「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ

ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第33幕】

BORN TO BE GAMER~日本のゲームをこよなく愛するイタリア人ゲーマーを紹介!~

東京から10,000キロ離れたイタリアには、思ってもみなかった和ゲー好きなイタリア人が存在していた!毎回、彼らの自宅に訪問し、宝物を見せてもらいます!そして、インタビューでゲーマーとしての人物像を掘り下げます。ゲームの持つ本来の魅力を再発見しましょう!

【今回のゲーマー】
名前:エレオノーラ・ルケローニ
年齢:25歳
職業:レポーター
好きなジャンル:RPG

 ゲーマーは男性だけではない。魅力的な女性ゲーマーも数多く存在する。今回の「BORN TO BE GAMER」では、初めてのイタリア人女性ゲーマーが登場! というわけで、ローマに住むエレオノーラさんの自宅にお邪魔した。

 エレオノーラさんは僕のように漫画やアニメがきっかけで日本の文化に興味を抱き始め、文化交流を深めるために大学で日本語を勉強することを決心したそうだ。1年間、大阪で留学した貴重な経験もしている。現在は、日本の文化をテーマにしたイベントの開催に携わるために、イベントマネージャーの資格を取得中だそうだ。

 エレオノーラさんはとても陽気な人で、話し始めるとゲームの話で盛り上がり、あっという間に意気投合できるのだ。エレオノーラさんはまず、友達にエレちゃんという通称で呼ばれたいそうだ。さもなければ、怒るらしい(笑)。

 エレオノーラさん、いやエレちゃんは日本のゲームが大好きで、日本語を上達させるために最近日本版のゲームでも遊んでいるという。ちなみに、彼女の“パッション”は「ファイナルファンタジー」シリーズだ。まず、彼女の部屋に“侵入”してゲームコレクションを覗いてみよう!

「ファイナルファンタジー」にこだわるエレちゃんの宝物達が机の上に勢ぞろい!
僕の人生の中で初めて女性ゲーマーの部屋に足を踏み入れた。やはり男性とはセンスが違う。部屋のカラフルさが、エレちゃんの性格の陽気さを反映していると思う
部屋に掲示板がかけてあって、そこには秋葉原や原宿のチラシやパンフレットが貼り付けてあった。日本に旅行する時は、テレビゲームのメッカ、秋葉原での散歩は欠かせないそうだ
スコールやリノアのアクションフィギュアが、ゲーム箱と一緒にエレちゃんの部屋を彩っている
エレちゃんが日本で買ってきた「DISSIDIA FINAL FANTASY POTION」。これで、疲れた体力と精神を一気に回復!
「ファイナルファンタジー」の25周年を記念するために出版された書籍「FINAL FANTASY I II III Memory of Heroes」。そのおかげで漢字の勉強はもっとスムーズに、楽しくはかどっているという
エレちゃんのお気に入りの作品「ファイナルファンタジーVIII」のメモリアルアルバム。これでいつでもどこでも、あの名シーンを観賞できるのだ
PSPで発売された「ファイナルファンタジー」シリーズのスピンオフ作品達。エレちゃんは特に、「ファイナルファンタジー零式」が大好きだそうだ
プレイステーション 2用の作品達。ファッション要素が濃くなった「ファイナルファンタジーX」のキャラクター達もとても気に入っているそうだ
エレちゃんの思い出のゲーム、「ファイナルファンタジーVIII」と、プレイステーションで発売された作品達
「ファイナルファンタジー」好きには欠かせないアイテム、プレイステーション用の「FINAL FANTASY COLLECTION」。原点は忘れてはならない!
音楽ゲームだが、3DS用の「THEATRHYTHM FINAL FANTASY」も毎日遊んでいるほど大好きだそうだ
【これこそが日本のゲームを愛している証拠だ!】
エレちゃんが自分で作ったリノアのコスチューム。エレちゃんはコスプレーヤーもやっていて、イタリアの漫画イベントでは、よくリノアバージョンで出ているという
スコールのシルバーリング(Griever)とペンダント。エレちゃんはいつも大切に身に付けているという

ゲーム愛を計るためのインタビュー開始!

テレビゲームとのファーストコンタクトはいつでしたか?

 子供の頃、男性の友達とスーパーファミコンで遊んでいました。あの頃の私の“恋人”は「ストリートファイターII」でした。もちろん、「スーパーマリオブラザーズ」も大好きだったし、沢山のゲーム機を持っていた叔父からゲームボーイやセガメガドライブを借りて遊ぶこともありました。

 クリスマスに父が「プレゼントとして何が欲しい?」と聞いてくれた時が1番素敵な瞬間でした。彼がその質問を終える前に私は既に答えていました。「プレイステーションを下さい!」とね。すると、願いは叶いました。今も大切に持っています、私の最初の宝物だから。

あなたのゲーマー人生の中で最も印象的なエピソードを語ってくれますか?

