インタビュー

「Crysis 3」プロデューサーMichael Elliot Read氏インタビュー

シリーズ完結編の手応え、今後の構想、次世代機への展開などについて聞いた

12月12日収録

会場:Luxe Hall

 近未来の荒廃した地球を舞台にしたSFFPS「Crysis」シリーズがついに「Crysis 3」で完結する。前作「Crysis 2」はシリーズ初のコンソール展開や、新エンジン「CryEngine 3」への切り替え、シングルとマルチで別のチームが開発するなど、様々な要因が重なって、とりわけコンソール版の評価は高くなかったが、「Crysis 3」はシリーズ総決算として、グラフィックス、ストーリー、マルチプレイなど、あらゆる部分についてシリーズ最高の出来映えに仕上がっている。

 「EA Asia Showcase」では、Crytek Frankfurtで「Crysis 3」のプロデューサーを務めるMichael Elliot Read(Mike Read)氏がシドニーを訪れ、デモンストレーションの実施と、メディアインタビューに応じた。Read氏は非常に饒舌な人物で、熱意たっぷりに、そして大量に「Crysis 3」の魅力を語りまくってくれた。

 その彼が、唯一言いよどんだのが、「Crysis 3」のメインテーマを問う質問。作品のすべてを知るRead氏が、言えばネタバレになると思ったのか、この点はよくわからないが、「Crysis 3」のストーリー、そしてエンディングは要注目だと思った。

気になるストーリーについて。「非常に良い終わり方をしてると信じている」

「Crysis 3」プロデューサーMichael Elliot Read(Mike Read)氏
人気キャラのひとりサイコ軍曹など、過去の作品から様々なキャラクターが登場したり、謎が明かされるようだ
デモ機で使用していたPCは、GeForce GTX 680のSLI環境で、CPUはCore i7-3770K 3.5GHz、メモリは16GBというハイスペックだった

――「Crysis 3」は3部作の完結編ということだが、なぜ3部作で完結させることを考えたのか?

MikeRead氏:それは単純に2007年にCrytek CEOのCevat Yerliが3部作になると発表したからだ。その理由については彼しか答えられない(笑)。ただ、このシリーズ自身、3部作の開発を経ることによって大きく成長したのも事実で、ビジュアル的にも、内容的にも、インパクトの強いものになっている。このシリーズを今後どうするかについては、まだ決まっていないが、3部作のストーリーは今回で終わるのは間違いない。もちろん、「Crysis」シリーズが将来的に何かしらの形で続くことはありえることだし、同じ世界観でほかの主役を立てて別のシナリオを描く可能性がないわけではない。

――3部作というと「Mass Effect 3」も完結を迎えたが、熱心なファンからその締めくくり方に批判が集まった。「Crysis」3部作の終わり方はどのようなものになるのか?

Read氏:言うまでもなくエンディングの内容は話せないが(笑)、個人的には非常に良い終わり方をしてると信じている。私自身、FPSのシナリオにはあまり関心を覚えないタイプだが、そういうストーリーはあまり興味がないという人が見ても、「おお、スゲー!」と思う終わり方をしている。「ME3」との比較という点だと、「ME3」は、プレーヤーのゲームプレイの内容によってその方向性や、結果が変わるのに対して、「Crysis 3」は映画のようなアクションやドラマティックな経験を重視しており、シネマティックなファイナルエンディングを考えており、そこはゲームの特性の違いがエンディングの違いとなって現われていると思う。「Crysis 3」のラストはぜひ期待してほしい。

――「Crysis」3部作を終えてみて、「Crysis 3」のメインテーマは何だと考えているか?

Read氏:(1分近く考えた後)本当に色々ありすぎて簡単には答えられない(笑)。世界観やプロフェット、ストーリーなど色んな要素がある。いくつか伝えたいことがあるが、私は知りすぎていて、現時点でどこまで話して良いのか曖昧なところがあるし、そうした中で簡潔にテーマを伝えるのが難しい。申し訳ない(笑)。

――前作にも増してグラフィックスが素晴らしい出来映えだと思う。今回「CryEngine3」を使い切ったと表現されていたが、プロデューサーとしてグラフィックスに関してどのような部分にこだわったか?

Read氏:「CryEngine 3」は「Crysis 2」でも一部使っているが、「Crysis 3」では100%使っている。「Crysis 2」の開発の段階で、「CryEngine 3」の使い方を学び、さらにコンソール向けの開発で「CryEngine 3」のポテンシャルを学んだ。それを「Crysis 3」の開発経験に活かすことができたので、よりグレードアップした形でゲームを開発できていると思う。たとえば、光や影、テクスチャのクオリティやキャラクターのモデリングなどがそうだ。ただ、コンソールに関しては、もう8年前のハードウェアなので、厳しい制約の中で作らざるを得なかった。コンソール版ももちろんしっかり開発しているし、前作より格段に良くなっているが、PC版はもっと素晴らしい出来映えになっている。

――コンソールは厳しい制約の中で開発したということだが、Xbox 360版の快適な動作に驚いた。フレームレートなど何か工夫していることはあるのか?

