インタビュー
死の恐怖へようこそ……PS VR「KITCHEN」発売決定インタビュー!
PS4「バイオハザード7」についても根掘り葉掘り聞いてみた!
2016年10月6日 00:00
カプコンはPlayStation VR用ホラー「KITCHEN」を10月13日に発売する。価格は93円(税別)で、実質100円……ワンコインで購入できる。
「KITCHEN」は、E3 2015で電撃的に“技術デモ”として発表されたPlayStation VR用タイトルだ。詳しいことは明かされず……というより、徹底的に情報管理され、通常であれば宣伝のためにどのような映像を体験しているのかディスプレイで表示するのだが、それも廃止され外部からはどのような映像が展開しているのかもわからない状態だった。
しかし体験した人たちは口々にその恐怖を語っていった。「恐ろしい何か」は話題となっていったが、その恐怖を体験するすべは限られており、もどかしさと興味だけが高まっていった。そしてついに「バイオハザード7」の存在が明らかになり、「バイオハザード7」が全編PS VRに対応することも発表となった。
「KITCHEN」の好評が「バイオハザード7」のVR化を後押ししたとも言えるが、逆にその発端となった「KITCHEN」は相変わらず体験する機会も限られ、ファンにとってはより特別なタイトルとなっていった。「バイオハザード7」がVR対応となった後も、もはや体験するすべはなくなるタイトルとして、より貴重なタイトルとなっていった。
しかし、ついにその不安が払拭されるときが来た! 「KITCHEN」が配信タイトルとしてPlayStation Storeでの販売が決定したのだ。PlayStation VRさえ購入すれば体験することができるのだ(CERO Zタイトルなので、正確には年齢さえ18歳に達していればだが)。
今回、「KITCHEN」が生まれた経緯から東京ゲームショウで多くの情報が公開されながら、逆に気になる点が浮き彫りになってきた「バイオハザード7」についてもお話を伺うことができたのでここにお伝えする。
「KITCHEN」誕生! 「KITCHEN」における恐怖表現とは?
――まず最初に、個人的にはバンスさんは「BIOHAZARD UMBRELLA CORPS(バイオハザード アンブレラコア)」の開発に携わっておられたと思っていましたが、「KITCHEN」の開発にも加わってられたんですね? 同時並行で開発されていたのですか?
バンス氏:「KITCHEN」は「アンブレラコア」の、ちょっと前か「アンブレラコア」の開発開始と少し重なったくらいかなと思います。
――「KITCHEN」のほうが早かったんですね。
バンス氏:そうですね。「KITCHEN」は別のチームが開発を行なっていました。リソースは違いますが、いろいろな仕事を同時に進めています(笑)。
――「KITCHEN」は完全にVRタイトルとして開発がスタートしたんですよね。
バンス氏:確か「バイオハザード7」の開発が2014年2月くらいに開始されまして、今回は新しいゲームエンジン「REエンジン」も同時に開発しました。
「REエンジン」の大きな特徴は、フルHDですごい密度がある画面を60フレームで描画できるという高スペックな性能のゲームエンジンを最初から目指していました。また、「バイオハザード7」は、テーマとして“ホラー”を軸に置きたいという想いがありました。現代のプレーヤーに対して“ホラー”を1番うまく伝えるゲーム的な手段は“一人称視点”だという結論になり、60フレームでの描画+一人称視点はリアルの必須条件として、(「バイオハザード7」の)土台となりました。
加えて、「VR」が注目されつつある時期と重なり、検証してみましょうということになりました。そこで「バイオハザード7」の開発チームの一部を切り離して、別のチームとして一時的に「KITCHEN」を作ることになり、完全に極秘で開発がスタートしました。そして2015年のE3で初めて公開させていただき、すごく良い反響をいただき、やはりVRとホラー、「バイオハザード」は相性が良いんだなと確信が持てました。この反響を見て、「『バイオハザード7』全編をVRに対応させましょう!」と気運が高まりました。
――「KITCHEN」も新しく制作された「REエンジン」を使用して制作されているのでしょうか?
