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【魂レビュー】「S.H.Figuarts ルーク・スカイウォーカー -バトル・オブ・クレイトVer.-」 フィギュアで見るシリーズの系譜と、デジタル彩色の技術力
2020年2月19日 15:02
【ライター:稲元徹也】
ゲーム及びホビーを主軸に執筆するフリーライター。「スター・ウォーズ」は小学生の頃に「新たなる希望」(当時このサブタイトルはなかった)を封切りで観て以来、この作品とともに育ってきた世代だと自負している。昨年末公開の「スカイウォーカーの夜明け」にてひとまずのシリーズ完結を体感し、感無量となったのもつかの間、2022年以降に新シリーズが公開される報を受け、やや複雑な気分に。画像はプレミアムバンダイで受注中の「S.H.Figuarts パルパティーン皇帝-Death Star II Throne Room Set-(STAR WARS: Return of the Jedi)」。このタイミングの発売は、やはり最新作へのオマージュだろうか。(絵:橘 梓乃)
2019年12月20日に公開された映画「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」をもって、1977年より続く「スター・ウォーズ」シリーズがついに完結した。SF、あるいはスペースオペラというジャンルをメジャーなエンターテインメントとして定着させた映画のシリーズであり、かつてのプロデューサー・監督・脚本家であったジョージ・ルーカス氏によって構想された本編9作品を中心に、幾多のメディアで関連エピソードが創られ、公開から42年間かけて濃密なストーリーが構築されてきた。
最新作の公開前後には、ブームと呼んで過言ではない世界的なムーブメントがたびたび発生していて、各社から関連グッズやおもちゃも数多く発売され、シリーズを重ねるごとに店頭でそれらを見かける機会は増えていった。その中でBANDAI SPIRITSが「スター・ウォーズ」シリーズのアイテムを展開したのは、意外にも2015年の「フォースの覚醒」の公開前後という、比較的最近のことであった。
今回「魂レビュー」で紹介するのは「S.H.Figuarts」シリーズより「ルーク・スカイウォーカー -バトル・オブ・クレイトVer.-」だ。映画8作目となる「最後のジェダイ」に登場する伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーを、過去にプレミアムバンダイにて販売された「S.H.Figuarts ルーク・スカイウォーカー (THE LAST JEDI)」とはまた違う姿でフィギュア化している。映画公開同日の2019年12月20日に一般発売されたものだ。発売から少し時期が経ってしまったが、今回改めて、これまでのルークのS.H.Figuartsを並べ、比較した特別レビューをしていきたい。
シリーズの“旧3部作”にて主人公として活躍した後、30年の時を経て“続3部作”で伝説のジェダイとしてストーリーのキーパーソンとして登場したルークは、これまでに4度S.H.Figuartsにて発売されている。今回は、発売されたばかりの「-バトル・オブ・クレイトVer.-」とともに、「ルーク・スカイウォーカー (Episode VI)」、「ルーク・スカイウォーカー (Episode IV)」を比較していこう。
惑星クレイトに現われたジェダイマスター、ルークの姿をデジタル彩色で忠実に再現
ルーク・スカイウォーカーは、「スター・ウォーズ」シリーズの記念すべき初代作品「新たなる希望(エピソードIV)」の主人公として登場した。辺境の惑星タトゥイーンで育った青年であり、ある日育ての親である叔父が作業用のドロイドを購入したことから、彼の運命は大きく動いていく。その後出会ったジェダイマスターのベン(オビ=ワン)・ケノービやヨーダによって鍛えられたジェダイの騎士として、暗黒面に堕ちた父ダース・ヴェイダー(アナキン・スカイウォーカー)と2度対峙する。「ジェダイの帰還(エピソードVI)で、皇帝パルパティーンの誘惑に引き込まれることなく父の心を取り戻したシーンは、ファンの心を打った。
