★ PSPゲームレビュー★
2020年の東京を舞台に描かれる人と竜の物語
新納一哉氏が手がけるスキル制RPGの最新作が遂に登場!
「セブンスドラゴン2020 政府特殊機関“ムラクモ”限定装飾一式」
ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • PSP
価格:
6,279円
発売日:
2011年11月23日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

 11月23日、株式会社セガから「セブンスドラゴン2020」が発売された。前作はニンテンドーDSでリリースされたが、本作はPSPでのリリースとなる。

 プロデューサーは「ファンタシースター」シリーズや前作「セブンスドラゴン」などで知られる株式会社セガの小玉理恵子氏、ディレクターは前作と同様に数々の名作RPGを手がける株式会社イメージエポックの新納一哉氏、サウンドコンポーズはゲーム音楽好きなら誰もが知る株式会社エインシャントの古代祐三氏が担当している。また、主題歌は「SeventH-HeaveN」(sasakure.UK feat.初音ミク)。特定の条件を満たすと全BGMを初音ミクが歌ってくれるDIVA MODEが開放される。

 販売形態はUMDの通常版が6,279円、特製パッケージ・特製イヤフォン・PSPデコステッカー10種・PSPフロントカバーが同梱された「政府特殊機関“ムラクモ”限定装飾一式」が8,820円、ダウンロード版(5,600円)の3つとなっている。

 ロード時間を短縮できるデータインストールに対応しており、利用するには950MB以上の空き容量が必要。PSP-3000、SanDiskの8GB Ultra II Memory Stick PRO Duoの環境で、インストールに必要な時間は約16分。データインストール利用時にはロード時間が1~3秒程度に短縮される。必要な空き容量は大きいが、場面切り替えが多いゲームで、データインストールを利用すると驚くほど速くなるので、利用することをオススメしたい。

 早速、本作の魅力を紹介していく。



■ 前作の要素を受け継ぎつつも、大きな変貌を遂げ、より面白く、より遊びやすくなった「セブンスドラゴン2020」

 西暦2020年、突如外宇宙より飛来したドラゴンにより、地球全土は侵略され、ドラゴンやマモノのはびこる世界になってしまう。極限の状況に置かれた地球、その1都市、東京を中心に物語は描かれる。プレーヤーはドラゴンに対抗し得る、高い能力を持った人間だけで構成された特務機関ムラクモのメンバーとなり、東京を取り戻すべく、ドラゴンと戦う。

 人類と竜の戦いというテーマは共通ながら、前作のファンタジーな世界観とはうって変わった本作。「セブンスドラゴン」は当初から全5作のシリーズで考えられており、本作のシナリオも元々あったもので、前作の前の時代を描いた物語だそうだ。本来、ファンタジーな世界観のシリーズを全てリリースし終わった後に出す予定だったものだが、PSPへのハード変更タイミングに伴い、続きの話ではない、東京を舞台にしたシナリオを繰り上げて作ることにしたとのこと。インターフェースやその配色なども世界観に合わせたデザインに変更されている。

帝竜により異界化してしまった東京。竜の花に覆われ、マモノだらけに。ドラゴンを退治し、東京を取り戻そう!世界観に合わせ、インターフェースなどのデザインは一新されている

 前作はレトロゲーム好きのユーザーをメインにしていたが、本作は若年層のユーザーに向けて開発されており、キャラクターデザインもより頭身の高いものに一新。これらのキャラクターデザインは三輪士郎氏が担当している。


 「セブンスドラゴン」らしい要素は受け継がれているものの、世界観やデザインだけでなく、ゲーム性も大きく変化している。例えば、前作ではダンジョンや街への移動の際には、触れるとダメージを受けるフロワロ(竜を呼ぶ花)が咲き乱れるフィールドを歩いて移動したが、本作では簡略化され、メニューから移動先を選ぶと瞬時に移動できるようになっている。

メニューから選択すれば、目的地へと一瞬で移動できるようになっているダンジョンには広いものや複数階構造のものもあるが、小さいサイズで画面右上に、大きなサイズで画面中央に表示、非表示と3種類から選択できるミニマップが優秀で迷いにくくなっている。また、進んだ場所だけがオープンされるので取りこぼしも起きにくい

