中国上海にてChina Digital Entertainment Expo(ChinaJoy)が開幕

SCE Asiaが4年ぶりに出展。中国にもスマホ/タブレットの波


7月26日~29日開催(現地時間)

会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)



 中国最大規模のゲームショウChina Digital Entertainment Expo(ChinaJoy)2012が7月26日より、中国上海の上海新国際博覧中心にて開幕した。会期初日の7月26日は、朝から30度を超え、かつ無風という上海らしい灼熱の1日となったが、会場には多くのゲームファンが詰めかけ、広大な会場は瞬く間に人で包まれた。GAME Watchでは本日よりChinaJoyレポートをお届けしていくのでぜひご注目いただきたい。本稿では初日の模様をお伝えしたい。

【上海新国際博覧中心】
会場となった上海新国際博覧中心。入場口を抜けると広大な中庭に出る。会場となっているのは手前のホール5つのみだが、それでもE3や東京ゲームショウより断然拾い



■ 10年の節目を迎えたChinaJoy。中国ゲームファンに向けた巨大な“縁日イベント”

ChinaJoyといえばコンパニオン
並び方も多様化している
光宇遊戯ブース。ブースには巨大なキューブが刺さり、がらんとしてる。まさにChinaJoyを象徴するようなブースデザインである

 ChinaJoyは、中国でゲームの販売、サービスの許認可を与える新聞出版総署が主催する中国最大規模のゲームショウ。いわばゲームメーカーの生殺与奪の権を握る部署が主催するだけに、今年はどのメーカーが出展して、どこが出展しないという話は一切無く、中国で展開する中堅以上のメーカーは全社出展が当たり前という、世界的に見ても類を見ないゲームショウとなっている。

 このため、年々イベント規模が拡大し、4年前と比較すると、倍以上の規模に成長している。出展スタイルも、日本や欧米のように新作ゲームタイトルの試遊台を並べるのではなく、巨大なステージとコンパニオンの女性を揃え、メーカーのアピールに力点が置かれている。各ホールとも、中央の通路を挟んで左右に特大のブースが並び、各ブースの巨大なステージで女性コンパニオンを中心としたイベントが繰り広げられる様は、ゲームショウというより、もはや巨大な縁日のような印象がある。

 来場者も心得たもので、グッズ配布があれば会場の外まで続く長い列を作り、女性コンパニオンが登場すると写真撮影に勤しむ。体験イベントがあれば積極的に参加し、一体となってイベントを楽しんでいる。東京ゲームショウがコンシューマーゲームショウ、韓国G-Starがオンラインゲームショウ、台湾Taipei Game Showが即売会のショウだとすると、ChinaJoyはゲームイベントのショウといった印象である。

 今年で節目の10回目の開催ということで、会場入り口にはこれを記念した特設ブースが設けられていた。近年は商談に特化したBtoBホールや、ゲームデベロッパーやアウトソース、ビジネスなどカテゴリ別のカンファレンスイベントも併催されており、わずか10年で日本の東京ゲームショウを遙かに凌ぐ規模のイベントに成長しているのは驚くべきものがある。

 ただ、イベント規模や来場者数の向上と比して運営面はというと、広大な会場に入り口が一箇所しかなかったり、入場が1回限りに制限されていたり、スピーカーのボリュームが際限なく大きかったりと、あまり向上は感じられないのが玉に瑕と言えるだろうか。ともあれ、言葉の壁はあるものの、ゲームファンは一見の価値のあるゲームショウだ。

【中国メーカーブース】
こうして掲載すると狙って撮ったような印象を与えるが、ChinaJoyではずっとこうだから凄い。盛大のようにイケメン男子をずらりと並べるブースもいてなかなかおもしろい



■ SCE Asiaが4年ぶりの出展。ただし、中国展開の具体的な発表はなし

4年ぶりに出展したSCE Asia
BtoBコーナーに出展していたDeNA China
ゲームエンジンの雄UnityとCrytek

 出展メーカーについては、まず中国大手メーカーは、先述したように例年通りすべて顔を揃えていた。Netease、Tencent、Giant、The 9、Shandaといった常連メーカーに加え、China MobileやChina Telecomなどモバイル系のメーカーが出展しているのが今年の特徴と言えるだろうか。

 海外勢ではSCE Asia、EA、AMD、Razer、Cherryなどで、割合としては1割に満たず、中国のメーカーによる中国のゲームショウという立ち位置に変化はない。ただ、BtoBコーナーでは海外勢が元気で、日本のメーカーだけでも、DeNA、GREE、Aiming、ゲームポットなどが出展し、欧米系もNVIDIA、Crytek、Unity、Adobe、Bigworld、HAVOKなどなどツール系のメーカーが元気だった。

 今回注目に値するのはなんといってもSCE Asiaが4年ぶりの再出展を果たしたことだろう。SCE Asiaは2008年を最後に中国で正規ビジネスの許可が下りないことから、ChinaJoyへの出展を取りやめていたが、2012年6月に入ってSCE Guangdong(広東)を設立するなど、中国ビジネスの開始に向けて最終調整に入っていた。

 そうした中でのChinaJoyへの出展ということで、中国市場でのPS3の発売時期や価格の発表が期待されたが、SCE Asiaプレジデントの安田哲彦氏が急病で欠席したことで、急遽オープニングセレモニーそのものが中止となり、一切の発表は取りやめとなった。3歩進んで2歩戻るのがアジアビジネスと言われるが、まさにそんな印象である。

