インタビュー
コミケの作品30%が「Vainglory」になるのが夢!
日本独自イベントがゲーム内に登場? アジア太平洋ジェネラル・マネージャーインタビュー
2016年12月5日 00:00
Android/iOS用MOBA「Vainglory」初の世界大会「2016 World Championship」が開催中の2日目、トーナメント1回戦が行なわれている会場で、Super Evil Megacorpアジア太平洋ジェネラル・マネージャーのTaewon Yun氏にインタビューできた。
Yun氏は、アジア太平洋地域において、ゲーム周辺に関するパブリシティの強化を担当する人物。Yun氏に話を聞くのは、2015年7月に実施した「Vainglory」正式版の配信時のインタビュー以来となるが、ローンチから約1年半が経過した今現在の状況と、世界大会の話を聞くことができたので、こちらの模様をお送りする。
e-Sportsの成長度は日本が最も速い!
――今も席に座って試合の模様をご覧になっていましたが、大会の様子はいかがですか?
Yun氏: とてもエキサイトしています。ローンチから1年半が経過して、このようなe-Sports大会が展開できてまず嬉しく思います。日本代表のDetonatioN Gamingを含めてアジアから参加した3チームがトーナメントに勝ち上がることができて嬉しく思っています。
また日本では日本語の同時放送がありますが、日本では深夜から早朝にかけての放送時間にも関わらず、多くの人に見てもらえてとても嬉しいです。
――アジア勢が全チーム勝ち上がることは予想していましたか?
Yun氏: 予想外でした。ヨーロッパの方が国際大会を多く経験していて、ステージではより実力を発揮すると思っていました。アジア勢にとっては勝つに連れてプレッシャーもかかるので、ここまで良い成績で来ていることに驚いています。
――こうしたアジア層の強さの要因はどこにあるのでしょうか?
Yun氏: 大会への参加チーム数だけで言うと、ヨーロッパの方が多いのです。ただより詳細に見ていくと、ヨーロッパのチームは「勝てるかわからないけどとにかく参加する」チームも多く、一方アジアでは勝てる自信をある程度持ってから参加しているチームが多くいます。
これはどちらにも良い点がありますが、アジアはそうしたプロフェッショナルな姿勢が強さに繋がっているのではと思います。
――アジアチームは優勝するでしょうか?
Yun氏: アメリカ勢も強いですが、そう願っています。
――1年半前にインタビューした際には、プレーヤーの基盤となるコミュニティ作りが大事だとおっしゃっていました。それは変わりませんか?
Yun氏: 現在も同じようにコミュニティを重視しています。面白い経験作りという点で、e-Sportsなどのプロフェッショナルなシーン、そうした試合を観戦したり、友だちと一緒に遊ぶようなカジュアルなシーン、両方を重視しています。
――アジアのコミュニティの広がりはいかがでしょうか?
Yun氏: 広がりという点では、ローンチ時に比べるとAndroidユーザーが2倍になりました。その2倍の中でも、アジアの増加は多いのです。増えたプレーヤーがまた競争し合うことで、お互いに高めあっています。
――達成率はどれほどでしょうか?
Yun氏: はじまったばかりなので、それはまだまだこれからというところです。私たちは現在、e-Sportsを志向していますが、将来的な展望としては、サッカーや野球のような一般的なスポーツにしていきたいと考えています。遊ぶのは少しでも、見る楽しみ共有しているようなものにすることですね。
――ゲームを継続するためにはビジネスとしての成功も大事ですが、その点はいかがでしょうか?
Yun氏: 「Vainglory」は無料のゲームですが、e-Sportsとコミュニティが同時に広がっていくことで、ビジネスは成り立つと考えています。プレーヤー数が広がれば、我々を支持してお金を支払ってくださる方も増えます。
e-Sportsでは、これも究極的にはサッカーなどのスポーツがお手本で、チケットの収入やスポンサーの獲得などのエコシステムの確立が大事だと考えています。エコシステムの確立はプレーヤーにとっても大事で、勝利すれば賞金だけでなく、スポンサーの獲得にも繋がります。
――では日本のコミュニティやビジネスの状況はいかがでしょうか?
Yun氏: とても良く推移していて、上位5位以内の優先度で考えています。「Vainglory」を始める前は「日本ではe-Sportsは盛り上がらないよ」と言われていたのですが、成長度は日本が最も速いのです。コミュニティ自体はまだ小さいですが、観客の熱量が他の国とは違うので、未来は明るいと思います。
世界大会の番組配信では、日本のチームが戦っていると視聴数が2倍になるなど、観戦の増加率も高いものとなっています。今後は一層、日本のコミュニティが重要になると思います。
――ゲームを起動していて感じるのは、「Vainglory」にまつわるマンガなど、ゲーム内から見られる日本独自のコンテンツが多いということです。なぜこのようになっているのでしょうか?
Yun氏: これには2つの面があります。まずここに掲載されているものは、我々が発信したものではなく、ファンアートだったり、研究だったり、コミュニティから自発的に生み出されたものが多いということです。
他のいくつかの会社は「ファンアートは違法」と考えるところもありますが、私達にとっては「Vainglory」はデジタルゲームですし、インターネットを介して友だちに情報を伝えていくのは自然な行為と考えています。
これは夢ですが、日本の「コミケ」の30%が「Vainglory」関連のコンテンツになったら最高だなと考えています。
2つ目は、Super Evile Megacorpのスタッフが、宮崎駿氏をはじめとした日本のアニメやゲームから強く影響を受けているということです。その影響されたものをゲームに反映させることが、今ではすごく自然です。
昔は世界が日本のアニメに注目していませんでしたが、今は注目していますので、影響されて開発されたものを、躊躇なく出すことができるようになりました。
例えばBlizzard Entertainmentの「オーバーウォッチ」は日本アニメのエッセンスもありますよね。あれはキャラクターデザイナーが「ストリートファイター」のデザイナーだったことが影響しています。色々な影響を与えあって、ゲームが生み出されているのです。
――今後、アジアや日本独自の施策は予定していますか?
Yun氏: 良いタイミングなことに、あります。国それぞれには文化が違っていて、例えば日本にしかない祭日、祝日に基づいてイベントをするようなことが可能になります。はじめの頃はそうしたローカルなイベントはできなかったが、現在は地域ごとにイベントができるように力を尽くしています。
そうしたことはこれまで地域ごとのコミュニティマネージャーがイベントを行なってきましたが、これからはゲームシステム的にも地域独自の施策が入っていくようになります。
具体的な内容は秘密ですが、はじめは小さな変化で、そこから少しずつ大きくしていく予定です。
――Yunさんの次のステップは何でしょうか?
Yun氏: まずは2016年を無事に終えることです。そして、2017年にはたくさん施策を用意しています。その1つが、先日発表になった「フランチャイズシステム」です。これはプロチームとコミュニティの関係をより強固にして、収益を分配するシステムです。詳細は今後発表される予定です。
――楽しみにしています。ありがとうございました。