インタビュー
【E3 2013】ゼニマックス・アジアGM高橋徹氏インタビュー
「The Elder Scrolls Online」は日本展開するのか? 気になる日本展開話をまとめて聞いた
(2013/6/15 14:17)
今年、ZeniMaxグループのゲーム部門Bethesda Softworksは、「Wolfenstein The New Order」、「PsychoBreak」、「The Elder Scrolls Online(ESO)」の3タイトルを出展した。このうち2年連続となるのが「ESO」で、E3に先立ち5月に実施されたプライベートショウ「BFG」では、E3で新たな発表を行なうと予告していた。いざふたを開けてみると発表されたのは次世代機への発表と、さりげない2014年春への発売時期の延期の告知だった。出展されていたのも、5月に実施したBFGと同じものだった。実はそのBFGで出展されていたものも、3月に公開したPAXバージョンで、実は「ESO」はここ数カ月足踏みを続けている印象がぬぐえない。
「ESO」は、ある意味で、成功の方程式が確立されているタイトルといっていい。2,000万人を超える「Elder Scrolls」シリーズのファンに対して、「Skyrim」以上のものをMMO空間で再現してさえくれればいい。しかし、開発元のZeniMax Online Studiosは、RvR(Realm VS Realm)型のMMORPGとして一時代を築いたMMORPG「Dark Age of Camelot」を手がけたクリエイターが集結していることもあり、話はそう簡単ではない。彼らが初期に作りたかったのは、「Elder Scrolls」の世界観を用いたRvRであり、今なおその想いは捨てていない。一方、Bethesda Softworksやユーザーが「ESO」に求めているのは、「Oblivion」や「Skyrim」のMMO体験であって、RvRではない。この大きなギャップを埋められるかどうかが、この北米産の超大作MMORPGの行く末を左右する重要な鍵となる。
そうはいいながらも、メディアには正面切って「ESO」を紹介するだけのネタがないのも事実で、今回は趣向を変えてゼニマックス・アジア ゼネラルマネージャーの高橋徹氏に、「The Elder Scrolls Online」を中心とした各タイトルの日本展開について話を伺った。日本のMMOファン、Bethesdaファンはぜひご一読いただきたい。
日本でも次世代機込みで全タイトルを展開。「ESO」は五分五分
――E3で無事国産の「PsychoBreak」が御披露目できましたが、残る「Wolfenstein: The New Order(Wolfenstein)」、「The Elder Scrolls Online(ESO)」も含めて、日本展開の予定について改めて教えて下さい。
高橋氏: 全部出しますよ。「PsychoBreak」と「Wolfenstein The New Order」は次世代機版も含めて。
――今年のBethesdaは、「ESO」の次世代機対応が大きなニュースだと思います。PC版については英語版をやるかもという話をされていたかと思いますが、この次世代機版も日本で展開しますか?
高橋氏: それはわからないですね。「ESO」に関しては当初PC向けという話だったので、仰るように日本で英語版のパッケージを販売しようと思っていたのですが、今回次世代機の話が来て、ビジネスの土俵が変わってきたのでどうしようかなというのが現時点での僕の個人的な感想ですね(笑)。とはいってもMMOだからボリュームも凄いし、開発側の都合もあるので、今後その辺をキッチリ開発と詰めていかないといけないですね。
――それはつまり、次世代機込みで日本語版をやる可能性が出てきたかも? という前向きな話ですか。
高橋氏: まあそういうことですが、確率は五分五分(笑)。まずは、英語版のMMOを英語版のまま日本で売ることに対するプラットフォーマーの見解がわからないので、そこからですよね。
――という点では、エレクトロニック・アーツなど海外メーカーは、今でも英語版をそのまま売ってますから、次世代機版を英語版のまま日本で売るというのは、おそらくできそうですよね。
高橋氏: そうですね。MSさんもやってたりしますからね。日本でしっかりやることを考えた場合、一番やっかいなのはサーバーを含め、色んな要素を新規で準備して貰う必要が出てくるので、現実問題としてそれに対応して貰えるかですよね。
――クライアントだけローカライズして、北米のサーバーで遊ぶという選択肢はないのですか?
