株式会社セガは11月10日、PSP用リズムアクション「初音ミク -Project DIVA- extend」(以下、「Project DIVA extend」)を発売した。本作は「初音ミク -Project DIVA-」シリーズの最新作で、PSPをプラットフォームとしたタイトルとしては2010年7月29日に発売された「初音ミク -Project DIVA- 2nd」(以下、「Project DIVA 2nd」)以来の登場となる。
「Project DIVA extend」は、当初「初音ミク -Project DIVA- Ver.2.5(仮)」という名称だったことからもわかる通り、「Project DIVA 2nd」から大幅な変更は行なわれておらず、一見すると楽曲が変更されただけに思えるかもしれない。しかし、リズムゲームの背景として再生されるPVのクオリティアップや、リズムアクションの譜面の研究などにより、より楽しくやり甲斐のあるタイトルに仕上がっている。
本稿では、このあたりの実際にプレイしないとわからない点を中心に、「Project DIVA extend」の内容と魅力について紹介していこう。
■ 基本システムを変更せずにやり甲斐を増したリズムアクション
強化された演出や遊びやすくなる工夫も見逃せない
チュートリアルの“はちゅねのリズムゲーム講座”では、リズムゲームのルールについて楽しみながら学ぶことができる |
まずはメインとなるリズムアクション部分について紹介していこう。リズムアクション部分は、画面端より飛来するボタンと同じマークのメロディアイコンが、画面上に配置されたターゲットと重なったタイミングでボタンを押す、「初音ミク -Project DIVA-」シリーズではおなじみのもので、前作と同様に方向キーと一緒に押す“同時押し”や、タイミングバーがつながっている間ボタンを押し続ける“長押し”といった要素がある。そのため、「Project DIVA 2nd」をプレイしたことがある人はもちろん、シンプルな内容の上に楽しみながらルールを学ぶことができるチュートリアルもあるため、「Project DIVA extend」でシリーズを初めてプレイするという人もすぐに内容を理解できるはずだ。
最初は難易度EASYとNORMALしか選択できないため、まずは難易度NORMALからプレイ開始。最初に選択できる曲は比較的簡単な4曲のみだが、楽曲をクリアしていくことで次々に楽曲が解放される仕組みになっており、最終的には全部で36曲が楽しめるようになっている。難易度NORMALなら、ほとんどの楽曲が初見でもSTANDARD以上のランクでクリアできたため、あまり大きく変わってないのかな?と思っていたが、続けてプレイした難易度HARDでは、CHEAPなども出るようになってしまった。確かに押すボタンの種類は多くなってはいるものの、ターゲット数が大幅に増えているわけではないのに、これはどういうことかと考えていると、同時押しや長押しが複雑に絡められていることに気づいた。
また、PVの演出についても目を引くものが用意されている。背景や文字も3D作成して動かすモーショングラフィックスという技術を採用した「裏表ラバーズ」(アーティスト:wowaka)では、キャラクターや背景を含めた画面全体に動きのあるPVになっているほか、シリーズ初の2人によるギター演奏を実現した「孤独の果て」(アーティスト:光収容)、「那由他の彼方まで」(アーティスト:釣り師P)では、2人でセッションを行なっているような様子を見ることができる。そのほかのPVでも、細かいモーションの追加やカメラの切り替えにより、思わず目を奪われることがあるほどだった。
キャラクターだけではなく、背景の文字などもポリゴンで描くモーショングラフィックス。ポップな色彩ながら動きの激しいPVとなっている | 2人組での楽器演奏も初めて可能になった。2人の奏でる音に合わせて指も移動しており、実際のセッションを見ているかのような気分が楽しめる | 「結んで開いて羅刹と骸」(アーティスト:ハチ)の1シーン。突如としてカメラがアップになってから振り向く演出に思わず引き込まれてしまった |
モジュール(キャラクターの衣装)に関しても多数追加されており、これまでのシリーズと合わせた総数は150種類以上となる。特に、新しいモジュールには楽曲に合うものが用意されており、楽曲をクリアした後にショップで購入できるようになることが多いので、モジュールが解放されたらショップをのぞいてみることをおすすめしたい。また、「Project DIVA 2nd」のDLCモジュールに加えて、セガのゲームに関連するモジュールも多数用意されており、これらのモジュールの中から楽曲に合うものを探すのも面白い。
そのほか、楽曲選択中にSTARTボタンを押すことで現在設定しているモジュールではなく、デフォルトに設定されたキャラクターでプレイできたり、△ボタンで選択中の楽曲のPVを直接鑑賞できたり、デュエット時にキャラクターセレクト画面でメインキャラクターとサブキャラクターを△ボタンで交代できたり、楽曲クリア時にCOOLとFINEをとった割合が表示されるようになるなど、インターフェイスに関しても細かな改良が施されている。
フリープレイ時に使用できるアイテムについても、これまでのクリアの手助けになるものに加えて、クリア時に取得できるDIVAポイントが増量するアイテムが追加されている。これらのアイテムを使用した場合は、COOLやFINE以外の判定がすべてWORSTになったり、ソングエナジーが回復しなくなったりするため、クリアしにくくなるデメリットがあるものの、獲得できるDIVAポイントが大幅に増えるので、ショップで購入したいものがあるのにDIVAポイントが足りないときなどは、リスク覚悟で得意な楽曲でこれらのアイテムを使っていくのもいい。
■ イベントやアイテムが楽しめるDIVAルーム
PVギャラリーでは楽曲ごとにモジュールの登録も可能に