 ブースでは、PS3に加えて、SCEの新型ゲーム機であるPS Vitaも大々的に展示し、PS3に加えてPS Vitaの中国展開にも意欲を示していた。初日にはポリフォニー・デジタルの山内一典氏がゲストとして出席し、PS3用レースゲーム「グランツーリスモ5 SpecII」を紹介し、ユーザーからの質問に答えたり、サイン会が行なわれるなど、ファンサービスに努めたが、肝心のハードとソフトの発売日が案内できず、やや空振りに終わった感があるのが残念なところだった。

 北米からはEAがブースを出展。EAも中国メーカーに倣い、コンパニオンの女性をメインとしたステージイベントを終始展開していたが、ステージの裏には試遊コーナーも設け、新作タイトルを触れることができた。出展タイトルは、「Medal of Honor」や「Battlefield 3」といったPCタイトルに加え、iPad版「FIFA12」や、「Need for Speed」のPCオンライン版「Need for Speed Online」、同じく「Dungeon Keeper Online」など、中国向けのコンテンツラインナップで展開。この適応力の高さがEAの強さだと言えそうだ。

【SCE Asiaブース】
SCE Asiaブースはすべて参考出展ということで、具体的な発売日や価格は明記されていなかった。一番人気はやはり特設の試遊コーナーを設けていた「グランツーリスモ5」。人気を博しているソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」を使った試遊も行なわれていた

【山内一典氏ステージイベント】
山内氏のステージイベント。新しい「GT」に関する発表や、アップデートについては告知されなかったが、山内氏の中国での人気ぶりを実感させるイベントだった

【海外メーカー】
上から順に、EA、Razer、Cherry、AMD。Razerは17インチのゲーミングノートPC「Razer Blade」や、2012年第4四半期に発売を予定している新型Razerマウス「Razer Ouroboros」などを出展



■ 依然としてPCオンラインゲームが主流。その一方でスマホ/タブレットへの流れも活発化

中国にもスマホ/タブレットゲーム流行の兆しが見えてきた
スマホタイトルばかりを集めていたChina Mobile
盛大ブースにこっそり出ていた「ファイナルファンタジーXIV」ロゴ
世紀天成ブースで目立っていたネクソン。アジア市場では群を抜いて存在感のあるメーカーだ

 今年のChinaJoyで印象的だったのは、中国での主流であるWindows PC向けのオンラインゲーム以外の動きが活発化していたことだ。中国メーカーのオンラインゲームは、多くがブラウザベースとなり、かつての韓国や北米を凌ぐ大作オンラインゲームを中国で生みだそうという動きは以前と比べると沈静化している印象があった。

 むしろ、PC向けの大型オンラインゲームは「RIFT」、「PlanetSide」、「Diablo III」、「World of Warcraft」など北米産ばかりが目立っており、ハイエンドタイトルは北米メーカーに任せて、中国メーカーは、大きな収入源になっているネットカフェの旧世代のPCでも遊べるようなライトなオンラインゲームを手がけようとする動きが感じられた。

 ちなみにShanda(盛大)ブースには、新規タイトルのひとつとしてスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV」のロゴが掲示され、中国でサービスされることがアピールされていた。BtoCコーナーでは、日本のタイトルはそれぐらいで、日本産タイトルの存在感はまったくないといっていい。

 そのほか海外系で目立っていたネクソン。中国のパートナーである世紀天成は、実質的にほぼネクソンブース状態で、「マビノギ英雄伝」や「マビノギ」、「Counter-Strike Online」、「カートライダー」などお馴染みのラインナップを展開していた。

 そしてPCオンライン系以外で活発化していたのが、スマートフォン/タブレット向けのオンラインタイトルだ。中国のメーカーもまた、北米や日本でのスマートフォン向けのソーシャルゲームのムーブメントをキャッチしており、中国でのiOS/Android市場の拡大に合わせてタイトルを供給しはじめている。市場規模は推定500億円程度と、まだ日本の数分の一に過ぎず、まさにこれからの市場だ。

 ただ、中国大手メーカーは、かつて日本のオンラインゲームメーカーがそうだったように、ドル箱のPCオンラインゲームと食い合いになり、結果として売り上げを落としてしまうのを避けるため、スマホ向けに全面シフトというところまでには至っていない。現時点で積極的なのはChina MobileやChina Telecomといったキャリア系、Weibo、Baidu、RenrenといったSNS系で、彼らは独自のプラットフォームを持ち、中国のメーカーのタイトルを取り扱う形で急速に成長している。

 日本で言えば、MobageやGREEが何十種類もあるようなイメージで、特にAndroidの場合、GoogleのソフトウェアダウンロードサービスGoogle Playが存在しないため、各メーカーがプラットフォーマーを名乗って群雄割拠している状態で、非常にカオスな状態となっている。一方、iOSは中国でゲームを提供する際に必要な許認可が必要ないため、海外メーカーが自由に中国でゲームを展開できる状況が生まれている。この状況が今後も続く保証はないが、ゲームプラットフォームとしてのスマホ/タブレットがにわかに活気づいているのは事実である。

 明日以降のChinaJoyレポートでは、DeNA ChinaやGREE中国法人を含め、各社の取材を通じて各社のスマホ/タブレット向けへの具体的な取り組みを紹介していきたい。

(2012年 7月 27日)

[Reported by 中村聖司]