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【PS Plusフリープレイレビュー】今月のイチオシは「Grim Fandango Remastered」
“家族”をテーマにした名作AVG「Gone Home: Console Edition」も併せて紹介
2016年11月12日 00:00
「PlayStation Plus」で無料配信されているタイトルのなかでも、プレイステーション 4(以下、PS4)用のタイトルをピックアップしてお届けする本コーナー。今月とくに注目したいタイトルの紹介とともに、「プレイステーション オフィシャルサイト」で開催されている「PS Plus Challenge!」の達成についても解説していく。11月の「PS Plus Challenge!」対象タイトル2本のうち、「ウイニングイレブン 2017」はゲーム本編を購入したユーザーを対象としているので、今回は「Grim Fandango Remastered」をご紹介しよう。
なお、賞品は先月と同じく「PS Storeチケット」1,000円分が、抽選で100名にプレゼントされる。「ウイニングイレブン 2017」のスペシャルチャレンジ100名と合わせて、合計200名に獲得のチャンスがある。具体的な応募方法については、「PS Plus Challenge!」の公式ページを確認してほしい。
また、記事の後半ではPS4用フリープレイソフトのなかからオススメの1本を紹介。今回は、2013年に発売されたインディーアドベンチャーゲーム「Gone Home: Console Edition」にスポットを当てている。数々の賞を受賞した2013年を代表する1作なので、こちらも併せてご覧いただければ幸いだ。
「Grim Fandango Remastered」の「PS Plus Challenge!」に挑戦
「PS Plus Challenge!」達成時間
10分
※時間は筆者が実際に挑戦して応募条件達成までにかかった時間
「Grim Fandango Remastered」は、アメリカのゲームメーカー・ルーカスアーツから発売されたPC用のアドベンチャーゲーム「Grim Fandango」のリマスター版。タイトルはGrim Reaper(死神という意味)とFandango(メキシコ音楽の一種、または馬鹿騒ぎを意味する)を掛け合わせた造語だと思われる。1998年の発売から今日にいたるまで数々のゲーム賞に輝き、世界的にも高い評価を得ているタイトルだ。
主人公は、死者の国にある旅行代理店「The Department of Death(DOD)」に勤務する営業マンのマニー・カラベラ。死者たちを永遠の眠りへ導くための旅行パッケージを販売している。しかし、マニーの知らないところで、彼の仕事(死者の救済)を脅かすような陰謀が進行していた。プレーヤーはマニーとなり、陰謀を阻止すべく死者の国を探索することになる。
本作では、方向キーorアナログスティックでマニーの移動を、○ボタンと□ボタンでアイテムの入手や調査を行なう。また×ボタンは、死者の国にいる人々やDODの社員と会話に使用。使うボタンが多いことと、海外ゲームならではのシステム(×ボタンが決定、○ボタンがキャンセルになっているなど)ゆえ最初は違和感を受けたが、慣れれば問題なく操作できるようになるだろう。
ゲームは人と会話したり怪しいところを調べたり、あちこちに置かれている(ときには隠されている)アイテムを手に入れることで進行する。1990年代の作品だからか、はたまた海外製のゲームだからなのか、謎解きの難易度は非常に高い。昨今のAVG、とくに日本製の作品は親切設計のものが多く、少しでも難しい謎解きにはどこかにヒントが隠されているのが定番だが、本作はさにあらず。筆者自身としては、自力で解くのは不可能ではないかと思えるような難しいシーンもあった。
最初のうちこそ「難しすぎるだろ(怒)」と思いながらプレイしていたが、慣れてくると逆にこれがおもしろい。ゲームを進めていくにつれ、難しい謎解きに挑戦するのが楽しみになってくるほどだ。考えて考えて考え抜いて謎を解くカギを見つけた瞬間には、比較的クリアが容易になった今日のゲームとは一味違った快感が得られる。個人的には、本作からは筆者が若かりし頃にプレイしていた、古き良き1970~1980年代に隆盛していたAVGの風を感じることができた。