Read氏:コンソールはターゲットフレームレートは20から30ぐらい。ただ、1番難しいのはフレームを上げることではなく、各コンソールのテクスチャのバジェットやメモリのキャパシティ、CPUの速さが違う中で、グラフィックスクオリティをできるだけ下げずに、PC版と同等のゲームプレイを提供できるか。ゲームプレイ中心だとフレームレートはできるだけ維持しているが、シネマティック中心のシーンだと実は低かったりする。シーンによって変えているので一言では言えない。

【新エリアField】
CryEngine 3のポテンシャルを存分に活かした美しいグラフィックス。これはPC版のものだが、コンソール版もかなり綺麗だった

シングルプレイとマルチプレイのボリュームについて。「マルチの新情報は新年以降に発表する」

「Crysis」の世界観を紹介するプロモーションビデオ「The 7 Wonder」
マルチプレイの新モード「Hunterモード」は短時間でスカッと遊べる良モードだ

――シングルプレイキャンペーンのボリュームはどのぐらいになるか、想定のプレイ時間は?

Read氏:興味深い質問だ。我々もそれに関して十分なテストをしているが、わからないというのが正直なところ。なぜわからないのかというと、平均値が30分とでてきても、実際に見ていると殆どの人が終わってない。平均が30分でも振れ幅が大きい。おそらく7〜10時間というところだが、多くの人はもっと時間が掛かるだろう。ちなみに実際にプレイした彼らのコメントで多かったのは、何回も同じステージを遊んでも楽しいという意見。我々としてもリプレイバリューを高めてることには努力しているし、それは成功したと確信している。

――キャンペーンのステージ数はどれぐらいになるか?

Read氏:ステージは、現在はまだ数は言えない。今のところ公開してる情報は、「The 7 Wonder」ぐらい。ステージについては新年に新たな情報を公開する予定だ。

――マルチプレイは全部で8つのモードがあるということだが、現時点で判明しているHunterとClash Sight以外にどのようなモードがあるのか?

Read氏:残りの6つはまだ公開していない。新しいモードもあるし、「Crysis 2」で好評だったデスマッチ、チームデスマッチはあるだろう。リリースタイミングで、8つのバラエティに富んだゲームモードと、12のマップを公開するので、マルチプレイを楽しむには十二分のボリュームだと思う

――DLCでは、マップパック以外にどのような計画があるのか教えて欲しい。

Read氏:DLCに関してはまだ一切情報を公開していないので、申し訳ないがまだ何もコメントできない。

Wii Uや次世代機の展開、Free to Playタイトル「Warface」について

――Wii Uや次世代機への展開予定について教えて欲しい。

「Crysis」シリーズの次世代機展開については堅く口を閉ざしたが、それはつまり、かなり話が進んでいるということだろう
「Warface」は敵ではなく、「Crysis」が進むべき未来の姿かもしれないというRead氏

Read氏:次世代機に関しては一切ノーコメント。現時点ではWii Uへのリリース予定もない。ただし、「CryEngine」というくくりでは、エンジンをライセンスしたサードパーティーが利用できるように、すでにWii U向けにチューニングしている。全体に関していえば、次世代機の動きはデベロッパーにとって大きなチャンスだし、どのメーカーも大枠でのエンターテインメントプラットフォームを目指していくことになるだろう。

 我々としてもこの大きな転換点を非常に高い関心をもって見守っているが、ゲームデザイナーとしては、3D立体視や2画面によるゲームプレイ、タッチスクリーンタイプのゲームパッドなど、新しいタイプのデバイスについて、ユーザーがどのような反応を示し、彼らが何を選ぶのか、そして他のメーカーがどう動くのかなどについて非常に興味深く見ている。あとはGAIKAIにも高い関心を持っているし、SteamやOriginなどのデジタルデリバリープラットフォームがリビングルームに入ってくるのはほぼ間違いないだろう。Xbox LIVEやPlayStation Networkもこれからはゲームだけではなく、様々なサービスに対応していく必要があるだろう。これからの5年10年は、その覇権争いが繰り広げられることになるだろう、それこそベータ対VHSのようにね(笑)

――韓国のG-STARで見たCrytekのFree to Playタイトル「Warface」のクオリティの高さに驚いた。「Crysis 3」のプロデューサーとして、社内から生まれた強力なライバルに対して、どのように戦っていくつもりか?

Read氏:興味深い質問。「Warface」はCrytekが初めて投入するFree to Playタイトルで、大きなチャレンジとしてキエフスタジオで開発が進められている。「Warface」のライバルは「Crysis」ではなく、「League of Legend」や「DOTA」などのFree to Playモデルで成功しているタイトルだ。ロシアで最初のローンチをしたところ大きな成功を収め、次に中国でローンチしたところ良い反応を得ている。近いうちに韓国でのサービスインを計画している。

 「Warface」は、Free to Playのビジネスモデルの経験を積むための作品であり、コンテンツをどのように提供していくのか、どのようにビジネスにしていくのかは、我々「Crysis 3」も例外ではない。将来的にはストーリーパックを別途販売する方法もあるだろうし、すでにマルチプレイ用のマップパックを有料配信するというモデルも確立されている。「Walking Dead」のようにエピソード単位でコンテンツを販売していく方法もある。我々としては、新しいコンテンツの提供方法についてこれからも貪欲に学んでいくつもりだ。

――日本のゲームファンに向けてメッセージを

Read氏:まず「Crysis1」、「Crysis 2」とプレイしてこられた「Crysis」ファンに対しては、「Crysis 3」は過去の2作品を上回る進化を遂げており、シリーズ最高の出来映えになっているので、プレイする価値のある作品になっていると思う。「Crysis」シリーズが初めての人も、FPSとして入りやすい作品になっていると思うので、ぜひ試してみてほしい。ゲームプレイ、グラフィックスも楽しんでほしい。

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(中村聖司)