DIVAルームでは、この習字を楽しむKAITOのようにモーションやイベントが多数追加されている。リズムゲームをプレイし続けて、ちょっとひと休みしたいときに訪れてみてはいかがだろうか |
キャラクターたちの部屋を自分好みにカスタマイズして、キャラクターたちの行動を見たり、mp3データやPVの再生、タイマー設定などができるDIVAルームももちろんパワーアップ。ルームテーマやアイテムはもちろん、イベントやボイスつきモーションなども追加されており、のんびりとキャラクターたちの動きを見ることができる。
また、新たな機能として、ビジュアルライブラリではこれまでに見たイラストの中からロード画面で表示されるイラストの設定ができたり、PVギャラリーでは、プレイリストに楽曲を登録するだけでなく、PVで再生される楽曲ごとにモジュールの設定をすることが可能となっている。PVモードでのモジュール設定は「初音ミク -Project DIVA- ドリーミーシアター」シリーズではすでに実装されているものの、PSP用のシリーズでは初めて。PVごとにモジュールを登録したい人にとっては、地味ながら嬉しい機能のはずだ。
■ PV用の素材が多数追加されたエディットモードでは
素材を組み合わせて自分だけのリズムゲームを作り出せる
これまでに使っていたエディットデータを「Project DIVA extend」用にコンバートすることも可能だ。コンバートされたデータを、「Project DIVA extend」上でさらに編集することもできるので、以前のデータを利用しつつ新たな素材を組み合わせるのも面白い |
自分の好みの楽曲でリズムゲームを作り出せるエディットモードにも、多数の素材が追加されている。特にモーションについては、新たなダンスモーションのほか、喜怒哀楽などの感情を表すもののほか、座ったり挨拶するモーションが追加されており、新たな可能性を感じることができた。
また、アイテムについては、袈裟斬り・横斬りなどに合いそうなライトソードのほか、追加された待ち合わせモーションに合いそうな携帯なども用意。これらを組み合わせることで、ストーリー性のあるリズムゲームをエディットするのも面白そうだ。
そのほかに、リズムゲームのPVで使用されていた背景やエフェクトなども追加されており、これまで以上にバリエーションに富んだ素材がエディットモードには用意されている。エディットデータの作成方法は「Project DIVA 2nd」から基本的に変わっていないため、「Project DIVA 2nd」でエディットデータ作成に慣れた人ならすぐに「Project DIVA extend」用のデータを作り出せるようになるはずだ。
また細かい点だが、「初音ミク -Project DIVA-」や「Project DIVA 2nd」のエディットデータを「Project DIVA extend」用のデータにコンバートすることも可能となっている。コンバートされたエディットデータでも以前と変わらずプレイできたので、お気に入りのエディットデータがある人も安心してほしい。
■ 大きな変化がなくとも遊びやすく着実に進化
シリーズのファンはもちろん初めての人にもオススメ
「Projext DIVA 2nd」で見慣れたモジュールも、「Project DIVA extend」で追加された楽曲と組み合わせることで新たな魅力が発見できるかも |
「Project DIVA extend」の内容と魅力について紹介してきたがいかがだろうか。プレイしていて感じたのは、システムに大きな変化はないものの、より遊びやすくなっていたということ。特にリズムゲームでのデフォルトキャラクターをSTARTボタンで設定できることを筆頭に、ちょっとした機能の追加によりプレーヤーの手間やロード時間が大幅に削減されているのは、地味ながら嬉しい点といえる。
1つ不満点として、「Project DIVA 2nd」からそのまま再収録されている楽曲があることが挙げられる。このため、「Project DIVA 2nd」をやり込んだという人にとっては、少々物足りなく感じられるかもしれない。このあたりは、「右肩の蝶 -39's Giving Day Edition」(アーティスト:のりぴー/水野悠良)のように、PVや譜面を変更するなど、何らかの変化が欲しかったところだ。
とはいえ、新たに追加されたモジュールと組み合わて楽しむなど「Project DIVA extend」ならではの楽しみもある。また、前作からのデータを引き継ぐことで、DIVAポイントはもちろんモジュールやDIVAルームなどのデータが引き継げるので、「Project DIVA 2nd」でのプレイデータが無駄になるわけではない。
リズムアクションの譜面に関しては、「Project DIVA 2nd」のシステムでもまだこれだけのことができるということを十分感じられる内容となっている。リズムアクションゲームは、シリーズを重ねるごとにどんどん高難易度化していきがちだが、「Project DIVA extend」ではターゲットを単純に増やすのではなく、ターゲットの配置や長押しでボタンを離すタイミングにより、あくまでリズムやメロディに合わせてボタンを押すという基本を保ちながら、より楽しく遊び甲斐のある譜面になっている。「Project DIVA 2nd」は極めた、という人も、また違った楽しみを「Project DIVA extend」では感じられるのではないだろうか。
以上のように、シリーズの最新作として遊びやすく着実に進化した「Project DIVA extend」。「初音ミク -Project DIVA-」シリーズのファンはもちろん、シリーズをプレイしたことのない人でも、ボーカロイド楽曲のファンやリズムゲームが好きな人なら、間違いなくおすすめできる1本だ。
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(2011年 11月 29日)