高橋氏: まあ問題はそれだけではなくて、後は優先順位ですよね。たとえば、「World of Warcraft」は僕の個人的な見立てでは、日本で展開すれば確実に多少は儲かったはずですが、なぜ日本でやらなかったのかというと、彼ら開発の優先順位が低かったからだと思うんです。メーカーは儲かるかどうかだけじゃなくて、儲かり度合いを見ますから、日本がこれだけなら、じゃあ中国を先にやりましょうかとか、韓国が先ですねという話になって、日本は立ち消えになると。それと同じ事が「ESO」で起こらないとも限らないので何とも言えないですね。ともあれ、PC版だけだったら英語版だけやるつもりでしたが、次世代機版も発表されて、ウチとしてやらなければいけないかなという感じには変わってきましたね。
――ゼニマックス・アジアは、文字通りZeniMaxグループの中でアジアを統括している部門ですが、そのゼネラルマネージャーを務める高橋さんの判断として、日本ではなく、中国を先にやるって判断もありますか?
高橋氏: 実はZeniMax Onlineだけ、ZeniMaxグループでもちょっと離れていて、ゼニマックス・アジアの管轄では無いんですよ。これはユーザーの方には関係ない話ですけど(笑)。僕は箱売り(パッケージタイトル)のほうをずっとやってきた人間で、MMOはサービス業で商売として種類が違うので、日本でやるとしても別会社を作って、わかってる人間に任せたいですね。という点では話がでかくならざるを得ないプロジェクトになるのでどうしようかと。
――「ESO」は次世代機対応だと喜んでいたら、発売時期が2014年春に延期されていましたね。この理由は何ですか?
高橋氏: 次世代機対応でしょうね。正確なところは私にもわかりませんが。
今期は「Skyrim Legendary」と「Wolfenstein The New Order」の2タイトルを展開予定
――となると今年遊べるのは「Wolfenstein The New Order」だけということになりますか。
高橋氏: そんなことはないですよ、6月には「Skyrim Legendary」が発売になります。ぜひ遊んでみて下さい。まあ、前から年間2本ぐらいという会社ですから、本数が少ないのはあまり気にしてないですよ(笑)。
――「Skyrim Legendary」はUSではもう発売が始まっていますが、いよいよ日本でも展開になりますね。
高橋氏: あれはバカにできませんよ。結構売れるんです。
――「Skyrim Legendary」の同梱内容について改めて教えて貰えますか。
高橋氏: 「Skyrim」本編と、これまでにリリースされたDLCが3本、「Skyrim」には最新のTU(Title Update)1.9も適用されていて、価格は7140円です。これで「Elder Scroll V」はひとまず終わりです。
――今年のもうひとつのタイトルとなる「Wolfenstein The New Order」は、北米ではQ4ということですが、日本ではいつ頃発売になりそうですか?
高橋氏: 同時発売を目指しています。もうローカライズもスタートしていますよ。
――高橋さんなら「Wolfenstein The New Order」は、メディアに公開されていないレベルも見ているかと思いますが、どのような期待をしていますか。
高橋氏: 公開済みのレベルだけ見ても、十分魅力はわかりますよね。期待してますよ。
――今回もE3で新しいレベルが公開されましたが、ステージごとに、まったくシーンが異なるのが素晴らしいですよね。
高橋氏: いや、ホントに毎回ステージのデザインが変わりますよ。こんなとこで戦うのかっていうステージもありますからね。想像していないようなステージもあります。「ひぇ~」みたいな(笑)。それはE3で公開したトレーラーを見ればある程度想像できると思います。
――だいたい、1960年のはずなのに、戦いの内容が「Quake」のようなエネルギー弾が飛び交うSFバトルになってますもんね。
高橋氏: そうですね。
――ただ、日本では「Wolfenstein The New Order」はある程度年齢をいっていないと通用しないフランチャイズですが、日本でどのように展開していこうと考えていますか?
高橋氏: 知名度がないってほどもないと思いますが、基本的には続編ですという売り方はせずに、新規タイトルとして押し出していく方向を考えています。次世代機はローンチに合わせる予定なので、コアゲーマーに買っていただきたいのと、FPSとはいわずに、アクションシューターとして押していこうと思ってます。
――「Wolfenstein The New Order」は、見れば見るほど“バカゲー”というか、「Serious Sam」を彷彿させるというか真面目に馬鹿げたことをする気分爽快なシューターになってますよね。
高橋氏: わらわら出てくるナチスをざくざく倒していくゲームですね。
――しかもおもしろさを助長させるのが、ナチスのテクノロジーを使ってそれを実現するところですよね(笑)
高橋氏: ええ、本当にそうですね(笑)。
三上真司氏(なぜか飛び入り参加): 「ナチをぶっ殺したい奴集まれ」っていうゲームですよね(笑)
高橋氏: 日本は裏切られて征服されてしまった設定になっているので、元同盟国としていいかもしれません(笑)
――最後に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
高橋氏: タイトル数少ないですけど、少ない分キッチリやっていきますので、ぜひご期待下さい。
――ありがとうございました。