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10年ぶりの新作を一足先に体験! 「シムシティ」クローズドβレポート

1時間限定の街づくりで見えてきた、新しいシム市長の面白さ!

【シムシティ】

2013年3月7日発売予定

価格:
オープンプライス(パッケージ版)
6,800円(Origin版、AmazonPCダウンロードストア版)
7,800円(Originデジタルデラックス版)
これが新しい「シムシティ」のプレイ画面

 きたる3月7日、エレクトロニック・アーツから、新しい「シムシティ」が登場する。ゲームファンでなくとも広く知られたこの超人気シリーズに本流の後継作が登場するのは、2003年の「シムシティ4」からなんと10年ぶりのことだ。そのタイトル名はナンバリングを廃してシンプルに「シムシティ」。シリーズの新たな門出を予感させる大胆な命名だ。

 その発売を前にして、1月26日から28日の3日間、本作のクローズドβテストが実施された。ゲームを始めると1時間で強制的に終了してしまい、作れる建物の種類も基本的なものに限られるという制限付きのバージョンではあったが、何度も繰り返しプレイしてみることで本作の特徴や味わいがわかってきたので、本稿で詳しくレポートしていこう。

新システムとコンセプトで、僕らの街はダイナミックに息づく

グラフィックスもUIも随分と洗練された印象だ
それぞれの思いを持ったシム市民が集まって街ができる
汚水の一粒も「エージェント」としてシミュレート
つぶさに観察し、発生する様々なトラブルにしっかりと対応していこう

 この10年の間にゲーム開発の技術は大幅な進歩を遂げ、新しい「シムシティ」にはその成果が縦横無尽に生かされている。生活感たっぷりの綺麗なグラフィックス、ぐっと扱いやすくオシャレになったインターフェイス、ネットワーク接続を前提とした新機軸のマルチプレイの仕組みなどなど、ワクワクさせるようなコンセプトがいっぱいだ。

 その中でも特に進化したのがシミュレーションエンジンだろう。今作のいわば“背骨”の部分に相当するGlassboxエンジンは、街に生きるシム市民のニーズや行動を、ひとりひとりの単位で細かく表現できるものになった。

 つまり、従来のシリーズでは建物の配置や道路の接続具合などからトップダウン的に何が起こるかが決まっていたところ、今作では大勢のシム市民が個々のニーズを満たすために行動することにより、ボトムアップ的に大局的な現象が紡がれていくというアプローチを実現しているのだ。「トロピコ」シリーズでも近いコンセプトが実現されているが、今作ではそれをさらに推し進めた形と言える。

 極端に言うと、都市開発シムの「シムシティ」に、市民生活シムの「シムズ」を混ぜたらこうなる、という感じである。シム市民がこぞって通勤すれば結果的に渋滞が発生するし、失業者が増えれば治安が悪くなることもある。市長として個々のニーズにうまく対応できればシム市民それぞれの行動に反映され、幸福度の上昇、ひいては地価アップや人口増といったマクロ的な効果がじわりじわりと現われてくる。

 だから本作では、都市開発を進めていく中でも変化は常にミクロの部分から始まっていく。市長としては、自分のとった判断が確実に個々のシム市民たちのマインドに影響していることがつぶさにわかるおかげで、血の通った、手応えのある都市開発が楽しめるというあんばいである。どれかの市民をズーム後、「フォロー」してその行動を眺めているだけでも様々な発見があり、時間を忘れてしまいそうだ。

 Glassboxエンジンのシミュレーション単位は内部的には「エージェント」と呼ばれ、シム市民だけでなく他の要素も個別にシミュレートされている。例えば街道を走るクルマ、街で発生するゴミや汚水、ライフラインを伝わる上水道や電力。工業や商業施設で生産・仕入れ・販売される材料や消費財もそうだ。

 建物をズームアップしたり、多彩なデータレイヤー画面モードを使うことで、これら「エージェント」がどう動き、使われているのかを見ることができる。例えばゴミ収集車が渋滞で詰まり、結果として街の節々でゴミが放置されてしまうようなことがある。そういった問題をいち早く発見し、あるべきものが、あるべきところにあるようにすることが市長としてのつとめだ。

 ちなみに「エージェント」は実際に町中を動いていくものであるため、各種の結果が現われるまでには多少のタイムラグが発生することが多い。例えば住宅地区を整備したら、街の外から施工業者がやってきて道路を通り、現場に到着して着工する。ニョキニョキと建物が生えてきて完成したら施工業者は去り、また街の外から新しい住人がやってきて入居、という形だ。

 当然、途中の道路が渋滞で詰まっていると建物はなかなか建たず、住民はななかなか新居に入れず……となってしまうので、いかにスムーズな交通の流れを作っていくかが、本作においてひとつの重要なポイントとなっている。