 また、前作に全くなかったのが都庁修復の要素。ゲーム序盤では、主人公らが特務機関ムラクモに選抜され、ドラゴン反抗の拠点となる東京都庁を奪い返すストーリーが描かれているが、ドラゴンにより異界化されていたこともあり、奪還した都庁は壊れてしまっている。そのため、ドラゴンから採取する素材で都庁を修復していく。都庁修復はストーリーの進行にも関わっており、ストーリーに関与しない施設もあるが、ショップの品揃えを増やしたり、新たなクエストを受注するために必要になる。

ドラゴンを倒し、得た素材「Dz」で都庁を修復することは物語の進行にも関わっており、修復することで便利な施設も利用できるようになる。都庁は高層構造ではあるが、ダンジョンなどへの移動と同様に各階へはメニューから瞬時に移動できるのでストレスはない

 クエストはクエストカウンターで受けるのだが、複数あるクエスト全てを同時に受けることが可能。受注は1度に1つ限りで、いちいち受注・報告をしなければならないといった面倒さは一切なく、全てを受け、達成してから、まとめて報告できるので遊びやすい。クエストを達成すると、冒険の役に立つ報酬が得られ、達成しておけば後々良いこともあるので、なるべく達成しておくことをオススメする。また、中には初音ミクのクエストも存在し、達成することでDIVA MODEが開放される。

クエストはクリアすることで報酬が得られるし、過程で戦闘することはキャラクターの育成にも繋がるのでなるべくこなしておきたい。なお、クエストは戦闘が発生するものだけでなく、戦闘の一切発生しないものも存在する初音ミクのクエストをクリアすれば、全BGMを初音ミクが歌ってくれるDIVA MODEが開放!



■ 5つの職業から1つを選び、パーティーメンバーを作成するキャラクターメイク

 最大3人でパーティーを組む本作では、そのパーティーをどのような職業で構成するかはプレーヤー次第。本項では、シリーズには欠かせない、パーティーを構成するキャラクターたちを作成するキャラクターメイクについて紹介していく。

 キャラクターメイクでは最初に外見を選択。男女5名、計10種の外見が用意されている。

 次に選択するのが職業。「サムライ」、「トリックスター」、「デストロイヤー」、「サイキック」、「ハッカー」の5つから選択する。職業については後ほど詳しく紹介するが、本作にはいわゆるヒーラー職は存在せず、どの職業でパーティーを編成しても最後まで遊べるように調整されている。新たにキャラクターを作成することも可能なので、フィーリングで選んでしまって問題ない。ただし、多様な状況に対応できるよう異なる職業でパーティーを構成しておくのがいいだろう。

 職業の選択が終われば、名前を入力し、最後にボイスを選択する。男女15種ずつ、計30種のボイスが用意されている。特筆すべきはそのキャスト陣の豪華さとボイスタイプ、職業によって異なるセリフが用意されている点。デフォルトでは「ボイスタイプA」、「ボイスタイプB」となっているが、□ボタンを押せばキャストの名前が表示されるようになっている。△ボタンでサンプルボイスを聞くことができるので、好みのボイスを選択しよう。なお、1度決定した外見、名前、ボイスは変更できない。

キャスト
男性用ボイス女性用ボイス
タイプA福山潤水樹奈々
タイプB杉田智和沢城みゆき
タイプC中井和哉堀江由衣
タイプD櫻井孝宏豊崎愛生
タイプE小野大輔田村ゆかり
タイプF岡本信彦桑島法子
タイプG中村悠一佐藤利奈
タイプH下野紘竹達彩奈
タイプI三木眞一郎日笠陽子
タイプJ阿部敦茅原実里
タイプK神谷浩史田中理恵
タイプL江川央生加藤 英美里
タイプM黒田崇矢ゆかな
タイプN石田彰悠木碧
タイプO竹内良太豊口めぐみ
※敬称略
※男性用、女性用ボイスは選択した外見により決定される

外見→職業→名前→ボイスと設定すればキャラクターメイクは完了。最大12人までのキャラクターが登録できる



■ 調整に調整を重ねて生み出された秀逸なバトルシステム

 本シリーズでは、馴染みあるコマンド選択式のバトルシステムを採用している。5つの職業とそれぞれが習得できるスキル、敵の強さなど、様々な要素が絡み合って生まれる戦闘バランスは見事で、雑魚戦はともかく、ボスやドラゴン戦では、1ターンでのキャラクターの行動1つ1つが重要になるほど、やりがいのあるバランスに仕上がっている。