「ジェダイの帰還」の物語より30年後、ジェダイマスターとなったルークだったが、弟子のベン・ソロが暗黒面に堕ちてカイロ・レンとなったことで失意のうちに隠遁。「フォースの覚醒」では、その行方が物語の大きなカギとなった。ラストシーンに登場した老ルークを演じたのは、1977年の「新たなる希望」公開時と同じマーク・ハミル氏。「スター・ウォーズ」シリーズ以降は俳優よりも声優としての活動が多かったため、特に日本ではその後の顔を見る機会が少なかったわけだが、スクリーンに現われたその姿は「ジェダイマスターのルーク・スカイウォーカー」そのままのイメージであった。
この「S.H.Figuarts ルーク・スカイウォーカー -バトル・オブ・クレイトVer.-」は、その後の「最後のジェダイ」の惑星クレイトでの戦いにて、レジスタンスを追い詰めたレンの前に現われた姿をフィギュア化したものだ。弟子との最後の戦いを繰り広げたその身体は実はフォースの幻影であり、その隙にレジスタンスを逃亡させ、惑星オク=トーに存在していた本人は力を使い果たして息絶えるというクライマックスシーンが展開された。この製品ではカイロ・レンとの戦いを控えた精悍かつ悲しみを秘めた表情を、デジタル彩色で再現している。
BANDAI SPIRITSが「魂のデジタル彩色技術」をうたう造形及び塗装は、対照となるキャラクターの特徴を徹底的に研究・検証し、その情報を元にCGにて原型を制作し、そこに毛髪の生え際、皮膚の陰影、シミやホクロなどの特徴を全て網羅した彩色データをミクロレベルでプリントするというもの。実物を見てみると1.5cmほどの顔パーツに、瞳の色や形、眉毛のグラデーションなど、微細なプリントが施されていることがわかる。
特に髭やシワのあるキャラクターの表現はこの技術の真骨頂であり、このルークも白髪交じりの髭の生え際など非常に細かく表現されている。クレイトでのルークは、オク=トーで見られた姿とは衣装が違うだけでなく、短髪で白髪も少なくなっていて、もちろんそういった部分も製品に反映。筆者はその事実をこのフィギュアを手にしたことで気づき、以前録画したTV放映版を見て改めて知るということもあった。
キャラクターや演じる役者の歴史を、フィギュアで比較して楽しむ
ここで、過去に一般発売されたルークのS.H.Figuartsと並べてみよう。2015年に発売された「ルーク・スカイウォーカー (Episode VI)」は、1983年公開の「ジェダイの帰還」に登場した姿をフィギュア化したものだ。「S.H.Figuarts スター・ウォーズ」シリーズで最初にデジタル彩色を採用し、劇中の“本人”の顔を再現したアイテムで、筆者も購入当時そのそっくり具合に驚かされた。
映画のスチール写真でも見られた、タトゥーインの砂漠でジャバ・ザ・ハットと戦ったときの、髪が乱れた姿を再現できたのもファンとしては嬉しい仕様であった。発売から5年が経過しているが、クオリティは近年のアイテムと変わらず、これまでに何度か再版された、このシリーズの定番アイテムでもある。
続く「ルーク・スカイウォーカー (Episode IV)」は、ルークが初めてスクリーンに登場したときの姿を立体化したもの。旧3部作リアルタイム世代のファンにとって、この姿こそがルークであり、希望に満ちた笑顔のパーツがその象徴だ。ミレニアム・ファルコンの中でオビ=ワンにライトセーバーの使い方を教わったときに使用したヘルメットとエフェクトという、通好みの付属品が同梱されている。
映画「新たなる希望(Episode VI)」と「ジェダイの帰還(Episode IV)」版では6年の年月が経過していて、「最後のジェダイ」では34年が経過している。キャラクターや演じる役者の歴史をフィギュアを通して楽しめるというのも、長く続いてきた人気シリーズならではのものだ。
歴史が長いだけあって、これまでもさまざまな「スター・ウォーズ」のフィギュアがリリースされてきたが、その中でS.H.Figuartsは顔の表現や精密さ、可動のバランスなどが突出していると個人的には思っている。映画はここで一区切りとなったが、今後は同じシリーズにて、脇役のエイリアンやドロイドを出してほしいと思っているのだが、いかがだろうか。
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