフ、セレス、ソーといったヒーローは、ダメージディーラーではありますが、移動速度が遅かったり、防御力が低かったりします。
最後に、試合を通して様々な選択ができるようにしています。まず武器ビルドにするか、クリスタルビルドにするかの選択があり、そこから味方や相手のプレイを見て、どうしたら良いか考えながらビルド選択を進められるようにしているのです。
――大会ではライラやケストレル、ランスがほぼ多くの試合でバン対象となっていましたが、ドラフトに関する変化もあるのでしょうか?
Segerstrale氏: 来年にはなりますが、変更を考えていて、複数のバンができるようになるかもしれません。短期的にはバンやピックヒーローが固定される状況を変える意味合いもありますが、本質は選択をもっと自由にする狙いがあります。
例えば今は最初にバンを1人ずつ選んで、そのあとピックが続いていきますが、ピックを1度行なった後に再度バンを行なうなど、仕組みを複雑にすることで、選択をより考えさせるようにしたいのです。現在でもヒーローは24人いますので、より多様性のある選択が生まれる状況にしたいと考えています。
――1年半前、本作の完成度は「10%」だと話していましたが、現在の完成度はいかがでしょうか?
Segerstrale氏: 「2.0」の時点で20%です。オンラインFPSの「カウンターストライク」は15年をかけて知名度を上げていきました。この例を考えると、「Vainglory」はまだ黎明期ですから。
――初の世界大会は非常に盛り上がって、成功だと言えると思います。今後の展望はいかがですか?
Segerstrale氏: とても良いスタートだったと思います。来年は、少なくとも2倍の規模にしたいですね。それと、日本のチームが決勝戦に行くことも望んでいます。
――それは私も期待しています! 次回の開催も楽しみにしています。ありがとうございました。