インタビュー

「シムシティ」プロデューサーJason Haber氏インタビュー

最新作は継続版にあらず。GlassBox Engineで再定義しなおした新世代の「シムシティ」

12月12日収録

会場:Luxe Hall

 EAの子会社Maxisの最新作としてシミュレーションゲームファンの期待を集めている「シムシティ」。といっても、イマドキありがちな初代のリメイク、リバイバルではなく、「シムシティ」シリーズのエッセンスを活かし、自社開発したGlassBox Engineと呼ばれる最新のテクノロジーで再定義した新時代の「シムシティ」となる。

 「EA Asia Showcase」では、同作の開発総指揮を執るプロデューサーのJason Haber氏が最新バージョンのデモンストレーションを行なってくれたほか、インタビューにも応じてくれた。インタビューは限られた時間だっため、聞きたい質問をすべてぶつけることはできなかったが、今回のデモでもっとも力を入れて紹介された“Multi-City Play”や、マルチプレイについて聞いてみた。

シームレスに繋がるマルチシティとマルチプレイ。最大160の都市を構築可能

「シムシティ」プロデューサーのJason Haber氏
「シムシティ」試遊コーナー。男性のみならず女性の支持も厚いフランチャイズだ
都市と都市を繋ぐ大規模輸送網

――これまでのゲーム業界でのキャリアを教えてほしい

Jason Haber氏:「シムシティ」のプロデューサーで、Maxisは6年目で、「SPORE」や「DARK SPORE」の開発を担当してきた。それ以前は、EightFrogで教育向けのWebサイトなど、インターネット業界に20年以上携わってきた。

――「SPORE」の開発経験の中で、今回の「シムシティ」の開発に活かされていることは何かあるか?

Haber氏:もちろんたくさんある。特にエディター機能について学んだ部分が多い。昨日のデモでも見せたが、犯罪者を収容する牢獄が足りなかったので、牢だけを足すという形で問題の解決を図るという発想は特に「SPORE」から学んだ部分。ただ単に建物を建てるだけではなく、それをアップグレードしていくことで、問題の解決を図るわけだ。

――発表されてからずっと聞きたかった質問だが、なぜ今回ナンバリングが付かないのか?

Haber氏:非常に良く聞かれる質問だが、理由は2つあって、1つは「シムシティ」のゲーム自身のコアは変わっていないが、「シムシティ4」からの継続版ではなく、完全に作り直しているから。もう1つはGlassBox Engineという新エンジンを採用し、「シムシティ」というものを再定義し直しているからだ。

――プロデューサーとして開発で1番こだわったところはどこか?

Haber氏:個人的にはGlassBoxという優秀なエンジンを使って、いかに詳細なディテールを表現するかということ。ズームインすると見える部分などに特に気を配った。

――開発で最も難しかったところはどこか?

Haber氏:多くのチャレンジがあった(笑)。「シムシティ」のシンプルなユーザーインターフェイスを通じて、いかに複雑なゲームをわかりやすく遊んで貰うか。そしてユーザーがどう感じて、どう体験するのか。シンプルに見えて、シンプルに遊べるのだけど、実は深みがある。そのバランスを取るのが難しかったが、何度も試行錯誤を繰り返して満足いくバランスに仕上がった。

――“Multi-City Play”はとてもおもしろいアイデア。この構想はどこから来たものか?

Haber氏:ありがとう。マルチシティの構想は「シムシティ」の開発初期からあった。その心は、やはり実際のリアルの街がそうであるように、1個の街だけがあるということはありえないと思うからだ。複数の街があって、それぞれの街が相互に影響を与え合って存在している。私が住んでいるサンフランシスコもそうで、単独で成立しているわけではなく、周りの街との相互関係で成り立っている。そうした要素をゲームの中で再現したかった。

――1人のユーザーは、最大いくつのリージョンを持てるのか?

Haber氏:最大10個のリージョンを同時にプレイすることができ、1つのリージョンには最大16個の街を作ることができる

――つまり、ひとつの世界に最大160の街が存在しうる?