バンス氏:「KITCHEN」は「バイオハザード7」のリソースを元に製作されているので、同じ「RE ENGINE」が使われています。ただ、「KITCHEN」の開発期間は非常に短くて、もうずいぶん分前に完了しています。もちろん、「バイオハザード7」本編の開発はその後も進んでおりまして、その中で「REエンジン」の調整や追加要素も進んでいるので、最終的には「KITCHEN」より本編のほうが進化した映像となっています。
ですが、「KITCHEN」が我々の初めてのVR作品となりますね。
――では、「KITCHEN」の開発は2015年のE3で発表された段階で終了しているのですね。
バンス氏:そうですね。ただその後も微調整は行なっております。最初はE3のための技術デモとして制作していましたので制限があったのですが、家庭で楽しめるようにVRのトラッキング精度を上げるなど様々な要素を加えてマスタリングさせていただきました。
――私も「KITCHEN」をプレイさせていただいたのですが、基本的に逃げられないじゃないですか? これまでのホラー作品は映画でもゲームでも、リアルであっても、あくまでも客観的に見てますし、ディスプレイの向こう側の世界の物語で、その場にいるわけではない。でも「KITCHEN」の場合、その場にいるし逃げられない。「KITCHEN」のキャッチコピーになっている「臨死体験」はその通りと思います。
これは、これまでにない体験で、「怖すぎる」といった反応などはありませんでしたか? また、開発中に「これは怖すぎるかもしれない」となって、調整するといった話はありませんでしたか?
バンス氏:本編の制作中にもそういった意見が出ています。ただ、「バイオハザード7」ではどんな場面でもモニター画面とVRを切り替えることができます。我々の考えとしては、VRでプレイしていて「臨場感がすごすぎる(怖すぎる)」と感じられたらモニターに切り替えてプレイしていただければと考えています。「KITCHEN」は怖すぎても切り替えることはできませんが(笑)。
「KITCHEN」に関しては、プレーヤーが怖がるだろうとは思っていましたが、どういった反応を返すかわからなかったんですね。実際に、E3で体験してもらった何百人ものプレーヤーの反応を見たのですが、反応は人それぞれで、「怖がりすぎだろう!」という人は2~3人で、基本的には皆さんに楽しんでいただけていたようです。
ものすごい臨場感ではあるのですが、皆さん、どこかで「これは現実ではない」と理解されているようです。
――なるほど、制作側としても開発も初めてだけど、プレーヤーの反応を見るのも初めてだから、推し量れないんですね?
バンス氏:そうなんです。「バイオハザード」シリーズの開発を続けていて面白いなと思うのは、開発の初期段階で真っ白な森に木が数本生えているだけなのに、プレイするとすごく怖いんです。でもどんどん開発が進みグラフィックスも仕上がり演出も入ったバージョンをプレイしても、作る側としては全然怖くないんです。そちらのほうが怖いはずなのに、プレイしすぎて慣れてしまってるので怖くないんでしょうね。
――なるほど、それは怖さの本質を考える上で面白いですね。
バンス氏:特に「KITCHEN」に関しては、プレーヤーが動かないので、プレーヤーに対して何がどう影響するかが大きなポイントなんですね。
実は、皆さんに見ていただいている「KITCHEN」は、最初のバージョンと大きく演出が違います。基本的に場所は同じなのですが、敵が現われるタイミングですとか、敵がプレーヤーに対して何をするのかですとか、いろいろと何度も調整を繰り返した結果完成したのです。
最初は画面を明るくしすぎたため全部見えてしまいましたし、臨場感はすごいけどそれほど怖くなかったり。一方で画面の明るさを落として、映画「地獄の黙示録」のように暗闇から顔だけがヌッと出てくる演出も考えたのですが、「それも違うなぁ」と採用しませんでした。NPCが床にライトを倒しても、光の雰囲気がうまく見えるようになるように計算されています。こういった試行錯誤を繰り返して完成しました。
――VRの演出はこれまでのゲームの制作と根本的に違う部分もあると思うのですが、これはVRの演出としてはまったなといった表現はありますか?
バンス氏:実はゲームの制作としてはあまり違いはありません。普通のFPSタイトルなどでも360度見回すことができますから。
「KITCHEN」で使われているVRならではの面白いところとしては、敵と近距離で接するところですね。モニターで見ると、ただ顔が大きくなるだけですが、VRで見ると他の人間が自分のテリトリーに入ってくる威圧感を本能的に感じるんですね。そういった心理的な表現方法を使うことができるようになったかなと思います。
たとえば登場キャラクターがナイフでロープを切るシーンでも、「この人は私を助けてくれている」とわかっていながらも、危ないと感じて身を引いてしまう本能的な怖さを感じます。
こういった心理的な恐怖の演出は積極的に「KITCHEN」に入れていきました。
――逆にこれまでのゲーム作りの文法で面白いだろうと思って入れた演出が、VRではそれほど面白く感じなかったことなどはありますか?