 良い質問ですね(笑)! 彼氏と友達と居酒屋に行った時のことです。その時、初めて会った友達の友達(男性)とテレビゲームについて話し始めました。深夜までずっと、その男性とテレビゲームの話で盛り上がりました。そして帰る前に、その男性は私の彼氏にこう言いました。「美人だし、すごくオタクだし、君はどれほど幸せ者かわかっているよね?」。私は顔が赤くなったのですが、実はその言葉をとても嬉しく思いました。

男性ゲーマーに占められたゲーム社会の中で、女性ゲーマーとしてのアイデンティティをどのように感じていますか?

 さっき話したように、人々がテレビゲームに精通している女性を面白く思ってリスペクトする場合があります。しかし、人々が女性だから私のことを見くびることもよくありますね。ビジョンが異なるからこそ、ゲームライフの送り方は人それぞれだと思います。受け入れられるために男性ゲーマーと同じことをやるなんてことは根本的に間違っています。

 テレビゲームという分野で女性でいられることは、大きな価値だと思います。例えば、「ファイナルファンタジーX-2」でのコスチュームが着替えられる要素は、私はとても好きで面白いと思いますが、男性はたぶん、「つまらない!」と思うのかもしれません。

 男性ゲーマーと同じ見方でゲームの価値は理解できるのですが、さらに女性ゲーマーだからこそ、他の要素も評価できるのです。私はゲームキャラクターのファッションという要素が大切だと思いますが、もちろんゲーム性が良くなかったら、そのゲームはプレイしませんよ(笑)。

あなたにとって最も大切なゲームはどれですか?

 それは……「ファイナルファンタジーVIII」です。何故でしょうね?! もう少しサスペンスを与えましょう! 後で説明します(笑)。

最も感情移入、一体化できたゲームキャラクターは誰でしょうか?

 「ファイナルファンタジーVIII」のリノアです。自分の成長していきたい方向性について多くのヒントを与えてくれたキャラクターです。当時、自分のことが彼女と同じように見えました。髪型、話し方、振る舞い、陽気さ、人生の楽しみ方……そして、周囲の人々から感情を引き出そうとするポジティブな姿勢も含めて。

 リノアは、私の女性としての成長に大きな影響を与えてくれました。私も彼女のように強い性格を持ちたかったのです。嫌いな現在を変えるための彼女の勇気、逆境に立ち向かう力に憧れて育ってきました。もちろん、人生はテレビゲームではありませんが、リノアはとても良いキャラクターで、彼女のポジティブなオーラが、私は大好きです。

日本のゲームは欧米のゲームに対して、どういう付加価値を持っていると思いますか?

 私は、それはストーリーに与えられた役割だと思います。欧米のゲームがストーリーにおいて不十分なわけではないのですが、ただ日本のゲームのほうが世界観に精密な描写がされていると思います。世界観の深さやあらゆる要素にこだわりたいというのが、日本の文化に密接に関係していると思います。

現在のゲームは過去のゲームに比べて何を失ったと思いますか?

 難易度です。昔はRPGでも、プラットフォームゲームでも、あらゆるジャンルのゲームは難易度が高く、途中でゲーマーは「このゲームは一体どうやったらクリアできるの?」と感じていたでしょう。ユーザーの想像力にもっと刺激を与えて、ステージをクリアしたり、謎を解いたりするために頭を使わせていたと思いますね。でも現在は、ゲームはエンターテインメントに重点を置いて、ゲーマーは逆にゲームに操作、誘導されているという感じですね。

「ファイナルファンタジー」というテーマに迫りましょう。本シリーズに初めて触れたきっかけは?

 漫画やアニメのことも紹介してくれた、隣の席に座っていたクラスメイトが、クリスマスプレゼントでプレイステーションをもらったことを知っていたので、「これを貸してあげようか?」というのがきっかけでした。そのゲームは、「ファイナルファンタジーVIII」でした。その日家に帰ったら10時間以上遊びました。母は全然嬉しくなかったけど、私はファンタスティックな世界の中で生きていたかのようにとても夢中になっていました。

「ファイナルファンタジー」というシリーズを好きになった理由は何だと思いますか?

 まず、超自然的なイベントに満ち溢れたファンタジー系の物語が好きです。「ファイナルファンタジー」のストーリーはいつも魅力的で、勇壮で、心が引き付けられますね。多くのサブクエスト、洗練された戦闘システム、飛空艇でのワールドマップ探索、チョコボやシドといった固定キャラクターなど、ゲームシステムにおいてもキャラクターデザインにおいても素晴らしい要素ばかりです。

 つまり「ファイナルファンタジー」の伝統が好きです。例えるなら、毎回改装される自分の家に帰るのと同じ感覚を覚えます。飽きることなんてありえません! 何故なら自分の家だから。「ファイナルファンタジー」のスタイルは本当にユニークだと思います。

「ファイナルファンタジー」シリーズの中で特に好きな作品はありますか?

