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DetonatioN Gaming、「Vainglory」世界大会敗退も「いずれ必ず1位を」

「実力を出せなかった」もどかしさがにじむ試合をDNGメンバーが振り返る

12月2日~4日(現地時間) 開催

場所:TCL Chinese Theatre

DetonatioN Gaming。左からPeaceRoyal選手、ViViQIZ選手、tatuki217選手
Hammers Velocity。左から、Zio選手、Vains選手、Aloh4選手

 Android/iOS用MOBA「Vainglory」の世界大会「2016 World Championship」において、DetonatioN Gaming(DNG)の世界戦デビューはトーナメント1回戦敗退という結果に終わった。

 大会2日目、初日のグループ予選でTeam Secretに勝利数で上回り、グループAを2位通過で突破したDNGの対戦相手はアメリカ代表のHammers Velocity(HV)。アメリカのリーグでは優勝経験もある強豪だが、これを勝ち抜けばDNGの存在を大きく示すチャンスでもあった。

 実際の所、対戦の立ち上がりは悪くないように見えた。HVにコシュカを選択された第1戦目、前日で2連敗を喫したPhoenix Armada戦を思い出すピック(ヒーロー選択)となったが、tatuki217選手のサムエルがその対抗手段としてコシュカに思うような動きをさせず、きっちりと最後まで取りきった試合となった。

 BO3(2勝先取)で決するトーナメント1回戦では、次の試合も勝利すればDNGが準決勝進出となる。立ち回りの点から言っても、傍からゲーム画面を見ている限りでは互角かそれ以上の戦いとなっていたため、このまま勢いに乗ればあるいは……という印象だったが、事はそう簡単に運ばない。

 特に大きなミスがあったわけではない。続く2戦目、立ち回りでは自陣側のジャングルに積極的に入られてはいたものの、HVの攻撃的な姿勢に柔軟に対応していたし、対応しているがゆえに獲得ゴールドの差は均衡が保たれていた。

 集団戦が発生しても、エースを取られたら次の集団戦でエースを取り返すような、激しくも拮抗したゲームが続いていく。集団戦でのスキルの撃ち合い、反射神経抜群の防御アビリティ使用、味方の撃破を防ぐ絶妙なサポートなど、文字通り世界レベルのスキルの応酬となり、会場はそのぶつかり合いのたびに熱を帯びていったが、「次の集団戦で勝ったチームが勝利する」という場面で戦場を制したのはHVだった。

1試合目。コシュカを上手く黙らせることに成功して1勝をもぎ取った
2試合目ではエースの取り合いに。最後の集団戦で押し負ける形となった

3戦目のピック。ライラ+スカーフという遠距離コンビのHV側ピックがポイントに
決して悪い展開ではなかったが、徐々に押し込まれていってしまった

 あと1歩、というところで勝利を拾われた形だが、次の3戦目でも拮抗状態は続く。ただしHV側は遠距離に強いライラとスカーフを用いてレーンの前線を押し上げる作戦を取ったため、前2試合に比べるとじわじわと押し込まれていく展開だった。

 タレットが1本、2本と折られていき、さらにはクラーケンの捕獲も許したためにDNGはいよいよ苦しくなる。勝負が決定的になったのはクラーケンを倒したその次の集団戦、tatuki217選手が操作するランスの2回目の「刺突」が、HV、Zio選手のスカーフに当たらなかった瞬間だ。

 圧倒的不利とはいえ、能力差は開いていなかったため、集団戦を制すれば逆転の芽も十分にあり得た。HVが3人固まってやや不用意に前に出たところ、チャンスと見るやランスの「刺突」をスカーフに当てると、すぐにアーダン(ViViQIZ選手)の「ガントレット」で3人を囲み、そこにスカイ(PeaceRoyal選手)の「デス・フロム・アバブ」も重なる。

 真っ先にスカーフを撃破したいDNGは照準を絞って攻撃を叩き込むが、すかさずスカーフ以外の2人がスカーフを守るように動いて、スカイの攻撃を自らの体と各防御アビリティで凌いでいく。それでもスカーフの体力をあとわずかまで削ったが、2回目の「刺突」が外れてしまうと、続く「ガイシアの壁」でも落としきれず、結果としてそのスカーフにランスもスカイもキルされてしまった。