バンス氏:ちょっとそういった事例は思い浮かびませんが、ゲーム制作上で言えば360度すべて見ることができるので、これまで以上にグラフィックスを描画しなければならないのが大変ですね。たとえば、これまでのゲームではNPCとすれ違ってしまえば処理を行なう必要はありませんが、VRでは見ることができますのでその場にいる限りは描画し続けなければなりません。こういった技術的なハードルはいくつかありました。
――制作当初、「KITCHEN」は「バイオハザード7」とは別に制作がスタートしたと思うのですが、「KITCHEN」の制作の過程で「バイオハザード7」との連動なども考えなかったのでしょうか?
バンス氏:まず「バイオハザード7」と「KITCHEN」は同じ世界です。接点はきちんと作っています。現在配信中の体験版の冒頭にも映像が入っていますが、体験版と「KITCHEN」と「バイオハザード7」本編がどのように繋がっていくかは今は明かしていませんが、本編をプレイしていただければ、それが見えてくると思います。楽しみにしていただければと思います。
――私は、2015年のE3で発表された当初、「KITCHEN」と銘打ってますが、「バイオハザード」の次回作を作っているんだろうと思いました。しかし、次の「バイオハザード」でVRもやるから一人称視点を採用したんだと思っていました。でも、これまでのお話ですと、逆なんですね。
バンス氏:そうですね。一人称視点にしたのは「バイオハザード7」をホラー中心のゲームにしたいと言う理由からです。ホラーのゲーム性には一人称視点が、より合っていますから。1作目の「バイオハザード」の固定カメラによる演出もいいと思うのですが、現代のプレーヤーは一人称視点になじみがありますから。
なおかつ、一人称視点はプレーヤーに直接的にいろいろと感じさせることができると考えました。ゲームの中のキャラクターに対して何か起こるのではなく、プレーヤー自身に何かが起こるわけで、その恐怖感はより大きいだろうという発想もあります。目指したい表現と技術と市場に出てきたVRがうまく繋がり、対応することにしました。
――「バイオハザード7」を拝見したとき、「バイオハザード」からシリーズを重ねる上でずっと広がりを見せてきたゲーム性や世界観からぐっとシンプルになり、より恐怖にフォーカスした印象を受けました。なぜ、「バイオハザード7」でそういった方針転換を行なったのか疑問に思っていたのですが、それは自分に起こる恐怖の再現というテーマのためなんですね。
バンス氏:はい。ホラーにしたいというテーマはありました。「バイオハザード」シリーズは定期的に新しいチャレンジをするというDNAが開発内にあります。今回は「ホラーにしましょう」という話がありまして、その中で「どうするのがベストなのか? ファンにとって何がベストなのか」と考えていきました。
ただ、ホラーな要素ばかりではなく、今までの「バイオハザード」と同じく、怖いだけではない、エンターテイメント性があり遊び続けたいと思わせる作品に仕上げる。怖すぎるとプレーヤーの皆さんが引いてしまいますから。これまでのシリーズ作品にあった、探索やアイテム管理、戦闘などもゲームとして大切にしています。
ちなみに(「KITCHEN」のロゴを指さし)これは“7”ですね。
――どこでしょうか?
バンス氏:“T”の所ですね。
――おお! なるほど!! これ1番最初からこのロゴでした?
