★ PS3ゲームレビュー★
「ウィザードリィ」マニアへの挑戦状!?
超高難易度の新ダンジョンを追加して再登場
「 ウィザードリィ パーフェクトパック」
ジャンル:
  • 3DダンジョンRPG
発売元:
プラットフォーム:
  • PS3
価格:
6,090円
発売日:
2011年12月8日
プレイ人数:
1人
レーティング:
C(15歳以上対象)

美麗なグラフィックスで表現されたPS3版「Wizardry」。種族ごとにキャラクターの表情やボイスが用意されている
街中もグラフィックスで再現。宿屋や神殿など、シリーズおなじみの施設が並ぶ

 本作の原作である「ウィザードリィ」」シリーズは、1981年に誕生した3DダンジョンRPGの名作。当時は、ダンジョンはワイヤーフレーム(ただの線)で描かれたダンジョンに、モンスターもグラフィックスがなくテキストのみというシンプルなものであったが、当時としては斬新なゲーム性から熱狂的な支持を受け、多数の続編が発売されている。また、これ以降、3DダンジョンRPGというジャンルが確立され、同様なゲームシステムのタイトルがいくつも発売されるなど、まさに名作と呼べるタイトルだった。

 そして、同シリーズの誕生から今年で30周年を迎えるにあたって、「ウィザードリィ」というブランドを広く認知してもらうべく、2006年に新たに立ち上げられたプロジェクト「ウィザードリィ ルネサンス」の一環として、アクワイアから発売されたのがプレイステーション 3版の「ウィザードリィ」シリーズとなる。

 12月8日に発売される「ウィザードリィ パーフェクトパック」は、2009年12月に配信された「Wizardry 囚われし魂の迷宮」と、その続編として今年1月27日に発売された「Wizardry 囚われし亡霊の街」をセットにしたパッケージ。さらに「囚われし亡霊の街」向けに配信された追加シナリオ「シナリオ2」、「シナリオ3」、追加種族(フェルパー・フェアリー)、従来種族の追加グラフィックスに加え、パッケージ特典として新規ダンジョン「残魂の迷宮」が収録されている。

 このPS3版では、ダンジョンやモンスターが美麗なグラフィックスで表現されているだけではなく、ストーリーやクエスト、PlayStation Networkを介したランキング機能などが実装され、現代風にアレンジ。また、ゲームシステムにも一部手が加えられ、原作に比べて“プレイしやすい”ゲームに仕上がっている。

【「ウィザードリィ~魂の迷宮~」スクリーンショット】

【「ウィザードリィ~亡霊の街~」スクリーンショット】


■ 新規ダンジョン「残魂の迷宮」は超ハイレベル

最初の街で「冒険をする」を選ぶと、いきなり「残魂の迷宮」に挑戦できる
これが今回、「残魂の迷宮」に挑んだパーティー。全員レベル120で前衛はHP5,000以上ある

 「ウィザードリィ パーフェクトパック」を購入した人のみプレイできるのが、新規ダンジョン「残魂の迷宮」だ。これは“初期「ウィザードリィ」」を彷彿とさせる高難易度ダンジョン”で、テストプレイ中には開発スタッフも心が折れかけたほど、厳しい内容になっているという。

 ゲームをスタートすると、本編の進行度やキャラクターレベルとは全く関係なく、最初から「残魂の迷宮」に挑戦できる。もちろん、新規作成したキャラクターで挑むことも可能だが、さすがにそれは無謀ということで、先に今回のレビューで使用したキャラクターを簡単に紹介しておこう。

 前衛は戦士、侍、戦士、後衛は盗賊、司教、魔術士の6人パーティーで、レベルは全員120。武器は戦士の2人がティルフォング、侍は村正、盗賊はシークレットウェポンとほぼ最強クラスの装備を揃えているが、防具は武器に比べてちょっとイマイチかなといったところ。前衛攻撃力が高い割りに魔法が弱い気がするが、十分強力な構成といえるだろう。

 早速このパーティーで「残魂の迷宮」に潜ってみると、遭遇したのは「アイアンスコーピオン」、「デイドリーム」や「狡猾なるジン」など本編でも見かけたモンスター。これくらいなら倒せると思って戦ってみると、モンスターのレベルは90以上になっており、一撃で5,000超のダメージが来るわ、パーティー全員気絶から石化されるなど、苦戦どころか毎回誰かが犠牲になる始末。さらに運が悪いと1ターン目に即死攻撃をくらって、全員即死ということもあった。

 その後も地下1Fを探索し続けていると、3回に1回は誰かが死亡するほどの厳しさで、何度もキャラクターロストの危機を感じていた。それを何度か繰り返し、倒せるモンスターと倒せないモンスターを判別し、時には「逃げる」を選択することで、なんとか1F全域を踏破。もちろん、途中に何度も「Emergency Exit」(緊急脱出魔法)と「Free Warp」(すでに行ったところなら自由にワープできる魔法)を駆使して、こまめにセーブしながらプレイしていたことを付け加えておく。