 やりがいがある=難しい、ではないと言っておきたいが、簡単・難しいというのはプレーヤーによって受け取り方が違うだろうし、筆者が受けた絶妙なバランスという印象も、RPGをどれだけプレイしてきたかによっては違う印象になるかもしれない。本作にはSTANDARD(標準的な難易度。RPG経験者向け)、CASUAL(やさしめの難易度。RPG初心者向け)の2つの難易度がゲーム開始時に選択できるので、RPG初心者も安心だ。

 戦闘に入る条件は、ダンジョンマップを歩いている際のランダムエンカウント、ドラゴンのシンボルに接触、ボスなどのイベントバトルと、大きく分けて3つ。ランダムエンカウントで登場するのはそれほど強くない敵で、適正レベルであれば数ターンもあれば倒せる。ボス戦は言うまでもないが、ドラゴンのシンボルに接触した際のドラゴン戦でも苦戦を強いられることが多い。シンボルとの接触時は背後から接触すれば先手を取ることができ、1ターンの間、敵が動くことなく行動できる。1ターン自由に動けるとかなり楽になるので、できる限り背後から接触するようにしたい。逆に背後から接触されると先手を取られ、厳しい状況で最初の行動ターンを迎えるはめになってしまうことも。その場合は1度逃げてしまうのもいいだろう。

 忘れてはならないのが、近くにドラゴンのシンボルがいる場合のバトル。一定ターンが経過すると戦闘にドラゴンが乱入してくる。特に厳しいのがドラゴンと戦っている最中にさらにドラゴンが追加されるパターン。1匹でも脅威のドラゴンが2匹になれば、当然厳しい戦いになる。どのくらいで乱入してくるかは、画面右下のドラゴンのアイコンの色で判断可能で、赤色になったら、次のターンには乱入してくる。乱入までのターンは戦闘発生時の場所とシンボルとの距離に応じて決定されるようだ。

ランダムエンカウントのバトルなら、それほど苦もなく勝利できるが、近くにドラゴンのシンボルがいる場合は注意。さっさと戦闘を終わらせておきたい。ただ、乱入を見越して、乱入されるターンまでに強化魔法をかけるなどして、準備しておくというやり方も悪くないドラゴンのシンボルは、背後から接触すれば先手を取ることができるので、背後を取るように心がけたい。ただ、複雑な動きをしたり、自分たちより速く移動するシンボルの背後を取るのは簡単ではない。戦闘終了後にはシンボルの動きが一定時間停止し、簡単に背後が取れるので、わざと普通に接触してから逃げたり、ランダムエンカウントを起こせるスキルをシンボルの近くで使うのも手だドラゴンは攻撃力やLIFEが高く、レベルやスキルはもちろんのこと、装備も重要になってくるため、なるべく最高の装備で挑みたい。また、状態異常がやっかいなので、2つまで装備できるアクセサリーに状態異常を防げるものを装備しておけば、戦闘がかなり楽になる

■ 熟考できるターン制のコマンド選択式バトル

 戦闘では、キャラクターの行動を決定し、結果を見守り、そのターンが終わったら、また行動を決定……と繰り返していく。コマンド選択式のRPGではベーシックなバトルシステムだ。

 キャラクターの行動として選択できるコマンドは、「ATTACK」、「GUARD」、「SKILL」、「ITEM」、「EXHAUST」、「ESCAPE」の6つがある。

 ATTACKは武器による通常攻撃。スキル発動に必要なMANA消費のない、使いやすい攻撃方法ではあるが、その分、威力もそれなり。物理攻撃の苦手な職業であれば与えられるダメージはかなり低いものになる。

 GUARDはそのターンに敵から受けるダメージを軽減してくれる防御手段。雑魚戦はともかく、ドラゴン戦では重要になる場面が出てくる。力を溜めて、次のターンで高威力の攻撃をしてくる相手なら、GUARDを選んでおけば間違いないだろう。

 SKILLはMANAを消費し、職業毎に異なるスキルを発動するコマンド。これをいかに使うかが戦闘の鍵を握っているともいえるほど重要なコマンドだ。スキルは単に高いダメージが与えられるだけでなく、様々な効果がある。豊富に用意されたスキルは、バトルを面白くしている大きな要素の1つだ。本作ではレベルアップ時、時折出てくるセーブポイントでLIFEとMANAが全回復するし、MANAが回復できるアイテムも入手しやすいなど、MANAを回復できる手段が多くあるため、スキルを使いまくって戦闘することができる。パーティー構成やプレイスタイルにもよるかもしれないが、中盤以降はATTACKを使うことがほぼなくなり、SKILLやITEMだけで戦闘することになるだろう。

