【Gamescom 2012】Electronic Arts、「SimCity」プレビュー
ついにプレイアブルが公開。ゲーム性とシミュレーション要素、グラフィックスが高い水準で結実!
米Electronic ArtsはGamescom 2012において最大規模のブースを展開し、多彩なラインナップをすべてプレイアブルの形で出展していた。サッカーの盛んなヨーロッパのショウということで、最もアピールしていたのはやはり「FIFA13」だったが、ドイツはヨーロッパ最大規模のPCゲーム市場ということもあり、PCオンリーの「SimCity(シムシティ)」や「StarWars The Old Republic」などを全面に押し出していたのが印象的だった。
さらに、「Medal of Honor Warfighter」や「Need for Speed Most Wanted」、「Crysis 3」、「Battlefield 3 Armored kill」などなど、まさに一騎当千のタイトルばかりを集めた充実のラインアップで、ヨーロッパの様々なゲームファンにアピールしていた。本稿では、先日、日本でのMac版の取り扱いと、β版の実施が正式発表されたばかりで、Gamescomでついにプレイアブルが公開された「SimCity」のインプレッションをお届けしたい。
【Electronic Artsブース】 | |
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衝撃的なデカさだったEAブース。各タイトルのコーナーが、他社の1ブースに匹敵する規模で、それが6つも7つもある。こうした環境で1日中ゲームが楽しめるヨーロッパのゲームファンは幸せだ |
「SimCity」パッケージイメージ |
EAブースの「SimCity」コーナー。最初に説明を聞いて、その後、大型モニターの後方にあるエリアで試遊することができた |
「SimCity」は、10年ぶりのシリーズ最新作ということで、オールドゲームファンも含め、多くのゲームファンから非常に高い注目と関心を集めている作品だ。開発元のMaxisの出世作であり、Maxisで中心的な役割を果たした伝説的なゲームクリエイターWill Wright氏の代表作でもある。
いまではMaxisは、シム人育成シミュレーションゲーム「The Sims」シリーズの開発元として世に知られているが、ゲームファンの中にはMaxisといえばなんといっても「SimCity」という人のほうが多いだろう。10年ぶりの新作ということで、グラフィックスもシリーズ初のフル3Dとなり、新開発のシミュレーションゲームエンジン「GlassBox」による美しいグラフィックスと、シミュレーション要素が魅力となっている。
ただ、このMaxisを語る上で忘れてはならない存在が、もうひとつのフランチャイズ「SPORE」である。これがWill Wright氏がMaxisで関わった最後の作品で、ご存じのように商業的に大失敗しただけでなく、ゲームとしておもしろくなかった。おもしろくなかった理由は非常に単純で、シミュレーターとしてこだわりすぎたあまり、肝心のゲームとしてのおもしろさがなおざりになってしまっていたからだ。
「SPORE」は生物シミュレーター、人類シミュレーターとしては素晴らしいタイトルであったが、ゲームとしての奥行きが狭く、リプレイバリューも低かったため、繰り返し何度も遊んだり、宇宙制覇のためにひたすら遊び込むという流れを生み出せなかった。これはシミュレーションゲームとしては致命的だ。
こうした経緯があったため、「SimCity」に関しても「触ってみるまではわからないぞ(たぶん大丈夫だと思うけど)」というところがあり、今回は、待望のプレイアブルということで、矢も楯もたまらず列に並んでプレイしてみたわけである。
それで実際にプレイしてみてどうだったかというと、EAのスタッフに感想を聞かれて「あまりにおもしろくて大満足したので、他のEAのタイトルをプレイする気が薄れてしまった(笑)」と口を滑らし、開発者を大喜びさせてしまうほど、個人的には期待以上の出来映えだった(もちろん、そのほかのタイトルもキチンとプレイさせていただいた)。
ゲームには、過去のシリーズと同様に、市長として街を大きくするという大目標があり、それを実現するために、市民の陳情を聞いたり、街のトラブルに対処したり、投資をして都市機能を向上させたりといった個々の目標が存在する。これらを1つ1つ解決しながら、より大きな目標に向かって進んでいくというのがゲームの基本的な流れとなる。
こうした部分は過去のシリーズでもあったことで、それ自体は実現できてて当たり前の話だが、本作ではプレーヤーがアクションを起こす度に、リアルタイムでグラフィックスに反映され、なおかつシミュレーションされ、自らの行動が街にどのような変化をもたらしているのかが視覚的に見えるようになっている。これがたまらなくおもしろい。つまり、過去のシリーズでは、想像で補ったり、結論だけ見せられていたものが、しっかりシミュレーションされるようになっており、そこにゲーム的なおもしろさがもたらされているのだ。
