インタビュー

Logicool G新ブランド「PRODIGY」シリーズとは一体何なのか?

「最高の技術をすべての人に」 本社担当者にそのビジョンと展望を聞く

9月15日~18日 開催

会場:幕張メッセ

入場料:
一般前売券 1,000円(税込)
一般当日券 1,200円(税込)
小学生以下無料

 ロジクールは東京ゲームショウ2日目の9月16日に、ゲーミングブランド「Logicool G」に新しいカテゴリとなる「PRODIGY」を新設することを発表した。マウス、キーボード、ヘッドセットの3カテゴリ4製品で構成され、9月23日より順次発売される。今回は東京ゲームショウに合わせてLogitechからテクニカルマーケティングマネージャーのAndrew Coonrad氏が来日し、メディアインタビューに応じてくれたので、その模様をお届けしたい。製品のインプレッションについてはファーストインプレッション

【「PRODIGY」シリーズ】
ゲーミングマウス「G403 Prodigy」、「G403 Prodigy Wireless」
ゲーミングキーボード「G213 Prodigy」
ゲーミングヘッドセット「G231 Prodigy」

9月16日インテルブースで行なわれた発表会
インタビューに応じていただいたLogitechテクニカルマーケティングマネージャーのAndrew Coonrad氏

 弊誌のインタビューは最後の時間に設定されていたため、予定時間を大幅に超過して2時間近くにわたってインタビューと言うよりじっくりディスカッションすることができた。

 今回、本社から来た担当者に聞きたかったのは、「PRODIGY」シリーズとは何なのかということと、「PRODIGY」後のLogicoolのゲーミング戦略はどうなるかということ、そして直前に発表されたLogitechによるMad Catz傘下のSaitekの買収についての3点。

 もちろん、「PRODIGY」シリーズは、事前に日本の担当者から説明を受け、基本コンセプトは理解していたが、位置づけが非常にややこしく、説明に納得ができない部分が多々あったため、まとめて聞いてみたいと考えていたのだ。

 まず「PRODIGY」シリーズというブランド名については、「G900 Chaos Spectrum」や「G910 Orion Spark」と言う風に、製品毎に個別に設定されていたギリシャ神話モチーフのネーミングに変わる新しいカテゴリ設定となる。これまでは個別のネーミングだったが、今後はカテゴリ横断的で、Logicoolにとってはゲームファンがゲーミングデバイスを「PRODIGY」で揃えてくれるのが理想的な姿となる。

 「PRODIGY」の位置づけだが、Logicool Gの命名規則は1桁目がグレードを表しており、今回、ナンバリングが「G403」、「G403WL」、「G213」、「G231」であることからもわかるように、ミドルからエントリー寄りの製品で構成されていることがわかる。「PRODIGY」が複雑なのは、ナンバリングではミドルからエントリーであるにも関わらず、ハイエンドのテクノロジーを盛り込んでいるところだ。

 特にその傾向が強いのがマウスだ。今回発表された「G403」と「G403WL」には、ハイエンドゲーミングマウス「G900」と同じ、トラッキングセンサー、ワイヤレスシステムが導入されており、違いはフォルムと、プログラマブルキーの数だ。

 この点について、「PRODIGY」とは、これまで「G900」(マウス)、「G910」(キーボード)、「G933」(ヘッドセット)と続いてきたハイエンド路線からの脱却なのか尋ねたところ、「そうではない」と即座に否定された。

 「PRODIGY」のコンセプトは“シンプルなこと”で、そのシンプルな中にLogitechが誇る最高のテクノロジーを詰め込んだのが「PRODIGY」シリーズということになる。「G502は、素晴らしい製品だが、これらは“PRODIGY”ではない、G403はボタンは6つのみ、ウェイトは1つ、デザインもカクカクしておらず、曲線を多用し、クラシックマウスのようなシンプルな形状をしている」と語り、シンプルデザインに最高のテクノロジーを詰め込んだデバイスが「PRODIGY」という定義をしてくれた。

 最高のテクノロジーがすべてのグレードに導入されるのであれば、Logicoolにとってハイエンドとは何なのか? 次のハイエンドはどういう姿になるのか? Coonrad氏は、欧米のインタビュイーが時間を稼ぐ際に使うフレーズ「良い質問だ」を繰り返し、じっくり考えてからこう答えてくれた。