 ITEMは回復アイテムなどを使うコマンド。本作には回復スキルを持っていたとしても専属の回復職は存在しない。単体だけでなく、パーティー全体を回復してくれるアイテムが序盤から登場するし、状態異常は非常にやっかいなため、お世話になることが多いだろう。これら回復アイテムは都庁にあるショップや宝箱だけでなく、敵からもよくドロップするので気軽に使っていける。ダンジョンにはセーブポイントだけでなく、脱出ポイント(ダンジョンから脱出でき、そのポイントから再開できる)があり、都庁に戻りやすいこともアイテムを使いやすくさせている。

 EXHAUSTはゲームを進めると追加されるコマンドで、EXHAUST→SKILL(1回の行動で選択できる)などと、EXHAUST後に選択した行動の効果を向上させてくれる。通常時は選択することができず、攻撃をヒットさせたり、ダメージを受けたりすることで蓄積されていくEXHAUSTゲージがMAXになっている場合にのみ選択できる。面白いのがスキルだけでなく、アイテムの効果も向上させてくれる点。攻撃だけでなく、一気に回復したい場合にも役に立ってくれるわけだ。

 さらにEXHAUSTには重要な役割がある。それはゲーム終盤に特別な条件を満たすことで習得できる奥義に関係する。奥義はEXHAUSTを使った場合にしか選択できない。奥義の性能はとても高く、奥義を習得するまではスキルやアイテム効果の向上に使うEXHAUSTだが、終盤になると奥義の使用のために使うことが多くなるだろう。

 ESCAPEは成功すれば戦闘から逃げ出すことができる逃走コマンド。1人ずつ選択できるので、3人パーティーで3人共ESCAPEを選択すれば、1ターンで最大3回の逃げるチャンスがあり、3人の誰かが成功すれば逃走成功となる。



■ 戦闘を重ねただけ習得・強化できるようになったスキルシステム

 バトルで最も重要といえるスキルは、前作ではレベルアップ時に獲得できるスキルポイントをたくさんあるスキルに自由に振っていくスタイルであったが、本作ではスキルポイントは戦闘毎に得られるため、戦闘を繰り返せば全てのスキルを習得、強化できるようになった。また、序盤にキャラクターの特性がわかるスキル、中盤に再行動できるリアクトスキル(特定の条件を満たすと再度行動可能)、終盤に奥義と、ストーリー進行に従って習得できるスキルが追加される。これによりゲームを理解しやすく、飽きにくいよう工夫されている。

 スキルは戦闘だけでなく、回復タイプのものは戦闘以外でも使うことができる。これらのスキルは戦闘と同様にMANAを消費するが、戦闘以外でのみ使えるサポートスキルと呼ばれるスキルは、MANAを消費することがないが、使用回数が決められている。サポートスキルの効果は、回復、ダンジョンからの脱出、次の戦闘で得られるEXP・スキルポイント上昇など様々。ストーリー進行以外にクエストクリアで習得できたりもするので、ストーリーを進めるだけでなく、クエストもこなしていくといいだろう。

戦闘で得たスキルポイントを使ってスキルを強化、習得していく。序盤で覚えられるスキルや強化段階の浅いスキルであれば必要なスキルポイントは少ない。スキルの説明からどんなスキルかはわかるが、実際使ってみると思いがけないほど強力だったりもするので、まずは習得して試してみるのがオススメ



■ 5つの職業と転身システム

 覚えられるスキル、その性能は職業毎に違い、これにより戦い方も大きく異なる。ここで5つの職業について紹介したい。なお、キャラクター作成時だけでなく、ゲームを進めていくことで習得できるスキルも一部紹介しているので、それらを知りたくないという方は読み飛ばしてもらいたい。


○ サムライ

 刀を用いて戦う職業で、攻撃力、防御力、LIFEなど、全体的に高いステータスを誇る。物理攻撃スキルには属性付きのものもあり、素早さに関係なく最速で行動できる自己回復スキル、自己の攻撃・防御アップスキルなど、あらゆる状況に対応できる万能さを持つ。