 試合はそのままベインクリスタルを破壊されて、HVの勝利で決着。この「刺突」さえ当たっていれば、スカーフを落とし、同様に体力がわずかだったグレイヴ(Aloh4選手)も落とし、大逆転への道が開けるはずだっただけに、実に惜しいと感じる試合だった。

【編集部追記】
 3戦目の選手名と使用キャラクターが一致しておりませんでしたので、修正いたしました。

望みを繋ぐはずだった集団戦も返り討ちに。ここで万事休す
試合後は抱擁で健闘を称え合うDNGとHVメンバー

メンバーは試合終了後、「練習通りの動きができなかった」と明かしてくれた
試合のインターバルには控えのMercy選手、マネージャーのSTR1125氏も加えて作戦を話し合う。しかし最後まで普段の調子を取り戻すには至らなかった

 しかし実際には、選手たちは惜しいことによる悔しさよりも「自分たちの実力がまったく出せなかった」(PeaceRoyal選手)ともどかしさを強くにじませていた。プレイ中は、プレーヤースキルやビルドの組み方は「勝っている」と感じたものの、歯車が噛み合わないまま時間が過ぎ、不本意なプレイが続いていたという。

 なぜそうなってしまったかには複合的な理由があり、まずは東アジアと北米で異なる使用ヒーローの想定(メタ)への対応を意識しすぎたことや、世界大会という場所での対戦など、「通常通り」ではない状況がメンバーを縮こませてしまったとした。

 そのため姿勢が受け身になるばかりか、集団戦でのミスが続発し、マネージャーを務めるSTR1125氏も「普段の力が出せていない」と試合を見ていたという。STR1125氏はその一例として、HVがDNGのジャングルに、ミニオンが湧くタイミングで常に侵入していたことへの対処を挙げた。

 チームではその相手の戦略がわかっていながら、対応に1歩遅れたり、体力が少なくてフォローに行けなかったりを繰り返しており、ひいては試合全般で相手の動きの把握やその報告の意識が欠けていたという。そうした意識がないことで、持ち味であるチーム力、メンバー同士の意思疎通が十分ではなくなる。それは動きの自信のなさにも繋がり、仕上がりとしては「実力の3割」程度のパフォーマンスしか出せていなかった。

 しかし第1戦のコシュカ対策は上手く決まったのではないか? と聞いてみたところ、あれは「まぐれ」(tatuki217選手)であり、「勝ったが、強い勝ち方ではない」(STR1125氏)とした。試合は最初からちぐはぐで、開始5分付近の集団戦で、不用意にジャングルに飛び込んできたコシュカを上手く処理できたことで流れが変わったために勝てたが、「それがなければわからなかった」とし、勝ち方として怪しいと自身で思っていたそうだ。

 振り返れば反省は尽きないところではあるのだが、「普段の力が出せずに負けた」ということは、「普段の力が出せれば勝っていたかもしれない」ということでもある。今回はベスト8止まりとなってしまったが、世界を相手に対戦して「客観的に見てぜんぜん勝てる」(STR1125氏)と感じたのもまた事実だそうだ。

 明るい材料としては、今回の大会からメンバーがDNGの所属となったことで、今後はプロチームとして「Vainglory」のプレイに集中できるということ。練習量で言えば他のチームの追随を許さないほどすでに行なっているそうだが、世界大会を経て課題がはっきりしたことで、今後は練習の質や方法を変えて世界大会優勝を目指して動き出すという。

 インタビューの途中では、Super Evil Megacorp CEOのBo Daly氏が「今は非常に残念な気持ちかもしれないが、世界を相手に強さを見せたことをまずは誇りに思ってほしい」とDNGを激励しに訪れた。するとSTR1125氏は、実感を込めて「いずれ必ず1位を獲るので見ていてください」と未来を予言するように応えていた。

 DNGは今後、国内外の大会への出場はもちろんのこと、日本での「Vainglory」人口を増やすようなイベントや、日本プレーヤー全体が楽しめるようなイベント、大会も主催していきたいという。プロチームとしては生まれたばかりのDNGだが、今後どのような成長を遂げるかは楽しみなところだ。STR1125氏の予言が実現することを期待しつつ、引き続きその活躍に注目していきたい。