そして、本作でもう1つのポイントはキャラクターデザイン。主人公のマニーをはじめ、DODの社員やDODを訪れる死者たちは、ガイコツのような姿をしている。そのほか、登場するのは異形のキャラクターばかりだが、恐ろしさやグロテスクさは微塵もない。スーツをスマートに着こなしたマニー、自分のデスクでPCのキーボードをたたく秘書のエヴァ、いかにもくつろいだ風でタバコをくゆらせる死者のフローレスなど、みなコミカルかつユーモラスな人物ばかり。独特のセリフまわしと相まって、1時間もプレイしたころには彼らに愛着さえ感じるようになってしまった(笑)。
そんな魅力的なキャラクターと超高難度の謎解き要素が同居する本作の「PS Plus Challenge!」は、秘書エヴァのデスクにある穴あけパンチを使い、トロフィー「ストレス解消になるでしょ?」を獲得すること。エヴァのデスクの周囲を丁寧に調べていけば、すぐにクリアできるはずだ。実際に筆者も、何も見落とすまいと十分な時間をかけてゲームを進めていたが、とくに意識もせず10分程度でトロフィーを獲得することができた。
近年ではめったにお目にかかることのできない、超高難度の本格派AVG。難しすぎるゆえに誰にでもオススメできるわけではないが、1970~1980年代のAVGに触れてきた人なら、間違いなく楽しめるだろう。また、当時のゲームを知らない若い世代のユーザーも、AVGが好きな人にはプレイしてほしい。そして、ややもすれば理不尽とさえ思える難しい謎解きと、それを解いたときの快感をぜひ味わっていただきたいものだ。
家族はどこへ消えたのか? 空白の1年を追うAVG「Gone Home: Console Edition」
今回ご紹介するもう1本も、やはり海外発のAVG。冒頭で触れたとおり、こちらも数々の賞を獲得したタイトルで、かなり遊びごたえのある作品になっている。期間限定とはいえ、PS Plus会員なら今月は名作2本が無料で遊べるのだから、AVGファンには当たり月と言える。
物語の始まりは1995年6月7日午前1時15分。1年間の海外生活を終えて帰宅したケイティだったが、深夜にもかかわらず、自宅には誰もいなかった。ケイティがいない1年のあいだに、いったい何かあったのか。無人の家を探索するうちに、少しずつ物語の全貌が見えてくる。
ストーリーを聞くだけでもおもしろそうな本作は、一人称視点でゲームが進んでいく。左スティックの移動と右スティックのカメラワーク変更を使って家のなかを探索し、家族の痕跡を見つけ出す。何かを調べるときは、画面の中央にある照準点を調べたいものに合わせて×ボタンを押せばいい。
本作は強大な敵が出てくるわけでも派手なアクションがあるわけでもない。誰もいない自宅をひたすら探索する作業は、ややもすれば地味にさえ感じてしまう。ところがどうして、これがなかなかにおもしろいのだ。
まず自宅の探索だが、細部にいたるまでしっかり作り込まれているので、非常にリアリティがある。たとえば、ケイティが自宅に帰ってきたときは、一部の消し忘れをのぞき、ほとんどの電気が消えた状態。まずは電気をつけて部屋を明るくしたほうが探索しやすいのは言うまでもない。
また、BGMがほとんど流れないのも本作の特徴だ。誰もいない家なのだから、静まり返っているのが当たり前。ふだんのBGMがないゆえに、扉を開けるときや留守電を再生したときに聞こえてくる効果音・キャラクターの音声が鮮烈になる。そして、ときおり轟く雷鳴。些細なことかもしれないが、これらの積み重ねがリアリティと臨場感を生み出し、ゲームそのものを重厚なものにしている。
ストーリーも練られている。誰もいない家を探索中、家族からケイティに宛てたメモや手紙、妹サムの日記などが見つかっていく。これらを読んでいると、文字越しにアメリカの裕福な家庭が見えてくるようだ。そんな幸せそうな一家にいったい何があったのか? 彼らはどうしてケイティの帰宅を待たずに姿を消してしまったのか? 謎への関心はいや増すばかりだ。
ちなみに、今回PS Plusで無料で配信されている「Console Edition」は、PC版の有志翻訳で開発陣から高い評価を受けた伊東龍氏と武藤陽生氏の日本語訳がベース。さらにPS4用のトロフィーも追加されている。
プレイ中は、まるで優れた小説や漫画を読んでいるようなワクワク感を受ける1本。難易度は決して低くないが、最初から明かりをオンにしたりカギを開けた状態にできるなど、初心者向けの救済措置もとられている。AVGに慣れていなくても気軽に遊べるので、ストーリーに興味を持った人は、ぜひ一度プレイしてみよう。