 特徴的なのが抜刀・居合の2つの構え。通常時は抜刀状態で、「収刀の紡ぎ」という攻撃スキルを使うことで居合状態へと移行する。この構えにより、使用できるスキルが異なる。抜刀状態では複数回攻撃や空中の敵に有効な攻撃などが可能。複数体が1度に登場する雑魚戦で使いやすい。居合は、炎・氷といった属性系の攻撃、次の攻撃を2倍以上に高める「不動居」など、単体に対しては抜刀をはるかに凌ぐダメージが期待できる。居合になるためには「収刀の紡ぎ」で1ターン消費してしまうが、ボス戦ではこの構えになっておくといいだろう。

 また、居合状態でのみ使えるスキルに「風林重ね」というサイキックの攻撃属性魔法攻撃に合わせて追撃するものがあるため、サイキックと相性がいい。弱点属性をつける敵との戦いでは、サイキックと同じパーティーになり、「風林重ね」とすることで驚くほど大きなダメージを与えることが可能。さらに「不動居」と組み合わせれば、恐ろしいほどのダメージになる。

 自動発動スキルは「修羅の貫付け」。戦闘開始時にのみ発動するスキルで、発動すれば敵全体にダメージを与えることができる。雑魚戦では、このスキルが発動し、即戦闘が終了してしまうこともある。

 使用し、特定条件を満たすことで再行動できるようになるリアクトスキルは「刃下のリアクト」。発動条件は大きなダメージを受けること。再行動が求められる強敵相手に発動しやすい条件となっている。

 奥義は、単体に対して超絶大ダメージを与えるスキル「乱れ散々桜」。サムライらしい直接攻撃に特化した奥義になっている。

扱いやすい、万能タイプのサムライ。名称から攻撃専門という印象を受けるかもしれないが、自己回復、強化スキルもあり、隙がない。サイキックと連携すれば、攻撃のバリエーションが広がる

○ トリックスター

 ダガーか銃のどちらかを用いる職業で、スピードのステータスが高く、同レベル帯であればパーティー内で最初に行動できる。急いで回復したい場面などでは役に立ってくれる。

 ダガーと銃のどちらかを装備するのだが、どちらを装備するかで使用できるスキルが異なる。ダガーにはダメージ+状態異常効果、ダメージ+味方を回復するスキルなどがあり、銃には空中にいる相手に対して高いダメージが与えられるスキルが揃っている。他にも最速行動効果があり、高確率で逃げられるスキル、自身の攻撃力アップ+通常攻撃のクリティカル率を上昇させるスキル、一定ターンの間、味方全員が使う回復アイテムの効果を上げる「トリックハンド」というスキルなども習得できる。「トリックハンド」は驚くほどアイテムの効果を上げてくれる。

 行動毎にダメージを与える毒、時折行動できなくさせる麻痺を攻撃しながら与えることができ、攻撃しながら味方を回復させられる「ヴァンパイア」、「フルムーンヴァンプ」など、ダガーの方が多くの状況に対応しやすく、使いやすい印象。状態異常系は地味ながら強力。毒や麻痺などは行動毎に判定されるため、1ターンで2回行動してくるドラゴンとの戦いでは大活躍してくれる。「ヴァンパイア」、「フルムーンヴァンプ」での回復量は相手が出血している回復量が増えるため、出血効果のあるスキルを持つ職業(サムライ、サイキック)、出血効果のある武器と相性がいい。

 銃で面白いスキルが、一定ターンの間、自身が狙われる確率ダウン+通常攻撃のクリティカル率が50%上昇する「ハイディング」と、「ハイディング」中に味方が攻撃されるとクリティカルで反撃する「ブッシュトラップ」。1ターンで2回行動してくるドラゴンが相手だと、多くの場合1ターンで2回のクリティカル反撃となるし、後述のリアクトスキルと組み合わせれば再行動までついてくる。

 自動発動スキルは、ターン終了時に攻撃+毒を与える「ベノムフェティシュ」、次のターン味方全員が最速行動できる「チーターマン」、低確率で先制攻撃できる「サプライズハント」の3つ。危険な場面で「サプライズハント」が出てくれると、攻撃される前に確実に回復できるのでありがたい。

 リアクトスキルは「アサシンズリアクト」。トリックスターはこのスキルを覚えてから真価を発揮する。発動条件はクリティカルを成功させること。再行動が繰り返せる回数には制限があるものの、クリティカル率の高い行動を選べば、1ターンの間に再行動から再行動と、長い間1人で行動し続けられることも。