 それでは次節にて、本作における街づくりの流れを詳しくご紹介していこう。

基本的な要素はチュートリアルで把握できる。まずは街を地域の高速道路に接続することで開発がスタート
住宅需要に応えて住宅地区を配置。すると建設業者がやってきて家を建て、やがて住民がやってくる
工業地区を整備すれば基本的な雇用を生み出し、経済エンジンに最初の火を点けることができる
市民が増えれば税収もアップ。貯まった税金を使って新たな都市開発をスタートさせよう

使いやすいインターフェイスと簡略化された操作で自在な街づくり

溢れるアイディアで素敵な街をつくろう
シム市民たちの動きを見ているだけでも楽しい

 しかし実際、シミュレーションの単位は細かくても、市長として操作する内容はマクロ的な部分に集約されており、プレーヤーに細かすぎるマネジメントを要求することはない。総需要に応じて住宅、商業、工業それぞれの区画を整備する。渋滞が増えたら道を拡張する。電力が足りなくなったら発電所を増強する。火事が増えたら消防署を増設する。これで充分なのである。

 単に街づくりを楽しみつつ、何が起こるかを見て面白がるという遊び方であれば、必要なことは街づくりの節々でシム市民が教えてくれる。工夫されたインターフェイスのおかげで操作も簡単だ。

 ひるがえって、とにかく人口を限界まで増やすとか、思い描いた街の形を完璧に再現する、などの高い目標を持って遊び始めると様々なノウハウも必要となってくるが、極限まで突き詰めた都市計画を目指さない限りにおいては、本作はシリーズ随一の遊びやすさと言えるほどの親切設計だ。

 その上で、都市デザインの自由度も向上している。本作ではこれまでのシリーズと同様に、住宅、商業、工業の3つの種別で区画を割り当てていくことで、都市の発展を促す仕組みだ。ただこれまでのシリーズと異なるのは、それぞれの区画は必ず道路に面していなければならない、ということである。したがって話は簡単、都市デザイン=道路をどう敷くか、である。

 そこで本作では、道路の敷き方に多彩なオプションが用意され、非常に柔軟な区画設計が可能になった。シンプルな直線の道路、歪みのない四角形、円・楕円、曲線、そしてフリーハンドのツールがあり、必要に応じて使い分けることで思い通りの形に道路を敷くことができるのだ。

 ただし自由度が高すぎてシステムが追いついていないと見られる部分もある。道路どうしの接続や交差が微妙な角度になったり複雑化すると、敷けるはずの場所に道路が敷けなかったり、期待した角度にならなかったり、接続部分の表示がおかしな崩れ方をすることが時々あった。このあたりは製品版に向けて改善を希望したいところだ。まあ、あまり細かいことにこだわらなければ現時点でも十二分に使いやすいものではあるが。

道路敷設は各種ツールのおかげでかなり便利になった。円形都市も作れる!
格好良く区画を整理すればやりがいもアップ。個性的な街をつくりたい

クリニックを設置すれば、周辺の病人やけが人をケアできる
市民のために学校を開設。教室を増やして人口増に備えよう

 道路を敷き、住宅・商業・工業の基本的な区画を整理したら、次は市庁舎や消防署、警察署、クリニックなど公共サービスを充実させる番だ。これらのものは個別の施設ボタンから直接アクセスし、完成品をいきなりドンと置くようなイメージだ。各施設がサービスを提供する範囲は特別なデータレイヤーを呼び出さずとも建設時に確認できるようになっており、おおむね問題ないレベルで配置する分には非常にスムーズ&ストレスフリーだ。

 これら施設の多くは必要に応じて拡張することもできる。建物をダブルクリックするとエディットモードとなり、例えば警察署ならパトカーや留置所を新たに追加することで、サービスのキャパシティが増加する。この仕組みのおかげで、都市の発展に応じて柔軟に公共サービスの質をコントロールすることができるわけだ。

 もちろん、施設の機能拡張には周囲に多少の空き地が必要で、はじめからギチギチに詰めて建てると後で苦労することになる。あらかじめ、ある程度の余裕をもって区画を作っておくことが必要だ。このあたりのコツを掴んできたら、将来の発展を見越した計画的な都市設計ができるようになる。

 さて、そこから先は……新しい「シムシティ」の目玉である、特化型都市の計画に踏み出す頃合いだ。しかしあいにく、今回のクローズドβ版ではカジノしか特別な建物を作ることができず、さらに1都市しか作れない&1時間で強制的にゲームが終了するため、近隣地域「リージョン」内で複数の特化型都市が連携していく、という本作の目玉機能は試すことができなかった。