 地下1Fのダンジョンは、一部にダークゾーンやアンチスペルゾーン(魔法が使えないエリア)、ショック(ダメージを受けるエリア)などが配置されていたが、これらは本編でも存在し、特にギミック的な難しさは感じなかった。ただし、マップの形状はずいぶんといやらしかったが。また、「ウィザードリィ」の特徴の1つである意味不明な謎のメッセージが、本編よりも多めに配置されていて、本家の懐かしさを彷彿とさせた。

 続く地下2Fのダンジョンも、1Fよりもモンスターのレベルが若干上がったかなという程度……といっても、遭遇するモンスターの数と種類によっては、いつパーティーが全滅してもおかしくない状況なのは変わらず。モンスターとエンカウントするたびにドキドキしながら、モンスターのシルエットが現われるのを眺めていた。



出現するモンスターのレベルはすべて90以上。当然ながらあらゆる能力が底上げされており、レベル120でも楽観はできない
前衛でも一撃で倒されることも。油断云々よりもほぼ運がすべてか?ほかの冒険者たちが残した意味深なメッセージや謎のメッセージも満載


■ 地下3Fは究極の難易度!? 1戦ごとに全滅の危機!!

 地下1Fおよび2Fに出てくるモンスターの中では、ハヤテ、ムサシ、深淵なるビフロスあたりに気をつけておけばなんとかなったが、「残魂の迷宮」の最下層となる地下3Fで遭遇するモンスターはレベル99(上限?)になり、今までにない強さにグレードアップ。レベル120のキャラクターでも、「Stun Wave」(全体気絶魔法)で全員気絶するわ、「Cloud of Death」(全体即死魔法)であっさり全滅するわで、「“心が折れる”とはこういうことか」と実感した。

 しかし、よく考えてみると、「ウィザードリィ」はもともと、プレーヤースキルやキャラクターの強さに関係なく、運のみの1発で死んでしまう不条理さも魅力の1つだったので、これはこれでありなのかもしれない。

 固定配置のモンスターも、レベル99ではないものの、気絶や石化、即死などの特殊攻撃連発で、運が良ければ倒せるかもしれないくらいの強さだ。パーティーのレベルを上げるか、各キャラクターの「AGI(敏捷さ)」を上げて先制攻撃を取るなりしないと、正直お手上げ状態だ。

 ダンジョン自体はプレイした限り、隠し扉などはあるものの、特殊なギミックはなく、アンチスペルゾーンもほとんどないため、セーブと「Free Warp」をひたすら駆使して進めば、ダンジョン踏破は可能な印象。個人的には、古くからの「ウィザードリィ」プレーヤーの感覚では違和感を感じた気がしないでもないが……。



モンスターのレベルはなんと99! 逃げたい衝動にかられるが、逃げられる確率も低そうだ1ターン終了時点で、1人死亡、3人麻痺という惨状。こうなってしまうと、もう逃げるしかない
固定モンスターの一団。レベル65とレベル85で安堵していたら、いきなり「Cloud of Death」をくらって全滅するはめに……。心が折れそうになる瞬間だ
地下3Fには謎かけが登場。答えを間違えると……どうなるかは実際にプレイしてみてほしい


■ 育て上げたキャラクターに自信のある方にオススメ!

 プレイする前、担当編集者から「開発者も心が折れかけた難易度」と聞き、「ウィザードリィ」をどう難しくしたのか興味津々でプレイしていたのだが、モンスターの強さが凶悪になっただけで、ちょっと物足りなさを感じたというのが第一印象だった。しかし、セーブとロードを繰り返して挑んでいるうちに、当時の右手をリセットボタンに置いて、ひたすらやり込んだ記憶がよみがえり、懐かしくなってきてしまった。

 「残魂の迷宮」には、ストーリーもクエストも関係なく、ただ挑むためのダンジョンという位置づけで、現代のゲームと比較するとシンプルすぎて肩すかしに感じられる。しかし、思い出してほしい。初代「ウィザードリィ」もワードナーというラスボスこそいるものの、ラスボスそっちのけでダンジョンに潜り、モンスターを倒すことを繰り返し、ひたすらキャラクターを育て上げ、強力な装備を揃えることを目指してプレイしていたことを。そう考えると、これも「ウィザードリィ」の王道を受け継いだと言っていいのかもしれない。

 ここまで追加要素の「残魂の迷宮」を中心に紹介してきたが、「ウィザードリィ パーフェクトパック」には、2タイトルと追加シナリオが全部入ったお得なパッケージになっているので、PS3版の「ウィザードリィ」シリーズをプレイしたことのない人には当然オススメしたい。また、キャラクターをこつこつと育て上げてきた既存のプレーヤーも、ぜひ購入して「残魂の迷宮」に挑戦し、凶悪になった敵モンスターを体験してほしい。

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(2011年 11月 25日)

[Reported by 滝沢修 ]