 「それはハイエンドの概念の違いで、価格が高いものがハイエンドではないし、最高の技術が搭載されたデバイスがハイエンドというわけでもない。最高の技術が搭載されているのは当たり前で、その上でコアユーザーが満足するギミックを付加できるかどうかでハイエンドかどうか決まる」と答えてくれた。

【G900とG403の比較】
左が「G900」で、右が「G403 Prodigy Wireless」。フォルムとボタンの数が異なる。Coonrad氏によれば、そこがハイエンドかどうかの違いだという

 しかし、最高のテクノロジーをすべてのグレードに導入することがLogitechの使命だと考えているとすれば、今回発表された「G213」に、Logitechが開発したオリジナルのメカニカルキースイッチ「ROMER-G」を導入しないのは何故なのか? そして「ROMER-G」を採用しているのは「G910」と「G310」だけで、1年以上「ROMER-G」搭載の新製品が出ていないのは何故なのか?

 Coonrad氏は、「その質問はよく理解できる」と同意した上で、キーボードは、マウスとは戦略が異なるとした。マウスはトラッキングセンサーやワイヤレスコントローラーを、すべてのグレードに導入し、フォルムやギミックで差別化を図る戦略なのに対し、キーボードは「キースイッチの違いによってパフォーマンスが変わるわけではない」ことから、ゲーマーの好みに応じて、ROMER-Gを頂点に、チェリー製の茶軸、青軸、そして今回のメンブレンの復活と、バリエーションを出すことに注力しているという。なるほど、これは納得できる説明だ。

 ただ、2014年12月に、史上最高のメカニカルキースイッチとして売り出した「ROMER-G」キーの新製品が1年以上、実質的には2年近く登場しないのは何故なのか?

 Coonrad氏は、「ROMER-G」キーは大成功しており、従来のメカニカルキーより高いパフォーマンスで、高い耐久性を持ち、高い技術が導入されていることを念押しし、その一方で「キータッチは好みがある」と、「ROMER-G」キーのキータッチのクセが万人に受け入れられたわけではないことも認めながらも、「ROMER-G」の新製品についてはまだ話せないが、無くすプランもないという。

 「G213」でメンブレンを採用した理由は、メカニカルキースイッチの高さと、耐水機能への相性の良さ、そしてCoonrad氏は驚いたことに、筆者が富士通のメンブレンキーボード「Libertouch」を10年近く使い続けていることを事前にリサーチしており、その点を指摘しながら日本市場におけるメンブレンキーの圧倒的な支持率の高さを挙げた。

 実際、「PRODIGY」シリーズファーストインプレッションでも紹介したように、日本市場で数量ベースで売れているのは、Logicool唯一のメンブレンキーボード「G105」となっている。このように市場の動向に合わせて、戦略を転換できるのがLogicoolの強みと言える。

【G105とG213の比較】
左が「G105」で、右が「G213 Prodigy」。こちらは1から2へのグレードが上がり、同じメンブレンキーボードとして3年分の進化が図られている

【G230とG233の比較】
左が「G230」、右が「G231 Prodigy」。性能的にはまったく同一で、プレイステーション 4とXbox Oneへの正式対応が大きな違いとなる。「G230」でも正式対応ではないものの接続できたため、買い換えの必要はない

 Saitek買収によるLogitechのゲーミング事業の変化については、「買収を発表しただけで、買収後にどうなるかを決めて行くのはこれから」ということで、情報はゼロだった。ただ、Saitekの買収を決めたことは、Logitechにとってこれからもゲーミングを推進していくという何よりのコミットメントであり、Logitechの強力な販売網とマーケティングパワーでSaitekのフライトスティックやフライトパネル、ラダーペダルなどが販売されるのはPCゲームファンとして非常に楽しみだし、Logicool Gシリーズブランドのゲームパッドやジョイスティックの復活にも期待したいところだ。

【Saitekのゲーミングデバイス】
非常にマニアックなゲーミングデバイスブランドであるSaitek。Logitechがどのように展開していくか楽しみだ