バンス氏:はい、初めからこのロゴでした。
――実は「バイオハザード7」への繋がりを示唆していたんですね。
臨場感を出したくて、「REエンジン」にフォトリアルの最新技術を詰め込んだ
――今回はゲームエンジンの開発も同時に進められたということですが、「REエンジン」はハイエンドをターゲットにしたゲームエンジンで、それはPCでもリリースされることを念頭に置いて開発されたと思うのですが、同時にプレイステーション 4 Proのことを考えると、すごく親和性の高いゲームエンジンといえますね。
バンス氏:「REエンジン」は高スペックに対応できるゲームエンジンで、PCも視野に入っていますし、PS4 Proも対応しておりますので、それぞれのハードの1番上の所を目指して対応しようというスタンスですね。
――よりきれいになった方が、リアルさは増すと言うことですね。
バンス氏:そうですね、臨場感を出したくて今回はフォトスキャン、フォトテレメンタリーなどの技術をたくさん取り込んでいますし、フィジックベースでレンダリングも行なっています。それもあって今までのようなスーパーヒーロー的なレオンやクリスではなく、より身近な主人公が登場します。「バイオハザード7」に登場する主役は現実的な感覚のキャラクターで、あくまでも自分の代わりなんです。我々の世界に近いものを出した方が恐怖もより近くに感じます。
なおかつ、今までの知っているキャラクターが主人公になると、少し安心感が出てしまいます。プレーヤーは「こういうストーリーになるだろう」とか「最終的に死なないんじゃないの?」とか感じると思います。しかし今回はそういうのがなくて、本当にどうなるかは誰もわからない。
――プレーヤーキャラクターが死ぬということは、自分が死ぬような感覚に陥るということですね。
バンス氏:そういうことですね。最後まで生き残れるかどうかわかりません。予想不可能ですし、それが恐怖に繋がります。
――以前、「バイオハザード7」の川田将央プロデューサーは「『バイオハザード』らしさとは“サバイバル”にある」と仰っていました。今回はより死が近い場所で、生き残っていくという点では、今回も“サバイバル”という点は踏襲しておられるんですね。
バンス氏:はい。「バイオハザード6」のようにたくさんの銃を集め、100人ものゾンビに対して火力のある兵器を使ったりという設定ではありませんが、ごくわずかな資源をどう工夫して利用して逃げ出すのか? そういった意味では昔の「バイオハザード」のような側面もありますが、古いゲーム性に戻るという原点回帰ではなく、皆さんが好きな「バイオハザード」らしさがありつつ、最新のゲーム性の良さを取り込んだモダンなゲームに仕上がっています。
――私が見ていて思ったのは、日本人の好きな「バイオハザード」が帰ってきたなという印象を持ちました。一方で「KITCHEN」は、移動できない不安感と恐怖、終わりも余韻がありますが……これは、ネタバレになるので言えませんね。
バンス氏:作った側が言うのはなんですが、10月13日にPS VRが発売されたら、「KITCHEN」はマストな体験の1つになると思います(笑)。PS VRを持っていない人は持っている人の家に行って是非体験してほしいです。そして持っている人はその体験している人のリアクションを見て楽しんでください(笑)。
――確かにそうですね。自分がプレイしていると恐怖しかないですが、人がプレイしているのは思わず笑ってしまいますね。
バンス氏:人それぞれの恐怖に対する反応が違うので、たとえば恐怖のあまり笑ってしまう人もいれば、怖がっているのをごまかそうとする人もいます。
――今回、「KITCHEN」は「CERO Z」レーティングになっています。
バンス氏:そうですね。この演出、この体験を伝えたいというのがまずありますから、それを忠実に実現すると「CERO Z」レーティングは仕方ないですね。
――それと今回、価格が設定がされています(93円 [税別])。米国では無料で配布されるということで、無料で体験してもらうという選択肢もあったのかと思います。なぜ価格が設定されているのでしょうか?
バンス氏:仰るとおり、元は無料で体験してほしいといった想いでおりました。ただ、「CERO Z」レーティングのタイトルの場合、よりしっかりした年齢認証を行なう観点から、クレジットカードを利用している都合上、無料で配信することはできないんです。そういった事情から、なるべく低価格でということで今回の価格設定となっています。
――「KITCHEN」の制作に当たって気をつけた所ってありますでしょうか?
バンス氏:初めてのVRタイトルなので、制作当初は業界的にもVRというものが浸透していなかったんですよね。VRに関してはパフォーマンスを担保しなければならないと。スムースな描画が前提で、そうでなければVR酔いを起こしてしまうなどの事情がありますので、そういった所はプログラマーさんにがんばって開発してもらいましたね。
それと、プレーヤーが予測しない動きをしたときにカメラをどのように制御するかは、開発内でも議論になりましたね。キャラクターの首を後ろに倒したとき、プレーヤーが下を向いていたら、起こっていることと逆の行動をしているので、プレーヤーに不快な感覚を与えてしまうんです。ですので、多少プレーヤーが変な動きをしても基本的にはカメラもそれに追随し、あくまでもプレーヤーにとって不快な感覚を起こさせないスタンスで開発しました。
――「KITCHEN」は(ほぼ)固定視点ですが、本編となる「バイオハザード7」は移動することができます。よりVR酔いなどを引き起こしやすいと思いますが、そこは今も苦労して開発を続けておられる感じでしょうか?