たとえば、宅地の造成がある。市民の陳情に従って、雑木林を宅地に指定することで、たちまち土地が整備され、家屋が作られ、「売家」のセールスの看板が立つ。気がつくといつの間にかよそから来た市民が移り住み、人口や労働力に反映されるという具合だ。もちろん、現実と同じ時間軸でシミュレーションしていると何カ月も掛かってしまうため、表現としてはかなり端折られているが、ツボを押さえた表現で見ているだけで楽しめる。
あるいは電力の確保もそうだ。「SimCity」はあくまでゲームなので、電力インフラを無視して家や施設だけ建てることができる。しかし、これでは実際に施設が機能しないので、発電所を設置し、各施設に電力を供給する必要がある。発電所の稼働を開始すると、専用のモードから電力の供給具合が見えるようになっている。あたかもポンプで水が送られるように、黄色い○が道路の地下の電線を通じて周囲に送られていく。電気が通った家や施設には明かりがともり、街が明るくなる。こちらもまた見ているだけで楽しめる要素だ。
それ以外にも水の確保や、ゴミの処理などやるべきことは山ほどある。陳情も次から次にやってくる。ユニークな陳情には、「隣家が火事だから、自宅が延焼しないように、消防署を設置してくれ」というもの(笑)。まさにゲームならではの展開だが、こうした陳情をひとつひとつ聞きながら、人口、税収を増やし、タウンホールをアップグレードして、さらに高機能、高効率の施設を設置し、市民に高等教育を施し、一流都市に成長させていくわけだ。
もうひとつ大きく評価したいポイントは、グラフィックスの美しさと軽快さのバランスだ。先述したように「SimCity」はシリーズ初のフル3Dグラフィックスを採用しており、従来のシリーズのように俯瞰で見ようとすると描画しなければならないオブジェクトが指数関数的に多くなり、処理が重くなってしまうことは避けられない。
しかし、今回のデモでは、むしろ動作の軽さが強く印象に残っており、それでいてグラフィックスは、今回の特徴であるチルトシフト(ミニチュア風の表現)レンズ的な表現を効かせながら、奥までしっかり描いている。描画の最適化はすでに完了している印象で、3Dグラフィックスを採用したシミュレーションゲームは、パフォーマンスの低下がマウス操作にまで影響を与えるのがマイナスポイントだが、「SimCity」ではそうした心配はあまりなさそうだ。
今回の試遊では、ゲーム開始直後のチュートリアルモードがプレイでき、同じ参加者同士で、制限時間内にどれだけ街の人口を増やすのか競争も行なわれた。これは「SimCity」のオンライン機能「SimCity World」を使った要素で、オンラインに登録したユーザー全員で、各資源の相場の変動具合を見たり、各種ランキングを競ったり、共通課題に取り組むチャレンジが確認できたりなど、ソーシャル性の高いオンラインモードとなる。
筆者自身は、そのメディア間の競争には参加せず、ひたすら遊びまくっていたのだが、終了5分前になると突如隕石が振ってきて、デモの終了が告げられた。こうした天変地異に関して、どの程度のバリエーションがあり、どういうインパクトがあって、どのような防御策が可能なのか、このあたりはまだ不明な部分も多いが、ゲーム性とグラフィックスについては心配はないと思った。「SimCity」は欧米では2013年2月、日本では2013年3月の発売が予定されている。PCゲームファンにとっては最高に楽しみなシミュレーションゲームになりそうだ。
【Limited Edition】 | |
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欧米のリミテッドエディションに含まれるコンテンツ。カジノは夜景を美しくしてくれるが、その効果も気になるところ。ちなみに日本でのこれらの取り扱いがどうなるかは正式発表を待つ必要がある |
【Digital Deluxe Edition】 | ||
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こちらはDigital Deluxe Editionに盛り込まれるコンテンツ。左からイギリス、フランス、ドイツ |
【SimCity World】 | ||
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これが「SimCity」のオンライン機能となる「SimCity World」。ソーシャルゲームのように、フレンドと薄く繋がることができる機能だ |
Maxis, SimCity, SimCity 2000, SimCity 3000, The Sims and Need for Speed are trademarks of Electronic Arts Inc. Mass Effect is a trademark of EA International (Studio and Publishing) Ltd. John Madden, NFL and FIFA are the property of their respective owners and used with permission. All other trademarks are the property of their respective owners.
(2012年 8月 20日)