 奥義は、単体に対して大ダメージ+複数の状態異常効果を与える「狂咲きバッドヘヴン」。ダメージもなかなかだが、複数の状態異常効果が驚くほど戦闘を楽にしてくれる。

リアクトスキルを習得することで化けるトリックスター。再行動から再行動と連続して1人で行動できた際の楽しさはトリックスターならでは。リアクトスキルの恩恵の最も大きい職業といえるのではないだろうか

○ デストロイヤー

 スピードは遅いが高い攻撃力を誇るファイタークラス。攻撃系のスキルだけでなく、味方の受ける物理ダメージを軽減したり、LIFEが0になる攻撃を受けても生き残るスキルなども習得する。

 デストロイヤーには2つの大きな特徴がある。その1つがD(デストロイ)深度。コンボのようなもので、攻撃した対象に対してD深度が1→2→3と深まっていき、D深度が深まるほど強力なスキルが使えるようになる。D深度付着率が100%+一定ターンの間、攻撃力が上がる「デストロイチャージ」やD深度付着率が100%のスキルを使ってD深度を深めつつ、デストロイヤーが攻撃しないでいるとD深度がなくなってしまったりするので、攻撃の手を休めないようにして高いD深度を維持したい。

 もう1つが各種攻撃に対するカウンター。攻撃してきた敵にダメージを与えるものはもちろん、強力なのが牙・爪・ブレスへのカウンター。それぞれ「牙折る也」、「爪砕く也」、「吹裂く也」と対応するスキルが分かれており、相手の攻撃に合わせることができなければ発動しないが、発動すればその攻撃を完全に無効化して反撃してくれる。ドラゴン戦で決めることができれば相当有利に立てるスキルだ。ドラゴンの行動にはある程度パターンがあるので、1度戦ってパターンを掴めば、成功させやすい。

 自動発動スキルは、ダメージを受けたターンに反撃する「オトシ前上等!」、戦闘開始時に敵全体にダメージ+D深度を1段階付着する「先制デストロイ」の2つ。「先制デストロイ」が出れば最初からD深度1のスキルが使えるし、雑魚なら一掃できる。「オトシ前上等!」はダメージを受けると反撃してくれるので、雑魚戦では殲滅速度が上がるし、ドラゴン戦でも地味に効いてくる。

 リアクトスキルは「デストロイリアクト」。発動条件はD深度を付着させること。D深度を付着させるのは簡単だが、中確率で再行動になるため、トリックスターほど連続して再行動するのは難しい。スキルを強化することで発生確率が高まるので、なるべく強化しておきたい。

 奥義は、敵全体に対して超絶大ダメージ+D深度最大付着効果のある「スカイハイメテオ」。単体、全体どちらにも使えるし、決めておけば、D深度が最大状態で次のターンを迎えられるのでその後を有利に展開できる。

D深度というシステムがユニークなデストロイヤー。D深度を深めることで繰り出せる高威力の攻撃もさることながら、牙・爪・ブレスへのカウンターが成功すれば、その攻撃を完全に無効化できるスキルも魅力

○ サイキック

 一般的なRPGで言う魔法使いのような職業で、様々な属性の攻撃魔法が使用できる。弱点属性をつけば最大級のダメージが期待できる半面、通常攻撃でのダメージは全職業中最低な上、LIFEが低いので戦闘不能になりやすい。通常攻撃の弱さはスキルを使えばいいだけなので全く気にならないが、LIFEの低さだけは注意。より良い防具を装備し、LIFEが減ったらすぐに回復を心がけたい。

 炎・氷・雷・空中の敵と、相手の弱点をつければかなり高いダメージを与えることができる上に、次の魔法ダメージの威力を2倍以上に高めてくれる「コンセントレート」を使えば、さらに高いダメージを与えることが可能。いかに相手の弱点をつけるかが活躍の鍵だ。また、直接的なダメージだけでなく、出血効果のある魔法も習得できる。

 地味ながら効果が高いのが、一定ターンの間、触れた敵に反撃+状態異常効果を与える「ヒートボディ」と「ゼロ℃ボディ」。1回でかけられる対象は1名だが、攻撃を受けやすいメンバーにかけておけば、バカにできない威力の反撃をしてくれる。弱点となる属性であればなおさらだ。素早さに依存しない最速行動タイプで、敵の行動より速くかけられるな点でも使いやすい。