Haber氏:仕様としてはそういうことになる。

――1人のユーザーが1つの街を分け合う場合、最大16人で遊べるという理解でいいか?

Haber氏:そのとおり。1つのリージョンに1つずつ街を持てば、16人で遊べることになる。

――そのマルチプレイの仕様はどのようにして設定するのか?

Haber氏:3つのやり方があって、リージョンを自分だけで遊ぶ、リージョンを友人とシェアして遊ぶ、リージョンをオープンにして誰でも参加して街を作れるようにする。このいずれかを選択してプレイすることになる。

――「シムシティ」には各種ランキングやお知らせ、クエストなどが確認できる「SimCity World」というビルボードのようなシステムがあるが、そこでランキング上位になることにより、何か報酬やアンロックがあったりするのか?

Haber氏:実はまだそこの仕様は決まってない(笑)。現時点で予定しているのは、たとえば、リーダーボードやランキングを行なうための「Maxisチャレンジ」みたいなイベントを考えていて、リージョン単位でどこが仕事の数を増やせるのかとか、どこが最速で消火できるのかみたいなことを競う対抗戦をやりたいと考えている。その場合はもちろん勝ったリージョンには報酬を与えるつもりだ。

「シムシティ」はやはりマルチプレイ専用。4人以上の協力が必要となる建物も

ゲームの奥行きを尋ねる後半の質問では、かなり言いよどんでしまったHaber氏。まだ「シムシティ」には謎が多い
このスクリーンショットはサンフランシスコライクな海洋都市になっている。Haber氏のデモでは山岳都市を見せてくれた
表示レイヤーを変えて配水状況を確認しているところ。シミュレーション要素とグラフィックスの両立がGlassBox Engineの真骨頂だ

――念のため確認したい。「シムシティ」はネットワーク環境がないところなどでも1人で遊べるのか?

Haber氏:できない。マルチシティやマルチプレイなど、ゲーム内で行なわれるシミュレーションの多くはサーバー側で処理されているので、プレイするためにはネットに常時接続できる環境がなければならない。ただし、瞬間的なコネクションロストや回線遅延がある場合など、そうしたトラブルの場合にどこまでカバーするのかはまだ決まっていない。

――これまでのデモや試遊で、平地に美しい街を作れるのはよく理解できたが、それ以外のバリエーション、たとえば山岳都市や海洋都市は作れるか?

Haber氏:「EA Asia Showcase」のデモでも見せたが、丘陵地帯に街を作ることはもちろんできるし、リージョンの中にはそういう地形も用意している。また地形によって風景が変わるだけでなく、水や石油など利用出来る資源が違うので、色んな地形に街を作ることになると思う。

――ちょっとゲーム的になるが、水中都市や空中都市は作れるか?

Haber氏:おもしろいアイデアだが、いまのところ予定はない。デザイナーには伝えておくよ(笑)。

――ゲームの奥行きが知りたい。今回、複数のユーザーで建物を建てることができるということだが、今回、もっとも建設条件の厳しい建物は何か? その条件は?

Haber氏:良い質問だが、残念ながらそれはまだアナウンスできない情報のひとつだ(笑)。なので具体的に何とはいえないが、建設するのに、掛かるお金や人数やその他の条件が高い建物はいくつか用意している。

――ハイレベルな建物だと最大何人の協力が必要になるのか?

Haber氏:それも良い質問だが、何人というのはまだ言えないが、覚えている限りでは、4つの街の協力が必要というものがあったが、もっと多くの人数を必要とするものがある可能性はある。

――「シムシティ」の四季を取り入れる予定は?

Haber氏:いまのところその予定はない。現状では、木の色を変えるぐらい。

――日本のユーザーへのメッセージを。

Haber氏:我々はまったく新しい「シムシティ」を日本の皆さんに提供できることを喜んでいます。未だかつて見たことのないような精度で様々なシミュレーションを行なっており、それを美しいグラフィックスやリアルなモデル、リアクションで楽しむことができる。マルチシティの要素も楽しんでいただけると思う。ぜひ「シムシティ」をプレイしてみてください。

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(中村聖司)