 さっき言ったように、「ファイナルファンタジーVIII」です。私にとって最初のRPGでした。こんなにすごいグラフィックスを観るのは初めてで、自分の人生に多大な影響を与えた作品でもあります。プレイしている内にあらゆる感情を抱いて、とても忘れられない体感になりました。

 ボス戦の難易度が高かったこともとても好きでした。何回も同じボスに挑んで、クリアするのにすごく苦労しました。難しかったし、素敵な感情に溢れたゲームだったし、私の心に焼き付くことは最初から運命だったのでしょう。イタリア語版も何回も遊んだし、その後、日本版もやりました。

 私はそのゲームのキャラクターと共に育ち、今、彼ら以上に年を取りました。しかし彼らは、そのゲームの中でずっと年を取らず不死身のままで、その素敵なストーリーを忘れさせないために私と一緒に、これからもずっと戦ってくれることでしょう。

坂口博信氏がスクウェア・エニックスを退社し、「ファイナルファンタジー」シリーズから離れた時、何を感じましたか?

 とても悲しかったです。「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親だから、彼がいなくなったことがそれ以降のゲームに影響を与えたことは当然の成り行きです。それでも、会社に残した遺産は大きくて永久です。Mistwalkerでもっとゲームを作って欲しいです。彼は本当に天才で、これからも多くのRPGを生み出して欲しいです。例えば「ロストオデッセイ」の続編が発売されるのを願っています。

現在のスクウェア・エニックスの方針、そして「ファイナルファンタジー」シリーズ最新作の何が好きで、何が気に入らないのですか?

 正直に言っていいですか? 「ファイナルファンタジーXIII」とその続編の「ファイナルファンタジーXIII-2」は好きになれませんでした。ストーリーは大きなポテンシャルを持っていたと思いますが、「ファイナルファンタジーXIII」で深めて、終わらせるべきだと感じました。

 戦闘システムはオートマチック過ぎて、気に入りませんでした。さっきも話した伝統という要素が不足していると思います。探索するための街はどこに? サブクエストのヒントを教えてくれる住人達はどこに? 展開は1本道です。

 それとは違って、日本で生活していた時に購入した「ファイナルファンタジー零式」はとても好きです。今でも遊んでいます。すごいゲームです! ストーリーにも引き付けられたし、シリーズの伝統を大切にするゲーム性や構造もとても気に入りました。

スクウェア・エニックスにどんなゲームの続編・リメイクを作って欲しいですか?

 PS3用に「ファイナルファンタジーVIII」のリメイクを作って欲しいです。夢かもしれませんが、これからもずっとそれを願い続けたいです。私のお気に入りのエピソードを豪華なグラフィックスでもう1度観てみたい、体感してみたいですね。

 ゲーム性の特徴はそのままで、グラフィックスの解像度を上げて、キャラクターモデルを綺麗にして、声優も使って欲しいですね。あの有名なダンスシーンをHDで観てみたい。もう1度感動したいです。滑らかなアニメーションで走っていくスコールを想像するだけでワクワクします!

欧米の市場をもっと支配するために、現在のスクウェア・エニックスはどのように対処していくべきだと思いますか?

 理想的な話ですが、欧州でもっとマーチャンダイズを展開させていくべきだと思います。私達イタリア人ゲーマーもコレクターなので、日本で発売される商品やグッズが購入できないことを残念に思っています。マーチャンダイズは、不景気という言葉を知らない強い分野です。ゲーマーを引き付けるし、商品の価値や魅力をより一層上げるでしょう。

E3で公開されたばかりの「ファイナルファンタジーXV」の映像を観てどんな印象を受けましたか?

 あらゆるゲームに対して言えることですが、実際試す前に判断したくないですね。ずっと以前から、“FFXVになったVersus”を楽しみにしていました。動画を観て、本来の構想と何かが変わったような印象を受けたのですが、遊んでみたいという気持ちは変わっていません。発売日に買います!

最後に、スクウェア・エニックスにメッセージをお願いします!

 素敵な思春期、成人としての素敵な人生を送らせて頂いてありがとうございます。あなたのおかげで、私は夢を見て、怒りを感じて、涙を流して、恋もしました。これから、あなたがどのように成長し、革命を起こして行くかが楽しみです。スクウェア・エニックスは私にとって親友のような存在です。意見が合わない時もあるかもしれませんが、最終的には親友の元に帰りたくなるでしょう。“I'll be here… I promise.”(「ファイナルファンタジーVIII」のプロローグから抜粋)。

エレオノーラさん、今日は本当にありがとうございました!これからも日本の大好きな「ファイナルファンタジー」で遊び続けてね!!