 また、LIFE・状態異常回復、蘇生魔法も習得するため、攻撃だけでなく、回復役としても活躍できる。状態異常はアイテムでは単体しか治せないが、状態異常を回復する「リカヴァ」は強化することで味方全体、かつ全状態異常が回復できるようになるので、出来る限り強化しておきたい。

 自身の身代わりになる幻盾を作りだす「デコイミラー」も使い方次第では大きな効果を発揮する。幻盾にはLIFEがあり、強化することでLIFEは増えていく。ただし、LIFEを超えたダメージを受けても術者に貫通することはなく、全てのダメージを受けて消滅する。このため、防御しないと受けきれないような強力な攻撃も「デコイミラー」を張っておけばノーダメージでやり過ごせる。

 自動発動スキルは、ターン終了時に敵単体に魔法攻撃をする「半径50mの支配者」、ターン終了時に自身のMANAを小回復する「魔力の湧水」、味方が状態異常を受けると一定確率で治す「オートリカヴァ」の3つ。回復できるタイミングは多くあるが、大きくMANAを消費するスキルを多様するサイキックにとっては戦闘中にターンを消費せず、MANAが回復できる「魔力の湧水」は、長期戦で助かるスキルだ。

 リアクトスキルは「デッドマンズリアクト」。発動条件は味方が戦闘不能になること。パーティーは最大3人で、強敵相手だと1ターンでも惜しい絶妙なバランスの本作においては、1人欠けると蘇生やLIFE回復とターンを消費してしまい、苦戦が強いられる。再行動はしたい所だが、このスキルの場合は再行動=戦闘不能者が出ているので蘇生に再行動のターンを使うことになるだろう。あくまで保険的なスキルとして考えておきたい。

 奥義は、単体に対して魔法大ダメージ+全能力を下げる「黒のインヴェイジョン」。ダメージはもちろんのこと、全能力を下げられるので、その効果が切れるまで有利に戦闘が進められる。

直接的なダメージを与える属性魔法を得意とするサイキック。アタッカーとして優秀なだけでなく、回復・蘇生魔法も使える便利な職業だ

○ ハッカー

 自身での攻撃では大きな成果は得られないが、あらゆる方面で味方を強化できる支援特化職で、パーティーに入れておけば戦闘の安定度が大きく上がる。

 攻撃力・防御力アップ、特定の属性攻撃ダメージ軽減、ターン毎に味方全員のLIFEを回復、状態異常の自動回復までのターンを早くするなど、一定ターン続く支援効果はスキルにより様々で、その恩恵は大きい。その多くが素早さに依存せず、ターンの最初に発動できる点でも使いやすい。また、ターン終了時に戦闘不能者を最大LIFEで蘇生させるスキルや味方全体の自動発動スキルの発生率を高めるスキルも習得できる。

 支援スキルがハッカーの特徴ではあるが、もう1つの特徴がハッキング関連のスキル。「ハッキングワン」などのスキルを使い、成功すると対象をハッキング状態にすることができる。ハッキング状態の敵に対しては、操って同士討ちさせたり、ダメージ+味方のMANAを回復、攻撃・防御を下げるスキルを決めることができる。また、ハッキング状態の敵は時折行動できなくなるというメリットもある。ただし、ハッキング状態にするだけでも、スキルを使用しなければならないため、1ターン消費してしまう。クリティカルヒットや弱点をつくとハッキングしやすくなったり、スキルを強化することでハッキングの成功率を上昇させられるが、必ずハッキングできるわけではないので、ハッキングするための1ターンが無駄になってしまう可能性がある点は忘れてはならない。効果はなかなかのものだが、強敵との戦いでは、あくまで支援の手が空いた時のスキルと考えておくといいだろう。

 他にも状態異常耐性を下げる、睡眠効果付与、呪い効果付与といったスキルも習得できる。これらはハッキング状態の相手だと、効果が高まったり、必中になったりする。

 自動発動スキルは、戦闘開始時に単体を高確率でハッキング状態にする「クイックハック」、ターン終了時に一定確率で味方全体のLIFEを回復する「サバゲーナレッジ」、リアクトした味方のLIFEとMANAを回復する「リアクターチアー」の3つ。「サバゲーナレッジ」の回復量はそれほど多くはないが、一定ターンLIFEを回復してくれる「リジェネレーター」と「サバゲーナレッジ」により、ターンで受けたダメージが全て回復できることもあり、次のターンで回復に手を取られず、全員で攻められることもしばしば。地味ながら、「発動してくれ!」と祈りたくなる、ありがたいスキルだ。