バンス氏:いえ、もう開発は終盤ですが、その点は開発の者にがんばってもらったところですね。コンセプトは「VRでテレビと同じ体験ができる」ということです。ですから「VRでは難しいからこの演出はカットしよう」とか一切していません。
ただ、テレビで見慣れているような映画的なシーン(演出)は、実はゲームの中にたくさんあるんです。キャラクターが走ると揺れが発生するとか、ハシゴを登るときにカメラがグルッと回るとか、もう気付かないくらいあるんです。こういった演出をVRですると結構不快に感じます。これをVRではどう制御するのか? テレビと同じ体験をプレーヤーにしてもらいながら、明らかに何かが変わっていると気がつかないようにように実装するという点で調整しています。先ほどの例であげると、走ってもカメラが揺れずによりスムースに動くとか、何か演出が入る瞬間にアニメーションの演出をカットしたり変更したりするとか。
これらの調整は、我々が研究を重ねた上で見やすい状態として初期設定していますが、VRに対する感覚は人それぞれですから、オプションでいろいろ調整できるように用意しています。
たぶん、現時点でフルボリュームでVRに対応しているのは我々だけだと思います。
――いわば2本同時にゲームを制作しているとも言えますね。
バンス氏:VR対応のための開発人数はそこまでではありませんが、特にVRの責任者を務めた技術関連の高原さんにはがんばってもらいました。また、「REエンジン」の開発ですね。必要な部分をゲームエンジンに実装することで、表現したいものを表現できました。汎用のゲームエンジンではそんなに迅速に対応できなかった。そういった意味でも、「REエンジン」を作ったことは、メリットの1つですね。
もしかしたらプレーヤーより賢いかもしれない……恐怖の敵・ベイカー家
――プレーヤーの視点を常に考えながらゲームを作るのは大変ですね。でも、VRだとどうしても怖いのできょろきょろしちゃうんですよね。
バンス氏:逆に固まってしまって動かない人もいますよ(笑)。東京ゲームショウで公開したデモ「ランタン」をVRで遊ぶと、いろいろな場所を探索するために「のぞき込む」という要素があるんですね。これをVRで遊ぶと、少し傾けて見たりするのですが、怖いのかまっすぐ向いて動かない人がいるんですよね(笑)。「ちょっと傾ければ見られますよ」と耳元で教えてあげないと動かない。
――東京ゲームショウと言えば、会場で公開された、ベイカー家の食卓のムービーですが、映画「悪魔のいけにえ」を思い出しました。
バンス氏:何かの映画を真似しようという意図はありませんが、好きなホラータイトルのインスピレーションを反映させているところはたくさんあります。ですが、あのシーンで重要なのは、すべてはお見せしていませんが、今回、相対することになるベイカー一家は、すごい知能を持った敵であると言うことです。今までのようになにも考えないで襲ってくるゾンビとはまったく違い、プレーヤーが予想することができない行動を取るかもしれない。もしかしたらプレーヤーよりも賢い敵なんです。その恐怖感を感じるところを、お見せしたかったんですね。
――狂気じみた恐怖感を感じたのですが、それと同時に、「相手がわからない行動を取るかもしれない」という恐怖というのが重要なのですね。
バンス氏:それがすべてではありませんが、それもホラーでは重要な要素の1つですね。
それと、怖いながらもエンターテイメント性もあって、ベイカー家のディナーシーンは怖いんだけども、すごくキャラクター性を立てていて、見るのも面白いという部分もあります。その滑稽な部分も楽しんでいただけると思います。
――今作はベイカー家にフォーカスされていますが、これまでの「バイオハザード」シリーズではやはりアンブレラ社を外して考えることはできません。今回も関係はしてくるのでしょうか?
バンス氏:世界設定は同じです。「バイオハザード6」の後の世界設定になっています。どういった接点があるかは本編の発売をお待ちください。
――では最後に、「KITCHEN」……そして本編となる「バイオハザード7」の発売に向けて楽しみにしているプレーヤーさんに一言お願いします。
バンス氏:「KITCHEN」に関しては、今までにない恐怖体験と思っていまして、本編とは違って「純然たるゲーム」ではありませんが、VRだからこそ提供できる臨場感で、「バイオハザード」ならではのホラー体験を本能的に感じていただきたいと思います。
PS VRを購入する人にとっては必要不可欠な体験だと思いますので(笑)。「KITCHEN」は、大きな世界観の「バイオハザード7」のほんの一部分なのですが、世界観を先駆けて感じられますし、どのような恐怖体験が本編で待っているかと言うことを楽しみにしていただければと思います。
――ありがとうございます!
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