 そこは製品版が発売されてからのお楽しみ。今回のクローズドβ版で基本的な都市開発を体験した結果から言うと、各種のライフライン機能や公共サービスを外部に依存できるようになるだけでも、都市開発の自由度は飛躍的に高まりそうな手応えがある。なにしろ発電所や工業地帯、汚水処理施設、ゴミ収集場などの、土地や空気の汚染を発生させる施設を“外部化”できるだけでも、有効に使える土地が間違いなく大幅に増えるからだ。

 これに加えて複数都市の協力で実現する「Great Work(筆者訳:大事業)」で巨大工場、研究都市、巨大空港、宇宙施設、ソーラーファーム等々の、各分野において巨大な供給能力を持つ施設を利用できるようになれば、どんな街が作れるようになるだろうか。様々な想像に、今からワクワクしてしまう。

消防署を建て忘れて悲惨なことに
バスセンターを整備して交通をスムーズに
各所に公園を設置して市民を幸福に保とう
市民が幸福なら人口密度が高まっていく
カジノを開設。犯罪増加に要注意!
都市連携や「Great Work」は製品版までお預け

β版でいきなりやり込みプレイをしてみる:限界効率を目指すプレイはやっぱり伝統「碁盤の目」?

最大人口を記録した碁盤の目シティ
地価マップ。必死に低所得者向けに維持
密度マップ。もう何がなんだか
残念、時間切れ!

 というわけで、今回のクローズドβ版では各プレイ1時間で終了、作れる建物の種類も制限ありと、やれることが少ないので、本作の性質を調べるために1時間で増やせる限界人口を目指すプレイをしてみた。

 様々なパターンを試してみたが、結論から言うとやはり、効率だけを重視するなら区画デザインは伝統的な「碁盤の目」になってくる。土地活用の効率が最大になり、かつ道路使用が分散しやすいためだ。今作では各建物の最大密度は隣接する道路の太さによって決まるが、今回のβ版で使用できる道路は中密度が最大となっているので、中密度の街路でまず全体を埋め尽くす。

 都市中央部には各種公共サービスを配置するため多少のスペースを開けておいて、あとは中密度区画のガイドラインに沿って碁盤の目をビッシリ。住宅地区、商業地区、工業地区をバババと並べていって、税収が上がってきたらゴミ収集場、クリニック、消防署、警察署などを最低限に配置する。

 ここでポイントとなるのが“地価を上げ過ぎない”ということだ。人口を増やすことだけを考えるなら、どうやらまず低所得のシム市民で埋め尽くすのが良い。システム的には、低所得の住宅は人口密度が高いようなのだ。したがって、いたずらに地価を上げると、人口密度の低い建物に建て替えが行なわれ、その結果人口が一気に減ったりもする。

 ついでに言うと、低所得の市民が最初の労働者となり、商業地区で消費をすることで、次第に中所得の市民が生まれてくる……という形で人口減少のインパクトなく建て替え・住み替えが行なわれる流れもあるようだが、1時間ではとてもそのサイクルを待っていられない。したがって、公共サービスは最低限に止め、シム市民を惹きつける公園系の施設も「$(低所得市民向け)」レベルに限って配置していく。

 こうして地価を低く抑えつつ、かつ必要なサービスを行き渡らせると人口がグングン増えていく。あとは人口増に応じて増えていく渋滞を解消するためにバスセンターを作ったり、増えるゴミのために収集車を増やし、各地区の需要変動に対応して多少の区画替えを行なっていく。

 どれかを忘れてあまりにも生活環境が悪化すると、低所得市民もさすがに逃げ出したくなるらしいので、地価を上げ過ぎない範囲でギリギリ住めるような緻密な調整をしていくことが重要なようだ。消防署は増設しても、警察のカバー範囲外でウロウロしている犯罪者はとりあえず放置である。

 こうしてマップ全体を埋め尽くし、建てるものが無くなったら税率を限界まで下げ、あとは様子を眺めつつリアクション的に区画替えなどを行なっていく。これで1時間後、最終的には人口8万5000人ほどに増やすことができた。

 途中、下水やごみ処理、電力供給の不足など、リアクションでは間に合わない問題が発生していたので、もう少し先読みをして施設を増設したり、住宅・商業・工業の区画も再配置が少なく済むように工夫しておけば、10万人以上もいけたかもしれない。実際に、他のプレーヤーが11万人前後まで行ったという報告も見かけた。

 このように本作では、シム市民個々のニーズについてはある程度先回りが可能で、単純に人口を増やすだけなら規定のマクロ的戦略で達成することが可能なようだ。製品版で特化型都市を作る際には、こうした都市が労働力のファームタウンとして有効に機能するかもしれない。

 というわけでクローズドβ版でやれそうなことはひととおりやりきり、気がつけば1時間のゲームセッションを10数回も繰り返していた始末。やはり「シムシティ」のハマリ度は相当高いぞと認識を新たにする結果となった。ああ、製品版ではこの100倍はやることがあるだろう。発売が待ちきれない!

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(佐藤カフジ)