 リアクトスキルは「ハッキングリアクト」。発動条件はハッキングに成功すること。「ハッキングリアクト」使用後にハッキングを成功させなければならないため、「クイックハック」は対象外。あくまでターンを消費してハッキングを成功させなければならない。ハッカーがパーティーにいる構成の場合、他の2人は攻撃に回したいだろうし、ハッカーは一定ターンで効果の切れる支援スキルや回復に忙しいため、よほど余裕がなければ、「ハッキングリアクト」とハッキングするためのスキル使用と、再行動の発動条件に必要な2ターンを捻出するのは難しいだろう。

 奥義は、使用ターンの間、味方全体を無敵状態にする「禁断の秘技」。全職業で唯一の防御系奥義だ。強力な攻撃が読めた場合、パーティーを立て直したい場合などに有効で、奥義はターンの最初に発動してくれるので使い勝手はいい。その演出も面白いものになっている。

支援特化型のハッカー。自身では大きなダメージを敵に与えることができないが、その支援効果は大きく、パーティーに組み込むことで安定したバトルが可能となる。支援だけでなく、ハッキングした相手を操作、攻撃することも可能。なお、ハッキング状態はターン経過で回復されてしまう

 5つの職業を紹介したが、これらの職業はレベル30以上になると転身(転職)が可能になる。転身時はレベルが半分になるが、レベルや転身前の職業に応じてステータスにボーナスが得られ、SPも返還される。転身を繰り返すことでより強いキャラクターを育成できるわけだ。

 なお、転身はゲームを進める上で必須ではなく、あくまで限界を超えてキャラクターを育成したい方向けのシステムといえる。前述の通り、転身するとレベルが半分になってしまう。最大12キャラクターが登録できるので、育てたキャラクターのレベルを失いたくなければ、新たにキャラクターを登録すればいいだろう。とりあえずどんな職業か試したいだけなら、転身前にセーブしておいて転身し、試した後に転身前のセーブデータをロードするという手もある。



■ 最後に

 様々な要素が詰め込まれてはいるが、一押しはやりがいのあるバトル。各職業、そのスキルは特徴的で、スキルを組み合わせたらどうなるのか試したくなる。ちなみにやりがいのあるバトルとはいっても、時間をかけて、戦闘を重ね、キャラクターを成長させれば、楽に勝つこともできる。難易度CASUALを選択していればなおさら。セーブ(回復)ポイント、脱出ポイントが適度に配置されているのでレベル上げでストレスは感じない。また、強敵であるドラゴンの行動を覚えて対策するには、一度戦闘する必要があるが、あらゆる戦闘は敗北しても、戦闘突入時の状態からすぐにリトライできるので、やり直しが苦にならない。さらに大抵の戦闘は逃げることができるし、逃げられない戦闘の前にはセーブポイントが配置されているので、それまでのプレイが無駄にならない点も嬉しい。

 筆者のクリアタイムは、難易度STANDARDで約32時間。クエストもがっつりこなし、色々試しながらのプレイなので、クリアを優先してプレイすれば、もっと早くクリアできるはず。これだけでも十分とは思えるが、クリア後のお楽しみも用意されているので、ボリュームを求める方にも満足できることだろう。

 前作から一転、プラットフォームをPSPに変えての登場となった「セブンスドラゴン 2020」。ストーリー、初音ミクが歌う主題歌、他では見かけない職業とスキル、都庁修復システムなど、新しさや今時感は感じられつつも、多くのプレーヤーに馴染みのあるコマンド選択式のRPGシリーズのせいもあってか懐かしさもある。正直、「とにかく斬新!」とはいえないが、新しさが面白さに繋がることはあっても、新しいのと面白いのはまた別の話ではないだろうか。RPGというジャンルのゲームは、毎年たくさんリリースされており、筆者はその全てを遊んでいるわけではないが、これほど秀逸なゲームバランスのRPGにはなかなか出会えないと思われる。前作のファン、RPGファンはもちろんのこと、前作をプレイしてあまり楽しめなかった人にすらオススメしたいほどの仕上がりだ。“買い”である。


Amazonで購入

(2011年 11月 28日)

[Reported by 木原卓 ]